恋の方程式

  17, 2016 19:25


この世で一番カンタンなもの。
答えが解りきっているもの。
この世で一番厄介なもの。
明確な答えが無く、僕を思い煩わせるもの。




















恋の方程式・表紙





















僕は、この辺では進学校として知れた男子校に通っている、16歳男子だ。
進学校といっても、全国的に有名な高校に比べたら随分と劣る。
だが、近隣には問題行動防止が主のような高校もある為、僕の通う高校は周辺住民から好感を買っている。
では、実際生徒達はどうか。
堅っ苦しい決まり事に嫌気がさしている奴が多い。
今の時代学業の為に“恋愛禁止”だなんて・・・・・・
男子校なので校内恋愛は無いにしても、他校生徒との恋愛も禁止されている。
誰とも付き合った事が無い僕だが、勉強一辺倒になることが将来に役立つとは、あまり思えない。
そんな僕は、クラス委員を任されている。
クラス委員なんて、特に大きな仕事が無い印象だが、うちの学校はそうじゃない。
行事が多く、クラス委員に任される仕事も多い。
生徒会への出席。修学旅行、大学見学に、体育会や音楽会の予定決め、それぞれの予算の審議など・・・・・・一般的にクラス委員が請負う仕事量に比べたら、はるかに多い。
クラス委員なんてやるつもりはなかったけど、負担になるのが分かるから誰も名乗り出ず、仕方なく僕が立候補したのだ。
お陰様で今は“委員長”という呼び名がすっかりと定着した。
なってしまったものは仕方無い。
それに、僕は元々几帳面な性格なので手を抜くことが出来ない。
うんざりしながらも、なんとか仕事を熟そうと奮闘する日々が続いている。
勉強の成績は大学推薦可能なレベル。先生、生徒との人間関係も概ね上手くいってる。
しかし、そんな僕を酷く悩ませる問題が、ひとつだけある。

ある“不良”の存在だ・・・・・・・・・









朝のホームルームが終わった後。
僕は全員の前に立ち、再来月に迫った文化祭の出し物について、アナウンスをしていた。

「えーっと、前回の会議で予算が決まりました。支給額は二十万ウォン。クラスの出し物は喫茶店ですが・・・・・・材料費や衣装費を考えると、一年分のクラス費、集金でも補おうと思うんだけど、どうですか」

僕の問いかけに、数人から声が上がる。

「賛成―。二十万ウォンじゃ不安過ぎる」
「集金も、あんまデカいと厳しいよなー。クラス費って、今いくらあんの?」

確かに、うちの学校はバイトも禁止だから、小遣いを貰わなきゃ所持金ゼロの生徒も居る。
でもクラス費から負担し過ぎると、別の行事で資金が必要になった時に困るし・・・・・・
頭を捻っていると、教室の扉が勢い良く開かれた。

「わりーわりー、おっくれたー!!」

そう言いながら教室に駆け込んで来たのは・・・・・・

「チョンさん、また遅刻ですか」
「だからわりーつってんじゃん。ほんっとゴメン!」

緊張感も反省の色も、微塵もない。
笑いながら謝るのは、チョン・ユンホ(17)。
クラスメイトでありながらひとつ年上の、本来高校三年生の筈の男。
昨年度留年して、僕たちに仲間入りした不良だ(本人は不良で無いと言い張っているが、不良以外の何者でもないだろう)。
一向に改善されない遅刻、居眠り・・・・・・無断でバイトしているのも知ってるし、女癖が悪いとか、喫煙してるって噂も聞く。
真面目にやってる僕にとっては大敵。苛々の原因である。

「なんだよ、この俺がモーニングコールしてやったってのに。あの後二度寝しやがったな!?」
「やぁー、やっぱ野郎の声じゃ効果無いな。可愛い女子の声じゃないと」
「うっわ、自分から頼んどいて何それ!委員長、この薄情者どう思う?」

ただ、この不良には何故か友達が多い。
チャランポランなクセに、人付き合いが上手く存在感がある。
それがとても気に食わない。
険しい顔の僕を見て、チョンさんが笑顔で頭を下げる。

「さーせん!委員長」
「・・・・・・取り敢えず、早く席について」
「ほーい」

チョンさんは、リュックを机の上に雑に置き、ドカッと椅子に腰掛けた。
遅刻したんだから、もっと肩身狭そうにしろよ。
口には出さず、心の中で突っ込む。
チョンさんの好き放題を、先生達も何故放っておくのか。
改善の余地が無いと判断し、諦めてしまったのかも知れない。
その分、僕の苛々がまた募る。









放課後。
会議を終えた僕は、議事録を抱えながら教室へ戻った。
日が暮れ、夕日でオレンジ色に染まった部屋の中、机に突っ伏す男子生徒がひとり。
チョンさんだ。
授業中居眠りして、放課後もまた寝られるなんて流石だな。溜息が漏れる。
議事録を机に仕舞い、退室しようとしたその時。
背後から物音がして、「うーん」と唸り声が聞こえた。

「・・・・・・あれ?委員長じゃん」

僕は振り返らず、横目でその姿を捉えた。
瞳をこすりながら、寝起きの声でチョンさんが続ける。

「会議の帰り?」
「・・・・・・・・・・・・」

この人と会話する理由が解らない。
僕は苛々するだけだし、チョンさんには仲の良い仲間が居るのだから、話す必要は無い。
返事をせず、そのまま立ち去ろうとした。

「完全シカトかよ」

その一言に、歩き出した足を止めた。

「委員長さ、俺んこと嫌いだろ」
「・・・・・・・・・・・・」
「何が駄目?教えてよ。俺、言われないと分かんないんだよね」

本気で言ってるのか?
僕が怒ってる理由くらい、分かってくれ。
あれこれ考えるより先に、口が動いてた。
思ってるよりも、疲れていたらしい。

「・・・・・・全部」
「え?」
「全部、嫌い。遅刻、居眠りは日常茶飯事、それで呑気に笑ってるとこ・・・・・・全部腹立つ」

呟いた後、気付いた。
醜い心の声が、完全に口に出ていた事に。
チョンさんにも、確実に聞こえてしまったらしい。
口を開け、唖然とした顔で固まっている。
無表情の裏で、僕は焦った。
キレるかもと思ったが、チョンさんは「参ったなぁ」と呟いて小さく笑った。

「ちょい、こっち来いよ」
「・・・・・・・・・・・・」

手招きされても応じないでいると、チョンさんは「殴りゃしねぇから」と付け足した。
見る分には怒っていないが、何をされるか解らないので近寄りたくない。
動かないで居ると、チョンさんのほうから僕に歩み寄って来た。
つい身構えたけど、殴られることは無かった。
目の前の机に寄っかかり、ポケットに両手を突っ込みながら、チョンさんが僕をじっと見据える。

「なぁ、悪かったよ。そんな風に怒らしてるなんて、全然気付かなかった」

怒る筈の場面なのに、潔良過ぎて違和感を覚える。
ホッとする反面、不気味さを感じた。

「俺もさぁ、居眠りと遅刻止めたいんだけど・・・・・・それなりに理由があってな?簡単に直せるかどうか」

つまり、直る予定は無いから見逃せと?
怠け者の言い訳にしか聞こえない・・・・・・
その態度が僕には理解出来ない。
恐怖心は薄らいで、また静かに苛々が募る。
僕は、知らぬ間にケンカ腰になっていた。

「・・・・・・成績が良ければね」
「成績・・・・・・?」
「ここは勉強が全てでしょう。成績が良ければ文句言いませんよ。もし腹立ってても」
「へぇ・・・・・・俺がテストで、高成績取りゃ良い訳?」
「ええ」

チョンさんはいつも、下から数えた方が早い順位にいる。
そんな事叶う筈が無い。
でも、チョンさんはニヤリと笑ってある提案をした。

「じゃあさ、ゲームしない?」
「ゲーム・・・・・・?」
「次のテストで、順位競おうぜ」
「・・・・・・・・・・・・・」
「順位が良い方が勝ち。負けた方は勝った方の望みを何でも聞く。もし俺が負けたら、遅刻も居眠りも無くして超真面目になってやるよ。他にも望みあったら聞くぜ」

その提案を聞いて、つい笑ってしまった。
僕の順位はいつも三位以内。
きっと勝負にもならない。

「本気で言ってるんですか?」
「ああ、勿論だ。俺が勝ったら・・・・・・・・・委員長、アンタが俺の望みを聞くんだ。どう?」
「・・・・・・・・・いいですよ」

この人が僕に勝つなんて無理だ。
そう決め付けて、僕はチョンさんの提案を受け入れた。
整った顔は、僕を見つめたまま笑みを深めた。



そう、僕は信じきっていた。
この人は僕に勝てないと。
今だけを、上部だけ見てそう決めつけてしまった。
本当に実力があるのはどちらなのか・・・・・・
情けなくも、僕は後に思い知らされる事になる。









◇◇◇



新しいお話はいつも突発的にうかぶ。
そしてみじかい。
お話もイラストも全くたまらないっす。



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