僕は何度も恋をする ~サイレント ジェラシー~










僕は何度も恋をする2
















「チャンミナ、料理上手くなったね」

定位置のカウンター席に座った、ユノヒョンが笑う。
美味しそうにカルボナーラを頬張るのを見て、僕も口を緩めた。
僕の勤務時間は17時までだが、ユノヒョンが仕事終わりに訪れる日は時間を延長して店に出ている。
料理を作って食べて貰って、こうして話すのが楽しみなのだ。
元々調理に興味はあったけど、実は、ユノヒョンに誉められたくて頑張るうちに腕が上がった・・・・・・という事実は、恥ずかしいので伝えていない。
ユノヒョンが財布を開こうとするのを、僕は首を振って拒んだ。

「でも・・・・・・」
「い、要らない」

後ろで作業している父さんが、ユノヒョンに向かって叫んだ。

「良いってよ!代わりに今度旨い酒でも持って来い」
「あっ・・・・・・わっかりました!」

店内が賑やかだから聞こえるように声を張ったんだろうけど、ユノヒョンはビビり気味で即答した。
父さんのフォローは有り難かった。
ユノヒョンは“お客さん”じゃない。
我が儘を言えば“家族”みたいな認識でいて欲しくて、お金を払われると何だか悲しい。
ユノヒョンは、財布を仕舞うと僕に向かって微笑んだ。

「じゃあ・・・・・・お言葉に甘えて、御馳走さま」
「うん」
「今度、デートの時に奢るな」

耳元でコッソリ囁かれて、嬉しさにまた、口が緩む。

「ん」

笑う僕を見て、ユノヒョンも笑みを深くする。
車で帰るユノヒョンを外まで見送り、見えなくなるまで手を振った。
土日が来れば、また一緒に過ごせる。
だけど、平日でもこうして顔を合わせられるのが嬉しい。
記憶を無くす時があっても、ゆっくりと幸せを積み重ねられてる、それを実感出来る今が幸せだ。
そう・・・・・・
あの日まで、僕の心は穏やかだった。





















何時ものように、平日のディナーの時間、ユノヒョンに料理を出して雑談していた時のこと。
店に女性がふたり入って来て、そのうちのひとりが、こちらに視線を向けたまま足を止めた。

「ユノ・・・・・・さん?」

その声にユノヒョンは振り返り、女性の顔を見たとたん、笑顔を浮かべた。

「お前・・・・・・ソヨン?」
「やっぱり、ユノさん!」

知り合いかな?
ソヨンさんという女性は、にこにこと笑いながらユノヒョンの近くにやって来た。
ユノヒョンが、彼女を指差しながら僕に紹介する。

「あ・・・・・・こいつ、前の職場で仲良かった奴の妹」
「どうも、こんばんは」

彼女は、ふわふわとウェーブした柔らかそうな髪を耳にかけ、僕に頭を下げた。

「どうも・・・・・・」

顔を上げたとたん香る、あまい香り。
明るく可愛らしい笑顔。
淡いピンク色のブラウスから覗く、細く華奢な腕。
それらにドキドキして、ユノヒョンの隣に並ぶと、まるで美男美女カップルみたいに見えてしまって・・・・・・
ちょっと、落ち込んだ。

「隣、良いですか?」
「友達と一緒に来たんだろ?良いの?」

彼女は、隣の空いた席を叩いて「こっちこっち!」と友達を呼んだ。

「だって、久々に会えて嬉しいんですもん。良いでしょ?」

ユノヒョンは何も返さず、静かに笑うだけだ。
積極的な彼女に、僕は嫌な予感がしてる。
判り切っていたような気もするけど、彼女を見ているうちにユノヒョンに気があるのが伝わって来た。
話題は、ユノヒョンの知り合いだというお兄さんのことや過去の思い出話で、だけど彼女はよく笑い、さりげなくユノヒョンの肩や手に触れた。
身体を傾けて来た彼女を、ユノヒョンは肩を支えて優しく引き離したけど、やっぱり見ているのは辛くて・・・・・・

「・・・・・・僕、お皿洗って来ます」

ユノヒョンの視線に気付いていながら、僕は食器を手に、逃げるようにキッチンに移動した。

「はぁ・・・・・・」

ため息をつきながら、ゴシゴシと、必要以上に力を入れて食器を洗う。
思いをぶつける場所が、僕はこんなところしか無い。
本当は「ユノヒョンに触らないで!」と割り込みたいけど、出来る訳無い。
それに、女性であり、僕に無いものを沢山持ってる彼女には敵わない気がして・・・・・・
考えれば考えるほど、虚しくなった。
ホールに戻ると、ユノヒョンはコートを羽織り帰り支度をしていた。

「あれ・・・・・・帰るの?」
「うん。今日遅番なんだ。会社抜けて来たから、また戻んなきゃ」
「そっか・・・・・・」

帰ってゆくユノヒョンを、外に出て今日も見送った。
何時もと違うのは、隣に彼女が居ること。

「ユノさん、格好いいですよね」
「・・・・・・・・・・・・」
「彼女居るのかなぁ。店員さん、仲良さげでしたけど知ってます?」
「・・・・・・・・・・・・さぁ」

恋人、居ますよ。
貴方の目の前に。
心の中では、強気でそう呟いてみる。

「また来よ」
「・・・・・・・・・・・・」
「ご飯美味しかったです。ご馳走さまでした」

彼女はにっこりと笑って去って行き、僕は脱力してその場にしゃがみ込んだ。

「も・・・・・・疲れたよぉ」

心が折れそうだ・・・・・・
ユノヒョンは今日、会社を抜けて来たので、一時間もしないうちに帰った。
彼女と話したのは、そのうちの20分にも満たない短い時間。
たったそれだけで、僕は寿命が縮まるんじゃないかって程、疲れてしまった。
ユノヒョンは凄く格好いいし、付き合いたがる女性は山程居るに違いない。
今更だけど、どうして僕はずっと平気で居られたんだろう?
浮かんで来るのは、日記を見つめて泣いた日々。
自分の心や、ユノヒョンと向き合うのに必死だった。
そしてユノヒョンは、僕の全てを逃げずに受け止めてくれた。
揺るぎない愛に触れて、僕は何時だってユノヒョンの“特別”だと思えた。
じゃあ、今は・・・・・・?
ユノヒョンは相変わらず優しいし、僕も記憶が戻り始めていて、以前より幸せな筈。
でも、心に余裕が生まれて第三者が入り込む隙が出来た。
たったそれだけの事なのに、心に落ちた不安は、シミになったまま消えない。
放っておいても、どんどん広がってゆく気がして・・・・・・

ああ――――――
今夜の記憶、消えないかな・・・・・・

はっとして、僕は頭をぶんぶんと振った。
今、何てこと・・・・・・

「さいってーだ・・・・・・!」

明るく輝く月の下、僕は縮こまり、ぎゅうっと頭を抱えた。















金曜の夜。
ユノヒョンが、また夕飯を食べに来てくれた。
今日のメニューは、父さんから伝授されたハヤシライス。

「んー、んまい!」

ユノヒョンが、小さい頬をご飯で膨らましながら微笑んでいる。
可愛らしいユノヒョンが、涙でボンヤリとぼやける。
貴方は、僕に沢山の思い出をくれたのに・・・・・・
何度だって、貴方を忘れた僕と向き合ってくれたのに・・・・・・
僕はあんな事で、また記憶を無くしたいなんて・・・・・・
ごめんなさい、ごめんなさい。
あからさまにどんよりしてる自覚はあったけど、取り繕う余裕も無かった。

「チ、チャンミナ?どうし・・・・・・」
「うっ・・・・・・ヒ、ヒョンッ・・・・・・」
「ええっ?」

泣いてしまった僕を、ユノヒョンは戸惑いながら見つめている。
母さんが、呆れながら笑って言った。

「この子、数日前からずっとこうなのよ」
「そうなんですか?」
「一人で空回りして落ち込むの、昔から得意なの。いつも知らないうちに元気になるから、放っておいても大丈夫よ」
「はぁ・・・・・・」

言ってることはだいたい合ってるけど、今回は立ち直るまで、時間かかるかも・・・・・・
隅で鼻をかんでいると

「こんばんはー!」

聞き覚えのある高い声が、来客を知らせた。









目の前で、ソヨンさんが笑顔で話している。
ユノヒョンは、静かに笑いながら相槌をうっている。
僕は、黙ってそれを見ている。
二人を見守るのは嫌だけど、二人きりにするのはもっと嫌だ。
おとなしく引き下がるなんて出来ない。
泣き虫の癖に、僕は結構頑固なのだ。
ソヨンさんは、最近新しく出来たテーマパークの話をしている。
携帯で写真を検索し、楽しそうに笑いながら言った。

「夜になるとライトアップしてるんだって。綺麗でしょ?」
「だね」
「今度連れてってくださいよー」

ユノヒョンの顔を覗き込み、可愛らしい顔でソヨンさんは言う。
カウンターテーブルに乗ったユノヒョンの腕を、両手で揺すった。
ああ・・・・・・触らないで!
言葉に出せないぶん、ひどく顔が歪む。
平気なフリなんて出来る訳ない。
直ぐにソヨンさんの手をどけて、ユノヒョンは少し、低めのトーンで言った。

「―――ごめん。俺、恋人居るから」
「え・・・・・・そうなんですか?」
「うん。・・・・・・な?チャンミナ」

ユノヒョンが、微笑みながら僕をじっと見つめる。
ど、同意求められた・・・・・・
思いがけない行動、優しい眼差しに、心がじんと熱くなる。
ドキドキする、ときめく、嬉しい。
どうしよう・・・・・・
僕・・・・・・この人のこと、凄く好きだ。
前から分かってた事だけど、再確認。
戸惑いと照れを隠せないまま、頬が緩むのを抑えようと、口をきゅっと結ぶ。
ユノヒョンは、そんな僕をにこにこ笑いながら見ている。

「なーんだ。ショックー」

ソヨンさんが、残念そうに呟く。
先程まで彼女のことをあんなに恐れていたのに、今は全く気にならなくて・・・・・・
ただ、ユノヒョンだけ見つめてた。









「今度、誰かいい人居たら紹介して下さいね!さようなら」

ソヨンさんは、笑顔で手を振り帰って行った。

「元気だなぁ、相変わらず」

遠ざかる背中を見て、ユノヒョンがくすりと笑う。
積極的なとこには驚かされたけど、さばさばして活発で、いい人そうだ。

「さて、俺も帰ろうかな」

僕に向き直って、ユノヒョンは言う。
まだ胸が熱くて、冷めなくて、このまま解散するのは寂しいと思ってしまう。
伝えたいな。今の、僕のこの気持ち。
ユノヒョンのコートの裾を、握り締めた。

「・・・・・・ん?」
「・・・・・・・・・・・・」

あたりを見渡して人が居ないのを確認すると、ユノヒョンにそっとキスをした。
唇だと、勇気がいるから頬に。
ユノヒョンは、凄く驚いた顔をしてる。

「び、吃驚した。どうしたの・・・・・・?」
「・・・・・・ごめんなさい」
「いや、謝ることは全然無いけど」
「・・・・・・嬉しかったら」
「何が?」
「こ、断ってくれて、だよ!」
「・・・・・・・・・もしかして、『恋人居るから』ってやつ?」

こくりと頷いた僕を見て、ユノヒョンは、眉を下げて笑った。

「なんだ、あれのことか。だって当たり前じゃん。断るの」
「それは、そうだけどっ・・・・・・」

僕のこの気持ちは、どうすれば伝わるだろう。

「だって、ソヨンさんに始めて会った来た時から、ユノヒョン好きなのよく分かって・・・・・・距離近いし、いっぱい触るし・・・・・・凄く嫌だし辛くてっ・・・・・・だから嬉しかったの。ちゃんと断ってくれて・・・・・・・」

言い終えてから、冷静になった僕は口を覆った。
気持ちを伝えようと必死で、醜い本音まで打ち明けてしまった事に今更気付いた。
僕のバカ・・・・・・
だけど、ユノヒョンは嬉しそうに「そっかぁ」と呟いた。

「結構、好きなんだ・・・・・・?俺のこと」

こんな質問って・・・・・・
聞かなくても知ってるでしょ?と思う。
でも、問われたら応えないと。
そんな使命感に駆られて

「・・・・・・・・・スキ・・・・・・です」

消え入りそうな声だけど、人気の無い静かな空気のなか、僕のそれは確かにユノヒョンに伝わった。
動揺しているせいで敬語になっちゃうし、恥ずかしくて堪らない。
前髪の奥の、切れ長の瞳が僕をとらえる。
細まる瞳とゆっくり持ち上がる唇が、暗闇の中、街灯の小さな明かりで浮かび上がりドキッとした。
伸びてきた手に腕を引かれ、距離が縮まる。
静かに微笑んだまま、低いハスキーボイスでユノヒョンは言った。

「今日・・・・・これから、うち来ない?」
「え・・・・・・」
「っていうか・・・・・・来て」

うわ・・・・・・
顔も体も、全身の温度がまた上昇する。
何時も穏やかで優しいユノヒョンが 、ちょっと強引だ。
今日はもう仕事は終わりで、明日から連休か待ってる。

「・・・・・・き、着替えてくる」
「うん。行っておいで」

僕は一旦、泊まる準備をするため家に戻った。
煩い程の鼓動は少しおさまったけど、ユノヒョンの元に戻ると、再び騒ぎだ出したのだった。


















「チャンミナ・・・・・・俺のこと、好き?」
「・・・・・・ン」
「ちゃんと言って欲しいな。さっきみたいに」
「う・・・・・・」
「ねえ、好き?」
「・・・・・・す、すきっ・・・・・・」
「うん・・・・・・俺も、大好き」
「ユノヒョ・・・・・・」
「今、挿れてあげるね」
「ア・・・・・・あぁっ・・・・・・」

エッチの最中、ユノヒョンは少しねちっこかった。
散々僕を焦らしたあと、「好き」を言うとやっと繋がってくれた。
怒ってるんじゃなくむしろ機嫌が良いって分かってたし、ユノヒョンの新しい一面を見れた気がして嫌では無かった。

「ヒョンッ・・・・・・あ、やぁっ・・・・・・!」
「背中に、爪立てていいよ・・・・・・」
「んっ」

逞しい胴に、遠慮無くしがみつく。
僕はユノヒョンの背中に、ユノヒョンは僕の首や胸に愛の跡を刻む。
だけど、明日もこの記憶が残っていることを願う。
ソヨンさんがユノヒョンにアプローチしてたことも、ユノヒョンが僕を大切にしてくれたから、今は忘れたくないって思う。
僕ってほんと現金・・・・・・
だけど、結局は此処に戻って来るんだと思う。
全て
“忘れたくない”
という答えに。
ユノヒョンが、どんな時も僕を大事に想ってくれるから。



「ユノヒョン・・・・・・」
「ん?」
「好き・・・・・・」

今度は、頬っぺたじゃなく、唇にキスをした。









END



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おはようございます。
連休くれと愚痴が漏れそうな朝です。
まあ一日ゆっくり休みます(^.^)
今回も、僕は毎日~ の番外編です。
テーマは“記憶が戻ったら困ること”です。
ついこないだまでは、記憶が戻ればいいって思ってたのになんで・・・・・・?
あるきっかけ酷くで落ち込んで、でも割と簡単に解決したりとか・・・・・・
そういう葛藤描くの大好きです♡
少女時代のソヨンちゃん出してみました。
彼女可愛いですよね~!好きな顔です。
多分悪いコでは無いです(作中の話)。
ユノはチャンミナが可愛すぎて、ちょっと雄を見せ始めてますね!
もっとやっちゃえ~

あ!皆様ジヘちゃんの結婚式の画像はご覧になりましたか?
NBもう、幸せな気持ちでいっぱいです。
久々の再会が身内の結婚式→確実に家族と同等である
みたいな思考が浮かび、ジヘちゃんは勿論おめでたいんですけど、同じくらい二人の関係もお祝いしたくなりました。
ユノの隣で、笑ってちょっかい出してるチャンミンが滅茶苦茶愛おしい。
本当の弟になればいいのに!と思ってしまった。
あのあとどうしたかな。
シウォンもいたから、知り合い同士で飲んだりしたんだろうか。
久々に仲間達で楽しく過ごしてほしいです。
ああ私、リアルに関してはつまんないくらいBL妄想が発動しないわ。
決してNGでは無いのですが。


さて、もう11月ですからこの話題を・・・
今年もまた年賀状書こうと思います。
去年はユノチャミ一人だけも書きましたが、なんか寂しいのでホミンオンリーにしようかと。
ほしい人居るかなぁ。
取り敢えず募ってみます(^.^)


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6 Comments

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2016/11/09 (Wed) 17:44 | EDIT | REPLY |   

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2016/11/07 (Mon) 21:15 | EDIT | REPLY |   

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2016/11/07 (Mon) 13:17 | EDIT | REPLY |   

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2016/11/06 (Sun) 22:53 | EDIT | REPLY |   

723621mam  

【二人を見守るのは嫌だけど、 〜 僕は結構がんこなのだ。】
ここの3行、凄くいいです。
弱いだけではない、強い意志を感じるチャンミン。
さすが男のコ!!
でもユノには弱いチャミンが好き♡

2016/11/06 (Sun) 17:13 | EDIT | REPLY |   

陽  

No title

ヤキモチチャンミン可愛い(´Д`)♡
好きってベッドで言わすユノさん萌えますねぇ…
私も言わされたいです(笑)

ジへちゃんの結婚式でホミンちゃん見れて嬉しかったですねヾ(*´∀`*)ノキャッキャ
ご両親に挟まれるホミンちゃん、テーブルで手を握るホミンちゃん…ホミン不足のわたしは泡を吹きそうになりましたよ~
出かける電車の中で見て、このまま引き返して家でこもって追いツイしたい衝動にかられました(笑)
ユノが結婚式のことチャンミンに何て連絡したのかな~とか妄想がとまらなかったです。

NBさん年賀状されるんですか(″ノдノ)
厚かましながら交換したいです\( *´•ω•`*)/♡*。

2016/11/06 (Sun) 09:20 | EDIT | REPLY |   

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