愛することは、君が教えてくれた 11




































あの日から数日。
結局俺とユノの関係は進展していない。
でも互いの気持ちは分かってる。そんな宙ぶらりんな関係がもどかしい。
ユノとはよく、カトクで連絡を取り合うようになった。
仕事の予定を教えて貰い、カフェに出勤する日は大体把握している。
朝のマラソンコースは、プレジールの前を通るルートを変えた。
ユノがちゃんと来ているかどうか確認する為だ。
今のところ、休まず出勤しているようなのでひと安心だ。
少しでも話せたらと思うのだが、少ない人数で忙しなく準備しているので遠慮してしまう。
結果俺の存在は気付かれないまま、一方的行為に終わっている。
だがこの行為は許容されるべきだ。
俺はユノが認めた彼氏候補なのだ。問題無い。
一見ストーカーの様だが・・・・・・
いや問題無い、断固問題無いと言い張る!






今日もユノの姿をチェックしようと、プレジールの前を通る。
チラ見で済ませるつもりだったが、店から丁度ユノが出て来てはち合わせた。

「あ・・・・・・」
「・・・・・・お、っす」

カトクでやり取りしていたものの、顔を見るのはあの日以来で何だか照れた。

「偶然・・・・・・。今も、ここ通ってるんだね」
「んー、だな」

本当は偶然じゃないけど。心の中で呟く。

「コーヒー飲んでく?」
「でも・・・・・・忙しんじゃないの」
「平気だよ、前も寄ってったじゃん。気、進まない?」

顔色を伺うように問われて、即答する。

「まさか」

ユノが、嬉しそうに顔を綻ばせる。
くそ、可愛いな・・・・・・

「どうぞ」
「んじゃ、遠慮なく」

俺は引かれたドアを潜った。
店に入ると、「ユノの友達?イケメンだね!」「モデル仲間?」なんて質問を浴びせられて少し調子にのった。
外見をユノと対等に見て貰えるのが嬉しかった。
ユノは奥のテーブルに俺を通し、向かい合わせに腰掛けた。
淹れたてのコーヒーを口に運び、一息つく。

「旨い」
「うん」

ユノがにこにこと笑って、俺を見つめる。
あーもう、顔が好きって言ってんじゃん。
そんな気がする。

「なあ」
「ん?」
「予約の件ってどうなった?」
「・・・・・・・・・・・」
「俺達もう、恋人でいいと思わない?」
「うーん・・・・・・どうかなぁ」

コーヒーカップを両手で包みながら、ユノが曖昧に笑う。

「くっそぉ。まだ駄目なのかよー?」

背もたれにグッタリと寄っかかり、天井を仰ぐ。
ユノはいつウンと言うつもりなのだろう。
“自分は汚い”という固定概念を取り払わない限り、恋人にはなれないのだろうか。
ユノが俺の手を見て「あ・・・・・・」と呟いた。

「チャンミン、手が荒れてる」

話題逸らしやがったな・・・・・・
手の甲をちらりと見ると、ところどころ血が滲んでいた。
朝のこの時間は乾燥するし、元々洗浄脅迫で手荒れが酷いせいだ。

「カットバンとハンドクリーム・・・・・・多分あった筈」

ユノは一旦席を離れると、巾着袋を手に戻って来た。
俺の手を見つめながら、眉を下げて呟く。

「アイツのこと殴ったせいで・・・・・・ゴメンね」
「そうじゃない・・・・・・元々酷いんだ、手荒れ」
「乾燥肌?」

ユノが打ち明けてくれたから俺も・・・・・・ってのはおかしいんだろうか?
でも、自分を見せていかなきゃ駄目だ。
一緒にいたいなら、隠さずに。

「いや・・・・・・手、洗ってばっかいるから」
「・・・・・・どうして?」
「・・・・・・強迫症なんだ。自分が汚いと思うもん触ると、徹底的に洗わないと気が済まなくて」
「・・・・・・そっか」
「馬鹿みたいと思うだろ?」

ユノは黙って首を振った。

「俺は・・・・・・?触っても問題無い?」
「平気だよ。不快になるのは、汚いと思う物だけだから」

ユノはハンドクリームを指で掬うと、俺の手の甲に乗せた。
両手で全体をそっと包み込み、優しく丁寧にクリームを塗りつけてゆく。

「チャンミンの手、いつもご苦労さま」
「・・・・・・・・・・・・」
「それから・・・・・・俺のことも、守ってくれてありがとう」

手を愛おしそうに見つめながら、微笑んでそんなことを言う。
こんなに可愛くて優しいって、反則だろ・・・・・・
やっぱり天使か、天使だな!?
顔面が崩壊している自覚があったので、俯きながら衝撃を押し殺した。

「チャンミン、何で震えてるの?寒い?」
「違う、いいから気にするな・・・・・・」
「うん・・・・・・?」

ユノに悪意は無いのだろうが、こんなにも煽られてそれでも忠実に“待て”を守る俺って、めちゃくちゃ紳士。












今週も、スピーカー越しにユノの声を聴く。
返事はなくとも、ステレオに話しかけるのがすっかり習慣になった。

『お別れする前にお知らせです。なんと・・・・・・来週から三週連続で、特別企画を実施することになりました!』

「へえ。何すんの?」

『毎週僕から曲をお届けしていますが、今回は皆さんのお勧めの曲を応募します。そして曲を好きになったキッカケ、皆さんきっとお持ちですよね?その曲にまつわるエピソード、思い出などを添えてご応募ください。僕から大々的に発表しちゃいます。沢山のリクエスト、お待ちしてます』

「マジか・・・・・・」

暫く考え込んでから、俺は閃いた。
これはグッジョブ企画だ。
なかなか心を開いてくれず、俺に生殺し状態を強いる誰かさんを口説くいいツールじゃないか。
俺はラジオの公式サイトを検索し、応募方法を調べた。
ユノの人気を考えると、リクエストは物凄い数に違いない。
その中から選ばれるにはどうすればいい?
インパクトあるハンドルネームにするとか?
女からの応募が多い中、男の俺が紛れていたら優先されたりしないんだろうか。
抽選の基準なんて分からない。
選ばれるかどうかは、運に任せるしかないだろう。









一週間があっという間に過ぎた。
ユノとは数回会って話したものの、未だ交際に至っていない。
そしてラジオが始まる直前の今、俺は収録スタジオの前に居る。
携帯をラジオに切り替え、イヤホンを繋いでスタンバイする。
自分が取り上げられるものと決め付けて、キュヒョン、テミナ、俺の三人で作ったカトクのグループトークにメッセージを送った。

『俺の勇姿を見たければ、今夜ユノのストロベリーナイトを聴くべし』

スタジオの中に居るユノに、投げかける。
頼む。俺を選んでくれ。
二十二時。
遂に、ユノのラジオがスタートした。



―――『皆さん今晩は!今夜も始まりました。ユノのストロベリーナイトの時間です。最後までどうぞ、お付き合い下さい』

早くも、心臓がドキドキと騒ぎ始める。
少し雑談を挟んだあと、話題は今日のメインに切り替わった。

『・・・・・・では早速、特別企画に移りたいと思います。ええっと、皆さんのお勧めの曲を応募したら、もうたーくさん頂いたので、できる限り紹介出来るように巻いて行きます!三十分でどれ位いけるかな?・・・・・・おっと、箱が来ましたね。箱にハガキとFAX・・・・・・メールも入ってるみたいです。この中から僕が選ぶと。それでは、一人目いきまーす!』

「俺を選べよ、ユノ・・・・・・」

『ハンドルネーム、ふふ・・・・・・“ユノが好きすぎる”さんから。照れちゃうなぁ、これ声に出して読むの』

がっくり。俺は肩を落とした。
まあ、まだ一発目だ。次がある。
しかし・・・・・・

『えっと次は、“フリージア”さんからの投稿で・・・・・・』

その後も、心当たりの無いハンドルネームと曲ばかりが紹介された。
それぞれの曲もエピソードも、耳に入ってはただすり抜けていく。
時刻は二十二時二十分過ぎ。
ユノのラジオは30分で終わる。
もう、勝負はついてしまった・・・・・・?
諦めかけていた、その時だった。

『これで最後になります。・・・・・・“君がハンドクリームを塗ってくれたから、どうしても手を洗いたくない”さん・・・・・・からの投稿です』

「きたあああああ!!!」

周囲の目も忘れて、俺は叫んだ。

『さて、エピソードですが・・・・・・男性の方、ですね。“・・・・・・俺は二次元とフィギュアが大好きです。長年ザ・オタクビジュアルでしたが、ある事をきっかけに最近イメチェンしました。・・・・・・好きな人が出来たんです。その人に告白すると、嬉しいことに喜んでくれました。脈アリだと思うのですが、なかなか・・・・・・心を開いてくれません。でも、オタク生活から一転した今、俺は初めての恋に心躍らせています。傷ついたり戸惑うこともあるけど、そんな思い出も全部含めて・・・・・・その人のことが・・・・・・大好きです”』

ユノの声が震えている。
ひくりと、小さな嗚咽が聞こえてくる。
ユノ、泣いてるのか?

『す、すいません・・・・・・。感動してつい。続きです。・・・・・・“そんな俺のテーマソングを紹介します。経験が少ない俺ですが・・・・・・いつかこの歌詞のように、その人と愛し合うのが夢です。ユノ・・・・・・一途な俺の恋を、どうか応援して下さい。トンバンシンキ MAX で・・・・・・Rock with U ”』

流れ始めたイントロを聞きながら、カトクでユノにメッセージを送る。

『 今、スタジオの外に居る。 返事を聞こうじゃないか  』

送信して暫くすると、スタジオの入口からユノが姿を現した。
走って来たのか、はぁはぁと息を切らしながら。
俺はにっこり笑うと、大きく両手を広げて見せた。
ユノが、俺に向かって真っ直ぐに駆けてくる。
勢い良く胸に飛び込んで来たユノを、俺はしっかりと受け止めた。
これ以上ない程、力一杯抱き締め合う。
ユノを見つめながら、俺は問いかけた。

「ユノ・・・・・・イエスなら・・・・・・?」

満面の笑みを浮かべたユノが、両手で俺の頬を包み込む。
やがて、柔らかなそれが俺の唇に押し付けられた。
初めての感触に、心も身体も奮える。
目を瞑りながら、じっくりとそれを味わった。
ずっとこうしたかった。
死ぬほど、ユノが欲しかった。
ゆっくり唇を離すと、ユノが甘い声で囁いた。

「チャンミン・・・・・・大好き」
「やっと言ったな」
「待たせて・・・・・・ごめんなさい」

いいんだ。これから埋め合わせして貰うんだから。
もう絶対に、離しはしない。






Rock with U
無茶苦茶になった感情
Rock with U
2人弾けた愛情
Just with U U U U

Rock with U
君を知りたがる純情
Rock with U
奇跡でもなく欲情
Just with U U U U

もう恥ずかしがって 下を向いてないで
くじけそうな 心を見つめてんだ






MAX、お前の曲のおかげで作戦は大成功だ。
心から礼を言うよ。
そして俺は、この夜の出来事を一生忘れはしないだろう。









To be continue



◇◇◇



チャンミンおめでとう♡
さて、ひと山越えたので、暫くらぶらぶさせますか~(*´ω`*)
それにしても拍手数が多くてびっくり!ミンホでこんなに頂くのは初めてかも。
このサイト、毎年この時期になるとヒットする傾向でもあるのでしょうか?
去年は丁度カラダノキオク書いてたのです。
引き続き頑張りますよ~!



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2 Comments

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2016/04/11 (Mon) 19:12 | EDIT | REPLY |   

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2016/04/11 (Mon) 13:32 | EDIT | REPLY |   

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