Humanoid ~親愛なる君へ贈る~ 1

  25, 2014 07:31


親友のユノは、昔から情熱的で何事にも全力を尽くすような男だった。
しかし、恋愛に関しては比較的ドライだった。
女が途切れる事は殆ど無かったが、それは寄ってくる女を拒まなかったからだ。
想いの比重としては、いつも相手側が強かったように思う。
友達や仕事を優先し恋は二の次。
だから恋した相手、それも男に、命をかけて向き合うその姿を見て驚いた。
戸惑いの中に、俺は嫉妬の感情を含んでいた。
ユノは俺の一番の理解者で、側に置きたい存在だったからだ。
シム・チャンミンに、ユノの全てを飲み込まれそうで怖かった。
しかし今ならば、二人の関係を心から祝福出来る。
一度枯れてしまった花は命を吹き返した。
これからも願おう。
花が穏やかに、変わる事なく咲き続ける事を。









デスクへコーヒーが置かれた。
運んできたイエソンが、興味津々といった顔で俺を覗き込み言った。

「ヒチョルさんって、ユノさんの事……もしかすると好きでした?」
「どうしてそう思う」
「ユノさんの気持ちを知った時の怒り様、半端無かったですから……」

確かにかなり取り乱した。
しかし俺の中には、ユノと性的に触れ合いたいという欲求は全く存在しない。
ユノは大切な親友であり、それ以上の感情は無い。

「ユノの事は友達として好きだ。しいて言うならば、俺が恋したのは……あの二人の絆に、かもしれない……」
「ヒチョルさん」
「なんだ」
「その言葉、最高に似合わないです」
「もっと気の利いた事言えないのか、お前は」

へらへらと笑うイエソンの頭を、俺は側にあったファイルで叩いた。









平日に休暇を取り、俺は街へ散歩に出た。
目的は人間観察だ。
土日より人が少ないので、じっくりと観察出来る。
人間は見ているだけで面白い。
今までhumanoidの研究に打ち込んできたが、機械を人間に完全に似せるのはいつになっても難しい課題だ。
人間の豊かな機能は本当に魅力的で、研究を進める度に敗北すると同時に強くひかれてしまう。
カフェの前を通り過ぎた時、ウィンドウによく知る顔を見た気がした。
数歩戻り中に視線をやると、そこには親友のユノとその恋人、チャンミンがいた。



「で?何でお前がいんの……」

ユノは、恨めしげに俺を見つめて言った。

「そんなに無下にするな、大切な親友を。なぁ、チャンミン」
「はい……」

若干戸惑った様子で、隣に座るチャンミンが応えた。

「外に出るなんて珍しいな」
「人間観察だ」
「あぁ、たまにやってたっけ。そういえば」

その時、ユノの携帯が着信を告げた。
職場の後輩かららしく、悪いと一こと言うと席を外した。
俺はチャンミンに話しかけた。

「どうだ、あれからは。上手くいってるか」
「はい」
「そうか。一時はどうなるかと思ったが」
「色々と、ありがとうございました」

チャンミンが深々と頭を下げる。

「礼を言うのはこっちだ」

チャンミンの赦しがなければ、俺は今ここにはいなかったのだから。
チャンミンは、初めて会った時と比べて雰囲気がだいぶ変わった。
表情は穏やかで優しく、近づき易い印象を受ける。
ユノと出会い全てを受け止めた事で、変わったのかもしれない。

「チャンミン、人間の脳の魅力を知っているか」
「えっと、そんなに詳しくは……」
「過去に記憶したデータを、時間が過ぎても書き換える事が出来る。機器などは一度記憶したものは書き換えられないだろう。人間は、時間が過ぎても過去の事を気付き学んでいく。当初の記憶を、心をもって変化させられるんだ」
「成る程……」
「チャンミン、お前は素晴らしい機能の持ち主だよ」

一度はユノを恨んでも、俺達を赦し、またこうしてユノを愛してくれた。
人間の中でも、特に優れた機能を持っている。

「そんなに誉めないで、ヒチョルさん」

照れくさそうに笑うチャンミンがまるで弟のように可愛くなり、俺はつい世話をやきたくなった。

「連絡先を交換しよう」
「え?」
「ユノの事なら何でも聞いてくれ。奴の頭の中は100%把握済みだ」

チャンミンはくすくすと笑うと、お願いしますと携帯を取り出した。
丁度交換し終えた頃、ユノが戻ってきた。

「……何やってんの?」

携帯を手に向かい合う俺達を見て、不思議そうに呟いた。
俺達が連絡先を交換した事を話すと、ユノはあからさまに嫌な顔をした。

「おい、チャンミンにあんま余計なことすんなよ」
「相談相手になろうとして何が悪い」
「お前、俺の事何でもべらべら喋りそうだろ……。マジ勘弁」

ため息をついたユノに、チャンミンがぼそりと言った。
小声だったが確かに聞こえた。

「ユノの事なら……何知っても嫌いにならないから大丈夫」
「そうかよ……」

ユノは顔を赤くすると頭を掻いた。
思った以上に充実しているようだ。
これは、あの話を持ち掛けるしかない。

「二人とも、これを見てくれ」

俺は携帯に保存した画像を見せた。
映っているのは一人の子どもだ。
二人とも初めぴんときていない様子だったが、暫くするとユノは頭を抱えて溜め息をついた。

「これは、お前達ふたりのデータを掛け合わせて作った人間のビジュアルだ」
「え……」

チャンミンの目が、まん丸く見開かれた。

「チャンミン、お前は男だから子供が産めないだろう。だがこれからユノと生きていくなら子供が欲しくないか。恐らくこの写真のようなビジュアルになるが、欲しいなら子供のhumanoidを作ってやるぞ」

チャンミンは顔を真っ赤にして俯くと、何も喋らなくなってしまった。
俺は何か変な事を言っただろうか。

「ヒチョル、お前なぁっ……!」

ユノが腰を浮かせて声を荒げた。
チャンミンと同じように、顔を真っ赤にして震えている。
何をそんなに取り乱す必要がある。
愛し合うなら子供が欲しい。世間的に、共通して誰もが持っている思考だろう。
動揺する意味が解らない。
そんな俺を見て、ユノは脱力すると椅子に座った。

「気持ちだけ受けとる。humanoidは要らねえ」
「要らないのか、勿体無いな」
「いいんだよ。要らないだろ、チャンミン」

チャンミンはコクコクと頷いた。
それから暫く三人で話したが、二人は目が合う度視線をさ迷わせ、顔を赤くしていた。
あんなにも深く愛し合って結ばれたのに、子供の話題でそんなに動揺するとは思わなかった。
人間の心はやはり深い。






その日の夜。
携帯に、一通のメールが届いた。

「チャンミン……」

メールの内容は、微笑ましいものだった。


『今日はありがとうございました。

あの写真、よろしければ頂けませんか?

ユノには秘密でお願いします』



アイツとは違い、素直で可愛い奴だ。
俺は上機嫌で了解の返信をした。








◇◇◇



いきなり番外編投下。
コメントも溜めためすみません。
どうでしたか?
いままでシリアスだったので、一気に明るくなった感じですね。
※人間の脳はデータを書き換えられるって話「脳の中の人生」という本から、言葉は若干違いますが引用させて頂きました。

ご本人様、ツアー無事完走ですね!今更……?
感動です。TVにイベント発表、その他いろいろ書きたいこと有りすぎる。
でも出来ない~……
最近せかせかして毎日が作業のようだ!
ホミンちゃんパワーで乗り切るしかない!
ファイティン!





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