カラダノキオク ~ユンホさん家の日常~ その2

  30, 2017 11:18

















カラダノキオク・表紙
























【 PM8:00.】










俺の膝に、頭を預けて寝転ぶユノ。

ユノの耳かきに夢中になる、俺。

テーブルの上には、飲みかけのウィスキーグラス。

酔っているからか、耳をほじるのがなんだか楽しくなってきて、俺はくすくすと笑った。

「おい、突き刺すなよ?」

笑う俺を横目で見ながら、ユノが顔をしかめる。

そんな表情さえも愛しく思えて、俺はまた笑った。






こんな風に、堂々と膝枕をして耳かきできるのも、ふたりきりだから。
ドフンが家に居た頃は、いつもタイミングを読んでいた。
ドフンが風呂に行っている間だけ、とか、眠ったあとにこっそり、とか。
今年の春から、大学に入学したドフンは一人暮らしを始めた。
今、このマンションには俺とユノだけが暮らしている。
ドフンの目を気にしなくていいのは、楽ではあるがとても寂しい。
ドフンは、ユノとユノの元嫁さんとの間に出来た子供で、血の繋がりは無いが、ろくに言葉も出ない子供の頃からずっと見てきた。
俺の、大事な大事な家族である。
酔いが寂しさを紛らしてくれる気がして、今はありがたかった。
ユノも、きっと同じ心境なんじゃないかな?
まさにそんなことを考えていた時、ユノが言った。

「――――そういやこの間、ドフンにスーツ貸しだんだけどよ」
「うん」
「手渡した直後から、あいつ消臭スプレーかけまくりやがってさ」
「はは!」
「俺・・・・・・そんなに臭うか?」

ユノが、少し自信なさげに俺に問いかける。

「なに、心配してんの?」
「職場の奴がさぁ・・・・・・加齢臭がするらしくて、最近娘に敬遠されてるんだと。俺も、もしかするとそうなのかと思って」

ユノ・・・・・・
加齢臭なんて気にするようになったんだな。
最早40過ぎだもんな。
まあ、俺も似たようなもんだけど。
ユノからオヤジ臭なんてしない。
ドフンが気にしてるのは、きっと煙草の匂いだろう。
ユノはキツい銘柄を好むから(それでも、若い頃より随分本数は減ったが)。
敢えてそれを言わずに、俺はユノの耳元に鼻を寄せた。

「どれどれ、俺が確かめてあげよう」
「・・・・・・何してんだ?」
「ココから臭うっていうじゃん。加齢臭って」

耳の後ろを鼻先で突きながら喋ると、ユノはピクリと身体を震わせた。
スンスンと、鼻を鳴らして俺は呟く。

「・・・・・・あ!」
「・・・・・・・・・・・・」

ユノが、俺の次の一言を気にしている。
可愛い。

「うん。ユノの匂いがする」
「はぁ?」

へらへら笑う俺を、ユノが睨みつける。

「おいコラ、からかうんじゃねぇよ」

暫くすると、ユノも頬を緩めて笑った。
歳を重ねるごとに、ユノは柔らかくなっていく気がする。
若い頃は、ちょっと短気尖ってたユノに、散々心をかき乱された。
今はこうして、穏やかで大人の色気を纏ったユノに、静かに心を高ぶらせている。
どちらともなく、顔を寄せ合ってキスをした。
ああ、今夜はきっと体を重ねる事になる。なんとなく、そう分かる。
なだらかに減退していた欲求が、静かに目覚める気配がする。

「チャンミン・・・・・・」
「ン・・・・・・」

顔を包むユノの手に俺も手を重ね、キスに応えながらボンヤリ考える。
ユノは性欲が強く長持ちだから、今夜は沢山鳴かされる事だろう。
まぁいい。
疲れは溜まるものの、明日は休みだし。
体の心配や先の事より、快感得たさが上回る。
ユノが、首筋に噛みついてきて。

「あ、ぁっ・・・・・・」

俺の、快感のスイッチを押した。























【 AM8:00.】










PiPiPiPiPi・・・・・・
出勤用にセットしたアラームが、また鳴っている。
眠気を突き破る機械音に起こされ、一度止めてはまた眠る。
それを繰り返したあと、今度は携帯が着信を告げた。
半分寝ぼけたまま、俺は呟く。

「だっれだよもー・・・・・・こんな早い時間に・・・・・・」

頭上の棚に手を伸ばし、携帯を握ったあと、

「はい・・・・・・もしもし・・・・・・?」

俺は、画面も確認せずに電話に出た。

『・・・・・・・・・おはようございます』

んん?
どっかで聞いた声だ。

『近くに・・・・・・ユノ、居ますか?ちょっと用事があって』
「ああ・・・・・・はい」

俺は隣で眠るユノの身体を叩いた。

「ユノ」
「んー・・・・・・」
「ユノ起きろ。ユノってば」
「んだよ」
「・・・・・・嫁さんから電話」
「あー。サンキュ」

ユノは携帯を受け取ると、俺の頬にチュッとキスをひとつ落としてベッドを出ていった。
寝室に、一人になった瞬間。

「・・・・・・だああーーーーーっ俺何やってんの!?なんで電話に出てんだよ!!」

寝ぼけていたせいで、嫁さんからの電話だったというのにユノの携帯を取ってしまった。
それも、あんなに掠れた寝起きの声で。
直ぐユノに代わったし、一緒に寝てんの絶対バレた・・・・・・

「あぁああ、俺のバカバカバカ・・・・・・!」

嫁さんには、そういう事情極力見せないように気を付けてきたのに。
交際15年目にしてこの失態・・・・・・
暫くの間、俺は立ち直れなかった。
























【 数日後。AM10:00.】










「ただいまーー」
「おかえり」

週末。
ドフンが帰ってきて、俺は笑顔で迎え入れた。

「寂しかったぞードフン」
「ふっ。ほんとに?」
「なんでだよ。ほんとだっつうの!」

嬉しさあまって、ドフンをぎゅうっと抱きしめる。
ドフンも、俺を抱き返しながらくすくす笑う。

「チャンミン、早く離れないと父さんが妬くよ」
「そりゃあ無いだろ」
「全く・・・・・・分かってないな」

ドフンは呆れたように笑うと、俺の身体を離してリビングに向かった。




「朝ご飯食べた?」
「うん。母さんのとこに泊まって、そのまま来たから」
「・・・・・・そっか」

“母さん”というワードに、つい敏感に反応してしまう。
昔よりだいぶ免疫はついたが、この間の件があるからドキッとした。
ドフンは、手にもっていた紙袋を俺に差し出して言った。

「これ、母さんが持ってけって。クッキーだってさ。近所で美味くて有名らしい」
「あ、ああ。どうも」
「『この間は邪魔してゴメンなさい』って、伝言も預かった」
「えっ・・・・・」

うわ、気遣わした。

「ど、どんな顔してた?怒ってた?」
「いいや?笑ってた」
「・・・・・・・・・・・・」

笑ってたって、心境はどうなんだろう?
そんなこと、ドフンに聞いても分かる訳ない。
動揺しまくりの俺に、ドフンは笑みを零しながら穏やかな口調で言う。

「チャンミン、母さんは多分大丈夫だよ」
「え?」
「父さんには、まったく気持ち残って無いから安心しなよ」

ドフンは、嫁さんのこと俺よりずっと分かってる。
見透かされた感はあるが、その言葉を聞いて少しホッとした。

「ってか、ふたりとも隠してるつもりが結構バレてるからね。おもちゃ事件然り。ばあちゃんが巻き込み食らったやつな」
「お前、それ蒸し返すなって!」
「ははっ。ネタならいっぱいあるけど?他には―――」
「ストップ」
「むっ」

嫁さんに貰ったクッキーを、ドフンの口に突っ込んだ。
こいつ最近、毒が出てきた気がする。
まあ、可愛いのに変わりは無いんだけど。
ドフンが大学に入学し、一人暮らし始めたのをきっかけに、養育費や生活費の話題でユノと嫁さんが話す機会が増えた。
この前みたいに急に電話が来ることはよくある。
気を付けなければ・・・・・・






「おお、ドフン。帰ってたんか」

遅めに起床したユノが、寝室から出てきた。

「ただいま、父さん」
「ん。おかえり」

腹をぽりぽり掻いて、くああーっとあくびをひとつ。
嫁さんが持ってきたクッキーを見て

「お、うまそう」

ユノは早速一枚頬張り、口をもぐもぐと動かした。

「こら、クッキーが床に落ちてる。すぐ汚すんだからもぉ」
「・・・・・・ん?」
「あ、動くな!いま拾うから」

俺の言った通りユノは大人しくじっとして、その間に足元の屑を拾った。

「口にもついてるし。朝飯出すから早く顔洗ってきて」

口もとのクッキーを取ってやり、洗面所へと促す。

「ん。さんきゅ」

当たり前のように、俺の唇にキスをしてユノは去っていった。

「ちょ!」

ふっざけんなよ、ドフンが居るのに!!
赤くなって硬直していると

「あーだいじょぶだいじょぶ。慣れてるから。俺のことはお構いなく」

ドフンは特に驚く様子も無く、いつも通り笑っている。
ドフンも嫁さんもどっしりして、ユノはマイペース過ぎるし、こんなに動揺してる俺が馬鹿みたいに思えてくる。

「・・・・・・あ、あいつ子供かよって。な?」

照れ隠しにそう言うと

「いや、どっちもどっちかな。チャンミンも世話焼き過ぎだし」
「・・・・・・そうか?」

ドフンは、頬杖を付いてやけに大人びた顔で笑っている。

「まぁ、親の仲が良くて、息子はなによりです」

それを聞いて、俺はまた赤面した。













END




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久々に書いたー
気付いたら、最後の作品から一年くらい経ちそうでした。
ユノ、昔のカリスマが薄らいで可愛いおっさんになり始めている!
でもユノが40歳になったら絶対カッコイイと思いませんか♡
それで性欲強いとかもう最強だわ~~
勿論チャンミンもカッコいいと思います!
最近昔の作品の単発ストーリーがよく浮かぶ。

ミンホで新しく小説書き始めたいんですけど(俺の兄貴がこんなに可愛いワケが無い!って題名にしようかと考え中)、ぐっと我慢・・・・・・
常闇とミンホ漫画を完結させるように頑張らねば~~
っていうか、昔のように闇が深い話が最近あまり浮かばないんですよねー。
久々にがっつり暗いの書きたいと思ったり。

あ、ガイシに行ってらっしゃる皆様、お気をつけて!
楽しんで来てくださいね♪♪

コメントにも、しっかり目を通しております。




 
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Comment 3

陽  

わぁぃ( ´ω` )/

シェアハウスに続いてカラダノキオク!!
大好きなシリーズが続いてまさに盆と正月気分です(笑)。
ユンホさん、本編では短気な怖いキャラだったのにすっかり安泰期ですね♪
ドフンも独り立ちして2人の時間を楽しめてますね。
いい感じに2人は年をとるんだろうなって想像できます。
加齢臭なんて無縁ですよね(笑)。
今の2人もめちゃくちゃかっこいいし、過去の2人も素敵だし、未来の2人も絶対いい男!
年は取りたくないけど未来の2人には早く会いたい(。ノω<。)

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michipon  

ほっこり( ˊ̱˂˃ˋ̱ )

あんにょん。
大人なのに子供っぽくて、チャミにお世話されてるユノさんがとーっても可愛いです。ドフン君や嫁さんの言動を気にしながらもキッチリ妻の役目を果たしているチャミも健気だわぁ。ドフン君目線のお話も読んでみたいです。TILL2ガイシ行って来ましたー。めちゃめちゃ楽しかったです♬

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723621mam  

休日の午後ののんびりタイムに、
なんとも穏やかな「カラダノキオク」
なんか築きあげてきた時間が感じられて、いいね。

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