【 ネガティブ男 vs. ポジティブ男。】 #リーマン神起














リーマン神起(リ)

























【登場人物】











リーマン神起 Y

チョン・ユンホ(31)







リーマン神起 C

シム・チャンミン(29)






























※漫画ではなく小説です。
※ホミンホです。
※この恋は、秘密。より前のお話です。















ネガティブ男 vs. ポジティブ男。










じりじりと、容赦なく照り付ける太陽。
体にまとわりつく、生温く蒸し暑い空気。
一歩先までも埋め尽くす人ゴミ。
こんな環境下でも、僕はシャツとズボンに硬い革靴を身に付けて、涼しい顔で営業しなければならない。
働き始めた当初は、辛いとか最悪とか愚痴る元気があったが、今はひたすら無心になってやり過ごす術を覚えた。
これは、僕らサラリーマンの運命である。
なかなか青にならない目の前の信号を見て、溜め息をついた。





“大人になる”とは―――
可能な限り、割りきり、諦めること。
感情の閾値を下げること。
良く言えば、冷静に、分析的になること。
悪く言えば・・・・・・もしかしたら、冷めてるって捉え方もあるかも知れない。
でも僕はこの方が楽だし、世間の大半の大人が同じ傾向にあると思ってる。
たまに、そんな“僕のルール“を壊す“例外“が現れたりもするが・・・・・・
まあ、世の中には様々な人間が居るので仕方の無い事だ。

信号が青になるのを待っていると、目の前の男女がスキンシップを始めた。
手が触れ合ったのをきっかけに、段々エスカレートしてゆく。
女のほうが男の首に腕を絡ませて、終いにはディープキスに発展した。
色素の薄い髪に、露出度の高い服。
回りの目を気にしない自由さ。
外人だから仕方無いと、目を瞑る。
だが、体力も気力も奪われかけた今の僕には、決していい気分のものではない。

「国に帰れ、お前ら・・・・・・」

そう呟いた僕の横で、共に行動していた先輩が言った。

「おアツいねー!羨ましいな全く」

先輩は笑顔で男女の触れ合いを見ている。
その発言が理解できず、僕は眉を寄せた。

「不快の間違いでしょう?何ですか、羨ましいって」

僕も黙っとけば良いのに、つい口出ししたくなってしまう。
この“例外“に属する先輩には。

「羨ましいじゃん?俺も可愛い姉ちゃんにチューされてぇ。絶対疲れ吹っ飛ぶわー」
「そうですか・・・・・・。相変わらず野性的ですね」
「なんだ野性的って!そこは男らしいとか言えよ」

”変態”をオブラートな包んだつもりですけど?
先輩はけらけらと笑い続けている。
くそ・・・・・・何がそんなにおかしいんだよ。
そういう発言かましといて、仕事は物凄く出来るから嫌なんだ。
僕と同じ部署で、持ち前の行動力を買われ、若くして時期係長を言い渡されているこの男の名は、チョン・ユンホ(31)。
外も中身も良いって、会社全体からも性別を問わず評判が高い。
そういうもんだと理解はしてるが、共感は出来ない。
僕はチョン先輩が苦手だ。



「ああいうの、普通は頭にくるでしょう。回りのこと考えろとか」

僕に視線を寄越しながら、チョン先輩は不思議そうな表情をする。

「でもあっちじゃ普通だぜ?人前でキスするのなんて」

僕が入社する前だが、チョン先輩は何年か海外に居たらしいから、きっと同じような事を街中でしてたんだろう。
この人、何処行ってもモテそうだし。

「ここは外国じゃねぇ。韓国だ」
「ふっ。まぁな」

そこで信号は青になり、会話は途切れた。
人の波を割くチョン先輩の背中を、見失わないようにすぐ後ろを歩く。
黒髪をオールバックに纏めた小さな頭、筋肉質な肩や背中。
加えて、こんな日照りの中でも姿勢が良く、歩きは颯爽として欠点が見当たらない。

「おい、俺の横歩け。横」

横断歩道を超えて人ゴミを抜けると、チョン先輩が僕を振り返り、命じた。

「分かってます」

隣に並ぶとチョン先輩がふっと笑って、僕は反射的に視線を反らした。

「今日はあっちいな。溶けそうだ」
「ですね・・・・・・」

“例外“を遠ざける為、嫌な部分を見付けて、関わらない理由探しするのが僕の常。
チョン先輩は、典型的な熱血野郎でとても暑苦しい。
出来るだけ静かに、楽してたい僕とは真逆のタイプで、考え方や行動が全く違っている。
だが、それは長所にもなり得る。
僕の目には煩わしく映っても、他人にとって必ずしもそうではない。
分かってる。
この人は悪い人じゃない。
僕が苦手なだけだ。

















気心知れた親友。ビールジョッキ。
このふたつが揃ったら、もう僕の口は止まらない。
今日も絶好調だ。

「こっちも忙しいのに、当たり前のように言うわけ。『おいシム、コーヒーくれ!』と」
「うん」
「で、ミルクと砂糖たっぷり容れて笑顔で出したら超嫌がってた。ざまぁ」
「はぁ・・・・・・お前だけよな、チョン先輩にそんな事出来んの。俺なら絶対ムリ」

親友であり、同僚でもあるキュヒョンが、僕を呆れ顔で見ている。

「だって、僕が忙殺されそうなのくらい見てわかるだろ?飲み物なんてその辺の事務の女に頼めばいい。営業先ではあんなに先方に気遣えるのに、僕を何だと思ってるんだ」
「お前に一番言いやすいって事だろ」
「僕はあの人専用のお茶汲み係かよ」
「まあまあ」
「でも、先輩の嫌そうな顔見てスッキリした。何時も笑っててポジティブオーラ全開だから」

静かに笑う僕を見て、キュヒョンが首を傾げる。

「お前って、チョン先輩のこと嫌いなんだよな?」
「え・・・・・・?あぁ・・・・・・」
「の割りにはさ、何時も話題にチョン先輩が登場するよな。それも、お前が案外楽しそう」
「・・・・・・そうか?」

キュヒョンが、腕組みしながら考え込む仕草をする。

「俺的に、”嫌う”ってさ、結局んとこ“無関心“だと思う訳。もうどうでもいいですーって。でも、お前見てると興味ありありなの。「チョン先輩チョン先輩」ってさぁ」
「興味ありありとか止めろよ!?」
「いや、お前気付いてるか知らんけど、俺に話す話の半分はチョン先輩だぞ?8割・・・・・・は言い過ぎか。でも、うん」

今言われるまで気付かなかったけど、振り返ってみるとそうか・・・・・・

「でも・・・・・・これ愚痴だぞ?興味あるのとは別の話だろ」
「ふぅーん。まぁ、どうでもいいよ」
「おい?」
「野郎同士の話題、そんな広げてどうするよ」
「まぁ、そうだけど」

言うだけ言って、話題をぶったぎるキュヒョンを軽く睨み付けた。
相変わらずマイペースな奴。



キュヒョンと解散した後。
タクシーを捕まえようと、車道沿いに立っている時のこと。
賑わう声が背後から聞こえてきて、僕は振り返った。
聞き覚えのある声だった。

「良かったぁ。俺、チョン先輩に嫌われてるかと思ってました!」
「んな訳ないだろうが。愛情の現れだろ、叱るのは」

酔っ払った半泣きの新人と、彼を背負うチョン先輩。
そんな二人を見てゲラゲラ笑う会社の仲間が、こちらへ向かって歩いてくる。
そういえば、今日の仕事上がり僕も飲みに誘われたけど、キュヒョンとの先約があって断ったんだった。
見つからないように、さっさと居なくなろうとしたのに・・・・・・

「あ!あれシムじゃね?」
「ほんとだ!あの撫で肩はシム!」
「おーい、シムー」
「・・・・・・・・・・・・」

背中を向けたまま、チッと舌を鳴らす。
空気を読むってこと、知らないのか?
チョン先輩を取り巻く軍団は、なんで皆こうなんだ・・・・・・

「・・・・・・どうも」
「よ、お疲れ」

僕が頭を下げると、新人を背負ったチョン先輩は、片手を挙げて笑った。






何故か飲み会軍団に混ざる羽目になり、帰路を辿る僕。

「俺、女なら絶対チョンさんに告ってました!!」
「おお、マジか」
「マジです!チョンさん、今まで見てきた大人の中でいっちばん格好いいですもん」
「最高の誉め言葉貰っちまったなぁ」

酔っ払った新人が本音をぶちまけ、周囲の笑いを誘っている。
笑ってないのはただひとり、僕だけだ。
何も楽しくない。
って言うか、僕ここにいる意味あるか?
テンションの差に苛々が募るばかりだ。
ああ、煙草吸いてぇ・・・・・・
20本ぐらい、一気に。

「すみません、僕こっちなんで」

本当は皆と同じ方向だったけど、もう耐え切れなかったので、目の前に見えた別れ道に反れた。
すると・・・・・・

「わり!俺もこっちだから」

なんと、チョン先輩も僕と同じ道を選んだのだった。
いやいや・・・・・・
もしそうだとしても、空気を読めよ。
僕の心を読んでくれよ。
そんな想いは届く筈もなく、チョン先輩は新人を背中から降ろすと、仲間に任せて僕の方へやって来た。



「―――なんであいつらのこと避けるんだよ」

二人きりになって歩き出すと、チョン先輩が言った。
僕の意図に気付いてたのか。
って言うか、それなら放っといて欲しかった。

「煩いのが苦手なだけです」
「へえー、そうかい」
「今からでも、あちらに混ざって下さって結構ですよ。僕の事はお気になさらず」
「まさか、俺がお前に気ぃ遣ったとか思ってる?俺もこっちなんだって。さっき言ったろ」
「これは失礼しました」
「ったく、可愛くねーな」

チョン先輩が溜め息をついて、僕の苛々がまた募る。
溜め息つきたいの、こっちなんだけど。
きっと僕ら、相性が悪い。

「でもお前、実は騒ぐの好きだろ」
「は?」

この人、今の僕の話聞いてなかったのか?
不快感を露にしても、チョン先輩は何時もの調子で続ける。

「だって、ほらあいつ―――チョ・キュヒョンと話してる時はガキみたいに笑ってるじゃんか。そらもう、別人みたいに」

ガキ言うな・・・・・・!

「あいつは仲が良いので」
「つまり、あれが本当のお前の姿って事だろ」
「・・・・・・・さあ、どうなんでしょうね」
「冷めたフリしてんなよ?まぁだ若いクセに」

頭をわしゃわしゃと撫でられ、突然の事に抵抗する暇も無かった。 
サイアク。簡単に触るなよ。
ぼさぼさになった髪のままジッと睨んだが、僕の不機嫌攻撃に臆せずチョン先輩はキョトンとしている。
これは鈍感力の成せる業だろう。

「ほら、笑ってみろ。俺にも」

顔を覗き込まれて、思わず一歩引いた。

「無理・・・・・・楽しくもないのに」
「それでも笑ってる方が、大人の世界は上手くいーくーのー!ほれほれ、笑ってみ?ニィーッ」
「っ・・・・・・」

ああ!!うぜぇ!!
僕は赤ん坊か!?
子供扱いするな。絶対笑うもんか。
無表情を保ったままでいると・・・・・・

「あたっ・・・・・・!!」

チョン先輩はなんと、目の前に迫った看板にガツンと音を立てて衝突したのだった。
何やってんだ、この人。

「ってぇーー!!!」
「・・・・・・大丈夫ですか?」

チョン先輩は、看板に打ち付けた額をお抑えて背中を屈めながら、悔しそうに言った。

「くそぉっ・・・・・・お前の顔見るのに夢中で、目の前ノーマークだった・・・・・・」

真面目にそんな台詞を言うから、僕はつい、吹き出してしまった。

「あっははっ・・・・・・はははははっ!」
「シム・・・・・・?」
「だって!うちの会社きっての敏腕営業マンがそんな・・・・・僕の顔に気を取られて看板に?あーおっかしい!はははっ」

チョンさんは驚いたのか、ぽかーんと口を空けて僕を凝視している。
でも笑いは止まらなかった。

「お前、笑ってる方が可愛いぞ?10倍くらい」
「・・・・・・・・・ああ?」

そこで、僕の笑いは止まった。

「・・・・・・全然嬉しくありません」
「あーあ、ひねくれ具合は通常運転だな。まあ顔だけでも笑っとけよ。お前が真面目で良い奴なのは分かるけど」

にっと口を吊り上げて、チョンさんはまた歩き出す。

「・・・・・・・・・・・・」

あんたいつも、そうやってサラッと誉めて皆の心掴んでんだろ。
折角僕が“例外“とみなして一線引いてるのに、お構いナシに入り込んでくる。この人のそんな所が苦手だ。
慣れないことすると、動揺したり、苛立ったり、考え込んだり、色々増えて疲れるじゃないか。

「さあー明日も頑張っかぁ」

背伸びした背中が、今日は何故だか少しだけ格好良く見えた。
蒸し暑さで、僕の頭もヤラれたか・・・・・・



























翌日。

「はよーす」

出勤したチョン先輩は、額にデカい絆創膏をべったりと張り付けていた。

「ふっ・・・・・・くくくくっ・・・・・・あははははっ」

笑う僕を回りの皆は珍しそうに見ていたが、それでも笑いは止まらなかった。

「オマエ笑い過ぎ」
「だっておかしいんですもん。それに、クールなフリは止めた方が良いんでしょ?」
「このやろ」

チョン先輩が、僕の額を指で押して笑う。
そんなやり取りを、知らぬ間に自然に出来ていた自分に驚く。
あれ、今日は拒否反応が出ない。
この人になら、少しは素直になってもいい―――なんて。
蒸し暑くもない、冷房の効いた社内で思う僕。
昨晩、そして今感じた気持ちの変化は、どうやら体調のせいではなく僕の意志のようだ。
思い返せば、苦手ならスルーすれば良いものを、僕は何時もチョン先輩に口出ししてばかりだった。
そっちの方が気力が要るのに、だ。

―――『俺的に、”嫌う”ってさ、結局んとこ“無関心“だと思う訳』
―――『でも、お前見てると興味ありありなの。「チョン先輩チョン先輩」ってさぁ』

あの言葉を思い出して、妙に納得がいく。
キュヒョン。
お前が言ってたこと、本当かも知れない。
同僚とじゃれ合うチョン先輩を、頬杖ついて見つめながら僕は小さく笑った。













おわり



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みなさーん
だいぶ熱いですが体調は大丈夫ですか??
蒸し暑いなか、目の前でキスおっ始めた外人カップルの話は私の数日前の実話です。
そんな流れで突然浮かんだのですこの話。
単発だからいいやーって。
私はチャンミン寄りの感じ方だけど、チョン先輩は笑って見てるタイプだなーって。
前も言ったけど、ホミンホ作品なのでチョン先輩が格好良すぎないように、チャンミンが可愛すぎないようにしてます。
このシリーズは漫画と小説と混ぜて書いていきたいなと思います。
あ、それと、題名がなんかしっくりこなかったので最初のと変えちゃった。

ユノの舞台のハプニングは残念に思う気持ちもあり、嬉しくもあり・・・・・・・(笑)
複雑な気分ですが、結論を言うとユノは変わらず格好良いってこと。
どんな問題にも負けずに、ちゃんと仕上げてくるプロ意識や行動力の高さ。
だから大好きになったの。
最初は純粋にそれだけだった・・・(笑)
不安でチャンミンに連絡するのも、人間臭くていいというか!
一人でもあまり不安無い、頼らないって対応より断然萌える。
ありのままでーって伝えるチャンミンもイケメン過ぎ!
ごめんなさい私最近、ほんとチャンミンを可愛いと思えないんです(ホミン作品多いので一応謝る)。
笑顔や仕草は可愛い瞬間あるけど、外見だけじゃなく言動男前過ぎでしょー
あー早く、二人が見たい。
とりあえず言いたいこと言ってスッキリした!
見ていただいた方、ありがとうございます。


コメント返信、これから返しますね。
日跨いだらすみませんm(__)m
スタンドバイミー引き続き頑張ります。


 
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1 Comments

723621mam  

あの撫で肩はシム!
、、、軍団の発言ではなく、チョン先輩だよね?だよね?だよね? ← 強い希望

2017/07/12 (Wed) 18:45 | EDIT | REPLY |   

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