僕は何度も恋をする 4








僕は何度も恋をする2


























あの日―――
電話を受けた時の事は、今でも鮮明に思い出せる。

『ユノッ・・・・・・チャンミナが、バイクで事故ったって・・・・・!』
『え・・・・・・・・・?』
『意識無くて重体らしいっ・・・・・・』

急にそんなこと言われても、全然信じられなくて・・・・・・
取り敢えず落ち着け、落ち着けと自分に必死に言い聞かせた。
だけど、頭の中は真っ白だった。









チャンミナは、スリップして転倒し、そのままガードレールに衝突したらしい。
俺はその頃、三ヶ月間出張で家を開けていて、チャンミナとは会えない日々が続いていた。
前日、電話で話したときにチャンミナが言っていた。

『寂しくなってきたから、ユノヒョンとの思い出巡りでもしようかな』

事故の現場は、交際する以前、仲間とキャンプに出掛けた場所だった。
俺とタンデムして、朝日を見たあの場所・・・・・・
その日は天気がぐずついて、小雨が降ったり止んだりしていた。
危ないから止めろと言えば良かった。
チャンミナの発言を、可愛いと思って笑っていた自分を死ぬほど恨んだ。
そんなこと、なんの意味も無いと解っていても・・・・・・
出張先の仕事は全く手付かずで、俺は有休を取ってチャンミナの居る病院へ向かった。
どんなに急いでも数時間かかり、増すばかりの焦燥と胸苦しさに、ただじっと耐えていた。









病院へ着くと、連絡をくれた仲間が俺を迎えた。

「ユノ!」
「チャンミナはっ・・・・・・!」
「取り敢えず、命は大丈夫だって」

その台詞に、張りつめていた緊張が一気に緩んだ。
長くゆっくりと息を吐き出して、俺は顔を覆った。

「良かった・・・・・・」
「今家族がついてるけど・・・・・・病室、行くだろ?」

俺は直ぐに頷いて、案内されながら急いで病室に向かった。









「こんにちは・・・・・・」

チャンミナの居る個室を覗くと、側についていた母親が振り返った。

「・・・・・・あ、どうも。お友達?」
「はい・・・・・・」

振り返った母親の目は、赤く、潤んでいて・・・・・・
ベッドの上のチャンミナに視線を向けた途端、俺も込み上げる涙を抑えられなかった。
所々に滲む、出血の跡。
頭部に厳重に巻かれた包帯と、口を覆う酸素マスク、身体に繋がれた幾つもの線・・・・・・

「・・・・・・チ、チャンミナ・・・・・・」

泣きそうになりながら名前を呼んでも、チャンミナは目を開けず、声を発することもなく、呼吸で微かに動く胸とモニターの波形だけが、命の存在を物語っていた。

「っ・・・・・・・・・・・・」

俺は、口を覆って外に出た。



ロビーのソファに座り、俯いていると、俺の隣に仲間がそっと腰掛けた。
背中をさする優しい掌に、また涙が溢れ出す。

「・・・・・・さっき、家族と医者が話してるの、少し聞いてさ・・・・・・。心臓とか、身体動かすのに必要なとこは大丈夫だけど、一番衝撃受けたの頭なんだって。チャンミナはまだ若いから、意識が改善する可能性は高いって言ってた」
「そうか・・・・・・」
「ただ・・・・・・何かしらの後遺症は残るかもって・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」

それでもいい。
また目を覚ましてくれるなら。
あの笑顔を見れるなら・・・・・・
声が、聞けるなら・・・・・・
俺はもう、それだけでいい。
























俺がチャンミナの後遺症を知ったのは、意識が戻ってから、始めて見舞いに行った時の事だった。
その日は、ツーリングサークルの仲間数人と共に見舞いに行った。
敢えて、家族が居ない時を見計らって会いに行った。
俺たちは恋人であって、仲間はそれを知っていたし、それに・・・・・・
チャンミナは、また俺を求めてくれる筈だと疑わなかったから。
病室に着くと、チャンミナはベッドの背に身体を預けながら、書き物をしていた。
しっかりと開いた目。スムーズに動く腕。
以前と同じ様子のチャンミナを見て、ホッとすると同時に、喜びに震えた。
一番元気な奴が、ベッドまで駆けていき声をかけた。

「よう、チャンミナ!」

伏せていた目を俺達に向けたあと、チャンミナはそのまま、黙りこんでしまった。
直ぐに戸惑いの表情を浮かべ、おろおろし始める。

「チャンミナ?どうした?」
「・・・・・・・・・・・・」

チャンミナは、唇を噛みながら眉を下げて、泣きそうな顔をした。
目を瞑った拍子に、涙がぽろぽろと、痩せた頬を溢れ落ちてゆく。

「・・・・・・・・・ごめんなさ・・・・・・僕・・・・・・僕っ・・・・・・記憶が、無いんです・・・・・・だから、貴方達のことわからなっ・・・・・・・・・」

途切れ途切れに言葉を発し、背中を縮め、すすり泣くチャンミナ。
またあの時と・・・・・・事故の報告を受けたときと、同じ感覚に襲われる。
言葉として理解しても、頭に浸透して来ない。
仲間は放心状態の俺を引っ張って、チャンミナの前に移動させた。

「チ、チャンミナ・・・・・・こいつは?お前とすげー仲良かったんだぞ!」

俺達はじっと見つめ合い、俺は、どうか覚えていてくれと・・・・・・チャンミナの表情が、何か思い当たるように変わるのを必死に願っていた。
だけど・・・・・・

「ごめん・・・・・・なさいっ・・・・・・」

チャンミナは顔をくしゃりと歪め、泣きながらそう答えた。
机からハラリと落ちた紙には、今日は親が来るとか、午後に検査があるとか諸々の予定が書いてある。
それを見て、俺は知った。
チャンミナは過去を忘れただけじゃなく、現在の事も忘れてしまう状態なのだと。
チャンミナは、脳に強いダメージをうけた為に記憶を失ってしまっていた。
事故から以前の一部の出来事、数年間の記憶が欠落していた。
家族のことや昔のエピソードを覚えていても、俺やツーリング仲間、会社の同僚など、比較的最近の事は覚えていなかった。
今現在の出来事も記銘出来ない状態で、意識が無くなると白紙に戻ってしまう状態だった。
俺は、哀しいとか切ないとかそんな気持ちよりも、真っ先に絶望にも似た感情に襲われた。
チャンミナの頭の中には、俺の居場所は無い。
これまでの日々も、それと一緒に積み重ねた感情も、全て消されてしまったのだから。
これから積み上げて行くことさえ、もう出来ないかもしれないなんて・・・・・・
後遺症があるかもと覚悟していたのに、それは“つもり”だけで、事実を突き付けられると俺は弱くて欲張りだった。
命が助かっただけで良い。
そう思ってたのに・・・・・・
一番辛いのは、チャンミナなのに・・・・・・
だけどやっぱり、俺はチャンミナが好きだった。
記憶が無くなったらもういいとか、そんな適当に愛して無かったから―――









全身状態が安定した後も記憶障害は継続して、チャンミナは自立が難しくなり、実家で暮らし始めた。
俺はそれからも何度か会いに行って、ただ他愛ない会話をした。
“仲の良い友達”として、交際していた事は告げられないまま。
伝えても記憶は無くなってしまうし、きっとチャンミナを困らせるだけだから、言わない方がいいと思ってた。
だけどある時―――
目的も無いまま、だらだら関わる日々に変化が訪れた。






チャンミナに会いに実家を訪れて、何時も通り帰ろうとしたその時。

「あのっ・・・・・・」

家の外で、チャンミナの妹に呼び止められた。
チャンミナによく似た大きな目で、潤んだ瞳で俺をじっと見つめてくる。

「・・・・・・どうしたの?」

妹は、手に持ったあるものを俺に見せた。

「お兄ちゃんの荷物、整理してたら出てきたの。・・・・・・貴方の、写真ばっかり・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」

妹が手に持っていたのは、幾つもの俺達の写真。
写真を撮るのが好きなチャンミナは、出かける時、何時もカメラを持ち歩いていていた。
交際を始めてから二年間、沢山の場所に出掛けて、その度何度もシャッターを切った。
手渡された写真の束を、一枚一枚、ゆっくり眺めていると、涙が溢れ出した。
こんな瞬間の俺も撮ってたのか・・・・・・・
ああ、景色が良いから、もっと周りを写しても良いのに・・・・・・
これなんてボヤけてるけど・・・・・・
二人とも凄くいい顔してるな。

「チャンミナ・・・・・・」

流れる涙が、止まらない。

「知らなかった・・・・・・いつの間に、こんなに沢山・・・・・・」

小さく呟く俺に、妹が言った。

「お兄ちゃん・・・・・・ほんと、呆れちゃうくらい人見知りで、不器用で・・・・・・大丈夫かな?って、何時も心配してたんです。だけどそれ見て・・・・・・貴方と居る時・・・・・・凄く楽しかったんだって、幸せだったんだって思った・・・・・・。あたしでさえ、見たこと無い顔してるんだもん」
「・・・・・・・・・・・・」
「だけど、また元気が無くなっちゃった・・・・・・。辛いんです、見てるのが」

妹は、真っ直ぐな瞳で俺を見つめ、訴えた。

「また・・・・・・お兄ちゃんと付き合って下さい」
「・・・・・・でも、お兄ちゃんは困るだけかも知れない」
「記憶を補う方法は、あるでしょ?それとももう・・・・・・お兄ちゃんの頭は、元に戻らないと思ってる・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・」
「なら・・・・・・何で会いに来るんですか」

潤んだ瞳にチャンミナを重ねて、俺は震える声で答えた。

「好きだからだよ・・・・・・。君のお兄ちゃんの事が、今でも・・・・・・」
「なら・・・・・・なら逃げないで?お兄ちゃんのこと、助けて下さいよっ・・・・・・」

そうだ、俺は・・・・・・
チャンミナが困ると言いながら、自分が傷付くことの方が怖かった。
記憶を亡くしたチャンミナに拒絶されることが、また忘れられる事が怖かった。
でも、やっぱり伝えたい。
そして出来るならまた、あの頃みたいに愛し合いたい・・・・・・
何が正しいかなんて簡単に言えることじゃないけど、だけどもし、これが正解なら・・・・・・
チャンミナ、俺の想いに応えてくれ。






数日後。
俺は、チャンミナに告白した。









To becontinue



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泣きながら書きました・・・・・・
なんだろ、私生活で割とドライというか、感情の上下が少ないので妄想で発散しようとしてるのかも?
お話って心のコンディションを反映しますね。
全ての人に当てはまるかは分からない~

そして、今日の目覚ましは溝端くんがメインでしたね。
好きですよ~ イケメンだけど気取らないし。
ジャケ写がもっと好みなら買う気沸くんだけどな・・・・・(笑)

あと実は今、お勉強の為に新潟に出張に来てまして・・・・・・
朱鷺メッセに行ってきました、明日も居ます!
東方神起がいっつも来てるとこっ(≧▽≦)
広い会場見てドキドキワクワクしてましたぁ
勉強よりそっちに気を取られておりました・・・・・・(笑)
これでもう、次回のツアーで新潟取れたらアクセスはバッチリ!

新しいサジンもぞくぞく沸いてますね。
兄弟のように戯れるお二人、本当に可愛いし見てて癒される。
大好きです!←言いたくなった♡



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3 Comments

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2016/09/25 (Sun) 11:54 | EDIT | REPLY |   

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2016/09/24 (Sat) 07:46 | EDIT | REPLY |   

723621mam  

チャンミンがとても清らか。
透明すぎて、消えちゃいそう。
少しづつユノが色々をつけてくれるのかな。

新潟、美味しいもの食べてますか?
新潟は、何をいただいても全部美味しかったなー ← 去年行ったので。

2016/09/24 (Sat) 01:19 | EDIT | REPLY |   

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