宅配オトコの恋 3






宅配オトコの恋縮小/表紙

















下ろされたジッパーから、チラリと薄い布が覗いた。

「ふぅん。地味な色履いてるね」

店長のパンツの色はグレーだった。
確かに、普段の印象から奇抜な色を纏うイメージは無い。
俺がひとこと発する度に、店長はビクリとして動きを止める。
緊張感ある店長とは対照的に、俺はアルコールが完全に回ったのか、怠さに襲われていた。
最近はこんなこと無かったのに。
フラフラとベッドに向かうと、仰向けに寝転んだ。

「チャンミン・・・・・・?」
「ごめん、少し休まして・・・・・・」

半ば寝ぼけた状態で、言喋り続ける。

「・・・・・・そういや、男同士でヤる方法知ってんだ?」
「それは、まあ・・・・・・ちょっとは」
「へえー。店長が受けてくれんでしょ?」
「えっ・・・・・・」
「俺、足開くとか無理」

暗い照明の下、視線が絡む。
拒否という選択肢は与えないつもりで、ふるえる瞳をじっと見つめていた。
先に視線を反らしたのは店長だった。
消え入りそうな小さな声で

「いいよ・・・・・・」

そう答えた。 
俺は満足げに口を緩めながら、自身の欲望に手を伸ばした。
ところが、刺激を加えても一向に立ち上がらない。
怠さが勝って、勃起とは程遠い状態だ。
覚醒と眠りの狭間で、俺はぼそぼそと言葉を発した。

「あー・・・・・・駄目だ、起たない」
「え!?・・・・・・も、もしかして・・・・・・俺が、男・・・・・・だから?」
「さぁ・・・・・・どうかな・・・・・・」

ボンヤリと霞んだ視界に、泣きそうな店長の顔が映る。
ああ、ヤバい。
苛め過ぎたかも。

「練習して、慣らしといてよ。また今度シよう・・・・・・」

そう呟いたのを最後に、俺は目を閉じた。
店長を心配しつつも、結局迫り来る睡魔にのまれてしまった。

それから静かな嗚咽が聞こえたのは、きっと夢じゃない。












翌朝。
目を覚ますと、ベッドに店長の姿は無かった。
昨晩の事は、所々不鮮明だが覚えている。
セックスする前提で店長に迫ったが、酔い過ぎて起たずにそのまま寝てしまったのだ。
俺が最後に記憶していたのは、丸い瞳いっぱいに涙を溜めた、店長の顔。
眠る直前には、小さな泣き声を聞いた気がする。
眠気が晴れて、俺は勢いよく起き上がった。
部屋に店長の気配は無く、シャワールームやトイレを見てもやはり姿は無い。
静かな部屋に突っ立っていると、じわじわと嫌な予感が込み上げてくる。
携帯から店長に電話をかけたが、電源が入っていないか電波が届かない、とアナウンスが流れた。

「何処、行った・・・・・・」












恋人を泣かせることはしょっちゅうあったが、今回はまずいと思った。
頭に焼き付いた店長の泣き顔が、俺の不安を煽る。
今までの女達のように「まあいいか」と放っとく事は出来なかった。
家を知らないので、取り合えず勤め先のコンビニへ足を運んだ。

「ちっす」
「あら、シムくんじゃない。どうしたの?」

レジにはカンさんが立っていた。

「あの・・・・・・店長の家教えて欲しいんですけど」
「どうして?」
「用事があるんだけど、電話繋がらなくて」
「店長なら、家に行っても多分居ないわよ」
「え?・・・・・・何で」

カンさんの話によると、店の業務で分からない事があり、店長に来て貰おうと今朝電話を掛けたらしいが、用事があって出掛けるからと断られたそうだ。

「かなり切羽詰まった感じだったから、きっと大事な用事なんじゃない?」

何だよ。
大事な用事って・・・・・・

「何処行ったか、聞いてないですか」
「いいえ?」
「そうですか・・・・・・」

つうか、カンさんの電話には出て俺の電話には出ないのかよ。
避けられてるのか?
一応家に行ってインターホンを押してみたが、反応は無かった。
やはり外出しているのか、もしくは家に居るが、俺に会うのが嫌で出てこないかどちらかだろう。
しかめっ面で真剣に考え混んでいたが、ふと馬鹿らしくなった。
幻滅されたら、潔く縁を切る。
いつもそうして来ただろ?
店長が俺を避けてるなら、わざわざ追いかける必要なんて・・・・・・
その時、携帯が着信を告げた。
画面に表示されていた名前は―――

「・・・・・・もしもし」
『チャンミン?朝、電話に出られなくてごめんね。ちょっと、色々調べものしてて』

店長が自分から電話をかけて来たことに驚いた。
話口調からも、拒否られてる感じはしない。

「今どこ?店長の家に来たんだけど」
『え?そうなの?』
「で、何処?」
『・・・・・・・・・二丁目』
「は?何で」
『俺、チャンミンの為に頑張るから。期待してて』
「ちょ、何?どういうこと?」

その時、電話の向こうから男の声が聞こえてきた。
店長の声では無い、知らない男の声が。

『ほら、お兄さん行くよ。何時まで電話してんの』
『あ、すいません』

そいつ、誰!?
行くって何だよ。何処へ?

「店長、何考えっ・・・・・・」
『ごめんチャンミン、後でね!』
「おい!」

そこで、一方的に通話は切られてしまった。
聞こえてくるのは、無機質な機械音だけ。
嫌な予感しかしない。
二丁目はゲイが集まることで有名な場所だ。
そんな所で他の男と会って、俺の為に頑張るって・・・・・
昨晩の記憶の一部が、頭を過る。
俺は眠る直前、確かこう言った。

―――――『練習して、慣らしといて』

まさか、男に抱かれるつもりか?
俺の為に・・・・・

「あんの馬鹿っ」

急いで車に戻ると、ハンドルを握って急発進させた。
運転の合間に何度電話を掛けても、店長は電話に出ない。
苛々と焦燥ばかりが募ってゆく。
舌打ちすると、強くハンドルを叩いた。
あの柔らかに笑う店長が、優しさの塊みたいな人が、なんで何処の誰かも分からない男に抱かれなきゃならないんだ。
そんなこと、あってたまるか。







二丁目に入ると、道路脇に一旦路駐した。
車の中から店長の姿を探しつつ、再び電話を掛ける。
コール音が鳴り続け、諦めかけたその時。

『さっきからしつこいなぁ。誰?』

店長では無いが、ある男が電話に出た。
声で分かる。先ほど電話に紛れていた声の主と同じだ。
相手は複数では無く、恐らく一人。

「電話の持ち主はどこだ」
『今一緒に居るけど?もうケツ掘っちゃっていい?』
「待て!本人に変わってくれ」
『えーどうしよっかなー。折角良いムードだったのに』

面白そうに話す男に殺意を覚え、携帯を強く握りしめたその時、叫び声が聞こえてきた。

『―――助けてチャンミンッ・・・・・・駅裏の公衆トイレに居る!』
「店長!?」

ぷつり、通話が途切れた。
路駐していたのは駅前通り。
車の外へ飛び出して、駅の裏側へ全力疾走した。
小さな公園の脇、木が繁った殆んど人目に付かない場所に、公衆トイレを見つけた。
中へ入ると、奥の個室に人影を見付けて駆け寄った。
そこに居たのは、マスクで顔を覆った黒服の男。
そして、両手を縛られ、便座に腰掛けた店長だった。

「店長!!」
「チャンミンッ」

涙ぐみながら、店長が俺の名前を呼ぶ。
取り合えず、服はしっかり纏っていて、未だ手は付けられて無さそうだ・・・・・・

「あーあ、見つかっちゃった」

黒服の男が、つまらなそうに呟いた。

「その人俺の恋人だから。手、出さないでくれ」

俺が低い声でそう言うと、男は両手を上げ、肩を竦めながら答えた。

「恋人が居るなんて聞いてないし。ネットで知り合って、セックスの練習がしたいって言うから相手してあげただけ。俺は何も悪くない」

男の言葉を聞いて、店長が声を上げた。

「でも、優しくしてくれるって言った!こんなとこで、手縛ってとか、約束が違う!」
「あんた馬鹿?二丁目はそういう場所なの。んな可愛い顔でセックス相手募集したら、手酷くされるの当たり前だよ。集団レイプだって有り得る。彼氏もさあ、ちゃんと見張っとけよ。この人無防備過ぎるぞ」

男は溜め息をつくと、出口へ向かった。

「間違っても通報とか止めろよ?引き下がって貰って有難いくらいに思っとけ」
「・・・・・・・・・・・・」

去っていく男を、俺は追いかけなかった。
男を責めたとこで、どうにもならない。
これは俺と店長、二人の問題だから。
つーか、俺が悪いんだけど。
店長もだいぶブッ飛んでるが・・・・・・
泣きべそかいてる店長の前にしゃがみこんで、手を縛っていた縄をほどいた。

「ったく、何やってんだよ・・・・・・」
「男同士でやったこと無いから・・・・・・プロの人に、教わろうと思って」

店長が、鼻を啜りながら小さな声で呟く。
俺はつい、溜め息を漏らした。

「プロって・・・・・・ゲイはアスリートか何かかよ?」
「だってっ・・・・・・チャンミンのこと、満足させたかったんだもん!」

丸い瞳がくしゃっと縮まり、ぽろぽろと涙が溢れてゆく。
店長はいつも、全力で俺と向き合ってる。
でも俺は、からかうみたいに接しては無責任な言動で傷つけてきた。
“俺が悪かった。ごめん“
反省していたし、そんな風に謝るつもりで口を開いた。
でも、その前に店長が言った。

「・・・・・・・・・・・・別れよう、チャンミン」
「・・・・・・何で」
「チャンミンに、これ以上迷惑かけたくない」
「別に思って無いけど。迷惑とか」

店長は首を振ると、更に泣き顔になって訴えた。

「ほんとは・・・・・・チャンミンが、俺を好きじゃないのが辛い・・・・・・だからっ・・・・・・」

ああ。
こんな事言わせるとか、俺最悪。
気の利いた優しい言葉、ひと言でもかけられれば良いのに。

「そうやって泣けば・・・・・・寄ってくる奴はウザい程居るんだろうな」
「え・・・・・・?」
「俺は店長を傷つけた悪者になって・・・・・・優しくしてくれる他の奴とめでたく付き合うつもりか」
「何言ってんの?チャンミン」

店長が、若干引き気味で俺を見ている。
俺って、本気になると結構面倒臭いタイプらしい。

「そんなの、許さない」

気付けば、強い力で店長の手首を握りしめていた。

「何で、何でそんなこと言うの?」

ふるえる瞳と視線が絡んで、じっと見つめ合ったまま、俺は想いを告げた。

「・・・・・・好きだから」
「・・・・・・嘘」

やっぱりな。
一度芽生えた不信感は、そう簡単に拭えはしない。
植え付けたのが俺なら、責任を持って取り除こうじゃないか。

「じゃあ証明する。行こ」
「い、行くって何処へ?」
「ホテルに決まってるだろ」
「ええっ・・・・・・」

ぽかんと空いた唇に優しくキスをして、俺はにっこりと笑った。

「勿論・・・・・・セックスの練習も、俺としかしちゃ駄目だ」

顔を真っ赤に染めた店長・・・・・・
いや「ユンホさん」は、そりゃもう最高に可愛かった。










































つづく。






気に入って頂けたら、ポチッとお願いします(*^^*)
   ↓

     

人気ブログランキングへ


にほんブログ村



相変わらずチャンミンがひどい。
店長のこといじめて傷付けて、ようやく気持ちを自覚しました。
っていうか作者がユノをいじめたい病です。はは。
店長も必死すぎて思考がオカシイよね(笑)
でもはってん場でケツを狙われるユノって興奮しません?

あ、幕張から始まり福岡で終わったフィルムコンの旅ですが、後でレポ書きたいと思います。
コメ返も溜めてしまってすみませーん!
ちゃんと返しますからね。
遅いけど!













 
スポンサーサイト

4 Comments

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/03/25 (Sat) 17:13 | EDIT | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/03/25 (Sat) 11:15 | EDIT | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/03/25 (Sat) 10:18 | EDIT | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/03/25 (Sat) 01:11 | EDIT | REPLY |   

Leave a comment