常闇の魚は愛を知るか? 13










常闇



















※ミンホの性描写があります。
  そんなに濃くはありませんが閲覧は自己責任で。









チャンミンの意識は、これ迄通り話せるほど清明に回復した。
病室を訪れた俺は、あの日からずっと気になっていた事を口にした。

「お前、何で俺を庇った」

病室の白い壁を背景に、ベッドに凭れたチャンミンがうっすら笑う。

「言ったでしょ・・・・・・“愛のあかし”だって」
「ちっとも嬉しくねぇっての。俺が喜ぶとでも思ったのか?これでお前が死んだら、どんなに胸くそ悪かったか・・・・・・」

チャンミンは無表情になって、そっぽを向いた。

「・・・・・・ありがとうって、笑って欲しかったのに」
「・・・・・・おい」

ベッドに腰かけ、声をかけても、チャンミンは振り向かない。
拗ねたのか。
生死の世界をさ迷って、無事に意識が戻ったとたん説教されたらそりゃ気分は悪いだろう。
でも、笑って『ありがとう』なんて絶対に言いたくない。

「・・・・・・あの時」

チャンミンが、ポツリと呟いた。

「僕のことなんか、何も考えて無かった。ユノが死ぬって・・・・・・消えるって思ったら怖くて・・・・・・勝手に身体が動いてた」

出会った頃は命の価値もよく分からなかったチャンミンが、俺の為に自己犠牲を躊躇わなかった。
確かにそれは愛の証明だ。
複雑な過去や想いを絡め取り、再び心に芽生えた、チャンミンの愛。
俺以外には向けるのか・・・・・・その可能性は零に近いような、真っ直ぐで、悲しい愛。

「・・・・・・もし俺が撃たれて死んでたら、お前どうしてた」

その問いかけに、何の迷いもなく、チャンミンはこう答えた。

「僕も死んでた。ユノが居なきゃつまらないから」
「・・・・・・・・・・・・」
「ユノが居るから、戻って来た」

そう言って、白い顔に微笑を浮かべる。
途端に胸が締め付けられ、瞳にじわりと涙が浮かぶ。
俺の頬に手を添え、ゆっくりと首元まで移動させて、チャンミンは言った。

「ユノ・・・・・・死ぬ時は一緒だよ」
「・・・・・・・・・・・・」

頭に浮かぶのは、俺を慕ってくれる大切な仲間・・・・・・
ジョンヒョンやオニュ、親父、母さんや、幹部の人達だ。
もしその瞬間が来たら俺は、チャンミンの手を取るのだろうか。
愛を確信できる場所が、俺には沢山ある。
だけど、チャンミンにはきっとひとつだけ。
そう、俺だけ。
それなら俺は、大切な仲間を悲しませたとしても―――

「・・・・・・仕方ねぇな。付き合ってやるか。坊っちゃんの我が儘に」

俺がそう言って笑うと、チャンミンは笑みを深めた。
そのあと直ぐに口づけられて、俺はゆっくりと目を閉じた。
チャンミンの世界に、どんどん引きずり込まれていく。
深くなる口づけと反して、薄れゆく仲間たちの姿。
大切な存在を置き去りにしても、譲れない想いがある。
後悔は、しない。
細い首筋を引き寄せて、温く柔らかい唇を貪った。









意識が戻ってから一ヶ月が過ぎた頃。
傷口も全身状態も落ち着いて、チャンミンの退院が決まった。
あんな事があったというのに、チャンミンは以前よりも、どこか重荷の取れたような表情をしている。
部屋を訪れると決まってキスをせがむ、そんなチャンミンが、表面上は面倒そうにしながら本当はとても愛おしかった。

―――『状態が安定するまでは、チャンミンの側に居てやってくれ』

言葉通り、会長は今後チャンミンと俺を切り離すつもりだろう。
若頭の俺が、トップが下した結論を覆すなど不可能に近いこと。
何か明確な作戦が有るわけでも無いのに、絶対傍を離れはしない。そんな根拠の無い自信ばかりが、日に日に大きくなってゆく。
チャンミンのことを身体だけでかいガキの様だとよく思うが、俺も段々と似てきた。
組織のルールを十二分に理解した大人が、愛情をコントロール出来ず今更周りに歯向かおうだなんて・・・・・・
全くおかしい。
















退院日当日。
準備と手続きは俺とシウォンで済ませ、チャンミンを連れて病院を出た。

「坊っちゃん、しっかり歩けますか?」

チャンミンは、ちらりと視線を投げるだけでその問いには答えない。
脚は以前よりも更に細くなったが、ゆっくりと、ふらつくことなく歩いている。
太陽の下へ出ると、顔をしかめてボソリと呟いた。

「・・・・・・シウォン、車」
「今回してきますから」

にっこりと笑って、シウォンは去ってゆく。
チャンミンの退院が嬉しいのだろう。
無邪気な子供時代も、母親を亡くしてからの辛い時代も、長い間傍で見守って来た兄貴のような立場だ。
きっと組織の中では、一番にチャンミンを思っている。
チャンミンはシウォンの背中を見つめ、顔をしかめたままじっと突っ立っている。

「まだ苦手なのかよ?日射し」
「今日は強すぎる。身体がおかしくなる」

俺は溜め息をつき、呆れ気味で笑った。

「我が儘言うなよ。これから営業すんだぞお前は。日射しくらい我慢出来ないでどうすんだっ」

屋根の外へ身体を押し出すと、チャンミンはフラフラと前に踏み出した。

「と、溶けるっ」
「ばっか、大丈夫だって」

再び、屋根の下へ逃げ込もうとする身体をつかまえて強引に歩かせる。
いやいやするその姿はまるでガキのようだ。
何だかんだ可愛くて世話を焼きたくなる。
ふと、視線を上げた時だった。
黒いバンが数台、小さなスリップ音を立てながら、俺達の前に停まった。
これはシウォンの車じゃない。
じわり、嫌な予感が込み上げる。
次々と車のドアから姿を現したのは、如月組会長、幹部数人、そして・・・・・・

「親父・・・・・・ジョンヒョン・・・・・・」

チャンミンが、縮まった背中をゆっくりと上げた。
無表情で、じっと会長を・・・・・・父親の顔をとらえている。
会長が、低い声で命じた。

「迎えに来てやったぞチャンミン。お前は如月へ、そして、ユンホ君は紅蓮へ帰る。さあ、おいで」

今度は、親父が口を開く。

「お前は坊っちゃんに傷を負わせたからな。教育係としては失格ってことだ」
「帰りましょう、兄貴」

俺もチャンミンも、この場から動かずに、ただ沈黙を貫く。
離れたくない・・・・・・
チャンミンが、俺を見つめる。
微笑を浮かべていて、瞳は静かに震えていた。

「ごめんね、ユノ」
「え・・・・・・?」

突然、チャンミンが俺の首をホールドした。
こめかみに、ヒヤリと冷たい物体が当てられる。
―――拳銃だ。
会長が、眉を寄せながら問いかける。

「チャンミン、なんの真似だ?」
「ユノは僕のだ。渡さない」
「遊びに付き合ってる暇は無いんだ。ユンホ君を離しなさい」

会長がそう発した直後。
激しい爆発音が、頭上に響き渡った。
チャンミンが、空に向けて発砲したのだ。

「僕は本気だ」

低く唸るように、チャンミンは言う。
こんなにも感情を露にするのは、初めてかも知れない。

「ユノが手に入らないなら、生きてる意味無い。でも誰にも渡したくない。だから、ユノを殺して僕も死ぬ」

俺を引き寄せる腕は、小刻みに震えている。
絶対服従してきた父親への反抗。
そこから生まれる恐怖に襲われながら、意思を貫こうとする姿は人間味を感じさせる。
胸が、焼けそうなほど熱くて、痛い。

「チャンミン、ユンホ君を離せ」
「嫌だ!!約束したんだ・・・・・・僕はユノと一緒に死ぬって。僕達はひとつだ。離さない、絶対・・・・・・」

チャンミン・・・・・・
首を固定する腕に、手を添えてぎゅっと握りしめる。

「無責任な・・・・・・。そんな事を言ったのか、ユンホ」

親父が、睨みを効かせて俺を問いただす。
無責任?
責任感でチャンミンと居る時期なんて、とっくに過ぎた。
それに、約束を放棄する気も更々無い。

「全部、俺の意思だ・・・・・・。チャンミンの傍、離れないって決めた・・・・・・。俺も、本気だ」

親父が目を瞑り、深い溜め息をつく。
ジョンヒョンは、俺がチャンミンへの想いを告白した時と同じ様に、辛そうに顔を歪めながら視線を背けている。

「全く・・・・・・困った馬鹿息子だな」

会長が、諦めを含んだ声色でそう呟いた。

「そこまで言うなら、ユンホ君に世話役を続けて貰おうじゃないか。ただしチャンミン、お前が組織の人間として使いもんになることが条件だ。今のままでは、お前はただの塵と同等。もし成果を出せなかった時は・・・・・・相応の罰を下すから覚悟しておけ」

会長はそう言い残すと、車へ乗り込んだ。
姿を消す最後まで、チャンミンを睨みながら。

「ユンホ、坊っちゃんを送り届けたら紅蓮へ戻れ。話がある」

親父もそう告げると、ジョンヒョンと共にバンへ乗り込み、去って行った。
一部始終を見守っていたシウォンが、俺達のもとへやって来た。

「良かった・・・・・・!どうなる事かと」
「・・・・・・・・・・・・・」

チャンミンが、俺の身体を解放する。
拳銃をジャケットの中へ仕舞うと、何事も無かったかのように、何時もの平坦な口調で言った。

「帰ろう、ユノ」

だが、俺の手を握りしめるその力強さが、揺るがぬ意思を物語っている。
“死ぬ時は二人一緒”
交わした契りは、チャンミンの頭にしっかりと刻まれている。
それを貫く為に、俺はお前を立派に育て上げてみせる。
親父たちに認めさせる。
俺とお前の実力も、関係も・・・・・・









如月の本部へ着くと、俺はシウォンと解散し、チャンミンを部屋まで送り届けた。

「今日はゆっくり休め。また来る」

そう告げる俺の手を、チャンミンは直ぐ様捕らえる。

「やだ」
「チャンミン」
「セックスして。今すぐ」

やっぱりそう来るか・・・・・・
予想が綺麗に的中したことに、呆れながら溜め息を漏らす。

「お前元気な。まだ傷完治してないんだぞ。やめとけ」
「痛いの我慢する」
「駄目だ」
「苦しい。ちょうだい・・・・・・ユノ」

ハァ、と息を荒くして、チャンミンは俺の服を脱がせにかかる。
暫く病院の中に居て禁欲生活が続いたせいか、だいぶ溜め込んでるようだ。
首根っこに噛み付くチャンミンを、背中を叩いて宥めてやる。

「わーかったって。落ち着け」
「は、むぅ・・・・・・」

身体を引っぺがすと、ベッドまで誘導した。
座らせた状態で胸をとん、と押すと、細い身体はいとも簡単に倒れた。

「全部俺がしてやるから・・・・・・イイコにしてな」

シャツを脱ぎ捨て、上半身裸になると、チャンミンの胴に跨がった。
ワイシャツのボタンを外して、胸を露にする。
塞がったばかりの傷痕・・・・・・・“愛の証”に、優しく口づけ、舌でちろちろと舐めてやる。

「ん・・・・・・ぁ・・・・・・」

チャンミンが、小さく喘いだ。

「痛い?それとも気持ち善いか」
「どっちも・・・・・・」

素直な返答にくすりと笑いながら、傷痕にまた口づける。
これは、チャンミンが俺を愛している証。

「お前が俺のだって・・・・・・印だな」

チャンミンが、微笑みながら俺の手を握る。

「もっと・・・・・・僕を、ユノのにして」

潤んだ瞳でねだられて、熱がぐんと育ち、欲情する。
俺だって、本当はずっとお前が欲しかった。
意識が戻るまでは、命の無事を祈ることに必死だったけど・・・・・・
チャンミンのズボンから、既に上を向いたぺニスを取り出した。
口に含んでしゃぶると、そこだけ別の生き物みたいにぴくぴくと震える。

「ん、あぁ・・・・・・ユ、ノ・・・・・・」
「気持ち善いだろ」
「ン・・・・・・」

愛しい。
素直な身体も、心も。
その危うさや、未熟さも全部。

「もう・・・・・・挿れるぞ」

ケツに指を入れて、簡単に解しただけで、俺はチャンミンを迎え入れた。

「くぅ、あ、あぁっ・・・・・・」
「ユ、ノッ」
「はっ・・・・・・やっぱ・・・・・・久々で直ぐは痛てぇ、な・・・・・・」
「でも・・・・・・キモチイイよ」
「もっと・・・・・・善くしてやる」

ベッドに手をついて、チャンミンを見下ろしながら夢中で腰を振る。
下っ腹に力を入れてやると、チャンミンは眉を潜めて小さな悲鳴を漏らした。
膨脹した熱にいいとこを抉られて、俺も知らぬ間に高い声で鳴いていた。

「んっ、ぁ、あぁっ・・・・・・チャン、ミンッ・・・・・・」

手を握り、視線を絡ませ合って、ただ快感を追いかける。
無防備で弱い姿をさらけ出し、優しさを与え合う。
薄暗い部屋が、二人だけの世界に変わってゆく。



俺達は、そうーーー
深海でひっそりと戯れる、2匹の魚に似ている。









◇◇◇



こんばんわ~
一気に寒くなり、そして鳥取で地震もありましたね。
心配です。
どうか皆さんがご無事でありますように・・・・・・

連載開始からかなり休みましたが、約1年ぶりに常闇再開です。
気持ちを自覚したからか、前よりもふたりの間に流れる雰囲気がソフトのような気がする。
相変わらず暗いですけど。
そして前回までの内容全て見返してないので、設定ミスがあったらどうしようとちょっと不安(笑)
需要そんな無い作品ですけど、NB的に結構気に入ってます。
ので、また好き放題書かせて頂きまする~~

前作のシェアハウス、そして他の作品にも、沢山のコメントや拍手ありがとうございます♡
コメ返は近日中にお返し致します。



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4 Comments

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2016/11/02 (Wed) 21:27 | EDIT | REPLY |   

yamamechin  

ほんとに久々だけど、読み返さなくても頭の中でここまでの話が流れてきたよ。
再開感謝

2016/10/24 (Mon) 01:00 | EDIT | REPLY |   

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2016/10/23 (Sun) 22:46 | EDIT | REPLY |   

723621mam  

確かにこれはパワーいるね。
でも読みたいの。
ありがと。

2016/10/23 (Sun) 22:28 | EDIT | REPLY |   

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