僕だけのマスター

  28, 2017 09:29


















PSY-悪を葬る者-・表紙
































142004nszhlqnastho0tln~2[230]

#1.僕だけのマスター











夜が近づき、街は今日も、浅葱色に染まりゆく。
ぽつぽつと灯りが点り始めた街道を、買い物袋をぶら下げながら僕は歩く。
今日は、マスターの好きなもつ鍋にしよう。
徹夜続きで疲れてるだろうから。

「喜んでくれるかなー」

口元を緩めていると、すぐ傍から女性の叫び声が聞こえた。

「きゃあああっ、誰かーーーっ!」

女性は、口元を覆いながら取り乱している。
目の前の横断歩道を見ると、ボールを持った小さな男の子が一人。
数秒後には、男の子は確実に車と接触してしまうだろう。

「ふっ!」

僕は地面をひと蹴りすると、横断歩道に飛び出した。
買い物袋を宙に高く放り投げ、両手を空にする。
男の子の体を素早く抱き上げると、突っ込んできた車体の前方に、背中を丸めて転がるように乗り上げた。
車が停車してから、男の子を抱えたまま着地する。
丁度上から買い物袋が落ちてきて、腕に通して受け止めた。

「ナイスキャッチ、僕」

歩道へ戻ると、男の子は腕から抜け出し、女性の元へ駆けていった。

「よかった!!駄目じゃない、飛び出しちゃ」
「ごめんなさい」

抱き合う親子を見て、笑みがこぼれる。
母親が、僕に向かって頭を下げた。

「ほんとうに、ありがとうございました」
「いえいえ。お怪我が無くて良かったです」

周りには知らぬ間にギャラリーが出来ていた。

「カッコいいぜ、兄ちゃん!」
「素敵ーーー!!!」
「あんた一体何者だ!プロのスタントマンか!?」

寄せられる拍手喝采に、気分が高まる。

「いやぁ。それ程でも」

浮かれてニヤついていたが、手に持った買い物袋を見て思い出した。
こんなことしてる場合じゃない。
早く帰って夕飯を作らないと。

「すみません、失礼します!」

事務所に向かって、僕は走り出した。





















「チャンミン、飯まだー?」
「もうすぐ出来るから」
「お!サラダうまそー」

皿に伸びた手を、僕はパシッと叩いた。

「つまみ食い禁止」
「んだよ、ケチ!」

テーブルに並んだ夕飯を、仕事から帰った仲間達が涎を垂らしながら見ている。
ここは、“ルブルム”という組織の事務所のひとつだ。
ルブルムは『悪を滅する組織』として存在しているが、主に公に扱えない案件を引き受ける、表社会では知られる事の無い闇組織である。
一見小さな事務所に見える、この建物。
近隣の住民には探偵事務所として認知されているが、本当はそうじゃない。
地下には、50人のメンバーが暮らせる程の膨大なスペースが設けられている。
此処は僕の仕事場であり、家でもある。
メンバーも皆此処で暮らしている。寮のようなものだ。
僕の主な役割は、家事全般とメンバーの体調管理だ。
僕のようなポジションは『マネージャー』と呼ばれ、各メンバーに一人ずつ付くことになっている。

「超腹減った!頂きます」
「頂きまーす!」

号令がかかった途端、ものすごい勢いで料理が減っていく。
男ばかりだから仕方無い。
料理を頬張るメンバーの中に、僕のパートナーの姿は無い。

「キュヒョン、マスターは?」
「まだ寝てる。3徹だからなぁ。いくら寝ても寝足りないんだろ」

起こさない方が良いかな。
でも、栄養を取らないと体力がつかないし・・・・・・
悩んでいると、後ろから大食いのミノの声が飛んできた。

「チャンミニヒョン!このもつ鍋食べていい?超うまそう!」
「駄目!それはマスターのだから」

ミノの傍まで行くと、僕は鍋を取り上げた。

「出たよー。特別扱い」
「リーダーんこと大好きだもんな」
「少しくらい食わせてやれよ」

僕とミノのやりとりを見て、皆口々に文句を言う。
少しだけって食わせると、大体8割は無くなるじゃないか。
ミノに限らないけど。

「駄目なものは駄目」
「ええ―」

今のうちに食べないと、何時誰に盗み食いされるか分からない。

「マスター起こしてくる。もつ鍋見張ってて、ミノ」

食堂を出ようとすると、ミノが顔を寄せて耳打ちしてきた。

「チャンミニヒョン・・・・・・その呼び方だけど」
「え?」
「“マスター”って呼び方」
「それがどうかした?」
「リーダーがね、たまには“お父さん”って呼んで欲しいって。そう言ってたよ?」
「・・・・・・ふうん」

我等がリーダーのことを“マスター”と呼ぶのは僕だけだ。
彼に仕える身として、忠誠心を込めてそう呼んでいる。
僕だけの、マスター。

「“お父さん”なんて・・・・・・絶対呼びたくない」
「え?」
「・・・・・・いいや。教えてくれてありがとう。ミノ」
 
僕は、マスターが眠っている二階へ向かった。



年季の入った木製の扉を、コンコンと二回ノックする。

「マスター?・・・・・・入りますよ」

そっと扉を開けると、暗い部屋に光が差し込んで、ベッドの上まで一直線に伸びた。
照らされたマスターは目を閉じていて、まだ眠りの中だ。
ベッドの端に腰かけ、僕はマスターの寝顔を見つめた。

「ほんとうに、お疲れさまです」

目にかかった前髪を掬うと、綺麗な寝顔が露になって思わずドキッとする。
この人は、僕らの事務所、第一捜査班を率いるリーダー、チョン・ユンホ。
まだ10歳にも満たなかった当時、身寄りの無かった僕に手を差し伸べてくれた人。
事件のショックのあまり、PTSDになり、失声した僕を救ってくれた人。
そして―――――僕の父親である。
元々他人だけど、養子として僕はこの人に貰われたのだ。

「お父さん・・・・・・」

声をかけても、マスターはまだ、眠ったまま。

「って、呼んで欲しいそうですね」

でも・・・・・・

「僕はあなたのこと・・・・・・」

父親だなんて、一度も―――――

「・・・・・・・・・・・・」

想いを口に出しちゃいけない。
きっと、困らせるだけだから。
この切なさ、僕はいつまで抱え続ければいい?

「・・・・・・チャンミナ」

瞳がうっすらと開いて、掠れた声が、僕の名前を呼んだ。

「うわっ」

ぬっと伸びてきた腕に、身体を引き寄せられた。

「あー・・・・・・あったかいなぁ」
「ちょっ、マスター離してっ」
「んだよー。家族だろ?拒否るなよ」
「いいから早く起きてください!」

身体を叩いて強く拒んでも、マスターは自分のペースを崩さない。

「おはようのチューは?」

眉を下げて、口を尖らせながらそんなお願いをする。

「寝ぼけてんですか?いま夜ですけど」
「え?そうだっけ。まあ、いいじゃん」
「嫌です」
「あっちでは皆してくれたのに・・・・・・」
「いたしません!」

そういえば、この間まで2週間NYに研修に行ってたっけ。
沢山のキスを受け止めるマスターが、容易に想像出来てしまう。
そして、その原因はきっと文化の違いだけじゃない。
この天然タラシめ・・・・・・

「じゃあ、俺からしちゃお~」

両手で顔を固定された、その直後。
チュッとリップ音を鳴らして、マスターは僕の唇を奪った。

「あー、幸せな目覚めだな!」
「・・・・・・っ」

衝撃のあまり、僕は身動きも取れない。
この人どうかしてる。
スキンシップにも、限度ってものが有るだろう!
幸せそうに微笑むマスターを、僕はじっと睨んだ。

「僕、お父さんなんて大っ嫌いです!!!」

腹の底から絞り出したような、物凄く低い声だった。
その晩。
もつ鍋はマスターではなく、ミノの胃袋の中に納まったのだった。













「反抗期かなぁ・・・・・・。俺、どうすればいい?」

電話で相談する声を物陰から聞いて、僕は溜息をついた。
そうじゃない。
僕の気持ち、全然分かってないんだから。
やっぱり貴方は、僕の父親にはなれない。
僕もそれを、望んではいない。
父親と息子だったら、結ばれる望みが零だから。

「チャンミナに嫌われたら、俺生きてけないよ」

しょげた背中を見ていると、段々可哀そうに思えてくる。

「またな。ああ、聞いてくれてありがとう」

仕方ない。
僕は自分が傷つくより、貴方が傷つく方が辛いんだ。

「・・・・・・何話してたんですか?」

マスターが通話を切ったあと、後ろから声をかけた。

「―――チャンミナ」
「もつ鍋、明日の夜、また作ってあげようか」
「ああ・・・・・・って、もう怒って無いのか?」

丸い瞳で問いかけるマスターは、まるで子供のよう。
仕事中のカリスマ男はどこへやら。

「怒ってません」

にっこり笑って、僕は言った。

「やっぱり・・・・・・お父さんのこと、好きだから」
「チャンミナ!!」

笑顔半分、泣き顔半分。
そんな情けない表情をして、マスターが僕を抱きしめる。
厚い背中に、僕も手を回した。
貴方は知らない。
今僕が言った『好き』の中に、恋心が潜んでいることを。









また続けてあげる。家族ごっこ。
鈍いところも含めて、貴方のこと愛してるから。











To be continue……





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こんにちゃんみん。
新しい連載始めてんじゃねーよ。
常闇はいつ書くんだ?ってね・・・・・・(-_-)
ラスト考えてはいるんですよ。ちゃんと。
でも新しい話が浮かんで、それが書き易いと常闇サボっちゃうんですよ。
みなさま、会報見ました?見開きミンホっぽいですよね♡
チャンミン、ユノにそんなおっ☆いくっつける必要あったの?
フォトフレームの二人はホミンっぽい。
チャンミンの嫁感半端ないです。
一緒にいると、自然と夫婦みたいな空気を纏うのかもね♡

本日中にコメ返しまーす!


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NB(のぶ)  

723621mamさま


早速コメントどうもです!
ディナーでおっしゃった通り、コメントと一緒にマムさまのお顔が浮かんできますよ♡
うふふ~
いつか楽になるかも(#^.^#)?
もうしばらくお待ちください♪
次回はふたりの超能力のお話です。

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723621mam  

く、、、くるしい、、、
なんだ、このもどかしい感じ。
はやくラクにさせてちょーーだい♡

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