Humanoid ~この恋は永遠に~ 22



「はじめまして、ご主人さま」
「駄目だな。もっと恥じらいを無くせ」

腕を組みながら指摘するヒチョルを、俺は睨んだ。

「こんなことを言わされる俺の気持ちも考えろ」
「最初の一言だけだ。我慢してくれ。それから、主人には反抗せずなるべく従順でいて欲しい。humanoidの設定に合わせてな」
「俺がそんな事出来ると思うか?」
「やはり無理か……」

ヒチョルは諦めたようにため息をついた。

「まぁ、お前をそこまで器用だとは思ってない。出来る限り意識して貰いたいが……殴ったりして大事に至らならなければそれでいい」
「只でさえ被害者になる人間にそこまでしねーよ」

今日、会社が利用者に当選の連絡をしたらしい。
もうすぐシム・チャンミンとの生活が始まる。
今まで様々なタイプの人間に出会ってきたが、それなりにいい関係を築いてきた。
人付き合いはどちらかといえば得意な方だと思ってる。
きっと今回も何とかなるだろう。









数日後の朝。
包装されたユノ・ユノを送り出した。
ユノ・ユノがシム・チャンミンの家に届いた時点で、ヒチョルに連絡が入ることになっている。

「そろそろ着く頃か……。スイッチが入ったら暫く戻ってこれない。今のうちに出来ることは済ませておけよ」
「ああ、大丈夫だ」

丁度ヒチョルの携帯が着信を告げた。

「ヒチョルだ。ああ……ああ、了解した」

通話を切るとヒチョルは言った。

「無事到着したぞ。ユノ、準備だ」
「おう」

CTに入ると、横になり目を閉じた。
鼓動が徐々に速くなってゆく。
シム・チャンミンが主人になると決まってから暫く日を置いたせいか、今日やっと対面することに妙な高揚感があった。



目を閉じてどれくらい経っただろう。
ふと、目の前に視界が開けた。
日が差しこんだ部屋。白い天井。
研究室とは違う爽やかな匂いに包まれた。

「…………」

ゆっくりと手をついて起き上がると、目の前にはあの写真通りの人物がいた。
大きな目を丸くさせて、じっと俺を見ている。

「……はじめまして、ご主人さま」
「……はじめまして、シム・チャンミンです」

耳にすんなりと入ってくる、落ち着いた声だ。

「何とお呼びしますか」
「好きなように、いいよ」

少し言葉を交わしただけだが、打ち解けられそうな雰囲気を感じた。

「じゃあ、"チャンミン"。堅っ苦しいの苦手なんだ」

いつも初対面の人間と関わる時と同じ調子で、俺はそう返した。
しかし次に返ってきた言葉を聞いて、シム・チャンミンの印象は一転した。

「君はきっと、誰にでも愛されるように造られたんだね」

「見た目だけじゃなくて、性格も良さそうだ」

「どうしたの?もっと喜んでよ。造り物にとっては最高の誉め言葉だろ」

何だこいつは。
ヒチョルは安全な人間と言っていたが明らかに選択ミスだ。
利用を希望したのはhumanoidをいびる為か?

「説明書見た?」
「……見たよ」
「ホントか?ここ。"人間と同じ様に扱ってあげてください"」

ヒチョルと関わることで、俺はhumanoidの話題に触れる機会が多い。
一番辛いのは、ヒチョルやその仲間が努力して造り上げたhumanoidが、利用者から暴力を受けて回収されたという悲報を聞いた時だ。
シム・チャンミンがもしそんな輩と同じ感覚で俺を扱おうとしているなら、騙している自分の立場を棚に上げてもこの間違った考えを正さなければいけない。
そう思った。

「あんまり"造り物"っていうな」
「だって造り物だろ!?本当のこと言って何が悪いんだっ」
「チャンミン!」
「な、なんだよ……」
「humanoidを購入する人間には色んな奴がいる。人間と同じ様に扱う主人もいるけど、虐待するためや性欲処理のためだけに購入する奴が沢山いるんだ……」

俺は主人に出会って早々、説教をしてしまった。
大人しくしていられる自信は元々なかったが、まさかこんなにも直ぐhumanoidの条件“従順“を破る事になるとは。
ヒチョルから教えられたシム・チャンミンの情報を思い起こした。
こいつは確か……

「humanoid扱うの初めて?」
「そうだけど……」
「なら、今のうちに考えを改めろ。そんな風になって欲しくない」

例え反発されても引き下がるつもりはなかった。
思いが伝わることを信じてじっと見つめていると、シム・チャンミンは観念したように言った。

「わかった、わかったから」











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