宅配オトコの恋 2

  12, 2017 22:00













宅配オトコの恋縮小/表紙















「シムさん、お疲れさまでした!」
「お疲れさまでした。たまには遊びに来てね」

ジョッキを手に、スタッフが俺に声をかける。

「どうも。お世話になりました」

ジョッキを合わせると、俺は何杯目かのビールをグビグビと飲み込んだ。
今日は特に酒が進む。
日中あまり水分を取らずに働いて、仕事のあと直行したので喉が乾いていた。



今夜、店のスタッフが集まる飲み会に俺も招かれていた。
元々飲む予定だったらしいが、ついでに俺の送別会もやろうってことで声がかかったのだ。
俺を誘ったのは店長じゃない。
副店長のカンさんだ。

『送別会って・・・・・・俺、ただの宅配っすけど』
『いいじゃない!話せる人、スタッフに何人かいるでしょ?それにね、店長が一番寂しがってんのよ。来てあげて』

その店長に、俺は最終勤務日に告られて、今お試しで付き合ってる訳だが・・・・・・
それを誰も知らない。
飲み会が始まってから一時間以上経っていて、今は各々席を移動して雑談している。
店長の姿を探すと、端の席で一人のスタッフと話し込んでいた。
俺の居る席から近いので、特に意識しなくてもその会話が聞こえてくる。

「ドンへ、失恋したって?」
「・・・・・・誰から聞いたんですか?それ」
「んー・・・誰だっけ?噂でチラッと」
「まあ、そうですけど」
「だから最近元気無いのかぁ。バッカだなぁ、相手のコ。こんな格好よくて真面目なのに、魅力に気付かないなんて」

店長は優しく微笑み、顔を覗き込んでそいつの頭を撫でた。
バグして、あやすような手つきで背中を叩いている。
スキンシップが多いのは知ってたけど、ほんと、躊躇い無く触るんだな。
俺にはその感覚が理解出来ない。
他人との触れ合いは極力避けたい、真逆のタイプだから。

「・・・・・・店長、俺の恋応援してくれます?」
「もっちろん」
「ほんとかなぁ」

ドンへとかいう男は、眉を下げて笑うと店長の肩に頭を預けた。
男同士でベタベタ触り過ぎだろ・・・・・・
家族だとしてもこれは無い。
俺は引き気味でその光景を見ていた。
店長は、仲の良い相手には当たり前のように触る。
だが俺に触れた事は無い。
缶コーヒーを渡す時でさえ、指先まで神経使って、偶然触れた時にはあからさまにビクついてる。
いつもそんな感じだ。
店長と話していた男が、席を立った。

「俺・・・・・・やっぱ今日は帰ります」

その一言に、周囲から一斉に文句が飛んだ。

「はぁ!?今更帰るなよ!」
「空気読めてないぞーっ!」
「帰るって決めたら帰ります。お疲れした」

男は俺の前まで来ると、小さく頭を下げて侘びた。

「スミマセン、途中でこんな」
「いえ」
「今までお疲れ様でした。あっちでも、頑張って」
「ども・・・・・・」

そして俺は、男が去り際、こっちを振り返って睨むのを確かに見た。
俺、嫌われてるっぽいな。
あいつとは挨拶を交わす程度で、関わりも薄かった筈だが・・・・・・

「チャンミン」

その声に振り返ると、店長がビール瓶を持って、いつの間にか隣に居た。

「注ごうか?」
「・・・・・・ありがと」

空になったジョッキを差し出すと、店長は丁寧にビールを注いだ。
俺達の間にあるのは、やはり埋まらない距離。
店長が俺に触らないのは恐らく、気持ちを自覚しているからこそ。
目が合った途端、店長は少し狼狽えてから、照れ臭そうに笑った。

「今までお疲れさま。チャンミンが此処に来て・・・・・・知り合えて、良かった」
「・・・・・・そう」

この人の想いは、きっと本物だ。
じゃあ、俺はどうなんだ?
はっきりと言えるものが、何もない。
真っ直ぐな瞳を見て、久々に心が痛むのを感じた。
湧いた罪悪感を消し去ろうと、俺はビールを一気に流し込んだ。












飲み会が終わり、解散した後。
家が同じ方向の俺と店長は、人も疎らなな夜道を並んで歩いた。
終電は無くなり、帰る手段はタクシーのみ。
しかし週末のせいか、通り過ぎるタクシーは予約車ばかりでなかなかつかまらない。

「全部駄目だね・・・・・・。歩くにも遠いし、どうしよっか」

困り顔で呟く店長の横で、俺はチッと舌打ちした。
こうして道路にただ突っ立ってるくらいなら、はやく何処かで休みたい・・・・・・
暫く歩いて気付いたが、思った以上に酒が効いてる。

「ねえ、もうそこら辺のホテル入らない?」
「えっ・・・・・・」
「帰れないでしょ、今夜は」
「・・・・・・・・・・・・」
「明日仕事?」
「・・・・・・休み」
「じゃあいいじゃん」
「・・・・・・・・・・・・」

歩き出した俺の後ろを、店長は戸惑いながらも着いて来る。
気まずそうなその理由に気付いたのは、ホテルに入って部屋を取ったあと、ベッドを目の前にした時だった。
ああ、そうか・・・・・・
俺らは今、仮にも恋人同士。
ホテルって、そういうことする場所だもんな。
あんま考えて無かった。

「先にシャワー借りていい?」
「う、うん」

交代で風呂場を使ったあとも、店長は緊張しっぱなしだった。
表情硬いし、話すのは返事するのが精一杯らしく、ろくに会話も続かない。
声をかける度身体はビクつくし、ソファーの端に座ったまま、カッチコチで動く気配も無い。
一方的に意識し過ぎだろ・・・・・・
セックスする気なんて全く無かったけど、手出さないなら出さないで落ち込むんじゃないの?

「・・・・・・そんなに襲って欲しい?」
「え・・・・・・・・・・・・」
「つーか、店長って実はやらしいの?人にベタベタ触るじゃん」
「そ、そんな・・・・・・何言ってんの、チャンミン・・・・・・」

ひきつった笑み。
動揺、怯えを含んだその表情は、余計に俺を刺激する。
―――――もっと苛めたい。
喋り始めたら、自制機能が働いていないことに気付いた。
ああ俺、だいぶ酔ってんな。
スキンシップが多い事をネタにして、店長を凄くイジりたい気分だ。
今の俺は、この人が他人に簡単に触ることを根に持っている。

「実はベッドの上だと凄いとか・・・・・・?ケツの方って開拓済み?」
「な、に・・・・・・・・・言・・・・・・・・・・」

ついに、店長の顔から笑顔が消えた。
手をぎゅっと握りしめて俯き、何も喋らなくなってしまった。
店長が座っているソファに、俺も腰を下ろした。
ビクッと身体が跳ねても、俺はお構いなしに続けた。

「ねえ・・・・・・・・・・・・脱いで?」

耳元に口を寄せ、低い声でそう囁くと、店長の顔は面白いほど真っ赤に染まった。
潤んだ丸い瞳、うっすら開いた口が、小さく震えている。
今にも泣き出しそうな顔で、唇を噛みしめ、俺を見ると―――――
店長は、自らベルトに手をかけた。










つづく



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テーマはエロと言いつつ、本番無しでスミマセン(-_-;)
いずれはあのキスマーク事件に繋がる訳ですが、もうちょっと待ってくださいね。
とりあえず、店長をいじめられたので作者は満足です♪



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