恋の方程式 5

  31, 2016 09:20






















恋の方程式・表紙






















告白の直後は、互いに喋らず、身動きもせずに、まるで時が止まったかのようだった。
嫌いだとはっきり伝えたうえ、キスされた時にも酷い事を言ったから、チョンさんが驚くのも仕方無い。
だけどあれは、よく言う好きの裏返しだった訳で・・・・・・

「マジで・・・・・・?」

チョンさんの呟きが、沈黙を破った。
整った顔は、期待を浮かべながら僕をじっと見つめている。
心なんて単純なものだ。
恋心を自覚したつい先程から、視線が絡むだけで僕の胸はどうしようもなく高鳴っている。
恥ずかしさを押し込めて、唇を噛み締めながら頷いた。
チョンさんが、ベッドの端に居る僕を甘い声で誘う。

「なあ・・・・・・もっとこっち来いよ」
「・・・・・・・・・・・・」

躊躇いがちに、そろり、そろりとチョンさんに近付く。
側まで行くと、手を絡め取られた。

「今の言葉、信じるぜ」

その問いに、もう一度、しっかりと頷いた。

「気付くの遅くて・・・・・・沢山酷いこと言って・・・・・・ごめんなさい」

僕は多分、既成概念の塊だと思う。
『男同士でも恋愛が成立する』という思考に至るまで、時間を要してしまった。
謝罪を口にすると、自然と瞳に涙が浮かんだ。

「俺の為に・・・・・・泣きそうになってくれてんだ・・・・・・?」

頬に優しく手が触れて、少しビクつく。

「俺も言葉足りなくて、困らせたよな・・・・・・ごめん。でも、嫌われてっと思うとなかなか伝えらんなかったんだ」

余裕そうに見えていたチョンさんも、傷付くのが怖かったのだと知る。

「今度はちゃんと・・・・・・いい?」

頬に留まっていた手が、唇に移動した。
綺麗な指先が、僕の細めの唇を優しく擦りながら往復する。
顔を寄せられ、僕もぎこちない動きでまた顔を寄せた。
瞼を閉じる動きから息をするタイミングまで、全てに神経を使う。
敗者として応えた時のキスとは、まるっきり別物だ。
横顔を重ねたその瞬間―――
暖かい感触と互いに伝わる緊張感で、どうにかなってしまいそうだった。
バクバクと煩い程の鼓動が、頭に響き渡る。
血液が沸騰してるみたいに、身体中が熱くて仕方無い。
唇を離した直後、解放感からつい、高く掠れた吐息を漏らした。
チョンさんは、今度は僕の首に手を添えて再びキスをした。
触れ合うだけの先程のキスとは違う。
啄むような動き、口のラインをなぞる舌先に、身体の芯からゾクゾクと震え上がる。
不馴れな動きで、舌先を差し出して絡め合わせた。

「あ・・・・・・んふ・・・・・・・」

頭がジンジンする。
この間熱発した時より、ずっとずっと熱い。
繰り返すキスの合間に、チョンさんが吐息混じりで囁く。

「やべ・・・・・・止まんない」
「ん、んっ・・・・・・」

また唇を塞がれて、僕はチョンさんのシャツをぎゅうっと握りしめた。
駄目だ。
このまま唇を捧げ続けたら、どうにかなってしまう。
胸を叩いて解放を求めると、チョンさんは名残惜しげに唇を離した。

「とうした?嫌?」
「ち、がうけどっ・・・・・・最初っから、こんなされると・・・・・・持たない。僕、そんな経験無いし・・・・・貴方と違って・・・・・・。ごめんなさい」
「なーんで謝んの」

チョンさんの声色は甘く優しい。
手をさらわれ、胸板に導かれた。

「分かる?超バクバクしてんの。俺も今、すっごい緊張してる。お前と一緒」

掌で、強く脈打つチョンさんの鼓動を感じる。
経験値は違っても、僕らは今同じ状況だと実感する。
嬉しさから小さく笑みを溢した。
僕を見つめながら、チョンさんが問いかける。

「委員長はさ、この学校の恋愛禁止って規則、どう思う」
「・・・・・・少し、やり過ぎかな。恋愛が必ず学業の妨げになる訳じゃ無いと思うし・・・・・・」

僕の意見に、チョンさんも頷いた。

「同感。俺も、恋愛は問題無いと思ってる」
「あの・・・・・・えっと・・・・・・」
「付き合お?俺ら」

シンプルな言葉だけど、胸を熱くさせるには充分だ。
きっとこの気持ちを押し込めた方が、勉強に支障が出ると思う。
拒む理由、無いよな・・・・・・?
委員長でありながら規則を破るのは、少しうしろめたいけれど。

「バレないようにして下さいね」
「よっし!」

チョンさんが満面の笑みを浮かべて拳を握る。
あ・・・・・・可愛い。
キュンとした事は、内緒にしておこう。









翌日の朝。
教室に入ってきたチョンさんを見て驚いた。
理由は、遅刻せずに登校したからだけでは無い。
肩にかかるまで長かった髪は、短い短髪に、髪色も黄色に近い程明るかったのに、ほぼ黒くなっていた。
真っ先に、チョンさんと仲の良いクラスメイトが声をかける。

「おいー、誰かと思ったよ!」
「なになに?急にどうした」

寄せられる質問に、チョンさんは笑顔で答える。

「んー、少しは真面目になろうと思ってな。でも、結構似合ってるだろ?」

うん・・・・・・凄く似合ってる。
今までの髪型も似合ってたけど。
遠目に見守って居ると、チョンさんが僕の側まで来て、当たり前のように声をかけた。

「おはよ、委員長」
「お、おはよう・・・・・・ございます」

チョンさんと話すと皆の視線を引くうえ、僕らは接点が薄いと認識されているから戸惑ってしまう。
また、心臓が騒ぎ始める。

「ど?イメチェンしてみたんだけど」
「うん・・・・・・あの・・・・・・似合ってると思います」
「お前にちゃんと認めて貰えるようにさ、先ず手始めにと思って」

お、“お前”呼び!
親しげに話しかけるチョンさん、そして僕に、周囲から意外そうな視線が寄せられる。
この人、緊張や迷いってものが無いのだろうか。
こんな大勢の前で・・・・・・
僕は簡単な返答をするだけで精一杯だ。
話せるのは勿論嬉しいけれど。

「チョンさん・・・・・・ホームルーム始まるから、また後で」
「あー、だよな。了解」

ニコニコと笑いながら、チョンさんは去って行く。
動揺を必死に隠しながら、僕はホームルームの進行をした。

「――――今日もよろしくお願いします」

終わりを迎えた時、一人の男子生徒が手を挙げた。

「はい、質問」
「どうしました?」
「何で急に、委員長とチョンさん仲良くなってんですか?」
「っ・・・・・・」

身体がカッと熱くなる。
適当な事を言って流せば良いんだろうけど、その言葉が浮かんで来ない。
かなり動揺していた。
すると・・・・・・

「はいはーい」

今度はチョンさんが手を挙げた。

「俺が委員長と仲良くしちゃ悪い?」
「そういう事じゃ無くて、気になっただけだって」
「んじゃ、別にいいじゃん。細かいこと気にすんなって」

チョンさん、助けてくれて有り難う。
ふと互いの視線が絡むと、チョンさんは僕に向かってそっと笑いかけた。
髪が短くなり、以前よりも露になったアーモンドアイ。そして優しげな表情にドキッとする。
この人を嫌いだと思っていた頃がウソのように、今は本当に素直に反応してしまう。
これ迄に比べたら動揺する瞬間も沢山有るけど、心は満たされてる。









昼休み。
チョンさんと一緒に、屋上で昼食を食べた。
「一緒に食わない?」と、チョンさんから僕に声をかけてくれたのだ。

「いいんですか?いつも一緒に食べてる友達は」
「いいのいいの。恋人との時間も大切にしないと」

恋人・・・・・・
そうだった、僕ら、今付き合ってるんだ。
改めて口にされると、恥ずかしくて、くすぐったい。

「そ、そうですか」

密かに赤面しながら、ぎこちない返答をする。
弁当の蓋を開けた途端、チョンさんが声を上げた。

「うわ、めっちゃ旨そう」

そんなチョンさんの昼食は、焼きそばパンとお握りだ。

「俺、弁当ってあんま無いんだよなー。まあ、自分で作りゃ良いんだろうけど」

保健室での、チョンさんと先生の会話を思い出す。
チョンさんの母親は、離婚したばかりで余裕が無いと言っていた。
僕は母さんが弁当を作ってくれるのが当たり前だけど、感謝しなければならない。

「良かったら、好きなのどうぞ」
「いいの?」

僕が弁当を差し出すと、チョンさんは目を輝かせた。
男らしいのに、たまに子供みたいな反応をするのが可愛い。
本人には言わないけど。

「んじゃあ卵焼き」

そう言ったものの、手を動かそうとしないので僕は首を傾げた。
チョンさんがあーんと口を開ける。

「食わして?」
「えー・・・・・・」
「ほら、あん!」

不馴れなせいで取り運びが不安定になりつつも、僕はチョンさんの口へ卵焼きを入れた。

「うん、旨い」

暑い唇の上を舌がペロリと動いて、ついドキッとしてしまう。
この間のキスを思い出した。

「俺のも食う?」
「・・・・・・・・・・・・」

それがどんな流れを示すのか知りながら、僕はコクリと頷いた。
差し出された焼きそばパンに、ぱくっと噛みつく。
チョンさんの視線を感じて恥ずかしくなりながら、モグモグと口を動かした。

「旨い?チャンミナ」
「ゲホッ・・・・・・」

ムセ混んだ僕の背中を、チョンさんは笑いながら擦った。

「おい、大丈夫かよ?」
「き、急に名前で呼ばないで!」
「はは。お前、可愛すぎ」

睨んでも、チョンさんは笑顔のままだ。

「ほんと・・・・・・可愛過ぎなんだよ」

ふと、ドキッとしてしまうような真面目な表情を浮かべる。
あ、来るなと思った時には、唇を塞がれてた。
二度目のキスは、少ししょっぱい、焼きそばの味がした。






吹き抜ける風が、夏の匂いを連れてくる。
青春って、恋って、正にこんな感じ?
今までの恋は、本当の恋じゃ無かったのかもしれない。
そう思うほど、僕は目の前のこの人に、心揺さぶられてる。










◇◇◇



いっきうちしたので後でまた文章修正するかも。
だらだら続きます。
BLのゴールといったらアレですよねーw

あ、今日は大学のお友だちに会いに東京に来てます。
集合まで、今から新大久保ぶらぶらしてきます♪



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