俺のヒョン



ステージが始まる直前の事だった。
つい先程まで傍に居たユノの姿が、突然見えなくなってしまった。
もうすぐ幕開けだというのに、行き先も告げずに一体何処へ行ってしまったのか。

「ヒョン?ヒョーン!何処ですかー!」

叫びながらステージ裏を駆け回っても、姿も見えなければ返事も無い。

「くっそ。こんな時に何考えて・・・・・・」

ひとり苛ついていると、急に目の前が真っ白になって目が眩む程の光に包まれた。
そして次に目を開けた時、そこには有り得ない光景が広がっていた。
先程までは無かった小さな泉が出来ていて、テカーっと光った白服の女が中に佇んでいる。

「はっ!?な、何これ、ドッキリ!?」

動揺する俺を差し置いて、女は落ち着き払った口調でこう言った。

「私は女神・・・・・・。シム・チャンミン、お前、大事なものを無くさなかったか」
「大事な、もの・・・・・・?」

首を傾げていると、女神(らしい)は片手をすっと上げて、泉からあるものを浮上がらせた。
そこに現れたのは・・・・・・

「ヒョン!!!」

俺の声は聞こえていないのか、ユノは目を瞑ったままびくともしない。
激しく不安に襲われながら、俺は女神に向かって叫んだ。

「あのっ、その人を返して下さい!これから大事なステージがあるんです!」
「その前に、私の質問に答えよ」

女神がもう片方の手を掲げると、驚くことにもう一人、泉の中からユノが現れた。

「うわっ、超ビックリしたぁ!!」

目を丸くして動揺丸出しの俺に、女神が問いかける。

「チャンミン、お前リアクションが良いな・・・・・・。さて、質問だが・・・・・・お前が落としたのはどのユンホだ」
「は?」
「“ステージの上でも優しいユンホ”か?それとも、“綺麗好きで器用で掃除が出来て、忘れ物をしないユンホ”か?」

女神がそう言った後、二人のユノは目をぱちっと開けて各々喋り出した。

「チャンミナ、ラクして良いんだよ。踊って疲れた時は、手抜いても良いんだよ。省エネで行こう!」
「チャンミナ、前髪がちょっと乱れてる。もう一回セットした方がいいよ。それからはい、これ。口付けるの嫌だろうから、水にストロー付けといた。名前入り」

どちらのユノも何となく不快で、俺は眉を寄せた。
俺が省エネモードになる事は確かにある。でもそれは手を抜いてる訳じゃない。
最後までやりきるため、色々と考えた末の選択・・・・・・俺なりの全力な訳で、ラクしてるのとは違うと主張したい。
それに、ラクをしたら良いパフォーマンスは絶対生まれない。
価値観が同じだから、ユノと一緒に歩んで来れた。
そして、綺麗好きなユノを此れ迄何度も望んだ俺だが、いざ実現すると違和感ありありで受け入れられない。
俺も拘りが強いから、主張のぶつけ合いになりそうだ。

「駄目です、女神さま。どちらも僕が欲しいユノじゃありません」
「そうか」
「はい。僕が無くしたユノは、ステージの上では世界一厳しくて、格好良くて・・・・・・でも、料理も掃除もろくに出来ないし、よく忘れ物するし・・・・・・面倒をかける子供みたいなユノです」
「そうか。それは、このユンホの事か?」

その直後現れたユノは、俺と同じ衣装を着て髪もセットしている、先程まで一緒に居たユノ、恐らく本物のユノだ。

「あ!そう、そのユノです!」
「チャンミン、お前は正直者だな。三人ともくれてやろう」
「えっ・・・・・・いや一人で充分!この人だけで!」

俺が本当のユノの腕を掴むと、女神はふっと笑い、呟いた。

「お前達の絆、この目で聢と見届けた。今後も二人共に精進せよ」

女神もユノの偽物も泉もサァーッと薄くなって、空気に溶け込むように一斉に消え去った。
一人残った本物のユノが、不思議そうに呟く。

「あれ・・・・・・?俺、今迄何して・・・・・・」

ユノが無事に戻ってきた。
嬉しさと安心感から、俺はユノにぎゅっと抱きついた。

「良かった・・・・・・戻って来てくれて」
「チャンミナ・・・・・・どうしたの?自分から抱きつくなんて」
「いや・・・・・・ああ、ヒョンだなぁと思っただけです」
「え?何それ」
「まあ、いいからいいから」






「――いいから、いいから・・・・・・」

そう呟きながら、ふと目を開けると・・・・・・

「・・・・・・ん?」

俺が居るのは、入隊先の寮のベッドの上。
抱いているのは、ユノじゃなく枕だった。
状況を理解した途端、猛烈な恥ずかしさに襲われ俺は悶えた。

「うわー・・・・・・なんて夢見てんの。バッカじゃん?うわー・・・・・・」

満足いくまで自分を貶して、少し冷静さを取り戻す。
ユノが入隊してからもうすぐ一年。
離れ離れの時間は想像よりも寂しくて、東方神起の再開を待ち望む俺がいる。
今は初めて関わる奴に囲まれて、コミュニケーションを取るのに神経質になる事も多い。
余計な言葉は要らず、表情や空気で会話するようなユノとの時間が、素直に恋しい。
そのせいなのか。こんなおかしな夢を見たのは・・・・・・
気を紛らそうと傍にある携帯を手に取った。
接続しっぱなしだったSNSに、新たな画像が更新されている。
殆どファンが投稿している物だが、タイムリーに情報を終えるのでたまにチラ見している。
沢山の写真の中に、見覚えのある姿を見つけた。
少し膨やかな頬を緩めて笑っている、小さな坊主頭の相棒。
赤い制服を違和感無く着こなしてキマってるように見えるが、腹回りの一部からもちゃくれたシャツがはみ出ている。
やはり、期待を裏切らない。

「そうそう、ヒョンはこういう男だよ」

夢の名残を引きずりながら、俺は笑みを零して呟いた。









『――・・・・・・もしもし?チャンミナ?』
『シャツが出てましたよ、ヒョン』
『え・・・・・・?あー!今日の写真見てくれたんだ。情報追うの早いじゃん』
『まあ、ユノペンですから』
『・・・・・・何か今日可愛いな。どうした?』
『そこはいつも可愛いと言ってください』
『あーそうか!うん、そうだね?』
『はっはっはっ』

ユノの優しさに触れて、疲れていた心が少し元気になった。
明日も早いので、そんな長話はせずに通話を切った。
元々俺らはそんなに沢山会話さないし、少し声を聞ければ充分だった。
きっとユノも同じだと思う。



女神さま。
俺はきっと、何度ユノを泉に落としたとしても、本当のユノを選ぶことでしょう。
天秤にはかけられない、どんな存在にも変えられない、たった一人のユノ・ユンホだから。
俺の・・・・・・ヒョンだから。









END



◇◇◇



久しぶりのリアル設定でした~。
なんとなく書きたくなってさらーっと書いたものです。
違和感無いようにリアルの二人を描写するのってほんとムズいですね。
まあ楽しかったので良しです!
そして、遂に10万拍手突破しました!!
ありがとうございます・・・・・・!
ほんと、私には勿体無さ過ぎる数です。
こんな妄想話にいつもお付き合い頂き、そしてUPする度に沢山の拍手と暖かいコメントを貰い、私の方が皆さんに元気付けられています。
これからも頑張ります・゜・(ノД`)・゜・♡

お礼にイラストを載せます。
カラダノキオクの三人でお祝い~



10万HIT



バイクは停車中ですから違反じゃ無いですよ~(^_^)
一番難しかったのはバイクでした・・・・・・
ドフンは小学生くらいで、チャンミンも若めに・・・・・・
そういえば、このお話のユノとチャミって6歳差くらいあるんでした。
忘れてた~
それではこのへんで・・・・・・
ご覧頂きありがとうございました!
コメ返はまたまとめて後日お返し致します。



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2016/07/03 (Sun) 10:53 | EDIT | REPLY |   

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