Humanoid ~この恋は永遠に~ 30



最期の朝を迎えた。
柔らかい光に満たされた部屋の中に、今ではもう見慣れた背中が佇んでいる。
手を伸ばしてその背中を抱き締めた。
滑らかで温かい肌も優しい匂いも、本当はずっと側で感じていたい。
見つめる先は、壁に掛けられたカレンダー。
今日の日付けを見る。
ただそれだけで、胸が締め付けられて苦しくなる。

「もっと早く......気持ち伝えれば良かったな」
「いいんだ......。ユノは僕の事、考えてくれたんだから」

回した腕に、そっと手が添えられた。

「チャンミン......」

俺は振り返ったチャンミンの唇を塞いだ。
どんなに触れあっても、欲求は満たされることはない。
このチャンミンの温度が、手に入らない事が解っているから。
チャンミンとは、今日の24時でさよならだ。



昼が近付いた頃、海沿いのテーマパークへ出掛けた。
チャンミンとは一ヶ月間ともに過ごしたが、恋人となり愛し合ったのはたった二週間程度だ。
外に出て恋人らしいことはあまりしなかったが、一緒に居れるだけで十分幸せだった。
今日こうして家から出たのは、特別な思い出を作りたいからじゃない。
この運命から逃げられないと解っていても、少しの間外へ足を運び、迫る現実から目を逸らしたかった。
俺もチャンミンも、きっと同じ気持ちだったと思う。
沢山笑って楽しんでいるうちに、あっという間に夜がやってきてしまった。






ひんやりとした冷たい風が、俺達の間を通り抜けてゆく。
俺は、チャンミンの手を握りしめた。

「暗いから、大丈夫だろ」
「うん......」

暫くすると、ふとチャンミンが立ち止まり、俺は後ろを振り返った。
俯いたチャンミンの瞳から涙が溢れて、足元にしみを作っていく。

「チャンミン......」
「ユノ......離れたくない。嫌だ......。ユノ......」

涙で濡れる顔も、震える肩も全部愛おしい。
傷付けてごめん。
こんなに愛しているのに。

「チャンミン......俺だって、離れたくない」

強く抱き締めると、俺の胸元を握りしめながらチャンミンは言った。

「ユノ......僕、ユノが居なくなって......ちゃんと生きていけるかな......」

俺がこれからも存在していくということを、チャンミンは知らない。
離れ離れになった後、俺よりもずっと辛い思いをさせてしまうだろう。
それでも事実を告げる事は出来ない。
両手でチャンミンの顔を包み込むと、俺は潤んだ瞳をじっと見つめた。

「チャンミン、忘れるな。俺が居なくなっても心は消えない。ずっとずっと、チャンミンを想ってるから」
「ほんと......?」
「本当だ、嘘じゃない。大丈夫、側にいる」

これからも、ずっとチャンミンを想いながら生きていく。
会えなくても、心はずっとチャンミンを見てるから。
俺が今言える、精一杯の告白だった。

「チャンミン......帰ろう」

チャンミンの手を引き、俺は再び歩き出した。









時計の針が、少しずつ進んでいく。
一秒一秒刻まれていくこの時間がこんなに大切だということも、チャンミンが教えてくれた。

「ユノ......ありがとう。お前に会えて、良かった」
「俺もだ。チャンミンに会えて良かった」
「いつか本当の人間になって、僕に会いに来てくれ......」

チャンミン。
出来ることなら、またお前に会いたい。
ユノ・ユノとしてじゃなく、人間のチョン・ユンホとして。

「ああ、約束する」

もしそんな夢みたいな事が起きたら、その時お前は許してくれるか。
俺のこの過ちを。
チャンミンの前では決して涙は見せないと決めていたのに、最期は抑えられなかった。
24時まであと数分しかない。
最期は、チャンミンの温もりを感じて眠りたい。

「最後にもう一度......キスして」
「......うん」

唇に柔らかい感触を感じて、俺は目を閉じた。
ゆっくりと力が抜けていき、そのあと視界は闇のまま、開く事はなかった。
ユノ、ユノと、泣きながら俺を呼ぶチャンミンの声が、暗闇の中に響いていた。









◇◇◇



福岡始まりましたね!
参戦されるかた、楽しんで来てください(^_^)!
小説はこんなじっとり感でスミマセン……
だいたい40話位で終わりそうです。





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