愛することは、君が教えてくれた 8

  08, 2016 07:57




































「乾杯」
「そんな気分じゃ無いけどな」

俺は今、ガヤガヤと賑わうバーの中に居る。
撮影終了後、ユンホがお詫びに飲みに連れて行くと言うので付き合うことにしたのだ。
窓際のカウンターに二人で腰掛け、俺は気が進まないままグラスを合わせた。
カトクで謝られただけじゃ納得いかないしまだ怒っているのに、誘いを断れなかった。
ユンホは、カクテルを数口流し込んだだけで赤くなった。
微笑みながら、俺を見つめて呟く。

「随分と格好良くなっちゃって」
「オタク丸出しの見た目で、随分不快な思いさせたみたいだからな。これで満足か?人気モデルのユンホさんは」
「それは・・・・・・」

ユンホは黙り込んだあと、手を合わせてギュッと目を瞑り、突然叫んだ。

「ゴメンなさいっ・・・・・・!ほんとにほんとに、ゴメンなさいっ!!」

結構な勢いに、思わず身を引く。

「んだよ、急に叫ぶなって」

俺の呟きは聞こえていないのか、ユンホはそのままの勢いで話し続ける。

「本当は、チャンミンの趣味も経験無いことも、何とも思ってない!」
「え・・・・・・?」
「仲良く出来て嬉しかったのに・・・・・・一番見られたく無いとこ見られて、ショックだった。俺なんかが仲良くしちゃいけないって・・・・・・思い知らされた気分だった」
「・・・・・・・・・・・・」
「どうせなら、完全に嫌われた方が楽だと思って嘘言った・・・・・・」
「へえ。開き直ったアンタの都合に、俺は振り回されて?こんなに傷付けられたって訳か」
「ゴ、ゴメン」

演技には見えないので、言っていることは本当なのかもしれない。

「じゃあ土下座して」
「え・・・・・・」
「本気で悪いと思ってんなら、床に頭擦り付けて『もう絶対にしません。心から申し訳ありませんでした』って言ってみろよ」

流石に出来ないと、拒否ると思った。
本気で要求した訳では無かったのだが、ユンホは暫し唇を噛み締めたあと、床に膝を着いた。

「え?ちょ・・・・・・」
「もう・・・・・・絶対にしません」
「や、マジかよ」
「心から、申し訳・・・・・・」
「もういい、もういいやめろっ!」

ユンホが頭を下げる直前、俺は瞬時にしゃがみ込んで、それを制止した。

「何で・・・・・・?」

今にも泣きそうな顔で、問いかけてくる。

「本気にすんな馬鹿!」
「本気じゃ無かったの?」
「冗談に決まってんだろ」

ユンホは、眉を下げて笑った。

「優し過ぎるよ、チャンミン」
「そうじゃない、俺が変な目で見られるだろ。今度やってくれよ、人が居ない時・・・・・・」

ユンホは少し驚いた風に、俺に問いかけた。

「今度があるの?俺と・・・・・・友達でいてくれるの?」
「まぁ・・・・・・本気で反省してるみたいだし」
「でも俺、だらし無いよ」
「・・・・・・知ってる」
「いいの?それでも」

俺はぶっきらぼうに、こくりと頷いた。

「じゃあ、俺のこと“ユノ”って呼んで」
「あー、ん・・・・・・分かった」
「ねえ、呼んでみて」
「・・・・・・・・・・・・ユノ」

俺がぼそりと名前を呼ぶと、ユンホは破顔しながら、声を弾ませた。

「うん、いい響き!」

目を、黒目で一杯になるくらい細めて笑う。
ぽってりと厚い唇が、綺麗に弧を描く。
そんな笑顔に釘付けになる。
クラブで連んでいたあの男達も、この笑顔に食われたに違い無い。
俺は、あの中の一人になってしまうのだろうか。
他の奴らと同じ位置づけなんて嫌だ。
そんなことを考える俺は、最早ユンホ・・・・・・ユノのことを、友達として見れていない気がする。



ユノは、グラスが空になるとカクテルばかり頼んだ。

「前も言ったけど、甘いのが好きなの。ビールもいけるけど、そんなに飲めない」
「ビールの旨さ分かんないなんて物凄い損してるな。特に脱水状態で飲むビールは最高だ。身体中に染み渡って最高」
「脱水状態って・・・・・・チャンミン、やっぱり面白いよね」
「気持ち悪いの間違いじゃ無くて?」

ユノが、途端に表情を曇らせる。

「・・・・・・違うってば、本当にゴメン」

グラスを両手で包みながら、小さな声で言った。

「っていうか、気持ち悪いのは俺の方じゃん」
「何で」
「チャンミンあの時見たでしょ?男同士で・・・・・・」
「まぁ」
「まぁって、気持ち悪くないの?」

ユノの顔からは、笑みが消えていた。

「ユノが男を好きだとしたらそれは・・・・・・俺がアニメの女を好きなのと一緒だろ」
「そう、かな・・・・・・」
「個人の趣向を否定するのは間違ってる」

それでも、納得のいかない表情をしている。
俺は素直に感想を漏らした。

「随分自分を下げるんだな。見た目は華やかで、自信ありそうに見えるのに」

ユノは、窓の外を眺めながら言った。
視線は、もっと遠くを見ているような気がする。

「明るい髪もお洒落も、中身に自信が無いから始めたの。出来るだけ自分を良く見せようって」
「・・・・・・・・・・・・」
「そしたら、いつの間にかモデルなんてやってた。でも・・・・・・いくら見た目を買われても不安は消えない」

遠くを見つめる瞳は、落ち着き払っていながら、どこか不安定で儚げだ。

「やっぱり、中身が変わらないと駄目みたい」

俺に視線を寄越し、くすりと笑う。

「笑うとこかよ」
「そうだね」
「その笑顔も“飾り”?」
「・・・・・・あまり意地悪言わないで」

ユノは笑ったままだったけど、その笑顔が俺には泣いているように見えた。
心に何か秘めている。そう確信した。






こうして俺たちの“お友達”関係が始まった訳だが・・・・・・
ユノの貞操の乱れは、クラブの一件である程度覚悟していたものの、想像以上に酷いものだった。
まず出勤予定の日カフェを訪れても、突発休のことが多い。
店員に聞くと呑気に「朝から遊んでるんじゃない?もう慣れたよ」などと言う。
同僚としてそれで良いのか聞くと、ユノが居ると売上げが伸びるので辞めさせられないそうだ。
テミナに心の中で、シフトはシークレットじゃ無く、『何時ちゃんと来るか分からない』の間違いじゃないかと突っ込んだ。
そして、電話すると大抵男の声が紛れ込んでくる。
今は出られないと、焦って切られることも多い。
だらし無さは目を瞑れるレベルだと思っていたが、限界を感じ始めていた。
決定打となったのは、ある日繋いだ一本の電話だった。

「・・・・・・もしもし?」
『もしもーし』

通話に出たのは、知らない男だった。

「あんた、誰・・・・・・?」
『悪いが、今お取り込み中なんだよ』
「は・・・・・・?」
『ああ、折角だから声聞かせてやるか?』

雑音が紛れ込んで、再び男の声が聞こえて来た。

『ほら、お友達に向かって喘いでみな』
『――・・・・・・っ』
『首振ってんじゃねえよ、オラッ!』
『――・・・・・・いやっ・・・・・・や、めてっ・・・・・・ア、アァッ・・・・・・』
『・・・・・・ってことだから・・・・・・終わったらかけ直してきな、兄ちゃん』

ぷつりと通話が切れた。

「なんだよ、今の・・・・・・」

俺は放心状態で、携帯を持った手をだらりと下げた。
やがて怒りが一気に込み上げてきて、携帯を叩きつけようと腕を勢い良く振り上げた。
残り少ない理性で、叩きつける直前で止めた。
全身が、ぷるぷると奮える。

「くっそ・・・・・・くそくそくそ!!!」

トモダチなんてやってられるか、もう耐えられない。
ユノに悪気は無いのかも知れない。それでもやってることは最悪だ。
俺は、カトクにメッセージを入れた。

『話がある。プレジールの前に居るから絶対に来い』






電話をかけたのは二十一時過ぎ、俺がプレジールに到着したのは二十二時頃だった。
ドアに寄りかかり冷たい空気に当たっていると、頭が少し冷える気がした。
二十三時を回った頃。
人気の無い、暗く静かな歩道に、ふらりと人影が現れた。
こちらに近づくにつれ、その姿が明らかになる。
ユノだった。

「チャンミン・・・・・・」

蚊の泣くような小さな声で、ユノは俺の名を呼んだ。
憔悴しきった顔をしていたが、俺は構わず飛びかかった。

「この野郎っ・・・・・・」

胸ぐらを掴んで、ガクガクと揺さぶる。
身体を洗って来たのか、ソープの香りがして更に俺の怒りを煽った。

「馬鹿にしやがって・・・・・・!俺はお前の玩具じゃないぞ!」
「・・・・・・・・・・・」
「絶好する前に一発殴らせろ!」

ユノは無抵抗のまま、ぽつりと呟いた。

「馬鹿になんて・・・・・・してない」
「あ!?」
「玩具とも・・・・・・思ってない」

俯いていたユノが、不意に顔を上げた。
俺を睨むと、ぽろぽろと大粒の涙を零しながら叫んだ。

「好きでやってる訳じゃ無い!!」
「はぁ?」

逆ギレされて苛ついたが、ユノの様子は明らかにおかしかった。
息つぎを浅く繰り返しながら、パニックに陥っているように見えた。
声を震わせて、流れる涙をそのままに、言葉を紡ぐ。

「不安な時も寂しい時も、気が付くといつもセックスに走ってる・・・・・・ふとした瞬間、凄く虚しくなって死にたくなる!!俺だって本当は、ちゃんと普通に生きたい!!」
「ユノ・・・・・・」
「ぶん殴るなら殺してっ、殺してよっ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「殺してぇっ・・・・・・・・・」

ユノが嗚咽を上げながら、俺のシャツを掴んで崩れ落ちる。
かける言葉が、見付からない。
泣きながら奮えるユノを、俺はただ見つめることしか出来なかった。









◇◇◇



ということで、ユノはセックス依存症でした。
受け取り方は様々かも知れませんが、私は立派な病気かなと思います。
そして病気の発症にも理由がありますが、それはまた後ほど。
チャンミンはこれからどう対処するのでしょう。
段々くらーくなってきました。
初回の明るい時に比べて拍手数も激減しますよね、そりゃ(笑)
そんでこれから更に内容独特だから、好き嫌い分かれるだろうな。
ってか、好きな人とか見たい方居るかな・・・・・・(^_^;)
でも書きたいように書きますね、ごめんなさ~い!



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