Humanoid ~この恋は永遠に~ 18



行き先も男の正体もよく解らぬまま、僕は黒いバンに乗せられた。
暫く走ると近郊から外れ、窓の外を流れる街の光は少なくなった。
無言で運転する隣の男を、僕はじっと見つめた。
男は僕の名前やバイト先を知っていた。
恐らく個人情報をなんらかのルートで入手したのだろう。
そして、このタイミングで会わせたい奴がいるという。
個人情報の元は、ユノ・ユノの利用者データ。
会わせたい奴は、ユノではないだろうか。
男がユノと関係している可能性にかけた。
危険な行動だと解っていたが、もし最悪な事態になっても構わないと思った。
ユノが居なくなった世界に、それほど執着はなかったから。

「正体を教えてくれませんか。あなたは誰なのか」
「理工学研究所に勤めている。humanoidを扱ってる研究所だ」
「humanoid……」

予感が、確信に変わった。

「……ユノを、知っているんですか?」
「ああ」

男はユノと関係しているに違いない。
僕はこれからユノに会えるということか。
もし会えたとしても、ユノは起動しているのだろうか。
人間の形かどうかも解らない。
期待と不安で、手が震えた。
緊張を逃がすように息を吐いて、僕は窓の外へ視線を向けた。



バンは大きな白色の建物が建つ敷地へ入った。
建物はかなり大きく敷地も広いが、周囲は草木で覆われ他には何も見当たらない。
建物の規模とは対照的に、閉鎖的な印象を受けた。
裏側の駐車場へ着くと、僕は車から降ろされた。

「こっちだ」

僕は男の後を追い、通用口の扉から中へと入った。
目の前には、蛍光灯がぽつぽつと設置された薄暗い廊下が続いている。
暫く歩くと、男は右手にあるドアを開き部屋へ入った。
青白い光が部屋の中をうっすらと照らし出している。
ビーカーやシリンジ、一瞬ヒヤリとしてしまうような人体模型、その他にも様々な道具がところ狭しと置いてある。
男はデスクの椅子にかかっていた白衣を羽織ると、ゆっくりと僕の方を振り返った。
薄暗い中、精巧な顔がぼんやりと白く浮き上がり、より冷やかな印象を受ける。

「ここは俺の研究室だ。humanoidの試作もやってるが、研究が主だ」

傍のデスクに置かれた箱に手を伸ばし、大事そうに撫でながら男は言った。

「シム・チャンミン。俺の可愛いロボットを大事に扱ってくれたな。感謝する」
「あなたは……ユノの製作者?」
「そうだ。俺がユノを造った」

男は箱に手をかけ、開封した。

「ユノ……!」

箱の中で、僕と最後に別れたあの時のままのユノが眠っていた。

「ユノッ、ユノッ!」

近寄って声をかけるが反応はない。
ユノは起動していなかった。

「まさか……こんな事になるとは思わなかった。ユノはお前に会えず寂しがっている。このままでは衰弱していくだろう。力を貸してくれ」
「ユノの心が解るんですか?起動していないのに」
「解る」

ユノの胸の上をゆっくりとなぞり、男は信じがたい台詞を吐いた。

「心は別にあるからだ」
「どういう事、ですか」
「こっちへ来い」

男の後を追って部屋の奥へ進むと、パーテーションで仕切られたスペースが現れた。
その中へゆっくり足を踏み入れると、ベッドの上で誰かが眠っているのが見えた。
速くなる鼓動を抑えるように、僕は胸の上で拳を握り締めた。
ベッドの前まで移動し、眠る人物の顔を目にした途端僕は言葉を失った。

「なん……で……」

その人物は、ユノと全く同じ顔をしていたからだ。
しかし、髪色は暗く長さもユノより短い。
身体や頬はげっそりと痩せ細り、右腕には点滴が繋がれている。
動揺する僕の横で、男はベッドで眠る人物に声をかけた。

「ユノ、起きろ」
「ユノって……」

一体、どういう事なんだ。
僕は混乱しながら、ユノとそっくりのその顔を見つめた。

「会いたがっていたろ。連れてきてやった」

男の声に、閉じられていた瞳がうっすらと開いた。
天井を見上げていた視線は、やがて僕の方へゆっくりと移された。
目が合った途端、虚ろだった瞳は大きく見開かれた。

「チャン……ミン?」

瞳にたちまち涙が溜まり、ぽろぽろと頬の上をこぼれ落ちた。
別れる直前の、ユノの泣き顔と完全に重なった。
髪型や体型が違っていても、僕を呼ぶ声も、綺麗な泣き顔も、紛れもなくユノだった。

「ユノなのか……?」

僕の問いかけに微笑むとまた涙を流し、その人は言った。

「そうだ。チャンミン……」









◇◇◇



コメント頂いた方々ありがとうございます!
返信は今暫くお待ちください。
この展開ってありなのか......?ビクビクしとります。
今日はガイシですね。
皆さん、離れていても二人を応援しましょーねー(^^)





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