片耳ピアスの君 2

  10, 2016 07:45


カフェテリアで、いつもの仲間達数人と雑談している最中。
チャンミンは、携帯を机に伏せると溜息をついた。
見るからに不機嫌だ。
椅子に寄っかかったまま、動かなくなってしまった。

「・・・・・・何かあったの?」

ある一人が、そう問いかけると

「・・・・・・ん?・・・・・・喧嘩。知り合いと」

チャンミンは、ぼそりとそう答えた。

「ふーん」
「・・・・・・・・・・・・ちょっと、電話してくるね」

チャンミンは席を立って、カフェテラスに向かった。
席についた時から、携帯を弄っては止め、それを繰り返していたチャンミン。
恐らくメールのやり取りで喧嘩に発展したのだろう。
わざわざ電話しようと思うなんて、律儀だな。
俺は言い合いが苦手で、喧嘩になると直ぐ喋るのを止めてしまうから、凄いと思う。
暫くして戻って来たチャンミンは、先程より更に不機嫌そうな顔で、携帯をバッグに仕舞った。
バイブの音が何度か聞こえて来たけど、チャンミンは携帯を出そうとせず・・・・・・
そして暫くすると、何も聞こえなくなった。

「随分仲良いんだな、その知り合いと」

チャンミンの隣の奴が、意外そうに言った。

「え・・・・・・何で?喧嘩してるんだよ?」
「いや、超真面目に向き合ってるなぁと思って」
「そうかなぁ」
「うん。お前が遠慮なしに怒る相手って、なかなか居ないじゃん?仲良い証拠だろ」
「そう言われてみると、そう・・・・・・なのかな」
「親友?その人」
「・・・・・・うん、まあ・・・・・・そんな感じ」
「えー?怪しいなぁ。付き合ってんじゃないの?」

皆、チャンミンの知り合いの話に良い食いつきを見せる。
チャンミンが黙ったのは、ほんの数秒。
だけど、その沈黙だけで皆分かってしまった。
答えはyesだ。

「なんだよー!居るなら早く教えろって」
「写メないの?見たい見たい」
「な、無いよっ」

狼狽えるチャンミンを見て、教えるつもりは無かったのが分かった。
俺は特別驚きはしなくて、“やっぱりな”という気持ちだった。
予想は的中した。









チャンミンは、その日以降も表情が冴えなかった。
喧嘩が長引いているようだった。
携帯を眺めては溜息をついて、はじめは怒っている事が多かったけど、次第に元気が無くなっていった。
チャンミンの事を、あまり周りに左右されないマイペースな奴だと思っていたので、正直驚きだった。
そして喧嘩の最中でも、左耳には相変わらずピアスが付いたままで・・・・・・
本当に、その恋人の事が好きなんだと思った。

「元気かよ?最近」

二人きりの時に、俺は声をかけてみた。
チャンミンの相談にのる事が今迄何度かあったので、少しでも役に立てればと思った。
俺の問いにチャンミンは黙って笑うだけで、でも心から笑っていないのが伝わってきて・・・・・・
放っておけなかった。
明日は日曜で、学校も休みだ。
テンション高めに「飲み行くか!」なんて言って肩を組み、抵抗しないのを了承と受け取って、街へ出かけた。









大学三年の俺達は、それぞれが誕生日を迎えて、やっと堂々と酒を飲めるようになった。
適当に入った飲み屋で、ジュースのような甘ったるい酒を流し込むと最高に美味しく思えた。
街の何処を歩いても、むしっとした湿気と生ぬるい空気に包まれて、身体が水分を欲していた。
調子に乗って酒を頼み続け、気付いた時には二人とも随分と酔っ払っていた。
アルコールで抑制が外れたのか、チャンミンは例の恋人のことを、俺にベラベラと話した。

「だって・・・・・・怒る理由が、僕がコンタクトにしたからだよ?無断で、眼鏡からコンタクトにしたから。それだけだよ?」
「えぇー・・・・・・」
「あと、この前皆で行った旅行の写真・・・・・・折角送ったのに、僕らの距離が近いって文句ばっかり言ってくるし・・・・・・ほんと、どうしようも無いでしょ?」
「マジ・・・・・・?相当独占欲強いな」
「あー・・・・・・うん。そうかも」
「でも、女って男同士でも妬くもんなの?大変だな」
「・・・・・・・・・・・・」

俺の発言のあとチャンミンは黙り、そして一瞬、視線を彷徨わせた。
何故そんな反応をするのか、よく分からない。
声を発しようと口を開いたところで、

「失礼します。お席の時間となりました」

店員に遮られてしまった。









店からはチャンミンの家の方が近くて、その日は泊めて貰うことにした。
建物が集まった賑やかな駅周辺から、チャンミンの家へ続く狭い道を辿る。
段々と雑踏が遠のき、辺りは静かになってゆく。

「飲み過ぎたなー」
「そうだね。でも楽しかった。いっぱい話せたし」
「そ。誘って良かった?」
「勿論」

歩きながら、笑顔で言葉を交わす。
アルコールが少しずつ引いてきて、適度な気持ちよさにフワフワしていた。
角を右に曲がれば、直ぐそこがチャンミンの家だ。
アパートの一角が見えて来た、その時。

「え・・・・・・・・・・・・」

チャンミンは、目を見開いて立ち止まってしまった。

「・・・・・・どうした?」

奮える瞳は、一点を見つめたまま動かない。
その視線を追うと―――
入口前のベンチに、腰掛けている人が居る。
手を組んで俯いていたが、ふと顔が上がった拍子に俺は・・・・・・俺達は、その人と目が合った。
綺麗な造りの、男らしさを感じる顔。
何処かで見た気がする。

「な、なんで・・・・・・・・・」

チャンミンが、上ずった声で呟く。
その人は、目を逸らさないまま目の前までやって来た。
あまりにも真っ直ぐに見つめられて、その目力が強くて、俺はドキッとしてしまった。
下を向いたチャンミンに、その人は低い声で言った。

「電話もメールも完全シカトで・・・・・・来てみりゃ友達と飲みかよ」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・俺に、何か言うことあんじゃねーの?」

平坦な口調、表情ではあるけど、その人は怒っているようだった。
チャンミンは返答せずにいたが、俺の方に視線を寄越して、頼りない声で言った。

「ゴメン・・・・・・。やっぱ今日・・・・・・泊めらんないや」
「あ、ああ・・・・・・いいよいいよ。だいじょぶ」
「ゴメンね」
「気にすんなって。じゃあ、行くわ。・・・・・・失礼します」

ぺこりと礼をすると、俺は逃げるようにその場を去った。
あの人とチャンミンの雰囲気から、直ぐに察した。
部外者は俺の方だと。
遠目で、アパートへ入ってゆく二人の後ろ姿を見つめる。
男は確かに、いつか写真で見たあの人だった。



―――『ゴメン・・・・・・。やっぱ今日・・・・・・泊めらんないや。・・・・・・ゴメンね』

そう言って俺を見つめた時の、チャンミンを思い出す。
不安定に揺れていた瞳。
戸惑い、弱みを帯びた表情。
そんな顔するなんて、知らなかったよ。



チャンミン・・・・・・
そういう事なんだろ・・・・・・?









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これだけ見るとユノがストーカーチックで恐いかも(^_^;)
次回はチャンミン視点の予定~
多分、あんまり長くなく、あと2~3話で終わると思います。



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Comment 3

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723621mam  

好きなんだもん、仕方ない。
離れてるから心配なんだもん、仕方ない。
会いたかったんだもん、来ちゃうよね。
チャンミンも嬉しいって。言えないけど。(笑)
私も嬉しい! ← おまえはどーでもいい。はい。

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