Humanoid ~この恋は永遠に~ 29

  01, 2014 21:34


ヒチョルは俺に怒鳴った日以来、研究室にあまり姿を見せなくなった。
手を貸さないと宣言した通り、自分の用だけ足すと部屋を出ていき俺には構わなかった。
それでいい。
独断で計画をねじ曲げたのに、これ以上迷惑をかけられない。
排泄とシャワー、食事の摂取。
それ以外は臥床して過ごした。
一時的に夢が途切れる時、自分の身体を見ては日に日に細くなっていくのを感じていた。
今までの様に身体に力が入らなくなり、動作も緩慢になった。
力を失っていくのは怖かったが、それよりもずっと夢の終わりが来る事を恐れていた。
チャンミンとの別れが来る事を。









「じゃあ」
「迎えに行くから、仕事きっかり終わるように頑張れよ」
「解ってる」

チャンミンは一瞬切なげに顔を歪めたが、すぐに笑って頷いた。

「チャンミン」

距離を詰めて頬を擦り寄せると、チャンミンは瞳を閉じて応えた。
離したくない。
本当はこのままずっと。
細い身体を強く抱き締めた。

「ユノ……行かなきゃ」
「あと少しだけ」
「もう……。我が儘だな」

チャンミンは明るい声色でそう言ったが、背中に添えられた手は震えていた。
もうすぐ永遠の別れが来る。
寂しい。苦しい。切ない。
二人で居ると互いの思いが痛い程に伝わる。
だけど、悲しくなるから口には出さなかった。
気を緩めたらすぐに泣き出してしまいそうで、それでも笑っていようと努めていた。



チャンミンを送り出した後、食事を摂るため一度ユノ・ユノの操作を辞めた。
何とか起き上がる事は出来たが、CTから移動しようと床に足をついた途端、膝がガクンと折れ尻餅をついた。

「ユノさん!大丈夫ですか……?」

食事を運んできたドンへが、駆け寄ってきて肩を貸してくれる。

「悪いな……」

もう、自力ではまともに歩く事は出来なくなってきた。

「こんな無茶は辞めたらどうですか」
「いいんだよ、ほっとけ」
「……量を増やしました。しっかり栄養を摂って下さい」

椅子に座ると、目の前に食事が置かれた。
今朝、チャンミンと朝食を食べた時の事を思い出した。
ユノ・ユノから俺へ、直接エネルギーは補給されない。
胃には何も入っていないのに、食欲が沸かなかった。
今朝の思い出で胸がいっぱいだ。

「いらね……」
「食べて下さい」
「食欲沸かないんだ」
「死にますよ……。このままじゃ」

そんなことは解ってる。
でも、心が受けつけない。

「置いててくれよ。そのうち食うから」
「また来ます」

ドンへは部屋を出て行った。
静まり帰った部屋に独りになると、抑えていた感情が一気に溢れ出した。
たちまち視界がぼやけて、涙がポロポロと零れ落ちた。
もう、チャンミンの事しか考えられない。
恋にのめり込み傷付いてしまう人間を、これまで何人も見てきた。
その心境を理解出来ず、俺とは無縁の事だと思っていた。
チャンミンと出会って初めて、人を好きになる事がこんなにも辛いと知った。

「離したくない……。チャンミン……」

涙が、嗚咽が止まらなかった。






それから期限日迄の数日、食事をしても殆ど味が解らず摂取量も減っていった。
ひとつひとつの動作もやっとで、筋力は随分と落ちたようだった。
CTを離れようとすると、いつも手を貸してくれる助手が不在だった。
どうしようかと考えていたその時、目の前に見覚えのある手が差し出された。

「……ヒチョル」

無表情で俺を見下ろしながら、親友は言った。

「便所か風呂場か、どっちだ」
「いいのか……?」
「協力して貰ってる立場だからな。手を貸してやる」
「……ありがとう」

小さな肩に頼りながら、俺はゆっくりと歩いた。
それから、ヒチョルはよく手を貸してくれるようになった。

「ここまで来たら全力でやり遂げろ。お前の後の面倒は見る」

ヒチョルの力強い言葉が、チャンミンと向き合う勇気をくれた。









◇◇◇



臥床による筋力低下の程度がいまひとつ解らずぼんやりさせるっていうね。
スイマセン……(^^;)
より男らしいユノって設定なのに泣かせてしまった。
NBユノ受けブームでして……





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