カラダノキオク ~旦那様、ご機嫌いかが?~

  23, 2016 07:35


夕めし時。
ドフンとチャンミンが笑顔でやり取りするのを、俺は傍らで聞いていた。

「チャンミン、今日の弁当も可愛いかったね。食べんの勿体無くて渋っちゃった」
「はは。弁当箱、綺麗に空っぽだったけどな」
「だって食欲には勝て無いもん。部活超ハードだし」

最近、チャンミンはドフンの弁当作りに凝っている。
数日前、チャンミンが弁当を詰めている様子をチラ見して俺は驚いた。
卵焼きやハムが花型だったり、所々型抜きを使用したりして、かなり手の込んだ弁当に仕上がっていた。
毎回ドフンの反応が良いから、チャンミンも作り甲斐があるのだろう。
最近、夕めしん時の話題はめっきり弁当のことだ。
俺は会話に加勢せず、メシを食いながらただそれを聞いている。
俺に寄越されるのは、特に飾り気の無いシンプルな弁当だからだ。
見た目や品数に差がある事は、別に不満では無い。
食えれば中身は何でも良い。
ただ・・・・・・
弁当作りに夢中なチャンミンを見ていると、もやもやするというか、ぶっちゃけ苛つく。
ドフンを喜ばせたくて、褒めて貰うのが嬉しくて頑張ってる。それがありありと伝わって来るから。
俺の弁当を詰めるのなんて、チャンミンにとってきっと単なる作業でしかない。
つまり俺はドフンに嫉妬してる訳だが、父親としてのプライドがあるんで口出しはしない。









数日後。
また弁当の事に話題が流れて、ドフンが俺に話を振ってきた。

「あのウインナーとハムの、旨くなかった?」
「どんなだよ、それ」
「ほら、花みたいになってるやつだよ」
「俺のには入ってねーの」
「え?」

ドフンは、俺の弁当も同じ内容だと思っていたらしい。
そういや、ドフンの起床時には既に、何時も弁当は閉じて包んである。

「チャンミン・・・・・・あれって、俺にだけ?」

ドフンの問いかけに、チャンミンは少し気不味そうに笑って答えた。

「ん?うん、まぁ」
「そうなんだ。俺、知らなかった」

俺の立場を気遣ってか、ドフンが複雑そうな顔をする。
誰に似たのか、コイツは男にしては少し優し過ぎるとこがある。

「俺は食えれば何でもいいの。んな手の込んだ弁当持参してどうするよ、くそ忙しい職場に」

さも興味が無さそうに俺が言うと、ドフンは「そっか」と呟いて安堵の表情を浮かべた。
俺はドフンに嫉妬してるが、何か求めている訳じゃない。
今まで通り、チャンミンの弁当を楽しみにして幸せそうに食ってればいい。
チャンミンが、遠慮がちに俺に問いかけた。

「もしかして、ユノも可愛い弁当がいい?」
「いらねー。余りもんでも詰めとけ」
「そ」
「なんなら買って済ましてもいいぜ」
「別に、んなこと言ってないじゃん」

ウソはついてない。
俺が欲しいのは凝った弁当じゃ無く・・・・・・目の前で、拗ねて口尖らしてるお前だ。
ベッドに引きずり込んで虐めたいとこだが、今夜は待機なのでそれも出来ない。
一番食いたいもんがすぐそこにあるのに、手を出せないとは・・・・・・
俺は溜息をつくと、のろのろとメシを口へ運んだ。









休みを挟んだ、その翌朝。
俺を仕事に送り出す間際、チャンミンがぽつりと言った。

「ゴメン。弁当のこと」
「別に気にしてねーって」
「ウソ。見てりゃ分かる」

曇った表情のチャンミンを見て、見栄を張るのは違うと気づく。
ここは素直になるのが正解だろう。

「バレてたんか。ドフンに嫉妬してんの」

笑って白状すると、チャンミンは少し面食らった顔をして、それからふっと口を緩めた。

「はい、弁当」

差し出された包みを受け取る。
本当は、これだけでも充分幸せなことだ。
子育てに追われ、過去の罪に縛られながらも無事チャンミンと結ばれた。
それだけで幸せだと思っていたのに、俺も随分欲張りになってしまった。

「行ってくる」
「ん。気を付けてな」
「うぃー」

チャンミンに見送られながら、俺は初心に戻ったような気持ちで家を出た。






昼。
デスクの上で弁当を広げた俺は、中身を目にした途端フリーズした。
白飯の上、綺麗に舞った桜澱粉がピンクのハートを形作っている。
その他にも、ドフンの弁当に入ってるような凝った作りのおかずが数品詰め込んである。
一時見ただけで分かる、それは正に、愛妻弁当そのものだった。

「バッ・・・・・・何してくれてんの、アイツ・・・・・・」

知らぬ間に、顔が随分と火照っていた。
目を覆って熱を飛ばしていると、弁当を見た隣の奴が声を上げた。

「うわ!お前何ソレ!?嫁さんと寄り戻したの?」
「いや・・・・・・」
「何なに!?誰の仕業だよ!」
「うっせーな・・・・・・。おめぇ、ぜってー誰にも言うなよ」

コイツはチャンミンの存在を知らない。
一人興奮する同僚はシカトして、俺は弁当の中身を口へ運んだ。









仕事帰り、家の付近で、丁度部活帰りのドフンを見つけた。
クラクションを鳴らして窓を開けると、ドフンは俺に気付いて声を上げた。

「父さん!」
「乗ってけ。今そっち行く」
「うん」

車を回すと、ドフンを拾って助手席に乗せた。
野球部のユニフォームを身に付けたドフンが、嬉しそうに報告する。

「俺、次の試合も先発だって」

ドフンの背番号は1番。ピッチャーとしてチームで活躍している。

「おお!凄ぇじゃん。頑張れよ、エース」

俺の言葉を聞いて、ドフンが顔を綻ばせる。

「父さんに褒められるのが、一番嬉しい」

素直な告白に、じんと胸が熱くなる。
ふと、親父の死に涙して苦しんだ昔を思い出す。
父親という存在がどんなに尊いものなのか、それは俺がよく分かってる。
親父が死んでからもずっと、俺はその面影を求めていた。
自分は今、ドフンにとって大切な“父親”という存在なのだ。
そんな当たり前の事を改めて実感し、とても嬉しくなった。

「俺も、お前の父ちゃんで良かったよ」

そんな照れくさい会話をして、二人一緒に笑った。
俺が父親の顔をするのは、ドフンにだけだ。
それぞれが、それぞれに見せる特別な顔がある。
チャンミンが、ドフンに頑張って弁当作ってたのもそうだ。
当たり前のことをドフンに気付かされた。
俺もまだまだガキだな。






帰宅して靴を脱いでいると、キッチンからチャンミンが出て来た。

「あれ?二人一緒?」
「うん。偶然父さんに会って、拾って貰った」
「へえ」

ドフンは「あちぃ!」と上のユニフォームを脱いで、風呂へ直行した。
二人きりになった直後、チャンミンが笑いながら俺に問いかけてきた。

「ねえ、旨かった?弁当」
「・・・・・・よく覚えてねぇ。目撃されないように詰め込んで食ったから」
「あっそ」

チャンミンは、腕を組んで苛々を醸し出している。
おっと、この対応は間違いか。
超ハズいけど、ここは素直になるべきだよな。

「嘘だよ。旨かったし・・・・・・嬉しかった。さんきゅ」

顔が赤い自覚があったので、チャンミンの頭をぽんと叩いて、あとは部屋へ向かおうとした。
後ろからくいっとスーツを摘まれて、振り返ると・・・・・・

「ユノにしか見せない顔も、あるんだからな」

チャンミンは頬を赤らめ俺を見上げて、恥ずかしそうに呟いた。
そうやって、直ぐ簡単に煽る。
知ってんだろ。俺がどんなにお前を好きで、欲しがりなのか。
責任取れよ・・・・・・
腕を掴んで身体を引き寄せると、俺は耳元で囁いた。

「デザートはいつ食わしてくれんの?」

その発言に、チャンミンが顔を顰める。

「さむい事言うなよ、オヤジ」
「るせぇよ」

なんだかんだ言いつつ、笑みを漏らしながらキスをしようと顔を寄せ合った。
その時。

「チャンミーン!下着忘れたー!」

風呂場からドフンの叫び声が聞こえて来て、俺とチャンミンは苦笑しながら顔を離した。
どうやら、可愛い息子はまだ、イチャつくのを許してくれないらしい。

まあいい。
デザートは、食後にゆっくり頂くとしよう。









END



◇◇◇



係長が出張の間にカラダをブチ込んでしまった。
パパ達、まだまだお若いようです。
ユノ、言葉使いきたないなあ。そして作者なのにユノ視点とても難しかった。
連載続けてて思ったけど、ドフン君は確実に受け男ですね。
ピッチャーだから、彼氏はキャッチャーがいいかしら?なんてまた妄想が・・・・・・



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Comment 6

ジェイソン  

熟年夫婦め、、、❤︎

息子のムスコ事情www.お相手キャッチャーとか…⁈ お弁当の事が、最期のムスコ事情で一瞬飛んじゃいました💦

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