僕は何度も恋をする 1










僕は何度も恋をする2
































ジリジリと、頭を割るようなアラームの音で、僕は目を覚ます。
そして起き上がると、ボンヤリとした瞳で、机の上に置かれた一冊のノートを捉える。
ノートの表紙には

『起きたらまず、このノートを見ろ!』

と、マジックで太ぶとと書いてある。
何だろう・・・・・・?
不思議に思いながらノートを開くと、そこには・・・・・・









まず始めに。
僕は記憶障害だ。
X年○月×日、バイクで事故って、頭を打ったのが原因だ。
どうやら、事故の前の事も後の事も、すっかり忘れてしまっているらしい。
記憶は毎日リセットされるようだ。
だから、起きたらこの日記を読め。
僕は今まで、どんな道を歩んで来たのか。
昨日何をしていたのか。
周りには、どんな人間が居るのか。
熟読して、ちゃんと頭に入れて、今日も生きるんだ。






「・・・・・・・・・・・・」

ノートに書かれたそれを見ても、全く実感が湧かない。
だが確かに、僕は昨日の事が何ひとつ思い出せない。
一昨日の事も、それよりもっと前の事も・・・・・・
脳ミソにぽっかりと、大きな空間が出来てしまったような感じだ。
これは恐らく、何時かの僕が、今日の僕に宛てたメッセージ。
一日を、少しでもまともに生き抜く為に・・・・・・
僕の名が“シム・チャンミン”だという事は分かる。
この部屋が、実家の自分の部屋だと言うことも。
父さんや母さん、妹の顔や名前も直ぐに浮かんでくる。
僕の記憶は、どこから消えてしまったのだろうか・・・・・・?
ページをめくると、事故があったX年○月×日の一ヶ月後から、日記が付けられていた。



a月b日
会社の同僚が見舞いに来てくれた。
誰ひとり分からなかった。
古い友達は覚えてるのに。
申し訳無い。
凄く辛い・・・・・・



a月c日
僕はツーリングクラブに入っていたようだ。
仲間が遊びに来たが、やっぱり誰のことも分からなかった。








a月g日
ツーリングクラブの人が、また遊びに来た。
今日は一人だ。ユノさんって人。
僕が一人暮らししてた時、同じアパートに居たらしい。
優しくて話し易い人だ。



g日以降、そのユノさんとかいう人が、ちょこちょこ日記に登場するようになる。
食べ物を持って来てくれたとか、うちで夕飯を食べていったとか、そんな内容が続いた後―――――
ある記事を見たとたん、僕は驚きのあまり、固まってしまった。



b月g日
ユノさんと僕は付き合っていた?いる?らしい。
男同士なのに驚きだ・・・・・・
正直信じられない。
でも写真を見る限り本当だろう。



そのページの隣には、ユノさんと僕のツーショット写真が数枚貼られている。
全て、友達同士にしては近すぎる距離だ。
ユノさんに肩を抱かれて、微笑む僕。
自撮りしたのか、頬を寄せ合って笑う、少しピンボケ気味の僕とユノさん。
山の景色を背景に、バイクに二人で寄りかかっている写真もある。
今始めて知ったけど、男同士だけど・・・・・・
写真の僕等は幸せに溢れていて、そんな過去を忘れてしまった事に、切なささえ感じる。
その翌日の日記には、こう書いてあった。



b月h日
ユノさんに告白された。
ビックリした・・・・・・
けど前から付き合っていたようだし・・・・・・
写真見てると、その頃にちゃんと戻りたいって思う。
一緒に居たら、何か変わるかも知れないし・・・・・・
オーケーしてしまった。
でも、これからどうしよ。
超戸惑う!



b月i日
昼休みと仕事帰り、ユノさんが会いに来た。
職場、うちから近いみたいだ。
前から付き合ってて、改めて付き合うことになったようだ。
どうすればいいか良く分からなくて、話し相手をして終わった。
取り敢えず、今日の感想は・・・・・・
スーツ姿は、男から見ても格好良い。
あとは、笑顔が良い感じ、かな。



b月j日
外は一日雨降りだった。
それでもお客さんは結構入る。
僕のナポリタンは好評だった。
今度はカルボナーラに挑戦したい。
あ・・・・・・
ユノさんは来なかった。
ちょっと残念・・・・・・



どの日にもユノさんが登場するから、読み進めるうちに必然的に意識してしまう。
そして、一センチ以上あるこれまでの記事を読んでいると、一時間はあっという間に過ぎる。
起床したのは六時半。
もうすぐ八時を回りそうだ。
最後のページには、こう書いてあった。



『日記を見終わったら、仕事開始。僕の仕事は、一階の店のキッチンとホール』



ここは実家で、そう・・・・・・
両親が、一階を使って小さなレストランを経営しているのだ。
部屋を出ると、母さんが笑顔で声をかけてきた。

「おはようチャンミン」
「・・・・・・おはよ」
「朝の復習は終わった?」
「・・・・・・日記の事?」
「そう。それ」
「見たよ。取り敢えず、全部は・・・・・・」
「じゃあ、顔洗って着替えてきなさい。朝ご飯作ってあるから」
「・・・・・・分かった」

脱衣所へ向かうと、洗面台の横のホワイトボードが目に着いた。





『チャンミンの一日の予定』

11:00 仕事開始
    お父さん、お母さんと一緒にお店の仕事
    AMはキッチン担当

13:30 休憩

14:30 仕事開始
    PMはホール担当

17:00 仕事終わり



そして、カゴの中には白シャツと黒いズボン、ベストが用意されている。
恐らく店の制服だろう。

「そっか・・・・・・僕・・・・・・」

家のあちこちに散りばめられた工夫を見て、僕は本当に記憶障害なのだと、じわじわ実感させられる。
しかし、状況を飲み込むのに精一杯で、落ち込む暇も無い。

朝食を口に運びながら、僕は母さんに聞いた。

「僕って、記憶障害・・・・・・なんだよね・・・・・・?」
「そうねぇ」
「大変だね」
「やっぱり、そう感じる・・・・・・?」
「いや・・・・・・母さん達が」

母さんは、眉を潜めてこう返した。

「何言ってるの。一番大変なのはあんたでしょう?毎朝、あんなに時間かけて日記読んでるんだから。母さん達のことは気にしないの」
「・・・・・・・・・・・・」
「私たちはね、チャンミンが元気に働いてくれればそれで充分。分かった?」

母さんの活気に押されて、僕はこくりと頷いた。








午後13時過ぎ。
来客は、丁度ピークに差し掛かる。
店の中は、近所の知り合いや主婦、仕事中のサラリーマンで賑わっている。
もともと料理は好きだったので、簡単なものなら、父さんや母さんの指示やレシピを頼りに作ることが出来る。
とは言っても、僕が担当する作業は、盛り付けやドリンクなど簡単なものが多い。
13時半頃になると、一度客足が引いてオーダーも減り始めた。

「チャンミン、休憩して良いわよ」

母さんから声がかかり、僕はきりの良いところで作業を中断した。
店の隅に移動して、エプロンを外していると・・・・・・



「――――こんにちはー」



店の入口から、一人の男性が姿を現した。



「あ・・・・・・」



その人とは、まるで始めて会ったような気がする。
だけど、日記のかなりの割合を占めているから親近感もあって・・・・・・
心の何処かで何時も気になってしまう。
不思議な感覚だ。





「チャンミナ、居ますか?」




「ユノ・・・・・・さん?」



そう呟いたとたん。
整った顔は、視線を一時さ迷わせて・・・・・・
僕を見つけると、ふわりと優しく微笑んだ。



トクン・・・・・・
胸が、静かに鳴いた。









To becontinue



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この手は君を奪う為に に沢山の拍手ありがとうございますm(_ _)m
リストから消そうか今でも悩んでおりますが・・・・・・もうちょっと検討します。
新しいお話はこんな感じです。
多分、また一桁で終わると思いますがどうぞお付き合い下さい。
コメントは後ほどお返し致します。
いつも貯め貯めすみません。






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4 Comments

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2016/09/17 (Sat) 00:47 | EDIT | REPLY |   

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2016/09/16 (Fri) 10:09 | EDIT | REPLY |   

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2016/09/15 (Thu) 20:52 | EDIT | REPLY |   

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2016/09/15 (Thu) 14:13 | EDIT | REPLY |   

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