四畳半のコイビト



俺は今日も、この四畳半の畳の上で目覚め、一日の終わりを迎える。
女のような顔をした、年下の男と共に。






~四畳半のコイビト~






外から帰ると、ボロッちい扉は鈍い音を立てながら俺を迎え入れた。
狭ぜまとした暗い台所を通り、四畳半の小さな部屋へ辿り着くと・・・・・・

「めしの準備してんじゃなかったのかよ・・・・・・」

同居人は、横たえたギターと一緒に呑気に眠っていた。

「おいシム、豆腐買ってきたぞ。味噌汁作ってくれよ」
「うむぅー・・・・・・」
「おいって」

声をデカくしても、一向に起きる気配が無い。
良い夢でも見ているのか、笑みを浮かべながら、ギターへ頬を擦り寄せている。
俺はぼそりと呟いた。

「ギターよ、そのポジションを俺に譲る気はないか・・・・・・」

シムが身をよじった拍子に、ギターがポロンと音を立てる。
Aマイナーの、悲しげな音が鳴った。

「譲る気はないってことだな・・・・・・」

俺は一人、ふっと笑った。










俺達が出会ったのは、駅前の大通りだった。
仕事から帰る途中、俺は聞こえてくる歌声に足を止めた。
道端に、ギターを抱えバラードを歌う男が一人。
男にしては綺麗な歌声と、優しいメロディーに惹かれた。
俺は近くのベンチへ腰掛けて、歌が終わるまで聞き入った。
帰る頃にはギャラリーは引いて、客は俺一人だけだった。
財布を見ると、万札と千円札しか無かった。
金に余裕がある暮らしじゃない。
万札の出費はデカいけど、明日は給料日なのでまあいいか・・・・・・
集金の缶箱に万冊を入れると、男は大きな目を更にでかくしながら、俺を見上げて言った。

「こ、こんなに・・・・・・?」
「良いもん聞かせて貰ったからな」
「で、でも」
「頑張れよ、兄ちゃん」

とっとと去ろうとする俺を、男は呼び止めた。

「・・・・・・ちょっと待って!」

その声に振り返ると、男は暫く黙ったあと、躊躇いがちに言った。

「これは・・・・・・お返しします」
「良いよ、貰っとけって」
「・・・・・・あの・・・・・・要らないから・・・・・・その代わり・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「今夜一晩、泊めて貰えませんか?」
「は?」
「か、帰る場所が・・・・・・無くって・・・・・・」

急な申し出にかなり戸惑った。
結果的に、俺は了承してしまった訳だが。
しゅんとして俺を見上げる男は、捨て犬を連想させた。
断った方が、気分が悪くなると思った。
後で話を聞くと、男は安定した稼ぎが無いため、家賃滞納で追い出されたらしかった。
それがきっかけとなり、男は今も、俺の家にだらだら住み着いている。
男の名前はシム・チャンミン。
ソングライターとして活動しているが、何処の会社へも所属していない。
路上での引き語りが主で、稀に小さなステージで歌って金を貰っている。
稼ぎなんて殆ど期待できない。
家事は任せてるが、生活費は半分以上俺が負担している。
そして、こんな四畳半の狭い部屋に男二人で暮らすのは、とても窮屈だ。
俺には損しか無いような、居候男を追い出さない理由はたったひとつ。
しかし、それをシムに告げたことは無い。
今すぐ白黒つける必要は無い。
悪く言えば、俺のだらけ癖が作動している。
なんだか良く分からない今の関係も、そこそこ居心地が良い。
たまに、もどかしいけど・・・・・・









窓を開けて煙草をふかしていると、シムが隣へやって来た。

「頂戴」

すいっと俺の唇から煙草をさらい、咥える。
煙を吐き出すと、小さく笑って言った。

「あー、ユノさんの味がする」
「・・・・・・俺の味なんて知らないだろ」
「だって、何時もこの銘柄じゃない。きっと染み着いてる筈だよ」

シムの視線は、俺の唇に向いて暫く留まった。
煽りやがって、この野郎。
俺の気持ちを知ってるのか?試してるのか?
『モドカシイ壁なら、壊してしまえ・・・・・・』
そんな歌詞、お前最近書いてたよな。
便乗するよ。

「なら、直接味わってみるか?」
「へ・・・・・・?」

薄いサクラ色の唇に、口付ける。
柔らかくて、暖かい。
暫く女が居ない俺には久々の感触だ。
唇を離した時には、シムは顔を真っ赤に染めていた。

「ユ、ユノさ・・・・・・な、何!?」
「・・・・・・場所代だ、ばーか」
「ええっ」

シムの手から煙草を奪い、また蒸かす。
空へ消える煙をぼんやり眺めていると、隣からぼそりと聞こえた。

「で、でも俺・・・・・・電気代も、ガス代も払って無いよ・・・・・・?」

戸惑っているシムを見て、俺はつい吹き出した。

「ナニソレ?お前、誘ってんの?」
「ち、ちがっ!」

こいつが天ボケ発言するのは良くあることだ。
深い意図は無いのかも知れない。
俺はシムの頭から爪先まで見下ろし、ニヤリと笑って言った。

「んじゃ、明日は電気代を頂くかなぁ・・・・・・」
「っ・・・・・・」
「そん次はガス代。あー、めし代も貰わないとな・・・・・・」

シムは耳まで真っ赤にして、俺の身体をグイッと押した。

「もうやだ、ユノさんのスケベ!」
「自分の身守るためにも、金稼ぐんだな」
「言われなくたって・・・・・・」

シムは顔を赤くしたまま、そっぽを向いた。
別に今のままでも、追い出しはしないさ。
その代わり、いつか俺に食われると思うけどな。
笑う俺にチラリと視線を寄越し、シムはぼそりと呟いた。

「このエロオヤジ・・・・・・」
「色っぽいと言いたまえ」
「ふん・・・・・・」









今日も俺は、この四畳半で一日を終える。
シムと一緒に、夜空を眺めながら。
こんな日がずっと続けばいいと、密かに思う。
まあ、気持ちを打ち明けるのは後日に取っておこう。
もう少し・・・・・・
あたふたする、子供みたいなシムが見たいから。









END



◇◇◇



ミンホの反動でホミン書きたくなったさ!
昨日の夜急に浮かんできたんです、ストーリーが。
ユノはアンニュイないけめん、チャミは天ボケかわいこちゃんに仕上げました(*´ω`*)
最近は作中でチャミに歌わせるのがブームです。
この二人もnightcallみたいに単発うpしていきたい。
題名コイビトなのにコイビトになってないしね(笑)
勿論えっちも書きたい~♡
愛すること~のコメへん、後書き、今日中に上げます。



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3 Comments

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2016/04/29 (Fri) 09:33 | EDIT | REPLY |   

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2016/04/26 (Tue) 16:36 | EDIT | REPLY |   

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2016/04/26 (Tue) 12:11 | EDIT | REPLY |   

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