愛することは、君が教えてくれた 13




































ある夜。
行きつけの飲み屋にキュヒョンとテミナを呼び寄せた。

「・・・・・・って事だから、今日は俺を盛大に祝ってくれよ、お前ら」

息揚々と宣言する俺を、二人はポカンと口を開けて見つめる。

「シム、お前何時からそんな妄想が得意になったんだよ」
「先輩、怒り狂い過ぎておかしくなった?」

無礼な発言をかます二人に、俺は大きく溜息をついた。

「お前ら、ストロベリーナイト聞かなかったのか?」
「聞いたよ。でも“君がハンドクリームを塗ってくれたからどうしても手を洗いたくない”がお前で、その相手がユンホだなんて・・・・・・」
「そんで二人が今付き合ってる?そんなん、信じられる訳ないじゃん」

丁度その時、ユノからカトクで連絡が来た。

『何処にいる?』

席の場所を打ち込んで返信する。
後はユノが来るのを待つのみだ。
これでやっと信じて貰える。
程なくして、個室の麩がゆっくりと開かれた。

「こんばんはー・・・・・・」

ユノが、遠慮がちにひょっこりと顔を出した。

「隣座って」
「う、うん」

ユノには、恋人として友人に紹介したいと予め伝えてある。
着席したユノと視線を合わせると、俺は改めて二人に報告した。

「恋人のユノ」
「よ、宜しくお願いします」

キュヒョンとテミナは、再び口を開けて固まってしまった。






「脚本は俺が書いたんです。小説書くのが趣味なもんで」
「もう、先輩の怒りようったら半端無かったですから。俺も断れなくて、仕方なく女役引き受けたんですよ。あ、勿論キスもしてないです。あれはただのフリ」

アルコールで愉快になった二人は、あの計画についてベラベラと口走り俺に大恥をかかせた。
それを聞いたユノが、安堵したように、溜息をついて言った。

「良かったぁー!あれ見た時、もう凄くショックだったの」
「先輩が女の子とあんなスマートに絡むなんて、無理ですよ!」

テミナに続いてキュヒョンが言う。

「そうそう。母親と妹にしか触れないって、堂々宣言するような奴だしね」

それを聞いたユノは、瞳を丸くして呟いた。

「そうなの?俺には結構ぐいぐい来るのに。経験少ないの、疑うくらい・・・・・・」

テミナとキュヒョンは、興奮した様子で「えー!」と声を上げた。
俺は遂に我慢出来なくなり、まだまだ続きそうなやり取りを遮った。

「だぁーっ。いいだろべっつに!俺は好きになったらとことん尽くすタイプなの。お前らが一番よく知ってんじゃん」
「まぁそうだけど」
「これ以上個人情報を詮索するなよ」

すると、テミナが心外そうに言った。

「何言ってんの。こんなに美味しい話題なんてそう無いんだから、根掘り葉掘り聞かせてよ。ねえリーダー?」
「うんうん。妄想のネタを恵んでくれ。ケチケチしないで」
「お前らなぁ・・・・・・」

俺達のやり取りを聞いていたユノが、笑いながら言った。

「本当に仲良いね。凄く楽しそう」
「そうか?ただのオタクの集まりだぜ」
「いいじゃない別に。なーんか羨ましい」

それを聞いたテミナが、目をキラキラと輝かせながら言った。

「じゃあ、是非仲良くしてください!僕ファッション誌の編集やってるんですけど、ユンホさんのファンなんです」
「そうなの?嬉しい!宜しくね」

俺はユノと打ち解けるまでだいぶ苦労したってのに、何なんだよ。
恨めしげに二人を見ていると、ユノがにっこり笑顔で俺に言った。

「チャンミンのおかげで、友達出来て嬉しい」
「・・・・・・あっそ?」
「うん!」

まぁ、許してやるか。
幸せそうだし。






居酒屋を出た後は、四人でカラオケに入った。
全員テンションが出来上がっていて、とっくに平静さを欠いていた。

「 ただ重なりあってぇー 愛を確かめて
  転げ合ってぇー 口づけ交わしたって
  まだ猛―烈に切なーああーい
 Rock with U―!
 無茶苦茶になった感情
 Rock with U―・・・・・・
 2人弾けた愛情
 Just with U ―U― U― U―! 」

「凄い、めちゃ旨い!」

ユノが目をきらきらと輝かせて、熱唱する俺を見つめる。
テミナも驚いた風に言った。

「先輩、いつの間にコンプリートしてたの!?もうご本家様って感じ!最高!」

シャウトの合間に俺は、笑顔でマイクを振るユノの額に、ぶちゅっとキスをした。

「うわぁっ、ビックリすんじゃん、チャンミン!」

文句垂れてても笑顔なのが可愛い。
ニヤリと口を釣り上げながら、親指を立ててそれに応えた。
テミナは先程のテンションと一転して、顔を顰めながらぼそぼそと言った。

「ねぇリーダー・・・・・・あの人ついこの前まで『リア充滅びろ』とか言ってなかった?」
「ああ。奇跡的な変わりようだな」

何とでも言ってくれ。
俺は好きなものには一途だという、ただそれだけだ。
隠すことでも恥じることでも無い。
勿論、相手はユノ以外有り得ない。










カラオケの後、終電の時間がとっくに過ぎていたので、四人とも街中から一番近い俺の家へ雪崩込んだ。
そして・・・・・・
何故か今、俺のベッドにはテミナとヒュヒョンがひっついて眠っている。

「ったくアイツ等・・・・・・家主の俺を差し置いて・・・・・・」

ブツブツ文句を言っていると、カーペットの上に寝転がったユノが、トロンとした眠そうな目で俺を見上げ、言った。

「楽しかった・・・・・・。こんなに笑ったの、久しぶり」
「そ。疲れてない?」
「全然、平気」

そう言いつつも、程なくしてユノは眠りについてしまった。
家に来た時から、既に眠そうだったもんな。
微笑みながら眠るユノに、そっとキスを落とす。
本当はもっと先へ進みたい・・・・・・と思っている。
だから、今のライトな触れ合いがもどかしい時もある。
白状しよう。実は毎晩、ユノをおかずに抜いていることを。
妄想の中ではとっくに、童貞を卒業しているのだ。
でもユノの病気のことを考えると、迂闊に手を出してはいけない気がする。
ユノにとって、セックスとは何を意味するのだろう。
単純に、世間一般で言う「愛し合う行為」には当てはまらないように思う。
一人考え込んでいると、ユノの携帯のバイブが鳴った。
鳴り始めたそれは止む気配が無い。恐らく着信だ。
俺は躊躇いがちに液晶を覗き込み、全身を強ばらせた。
恐れていたことが、起きた。
そこには、見知らぬ男の名前が表示されていた。
今夜遅くまでユノを連れ回したのは、勿論キュヒョンとテミナにユノを紹介したかったからだ。
でも一番の目的は・・・・・・
ユノがセックスに走るのを、確実に食い止めたかった。
一週間のうち、ユノがよくクラブに出現する曜日。それが今日だった。
着信は暫くすると止み、ユノは「うーん・・・・・・」と小さく唸っただけで起きはしなかった。
ユノのカトクはきっと、沢山の男達の連絡先を記憶している事だろう。
そしてそれを、ユノは今も消してはいない。
イコール身体の関係が続いている、とは死んでも思いたく無い。
だけど、精神病はそう簡単に治らない。
当事者の俺が、よく分かってる・・・・・・
ユノの携帯に手を伸ばしかけて止める。
盗み見る行為は間違いだと自分を説得しながら、本当は事実を目撃する勇気が無かった。
考えれば考えるほど、不安の渦に飲まれてゆく。
思考をシャットアウトするように目を瞑り、俺はユノの身体を抱きしめた。
頼むから、この腕から居なくならないでくれ・・・・・・












はぁ、はぁ、はぁ
はぁ、はぁ、はぁ

凄く苦しそうだ。
泣いているようにも聞こえる。
短い息継ぎに、俺は起こされた。



うっすらと開けた視界の中、暗がりで動く姿を捉える。

「ユノ・・・・・・?」

俺の声は届いていないようだ。
ユノは、布団に覆われた足のあたりを見つめ、首を振っている。

「いやっ・・・・・・いや、だっ・・・・・・!」
「おい、ユノ・・・・・・?」

はぁはぁと短い息継ぎは次第に大きくなり、嗚咽のように変わってゆく。
過呼吸だ。顔色もかなり悪い。

「ユノッ、大丈夫か!?」

俺の声は、まだ届かない。
同じ一点を見つめ、悲鳴のような声を上げる。

「来ないで、来ないで!!」

近寄ると、両手で顔をつかみ、こちらを向かせた。

「ユノ!しっかりしろ!」
「はぁっ・・・・・・!はぁっ・・・・・・!」

ユノは泣いていた。
頬を涙で濡らしながら、全身を震わせて怯えている。

「俺だ、分かるか?」
「はぁっ・・・・・・たすけてっ・・・・・・」

ユノは俺にすがりながら、再び元の場所へ視線を戻し・・・・・・
そして、確かにこう言った。

「ふ、布団の中から・・・・・・父さんの、手がっ・・・・・・」
「え・・・・・・・・・・・・?」

ユノのパニックは止む気配が無い。
小さな子供のように、俺の身体にぎゅっとしがみ着いてくる。
離れなければ。ここから。
俺はユノを抱きしめたまま、アパートの外へ出た。
すぐ近くの公園まで歩くと、ベンチに腰掛けてユノと向き合った。
背中をゆっくりとさすり、言い聞かせる。

「もう大丈夫だ」
「チャン、ミン・・・・・・」
「深呼吸しろ。ゆっくり」
「は、はぁー・・・・・・はぁー・・・・・・」

ユノは次第に何時もの顔色を取り戻し、俺はほっと一息ついた。

「ありがと・・・・・・チャンミン・・・・・・」
「ん・・・・・・」

互いの手を握ったまま、俺達は暫くの間沈黙していた。
ぽつり、ユノが躊躇いがちに言った。

「・・・・・・聞いちゃった?」
「・・・・・・何が」
「さっきの・・・・・・寝言」
「・・・・・・『父さんの手が・・・・・・』ってやつ?」
「聞いちゃったんだ。やっぱり・・・・・・」

ゆらゆらと、またユノの瞳が不安げに揺れている。
今はこれ以上、負担をかけたくない。

「別に、無理に話さなくていい」
「・・・・・・優しいね、チャンミン」

ユノが俺の肩に凭れてきて、俺は握り合う手に力を込めた。
見上げた夜空は曇っていて、星のひとつも見えない。

「いつ、晴れるかなぁ・・・・・・」

そう呟いたユノの瞳は、ゆらゆらゆら。まだ不安げに、儚く揺れている。
その奥に一体何を秘めているのか、この時俺は、知る由もなかった。









後日。
こっそりとネットで「ユンホ 父親」と検索すると・・・・・・
さすが著名人。直ぐに情報が出てきた。


ユノの父親は、ユノが成人する前に死んでいた。
自殺だった。









To be continue



◇◇◇



ああ、またくらーいNBワールドが始まりましたよ~。
やんなっちゃうわね~。
趣味の小説なのに、ハピエン主義なのに、容赦ないのを書きたくなるんです。
ライトに楽しみたい人にはホント不向きですいません。
皆さんが見る気無くしませんように~ヽ(;▽;)ノ



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3 Comments

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2016/04/17 (Sun) 15:38 | EDIT | REPLY |   

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2016/04/15 (Fri) 08:25 | EDIT | REPLY |   

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2016/04/14 (Thu) 22:27 | EDIT | REPLY |   

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