愛することは、君が教えてくれた 21



「見て見て、ユンホの特集やってる!」

隣から、興奮した声が聞こえてくる。

「ほんとだ!めちゃ格好いいよね」

女子高生ふたり組が、はしゃぎながら雑誌を覗き込んでいる。
そこに載っているのは、甘いフェイスで微笑み、様々なポーズを決める俺の恋人。
俺は溜め息をついた。
全く、モテる恋人を持つと嫉妬が絶えないから困る。
まあ、魅力がダダ漏れてるような男だ。
コンビニの中で大声で騒ぐのも仕方無い。
後ろからチラリと雑誌を覗き込み、俺は内容をチェックした。
うん。この雑誌は、発売前に雑誌編集社で働くテミナの伝で既に入手済みだ。
身体を揺らした女子高生がぶつかって来て、俺を見た途端顔を赤らめた。

「あ・・・・・・す、すいません」

俺はニッコリと笑い、話しかけた。

「ユンホ、格好良いよな」
「え・・・・・・?」
「俺、友達なんだ」

ああ、恋人と公言出来ないのが惜しい。

「ほ、本当ですか・・・・・・?」

丁度その時。
すぐ目の前に、コンコンと窓を叩く男が一人。

『チャンミン、お待たせ!』

声ははっきり聞こえないが、そう言っているのが分かった。
俺は直様出口へ向かった。
背後から、女子高生の叫び声が聞こえて来る。

「きゃあああっ。ちょっと、今のユンホ!?絶対ユンホだよね!」
「うんうん!さっきのイケメン、マジで友達?やばーい!」

ニヤニヤを抑えきれない。
俺は口を覆いながらふふっと笑った。
ああ・・・・・・優越感。



































すぐ近くの駐車場までユノと歩き、車へ乗った。
給料を貯めて買った新車だ。
車体が高めの、ゴツいデザインのブラックワゴン。
助手席へ乗り込んだ途端、ユノは瞳を輝かせながらはしゃいで言った。

「おー、綺麗!視界、広いし高い!」

身体を上下に揺らして笑っている。

「全く・・・・・・今日もなんて安定の可愛さだよ」

俺はステレオを弄りながら呟いた。

「ん?何か言った?」
「べっつにー」

出発と同時に、音楽がかかる。
選曲は・・・・・・

「“September”だ!」

冒頭のメロディーを聞いて、ユノが笑顔を浮かべた。
ノリの良い爽快なイントロがかかり、同時に、車が晴れた街へと滑り出す。

「ドゥーユーリーメンバー ザトェティワンストナーイト・・・・・・ ふーふーふーん」

ユノがそう口ずさむのを聞いて、俺は吹き出した。

「ははっ。最初だけかよ、歌えんの」
「だって、あと分かんないもん」
「あんだけラジオで洋楽推してんのに?」
「そんなもんでしょ!」
「マジかよ」
「ねえ、何処行くの?」
「ま、お任せあれ」

サビになると、ユノは身体をリズムに乗せながら、また口ずさんだ。

「パーディアー! セィドユリメンバー パーディアー! ふふふふふーんふーん・・・・・・」
「やっぱりそうか・・・・・・」



あの報道から半年。
ユノは今も、モデル兼カフェ店員として働いている。
アンチしてる奴や、根拠の無い捏造記事を目にすることはよくある。
しかし、アイドル並みの人気は今も健在だ。
本人曰く、以前より少し落ち着いたそうだが。
俺もユノも、症状が良くなった今も薬を飲み続けている。
イトゥクさんの診療も、外来で継続している。
病気の根源を完全に立ち切れる日が来るのか、それは分からない。
そもそも、精神病に“完治”という言葉が存在するのだろうか?
体がうっかり風を引くように、心が弱って風邪を引く時だってある。
風邪を引き続けたら悪化する。
何時だって、誰だって、病気や増悪と隣り合わせだ。
おっとこの辺にしよう。
俺のいけないとこは、考えすぎるとこだ。



堤防に立ち、広い海を目の前にして、二人並んだ。
心地よい風が肌を撫でて、俺は大きく息を吸い込み目を閉じた。

「はぁー・・・・・・デトックス」
「うん。気持ちいいー・・・・・・」

ユノも目を閉じて、大きく背伸びした。
ゆっくり目を開けると、海をじっと見つめて言った。

「僕ね・・・・・・チャンミンに出会って、いっぱい泣いた。本当に、いっぱい・・・・・・。チャンミンが、閉じ込めてた気持ち、見つけてくれたから・・・・・・」
「そっか・・・・・・」
「それでね・・・・・・僕今・・・・・・生きてて楽しいーっ!!」

ユノが、海に向かって叫んだ。

「文句無しの笑顔だな!」

俺が笑ってそう言うと、ユノも笑みを深くした。
風に吹かれ、流れた前髪を耳にかけながら、俺を見つめる。

「でも僕、チャンミンに何もできてない。してもらってばかりで・・・・・・」

俺は首を振って答えた。

「いや、沢山貰ったよ」
「そうかな・・・・・・」
「ユノのおかげで、ハンサムになっただろ?」
「ふふっ」
「それに、性格ブスが良くなったっつうの?優しさも・・・・・・多分、強さも教えて貰った。今結構、そんな自分が好きなんだ。前は、自信なんて全然無かったけど・・・・・・」

ユノは暫し黙ってから、少し照れ臭そうに言った。

「僕は・・・・・・最初に会った時から分かってた。チャンミンは、見た目も中身も綺麗な人だって」
「え・・・・・・?」
「始めから、いいと思ってた」

ふふ、と笑い、遠くへ視線を投げる。
そして、今更「海綺麗だね」なんて口走る。
照れ隠しかよ。くそ、可愛いな・・・・・・
周りを見て人が居ないのを確認すると、俺はユノに顔を寄せた。

「え?うわあ」
「キスさせろ、この野郎」
「ふっ・・・・・・」

唇をくっつけると、そまま笑い合って互いの鼻から息が漏れた。
人を想うことで幸せな気持ちになる。強くなれる。勇気を持てると知った。
ユノに出会わなきゃ、きっとこんな自分にも出会えなかった。

「ああ・・・・・・それと」

一番大事なことを、伝え忘れてる。

「何?」

首をかしげたユノに、にっこりと微笑みかける。
ユノもまた、俺を見つめて笑う。
その笑顔が、かけがえの無い宝物。
俺は今、堂々とこう言えるよ。



ユノ・・・・・・

「愛することは、君が教えてくれた」









END



◇◇◇



これにて、愛することは、君が教えてくれた 本編は終了致します。
難しいテーマでしたが、沢山の拍手、暖かいコメントをどうもありがとうございました!
お陰様で、最後まで書ききることが出来ました。
あとがきは後ほどうpしたと思います。
寂しいので、「人気モデル、ユンホ君の後日談」もしくは「イケメンオタク、チャンミンの日常」と称して番外編をうpする予定です。えっちもまだまだ書き足りないです。
ということで・・・・・・
店長シリーズのように、恐らく今後も続くと思われます(笑)



>『愛することは、君が教えてくれた』1~21話



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6 Comments

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2016/08/28 (Sun) 23:21 | EDIT | REPLY |   

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2016/04/29 (Fri) 09:23 | EDIT | REPLY |   

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2016/04/26 (Tue) 06:38 | EDIT | REPLY |   

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2016/04/25 (Mon) 22:28 | EDIT | REPLY |   

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2016/04/25 (Mon) 16:17 | EDIT | REPLY |   

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2016/04/25 (Mon) 08:01 | EDIT | REPLY |   

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