カラダノキオク ~よくできた息子でしょう?~



その人は、ずっと俺の傍に居た。
一番幼い時の記憶を探っても、もう当時から、当たり前のように傍に居た気がする。
その人は全くの他人でありながら、時には兄の様であり、時には親友の様であり・・・・・・母の様でもあり・・・・・・

そして、父さんの恋人である。

しかし、”父さんの恋人”と呼ぶには、俺と彼はあまりに親密過ぎる。
そもそも、彼が恋人というポジションに当てはまると気付いたのが遅かった。
父さんに事実を告げられてからも、俺はチャンミンが父さんの恋人であると、なかなか認識出来なかった。
二人の関係を、直ぐには需要出来なかった。
俺には実の母親が居るのに、父さんは男のチャンミンとデキてる。
常識という知識を覚えてからは、それをコンプレックスに思った時期もあった。
不貞腐れ、『男同士で恋愛とか恥ずかしく無いの?』と二人に当たった日もあった。
父さんは普段優しい方だが、その時ばかりは最大級に怖かった。

『ドフン・・・・・・家族に誇り持てねぇなら、ここ出てけ』

低い声で、そう呟いた父さんの目は本気だった。
父さんは、俺よりチャンミンが大事なのかも・・・・・・
傷付いてひっそり泣く俺に、チャンミンは言った。

『そんな訳無いだろ?まあでも、ユノは分っかりにくいからなぁ。あまり喋らないし』

それからチャンミンは、昔の話をした。
俺の記憶にも無いような、知らなかった昔の話を。
ある夜には、チャンミンが誘拐した俺を父さんが必死に探してくれたこと。
二人が関係を持ってからも、父さんは俺を優先することが多くて、チャンミンは沢山傷付いたこと。

『ユノが俺を大事にするのは・・・・・・お前を一緒に育てたから・・・・・・ってのが大きいんじゃないかな』
『えー・・・・・・』
『俺とユノ、恋愛関係っていうよりもう、相棒みたいな感じだぜ』
『そうかな・・・・・・?』
『ユノが言った“家族”はきっと、此処で暮らす俺達三人のこと・・・・・・。誰が一番大事とか、そんなんじゃ無くてな?』
『・・・・・・・・・・・・』
『お前が居なくなったら、ユノきっと生きてけないぞ』

チャンミンはそう言って笑った。
俺をここまで育ててくれたのは、他の誰でもなく、父さんとチャンミン。
男同士とか恋愛とかに囚われる前に、俺達は各々、互いが大切な家族というまとまり。
そう思ったら、心の中でつっかかっていたモノが解消された。
俺は二人に、謝ることさえ出来なかったけど・・・・・・

『父さん・・・・・・行って来ます』

翌朝。声をかけた俺に、父さんは笑顔で応えてくれた。

『おう。気ぃ付けてな』

それ以来、父さんが俺にキレたことは無い。









俺は今、中学三年だ。
ばあちゃん、チャンミンのお母さん含め、相変わらず家族円満に暮らしている。
だけど・・・・・・
俺にはひとつ、気がかりなことがある。



「ドフン、ほんっとユノに似てきたな」
「それ、最近よく言われる」

夕食を準備しながら、チャンミンとそんな会話をしていた。
中学二年あたりから俺は急に背が伸びて、顔つきもシャープになった。
高かった声も、男らしい低音に変わった。
父さんそっくりな外見へ、日々着実に変化している。

「おお、ヒゲ生えてんじゃん!」
「チャンミンはヒゲ無いよな」
「あるし。目立たないだけー」
「だって、素がな・・・・・・顔、女みたいだもん」
「あ、貶したな!生意気」
「ち、違うよ・・・・・・!褒めたんじゃん。そこらの女子より、綺麗だよ・・・・・・」
「お前、口説く相手間違えてんぞ」

うっかり赤面した俺を見て、チャンミンがケラケラ笑う。
ああ、俺何を口走ったんだろう。
別に男は好きじゃ無いけど、チャンミンの外見は文句無しに綺麗だから仕方無い。
その時だった。
ふと、背中に寒気を感じた。

「・・・・・・・・・っ!?」

ゾクリと身体を震わせ、後ろを見る。
そこに居るのは、父さん一人だけ。
新聞に視線を落としながら、のんびりと口元へビールを運んでいる。
何とも無いように振舞っているけど、きっと・・・・・・
今父さんは、俺を睨んだんじゃないか?そう悟る。
時折、何処かから視線を感じる時がある。
その瞬間というのは、俺とチャンミンがじゃれあってる時で、近くには必ず父さんが居る。
父さんは俺に嫉妬している・・・・・・気がする。
だけど俺に接する態度は、昔から何ひとつ変わら無い。
もしかしたら父さんは、俺に嫉妬してること自体無自覚なのかも知れない。
俺の外見が、母さん似だったら良かったのに。
母さんの外見は、チャンミンに良く似ている。
母さんに似たなら、女同士がじゃれあってるみたいで不快を煽らずに済んだのに。
―――俺は知っている。
『俺とユノ、恋愛関係っていうよりもう、相棒みたいな感じだぜ』
以前、チャンミンはそんなことを言っていたけど違う。
二人は今も、絶賛恋愛中だ。



根拠、その一。
こっそりリビングを覗くと、チャンミンはよく、膝枕しながら父さんの耳かきをしている。
しかも、たまにキスしている。
これはまだ可愛い方だ。
根拠、その二。
俺が家を不在にした翌日は、寝室のゴミ箱が必ず空になっている。
不自然過ぎる!!
俺が居ないタイミングを見て、ここぞとばかりにヤッてるに違い無い。
そして事後処理で溜まったゴミを、証拠隠滅のために捨てている。
そう考えるのが妥当だろう。
証拠、その三。
同じく家を開けた翌日は、チャンミンが高確率で襟のある服を着ている。
父さん・・・・・・いい歳して跡なんか残すんじゃないよ・・・・・・
証拠、その四・・・・・・
というように、思い当たる事象は沢山ある。
俺の目を忍んでやってるのが分かるから、余計気まずい。
世間の夫婦なんて、皆そんなもんなのかも知れないけど・・・・・・









そんな俺は、今日から五日間野球部の合宿へ出かける。
出発直前。

「頑張れよ、ピッチャー」

チャンミンが、ニッコリ笑顔で弁当を差し出してくれる。

「あんがと」

俺は弁当を受け取ると、父さんに強請った。

「帰って来たら焼き肉ね」
「よっし。腹空かして帰って来い」
「はーい!」

二人に見送られ、俺は家を出た。
マンションを出て数歩進むと、脱力して溜め息をついた。
実は、野球部の合宿は三日間で終わる予定なのだ。
それを二人には五日間と伝えた。
実質空いた二日間は、友達ん家にでも泊まろうと思う。
これは、今も仲睦まじい二人へ対する、俺なりの気遣い。ささいな“親孝行”。
貴重な二人きりの時間だ、有効活用してくれよ・・・・・・
マンションを見つめ、二人を思い浮かべて小さく微笑む。



父さん、チャンミン。

俺、よくできた息子でしょう?








END



◇◇◇



本編からだいぶあとのお話。
10年以経ってるし、ホミンちゃんはもうアラフォーじゃないか!ってね・・・・・・(笑)
このシリーズ、何でか凄く人気が出ちゃって(嬉しいんですよ?)私自身その流れについて行けず・・・・・・
なんか、カラダノ~は他人の作品みたいな気がしてます。
新作のうpも少し勇気要りましたけど、まああたしの作品だし好きに書かして貰おうと開き直りました(笑)
ちょっとでも楽しんで頂けたらいいな。
現実的に簡単に受け入れられないに決まってます。
そう、これはフィクションです!深く考えず楽しみましょう!(笑)
※カラダノ~のシリーズについて、返信を促すコメント頂きました。
とても嬉しいのですが、現在コメ返の形式として、一週~二週にいっぺんの頻度でまとめてお返しする方法を取ってます。
作者がマイペースで申し訳ありませんが、いま暫く御待ち下さいね。
そしてごめんなさい、私愛人という単語の意味を取り違えて、ました。
愛人から恋人へ訂正済みです~
かお☆んさま、ご指摘ありがとうございます。



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5 Comments

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2016/05/07 (Sat) 17:01 | EDIT | REPLY |   

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2016/04/29 (Fri) 20:55 | EDIT | REPLY |   

723621mam  

親孝行の成果でおにーちゃんになっちゃうかもよ(笑)

2016/04/29 (Fri) 13:37 | EDIT | REPLY |   

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2016/04/29 (Fri) 13:20 | EDIT | REPLY |   

ジェイソン  

わぁ〜い大好き!続編ダ💖。

2016/04/29 (Fri) 10:38 | EDIT | REPLY |   

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