愛することは、君が教えてくれた 7





































あれから数日。
これ迄と何も変わらない日々が流れていた。
計画を実行し終えると、俺は今の外見を維持する目的を失った。
「僕の苦労を無駄にするな」とテミナが煩いので、面倒臭がりつつも何とか、オタクビジュアルに戻らないよう努めていた。
ユンホを見返すという目標を果たせたのか、今でもよく分からない。
驚かせたかった。悔しがらせたかったのに、ユンホは懸命に俺に何か伝えようとしていた。

―――『俺だから言ってる!辛さが分かる、俺だからっ・・・・・・』
―――『俺みたいになるな、チャンミンッ!!』

あの意味深な台詞も、切なげで泣きそうな顔も頭から離れない。
忘れちまえと、何度脳ミソに言い聞かせても。



帰宅後。
さっさと風呂に入った俺は、ちびちびビールを呑みながらボンヤリ考えていた。
辛さって一体何だ。アイツだから分かる辛さって。
簡単に寝たら、アイツのようになる?
それが辛い・・・・・・?
少ない言葉からじゃ何も想像出来なくて、はてなしか浮かばない。
テーブルの上の携帯を手にすると、カトクを起動してユンホのホーム画面を眺めた。
まだ一回もメッセージを送っていない。
写真だけじゃ何のヒントも得られないのに、ピースをする笑顔をじっと見ていた。
その時丁度、テミナからメッセージが届いた。

『先輩、ユンホのラジオやってるよ』

「ラジオかよ・・・・・・さすが有名人だな」

『KBSラジオ 80.0』

「ご丁寧にチャンネルまで・・・・・・」

作戦に加勢したテミナは、ユンホの事を心配しているようだ。
俺は話題を振られる度「もう終わったことだ」と言い張っているが、内心気にしていることはきっと、観察眼の鋭いテミナには気付かれていることだろう。
俺はステレオの電源を入れ、ラジオのチャンネルを教えられた局に合わせた。
雑音が途切れ、聞き覚えのあるあの声がスピーカーから届く。

『―――・・・・・・そうそう。僕は日頃からよく思うんですが、音楽は心の栄養ですね』

何かの話題の途中らしい。
その台詞を聞いて俺は呟いた。

「へえ、そうですか」

『悩んだり、苦しい時・・・・・・いつも僕を救ってくれたのは音楽でした。それは今も昔も変わらなくて・・・・・・』

「アンタみたいな人も悩むんだな」

『音楽を聞きながら歩くのはまあ、混み合った街中では危ないけど・・・・・・ふふ、割と空いてるとすぐ、ヘッドホンしちゃいますもん。もし僕とぶつかっちゃった人は、ゴメンなさい』

鼻にかかった声で、クスクス笑う。

「そういえば・・・・・・あん時もヘッドホンしてたっけ」

初めて出会った、あの日も。

『辛くて元気が出ない朝も、陽の光を浴びて好きな音楽を聞くと、心が洗われるんです』

「ああ、ちょっと共感。・・・・・・ってか、結構根暗?」

『さて、そろそろ終わりの時間が近付いて来ました。今日も、僕のお勧めの一曲をお届けします。切なく心に響く美メロです。皆さんも気に入ってくれるといいな。ジェイソン・ムラーズで“Life is Wonderful”どうぞ』

シンプルなアコギ演奏をバックに、柔らかな声がメロディーを口ずさみ始めた。

『 It takes a crane to build a crane
  It takes two floors to make a story
  It takes an egg to make a hen
  It takes a hen to make an egg
  There is no end to what I'm saying

  It takes a thought to make a word
  And it takes some words to make an action
  It takes some work to make it work
  It takes some good to make it hurt
  It takes some bad for satisfaction

  La la la la la la la life is wonderful
  Ah la la la la la la life goes full circle
  Ah la la la la la la life is wonderful
  Al la la la la・・・・・・・・・・・・ 』



少し古びた雰囲気の切ないメロディーだ。
心の芯までじんと染みてくる。
流行りの曲調じゃ無いし歌詞の意味も知らないけど、心が痛くなるような、締め付けられるような感じがした。

「王道をいかないとこがハイセンスだな。でもあんた、やっぱり根暗だろ?」

ステレオの向こうに問いかけても、返事が返ってくる筈も無く・・・・・・

「ラララララララ ライフ イズ ワンダフォー
 アー ララララララ ライフ イズ ゴーフ サイコォー・・・・・・ 」

耳に残ったメロディーを一人口ずさんで、俺は小さく笑った。









数日後の休日のことだった。
CDショップにゲームを借りに行ったついでに、ジェイソン・ムラーズのCDを探すとアルバムが殆どスカスカになっていた。
俺は溜息をついて笑った。

「ラジオ聞いた女どもの仕業だな・・・・・・」

丁度その時、ポケットに入れた携帯がメッセージの受信を告げた。
テミナからだった。

『今、ユンホが中央広場で撮影してる』

同時に、広場のギャラリーの写真が送られて来た。
大半が女で、各々ユンホに向けてカメラを掲げたり、手を振っている様子が写っている。
俺は暫く立ち尽くした後、ふらりと店を出て公園へ向かった。
これからどうしようとか、具体的な計画は何も考えないまま。
ただ会いたいと思った。もう一度。
あの時悲しい顔をさせた事を、本当は後悔していた。
次は笑顔が見たかった。
カフェで雑談した、あの日のように。






広場に到着すると、モニュメントに寄りかかりながら撮影するユンホの姿を見つけた。
カメラに向かって、器用に様々なポーズをキメている。
ポーズが変わる度に、周りに集まった女たちが黄色い声を上げる。
少しすると休憩に入ったらしく、ユンホはスタッフからミネラルウォーターを受け取り口に運んだ。
傍らの休憩スペースに移動して、携帯を弄り始める。
俺もまた、携帯を手にしてカトクを起動した。
ギャラリーの端から視線を送りながら、ユンホ宛に初めてメッセージを打つ。

『 シム・チャンミンだ。
  あんたのせいでヤる気が失せて、童貞を卒業し損ねた。
  わざわざ出向いてやった。 謝れば許してやる。   』

ヤって無いと伝えれば、俺が与えた衝撃は少しマシになるだろうか。
あの日連れてた女が実は男だなんて言える訳も無く、嘘をつくしか無かった。
送信をタップすると、数秒の後、ユンホははっとして周りを見渡した。
きっと俺を探しているのだろう。
遠目からその様子を眺めていると、ある瞬間互いの目がぱちりと合った。
丸い瞳は、俺を捉えた途端ゆらりと揺れて大きくなった。
小さな口が「チャンミン・・・・・・」と僅かに動いて、声は聞こえなくても名前を呼んだのが分かった。
俺をじっと見つめたユンホは、次第に顔を崩して笑みを浮かべた。
その直ぐあとに、メッセージが届いた。

『ごめんなさい』

即返信する。

『笑ってるのが気に食わない』
『うん。ごめんね』
『だから、笑うなっての』
『うん』

眉を潜めて睨んでも、ユンホは笑みを浮かべたままだ。
ギャラリーを挟んで二人見つめ合う。
大勢の中、誰にも気付かれずひっそりと。
ああ・・・・・・俺は何故か、どうしてもアンタを嫌いになれない。
その笑みが擬い物だとも思えない。
友情にしては・・・・・・少し執着し過ぎている気がする。
きっとこの感情の正体を、俺はもう知っている。






頭の中で、ラジオで聞いたあの歌が流れている。



It takes a crane to build a crane
It takes two floors to make a story
It takes an egg to make a hen
It takes a hen to make an egg
There is no end to what I'm saying

It takes a thought to make a word
And it takes some words to make an action
It takes some work to make it work
It takes some good to make it hurt
It takes some bad for satisfaction

La la la la la la la life is wonderful
Ah la la la la la la life goes full circle
Ah la la la la la la life is wonderful
Al la la la la・・・・・・・・・・・・ 



なんだか、今の俺達にぴったりだと思わないか。
切ないメロディーが、見つめ合うふたりを包み込む。
またひとつ、ドラマが生まれてゆく。









To be continue



◇◇◇



なんか今回ほんと、NBの好み詰め込み過ぎました。
ラジオとか音楽に自分を乗せちゃうナルシスト感とか、マイワールド過ぎて皆さんについて来て頂けるか不安(笑)
チャンミン、もしかすると気付いちゃったかも知れません。
やっと関係が進展しそうです~。
ジェイソン・ムラーズの曲は、最近好きでヘビロテ中なんです(*´ω`*)

あ、コメントは今週末にまとめてお返しする予定です!
いつも応援の言葉と、沢山の拍手ありがとうございますm(_ _)m



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2016/04/05 (Tue) 21:52 | EDIT | REPLY |   

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