僕は何度も恋をする 8(最終話)
























僕は何度も恋をする2
































チャンミナの穏やかな寝顔を見て、俺は口元を緩めた。
どうか今は休んで欲しい。
毎日、沢山の情報を覚えるのに必死なチャンミナ。
必死だから、自分がとんでもなく大変な作業をしている事に、きっと気付いて居ないんだ。
だから休んで欲しい。
俺はまた、気持ちを伝えるから。
ずっと、傍に居るから・・・・・・
柔らかな髪、丸い頬を、労るように優しく撫でていると、チャンミナが抱えていた日記がストンと落ちた。
偶然、あるページが開いた状態で。
拾い上げようと日記に手を延ばした時、そこに連ねられた文章を見て、俺は動きを止めた。







今日は、ユノさんとドライブに出かけた。

サプライズで夜景を見せてくれた。

凄く綺麗な夜景。

一緒に景色を見ていたら・・・・・・キスをされて、それから、抱きしめられた。

今日始めて会った感覚なのに、全く嫌じゃ無いなんて不思議だ。

思い出すと、今でも身体が熱くなる。

頭はユノさんを忘れてしまっても、心や身体は、何処かで覚えてるのかも・・・・・・?

寝てしまったら、明日になったら・・・・・・僕はまた、ユノさんの事を忘れてしまうのかな。

眠りたくないよ・・・・・・

ユノさんと一緒のまま、時が止まってしまえばいいのに。









初めて、まともにチャンミナの日記を見た。
そこに書かれていたのは、チャンミナの、俺への正直な気持ち。
ある夜、夜景を見にドライブに出掛けた思い出が頭を過る。
あの時お前は、俺を心から受け入れてくれていたのか。
チャンミナの気持ちが嬉しい。
だけど同時に、忘れる事を恐れるチャンミナを思うと、どうしようも無く胸が痛む。
チャンミナが辛いのは、俺を想っているからこそ・・・・・・
喉元まで切迫感が込み上げ、俺は、滲んだ涙がこぼれそうになるのをぐっと堪えた。
それより前のページ、そしてその後のページも、引き込まれるように夢中で読み進めた。
チャンミナが毎朝どんな風に目覚めて、一日を過ごして、何を感じながら眠りに就いていたのか、頭に焼き付けながら。









―――ユノさんに告白された。
ビックリした・・・・・・
けど前から付き合っていたようだし・・・・・・
写真見てると、その頃にちゃんと戻りたいって思う。
一緒に居たら、何か変わるかも知れないし・・・・・・
オーケーしてしまった。
でも、これからどうしよ。
超戸惑う!









―――昼休みと仕事帰り、ユノさんが会いに来た。
職場、うちから近いみたいだ。
前から付き合ってて、改めて付き合うことになったようだ。
どうすればいいか良く分からなくて、話し相手をして終わった。
取り敢えず、今日の感想は・・・・・・
スーツ姿は、男から見ても格好良い。
あとは、笑顔が良い感じ、かな。









―――外は一日雨降りだった。
それでもお客さんは結構入る。
僕のナポリタンは好評だった。
今度はカルボナーラに挑戦したい。
あ・・・・・・
ユノさんは来なかった。
ちょっと残念・・・・・・









―――ユノさんが、ユノヒョンって呼んでって。
前の僕は、そう呼んでたみたい。
少し恥ずかしいけど、ユノさんが嬉しそうだから、今度からはユノヒョンって呼ぼうと思う。
それに・・・・・・少しでも、前の僕に近づきたいから。









―――ユノヒョンとキスした。
ちょっと、濃いやつ。
パニクって、ちゃんと息できなくて、心配かけちゃった・・・・・・
きっと僕、進歩してない。
次にキスされる時も、あたふたするんだろうな。
記憶が無くならなきゃ、こんな事にはならないのに・・・・・・











殆どの記事に、俺のことが書かれている。
そこに並べられた素直で真っ直ぐな言葉達に、心を揺さぶられ、愛しさと切なさが込み上げ、俺はついに涙を流した。
チャンミナは、毎日を懸命に生きていた。
記憶を失う度、必死に俺を愛してくれていた。
その健気で純粋な姿は昔とちっとも変わらなくて、やっぱり、俺の愛したチャンミナだった。
ここにあるのは、確かにチャンミナの“記憶”だ。
頭の中から消えてしまっても、今まで歩んだ軌跡がここに詰まってる。
これは・・・・・・

「俺達二人の、宝物だな・・・・・・」

俺は奮える声で呟き、笑った。

「くっ・・・・・・ふっ・・・・・・」

心と連動して、止めどなく溢れる涙を拭う。
嗚咽が漏れ、咄嗟にチャンミナに視線を投げた。
起こしはしなかっただろうかと。
変わらず、静かに眠り続けるチャンミナを見て安堵する。
まだまだ日記を眺めていたくて、でも泣くのを我慢する自信は無くて、俺は日記を手にそっとリビングを出た。
一階にある店のホールの片隅で、窓際の席に腰掛けながら、月明かりを頼りに日記を読み続けた。
どれだけそうして居たのだろう。
いつの間にか微睡みにのまれ、俺は日記に突っ伏して眠っていた。
最後は、暖かな気持ちを抱えて微笑みながら・・・・・・



俺は幸せ者だな。
大好きなお前に、こんなに何度も愛して貰えるんだから。
ありがとう。
本当にありがとう、チャンミナ・・・・・・



























ふと意識が浮上して、寝ぼけ半分のまま考える。
瞼の外が明るい。
朝?
俺、どこで、何してたんだっけ・・・・・・
突っ伏していた身体をゆっくりと起こして、辺りを見渡す。
誰も居ない広いホールに、窓の外から朝日が差し込んでいる。
まだ薄暗くて、人気も無い。
店の時計は、6時半過ぎを指している。
そして、目の前の日記を見て鮮明に思い出す。
そうだ。俺はレストランホールに降りてきて、チャンミナの日記を見ていた。
あれから、そのまま眠ってしまったのか・・・・・・
現在の時刻と日記。それが結びついた途端、俺は焦った。

「やばっ、チャンミナッ・・・・・・!」

朝早くに起きて、日記を見て復習するのがチャンミナの日課なのに。
俺は大慌てで、チャンミナが眠っているリビングに向かった。



慌ただしく二階にあがり、リビングに入り込んで、俺は足を止めた。
窓を静かに見つめる、その姿を見て。
俺の気配に気付いたらしく、華奢な背中はゆっくりとこちらを向いた。
白い光のなか、人形みたいに整った顔が、俺をぼうっと見つめる。
どうしよう。
何から話そう。
復習も無しに、俺はお前の恋人だなんて自己紹介もオカシイし・・・・・・

「あのっ・・・・・・えっとな・・・・・・」

片手に持った日記を、宙に頼り無く浮かせながら、そんな言葉しか出てこない俺。
全く初めましての状況に、とても動揺している。
チャンミナの毎朝の努力に、今心から有り難みを感じていた。
チャンミナは、暫くボンヤリと俺を見ていたけど・・・・・・・
次の瞬間。

「―――おはよう、ユノヒョン」

まん丸い瞳を、三日月みたいに細めて笑った。
それは、あまりにも自然で。

「あ、ああ・・・・・・おはよ」

俺は、そう返した後に気付いた。
今、なんて言った?
俺は、手に持った日記とチャンミナを交互に見つめ、呟いた。

「チャンミナ・・・・・・これ、日記・・・・・・」

チャンミナは、戸惑う俺を不思議そうに見ている。
いまひとつぴんと来ていない様だ。
じわじわとある可能性が沸いてきて、俺はチャンミナとの距離を詰め、問いかけた。

「おまえっ・・・・・・分かるのか?俺のこと・・・・・・日記が無くてもっ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

見つめる瞳は、ある瞬間、何かに気付いた様に大きくゆらりと揺れた。
大きな瞳がたちまち涙で満たされ、キラキラと輝く。
チャンミナはまた、掠れた声で呟いた。

「ユノ・・・・・・ヒョン・・・・・・」
「チ、チャンミナ・・・・・・」

細い肩をつかんで揺らし、問いかける。

「分かるんだな・・・・・・?」

チャンミナは、眉を寄せ、くしゃりと顔を歪めながら、ぽろぽろと涙を溢して頷いた。

「僕・・・・・・・・・僕、覚えてたっ・・・・・・・・・」

俺も涙が一気に込み上げて、チャンミナと一緒に泣いた。
チャンミナの頬を両手で包み込み、流れる涙も鼻水もそのままに、何度も頷く。
取り繕う余裕なんて無い。
チャンミナの表情を、言葉を確かめるように、触って抱き締めて、喜びを噛み締めた。

「良かった・・・・・・良かった、チャンミナ」
「ふぇっ、ん・・・・・・うぅっ・・・・・・ヒョン、ヒョンッ・・・・・・」

腕の中で奮える体温が、耳元に届く泣き声が、どうしようも無く愛おしい。
チャンミナの言う“ユノヒョン”は、何時の俺なのか・・・・・・
昨日の俺なのか、ずっと前から一緒に居た俺なのか。
明日の朝も、明後日の朝も、チャンミナは俺の事を覚えているのか。
明確なことはよく解らないけど、今はっきりと言えることは、チャンミナの頭の中に、再び俺の存在が刻まれたということ。
それだけで、本当に本当に嬉しかった。
涙を指で拭いながら、名前を呼ぶ。

「チャンミナ・・・・・・」

チャンミナも、俺の名前を呼ぶ。

「ユノヒョン・・・・・・」

お互い泣き笑いのまま、顔を寄せ合い、優しく唇を重ねた。
朝日が登り、段々と明るくなる部屋のなか、俺達は暫くの間そうしていた。
互いの存在を確かめ合うように。


















チクタク、チクタクと、秒針の音が、静かな空間に響いている。



立ち止まった時間は、再び動き出してる。




END




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これにて 僕は何度も恋をする 終了致します。
本当に、沢山の拍手、そしてメッセージありがとうございました。
趣味の妄想ではありますが、皆さんに涙して頂き、丁寧に見て頂き、本当に嬉しかったです。
作者としてとても幸せです。
お陰さまで、私の中のユノとチャンミンがまた一組、幸せになる事が出来ました。
あまり軽やかなお話では無いので、ぽんぽん続きは沸かなそうですけど、きっと番外編書くと思います。
その時はまた、お付き合い願います。
さて、いい加減常闇に手をつけなきゃですね・・・・・・!
連載から丁度一年位経ちそうだし(^^;
切ない話が続きますけど、興味のある方はどうぞお付き合いを~
多分、常闇と秘めたるを同時に書くかも知れません。
暫くホミンが続いたので、ミンホラッシュでふ♡

そして私、まだアルバム購入してない緩いペンでございます・・・・・・
視聴は沢山してますけどね!
買いますとも。

お部屋も模様替えしました~
ちょっと気早いけど秋冬仕様的な。
宮城はだいぶ寒いし北海道は雪降ったみたいですからね。
来春までこれでいきます。

コメントは連休中にお返し致します!
そうそう、日月とまた東京に行く予定です♪
関東のお友達と、新宿で肉を食べてきます!
スタミナつけるぞ~いヽ(´▽`)/


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10 Comments

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2016/10/12 (Wed) 19:36 | EDIT | REPLY |   

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2016/10/10 (Mon) 22:09 | EDIT | REPLY |   

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2016/10/10 (Mon) 21:24 | EDIT | REPLY |   

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2016/10/10 (Mon) 01:38 | EDIT | REPLY |   

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2016/10/08 (Sat) 22:37 | EDIT | REPLY |   

723621mam  

わたし知ってるー
これからも二人とも毎日何度でもお互いに恋をするよ。
自信あるある。

日月かあ。
わたし今日これから新宿行くのよね。
ちょっと残念、、、

2016/10/08 (Sat) 09:26 | EDIT | REPLY |   

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2016/10/07 (Fri) 23:36 | EDIT | REPLY |   

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2016/10/07 (Fri) 23:26 | EDIT | REPLY |   

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No title

本当に素敵なお話でした。
号泣ではなくて、静かな涙が流れました。
無音の中に、ゆっくり時が流れるような、清らかなお話だなと感じていました。

私は、新参者でしたので、色々なお話を読ませていただきました。
常闇のお話・・・初めて読んだ時は、痛くなっちゃって(自分の中で)、読み進めることが出来ませんでした。リアルではないのに、私はどうにも上手く切り離すことが出来なくて。
でも、時間を置いてまた読んでみると、新たな感覚を持ちました。
ホントに素晴らしいな…って思います。

また、楽しみなお邪魔させていただきます。

ちょっと、語りすぎてしまい申し訳ございません。

2016/10/07 (Fri) 21:10 | EDIT | REPLY |   

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2016/10/07 (Fri) 20:46 | EDIT | REPLY |   

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