愛することは、君が教えてくれた 10

  10, 2016 07:37



































俺達は暫く走り続け、やがて公園に辿り着いた。
背後を見ても男たちの姿は無い。
どうやら、完全に撒くことができたようだ。
徐々に平静を取り戻した俺は、繋いだままのユノの手を慌てて離した。
ユノがまん丸い目で俺を見上げ、笑って言った。

「ビックリした、急に出てくるんだもん。何であそこに居たの?」
「あー・・・・・・偶然?丁度近くに用があってさ」
「そうなんだ」

咄嗟についた嘘だが、ユノは信じたようだ。
誤魔化してどうする・・・・・・
会いたくて探してた。本当はそう言いたい。
気持ちを伝えるなら今このタイミングだと思うのに、一歩が踏み出せない。
ひとり悶々としていると、ユノが再び口を開いた。
小さな声で、躊躇いがちに問いかける。

「何で・・・・・・助けてくれたの?俺、チャンミンのこと散々傷付けたのに・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「もうとっくに、嫌われたと思ってた」

ガラス玉みたいな瞳が、不安定にゆらゆら揺れながら俺を捉える。
じわじわ、愛しさが込み上げてくる。

「何でだと思う・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・」

返事は無い。
ユノは俺の頬に手を当てると、涙目になり、奮える声で言った。

「ありがと。助けてくれて・・・・・・」

頬を撫でる掌が優しくて、心がじんわり熱くなる。

「これで借りは返したな」
「借り・・・・・・?」
「初めて会った時、助けて貰った」
「あんなのは・・・・・・ただ、口挟んだだけだから・・・・・・」

ユノが切なげに眉を寄せ、親指で俺の口をなぞる。
突然のそれに、ドキッとした。

「ここ、血が出てる」
「え?ああ・・・・・・」
「うちに来て。ここからそんなに遠くないから。手当てしないと」
「え・・・・・・」

思いがけない誘いに、上ずった声が出た。
ダサいぞ俺。
戸惑う俺を見て、ユノは眉をハの字に下げた。

「嫌なら別に・・・・・・」
「ちがっ・・・・・・んなこと言ってないだろ?行くよ。手当て・・・・・・してくれよ」
「・・・・・・じゃあ」

歩き出したユノを、俺は追った。
ユノはともかく、俺はゲイじゃないのに、家に行く行かないでギクシャクするなんておかしい。
俺の気持ちはもう、伝わってしまったかもしれない。
ユノは、俺をどう思っているのだろう。
家に着くまで、あまり言葉は交わさなかった。



ドアをくぐると、正面奥にこじんまりとしたリビングがあり、そこに通された。

「座って待ってて」
「ん」

促され、赤いロングソファに腰掛ける。
キッチン、寝室、各スペース壁で区切られているが、ワンルームの作りなのでリビングからでも全て目に入る。
必要最低限の家具しか置かれていないが、デザインが効いたアンティーク調の物が多い。
カフェで働いてるだけあって、センスが良い。
空いたスペースには雑誌やCD、洋服などが散在している。
片付けが苦手なのかもしれない。
ちらりと寝室のベッドが見えて、ドキッとしてしまった。
暫くすると、ユノがケースを抱えて戻って来た。
ソファに座る俺の前に立ち、手当てを始める。
必然的に、俺がユノを見上げる状態になる。
ぱちり。また目が合って、暫く見つめ合った。
もう・・・・・・気持ちは隠さない。
じっとユノを見ていると、心なしかユノの頬が赤く染まった気がした。
不意に視線を逸らして、ユノは作業を再開する。
傷の具合を見ようとしたのだろう、頬にそっと、細い手が添えられた。
直ぐ離れて行こうとしたその手を、ぎゅっと握る。
心を決めたら、自分でも意外な程すんなりと行動に出ていた。
俺はやはり、好きなものには積極的みたいだ。

「ユノ・・・・・・」
「・・・・・・ん?」

そんなに潤んだ瞳をして、知らんぷりするなよ。
気付いてるんだろ・・・・・・?

「俺・・・・・・ユノが好きだ」

しんと静まり帰った部屋に、告白が落ちた。

「チャンミン・・・・・・」
「俺を・・・・・・恋人にしてくれ」

ユノの手を強く握り直すと、目を閉じながら身体へ額を寄せた。
伝われ、俺の想い。
暫くそうしていると、頭にそっと、手が添えられた。
顔を上げると、泣きそうに微笑むユノと目があった。
俺の髪に指を絡め、頭を優しく撫でながら、ユノ
言った。

「嬉しい、チャンミン」

ポロリ。
瞬きをしたユノの瞳から、涙が一粒、俺の頬に落ちた。
確信した。ユノも俺を想っている。
胸が、焼けそうな程熱い。
今すぐユノが欲しい。

「イエスなら・・・・・・キスして」

ユノは黙り込んでしまった。
俺の手を握る力が、強まったり弱くなったりする。
何か躊躇っているように感じた。
ユノは俺の頭を抱えると、胸にぎゅっと抱き寄せた。
キスは・・・・・・してくれないらしい。

「・・・・・・駄目、なのか?」
「だって・・・・・・本当に大事なものは、汚せない」
「何言って・・・・・・汚れるなんて・・・・・・」

ユノが懸命に首を振って、その拍子に涙が散った。
自分の価値を否定するその姿が、見ていてとても痛々しい。
俺は、ユノを見上げながら訴えた。

「何してもっ・・・・・・もしユノとそうなっても、俺は汚れたりなんかしない。これまで相手した男達だって皆そうだ。汚れるなんて・・・・・・」

俺の言葉を遮って、ユノは言った。

「それだけじゃ無い。今日みたいに、チャンミンを巻き込む事になったら俺・・・・・・」
「その時は・・・・・・また戦えばいい」
「駄目、そんな事させられない」

一番早い方法は、男達との関わりを絶つことだ。
その為にはまず、病気の完治が必須だが。
今直ぐ治せるなんて思っちゃいないが、それでも傍に居て支えてやりたい。

「・・・・・・俺のこと、どう思ってんの・・・・・・?」

鼻を啜りながら、小さな声でユノは言葉を紡ぐ。

「・・・・・・凄く、凄く大事」
「なら・・・・・・」
「大事だから・・・・・・!そんな簡単に、手出せない・・・・・・」
「じゃあ、すぐ出さなくていいから付き合って」
「・・・・・・・・・・・・」

それでも、ユノの返答はこうだった。

「・・・・・・考えさせて」
「何時まで待てばいい?」
「分からない」
「無責任なこと言うなよ」
「・・・・・・覚悟が、出来るまで」

どうしても、今直ぐ了承する気は無いらしい。

「じゃあ予約する。いいだろ?」

もう見つめるって言うより、睨んでいる気がする。
じっと視線を送っていると、ユノは沈黙の末やっと、コクりと頷いた。

「はああぁっ・・・・・・・・・・・・!」

心の中で強くガッツポーズを決め、安堵の溜息をついた。
それでも、今は恋人じゃないから手を出しちゃいけない。
生殺しってこういうことだな。
俺も真面目過ぎる気がする。

「俺、面倒臭くてゴメンね」

ユノが弱々しい声で言った。

「とっくに知ってる」
「う・・・・・・」
「それでも、一緒に居たいんだ」

泣き笑いを浮かべるユノが、凄く愛おしい。
俺の全部、ユノに持ってかれる。
今迄恋愛出来なかったのが嘘みたいだ。



手当てが終わった後は、ユノに出されたココアを飲みながらだらだら話した。
告白に必死で気付かなかったが、時計に目をやるともう随分遅い時間だった。
駅は直ぐそこなので、終電には間に合うだろう。

「そろそろ行くよ」
「心配だから・・・・・・その、泊まってく?」

これから一晩、ユノに何もしないで過ごすなんて拷問にも程がある。
家に着いたら一報入れることにして、誘いは流石に断った。
俺の気持ちを汲んでか、ユノもそれ以上誘っては来なかった。
家を出る間際。

「・・・・・・あのさ」
「ん?」

俺は意を決して申し出た。

「その・・・・・・セックスしたくなった時は・・・・・・俺を呼べよ」
「え・・・・・・?」

沈黙を埋めるようと、慌てて言葉を紡ぐ。

「違っ・・・・・・!!変な意味じゃ無くてその・・・・・・よく、分かんないんだけど・・・・・・一緒に居てやることは出来るから・・・・・・。だから、遠慮しないで呼んでくれよ」

ユノは、小さく微笑みながら頷いた。

「ありがと、チャンミン」



外に出ると、ユノの部屋を見上げた。
ベランダに立ってこちらを見ながら、「おやすみ」と口を動かし、笑う。
少しは元気になったみたいだ。

「おやすみ、ユノ・・・・・・」

何度か振り返りながら、俺はユノの家を後にした。








ユノに出会ってから、確実に世界は変わり始めている。
今迄じゃ有り得ない経験の連続だ。
疲れてもおかしくないのに、不思議な事にエネルギーが湧いてくる。
きっとユノの傍に居られることが、俺の一番の喜びなんだ。
ユノのぬくもりを思い出し、身体の芯からジンと痺れる。
セックスしたかったら俺を呼べなんて、いつか堂々と言ってみたいもんだ。
妄想の世界に意識を飛ばして、口を緩めながら俺は呟いた。

「きっと、世界一幸せな童貞卒業だな・・・・・・」

その日まで・・・・・・
耐えろ、シム・チャンミン。









To be continue



◇◇◇



結局そこですか(笑)
10話でキスさえしないでハグ止まりなんて、このふたりNBのお話史上最高のピュアーカポーじゃないでしょうか(笑)
ああでも、最終回までそんな描写書きますよ、勿論♡
このチャンミンは趣味でも何でも、標的にロックオンするともう一途に突っ走るタイプですね。
これからもっと凄くなりますので、応援してください(笑)
次回から更に展開が動いていきます。
色々問題ありますが、あったかい雰囲気大事にしたいなぁ。
そして、たっくさんの拍手ありがとうございます!
コメントもいっぱい頂いて、飛び跳ねながら喜んどります~(*´ω`*)
エネルギーむしゃむしゃ♡



気に入って頂けたら、ポチッとお願いします(*^^*)
   ↓

     

人気ブログランキングへ


にほんブログ村


スポンサーサイト

Comment 2

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Edit | Reply | 
-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Edit | Reply | 

What's new?