愛することは、君が教えてくれた 6





































俺の作戦はこうだ。
クラブで女を連れてユンホを待ち伏せする。
ユンホが現れたら、目の前で女の肩を抱いてキスしながら高らかに宣言。
イメチェンしてやったぜ。見てろ、これから童貞を卒業してやる!
ユンホを驚かせたら、女を連れてそのままホテルへGO。

俺が話し終えると、キュヒョンは戸惑いながら言った。

「ち、ちょい待ち。その女ってどうすんの?お前まさか、ナンパでもする気か」

テミナが続けて言った。

「無理無理。見た目良くても、先輩のコミュニケーション能力じゃ」

勝手に焦る二人を見て、俺は首を振った。

「まさか。俺が母親と妹以外の女に触れる訳無いだろ」

キュヒョンは安堵の表情を浮かべた。

「だよなぁ!いやー良かった。外見変わってもやっぱ中身はシムだな」

テミナがため息をついて、呆れ顔で言う。

「先輩、それ堂々と言うことじゃないから」
「まあまあ、いいじゃん。でもシム、その女ってまさかとは思うけど・・・・・・」

キュヒョンの問いには、当たり前のように答えた。

「テミナ、お前がやるに決まってんだろ」
「僕!?」

テミナは女顔だし体格も小柄で、女装させるには最適の人物だ。
その証拠に、コミケのコスプレブースで女キャラの格好をさせると毎回撮影陣が絶えない。
今や可愛らしさに惚れた奴等が、ファンクラブを作ってしまう程の人気なのだ。

「待って、僕先輩とキスなんてしたくない」
「文句言うなよ。お前もうファーストキス済ませてんだろ」
「先輩はいいの?それで。まだキスしたこと無いのに、僕としちゃっていいの?」
「ほんとはいい訳ないけどな。今回ばっかは仕方ない。ユンホを見返す方が大事なんだよ俺は」
「僕の意向は無視!?」

言い合いをする俺とテミナを見て、キュヒョンがつぶやいた。

「シムが本気だ・・・・・・」

当たり前だ。奴のことは絶対に許せない。
・・・・・・そういえば今更だが、俺は何故こんなに怒ってるんだっけ。
今までも色んな奴等に散々コケにされて、それでも目を瞑ってきたのに。
きっと、一度優しくされたせいだ。
その分深く傷ついた。
それだけの話だ。









イメチェンしてから初出社の日。
俺を見て多くの同僚が驚いた。
ただ見てるだけの奴も居れば、彼女が出来たのか、好きな奴が出来たのかとしつこく聞いて来る奴も居た。
そいつには「いえ、見返したい奴が居るんです」と真顔で返して白けられた。
俺をゴミ扱いしていた女は態度が変に優しくて、「相変わらずコーヒー入れるの下手っすね」と言うと舌打ちされた。
去っていく後ろ姿をチラリと見ながら、ふんと心の中で笑った。
外見変えただけで、態度をコロリと変えやがって馬鹿な女。
ひねくれた自分に幻滅しそうになって、開き直る。
面倒臭いこの性格が、そう簡単に直るわけない。
外見を変えたって、中身まで綺麗に生まれ変われる訳じゃない。
朝と夜は、洗顔と化粧水でスキンケアをしっかり。
服装はテミナに渡されたファッション誌を参考に、同じコーディネートじゃなく数着を着回すように心がけた。
その間、テミナがモデル業界の奴からユンホについて情報を集てくれた。
奴がよくクラブに出現する曜日、時間が大体分かった。
テミナと俺は予定を調節して、ある夜ついに計画を実行することに決めた。









テミナとは、クラブの最寄り駅で待ち合わせた。
目の前に現れたテミナは完全に女だった。
金髪の長いウイッグ、カールした睫とチークで可愛らしい顔が更に引き立って見える。
ミニスカートの下からは、網タイツで覆われた細い足が覗いている。
しっかり内股なのを見て、俺は小さく噴出した。

「拒否ってたわりに随分ノリノリじゃん」
「なーんか女装し始めたら本気スイッチ入っちゃって。それに折角ユンホに会えるんだから、徹底的に可愛くしないとね」
「あっそう・・・・・・」

何だよはしゃぐなと、俺は心中で不満を漏らした。
テミナはニッコリ笑うと、頬に手を当てポーズを作って見せた。
まあ、そこらの女よりはずっと可愛いと思う。
だが素を知っているし何より完全なる男なので、絶対に変な気を起こしたりはしない。
テミナはバッグを漁ると、薄い冊子を取り出した。

「何それ」
「リーダーが脚本書いてくれた。これの通りやれば間違いないって」
「あいつも妄想好きだよな・・・・・・」

キュヒョンは趣味で執筆する程の妄想好きだ。
いつの間に脚本なんて作っていたらしい。
ぱらぱらと中身をめくると、恥ずかしくなるような台詞が並んでいた。
親友が折角準備してくれたのだから、使わせて貰うとしよう。
テミナは脚本を見てくすくす笑うと、俺の腕に縋って言った。

「ねえチャンミン、抱いてくれるでしょ?」
「ぷっ」
「ははっ。ねえ、僕その場で笑っちゃわないか心配」
「だな。あーおっかし」

俺達はへらへら笑いひっつきながら、クラブへ向かった。



薄暗い店内を飛び交うカラフルな光。
忙しない音楽。踊り賑う人々。
この前と全く同じなのに、隣にテミナが居るだけで俺は随分と落ち着いていた。
そして脚本の裏に書かれた
『友よ俺がついている』
『クラブの人ゴミなんて、コミケの大群に比べたらちっぽけなもんさ』
というキュヒョンのメッセージにも、また救われた。
キュヒョンは今日、仕事で加勢できないのが残念だ。
俺はつくづく仲間に生かされていると思う。
情報によると、もうそろそろユンホが出現する頃だ。
フロア内に視線を走らせていると、テミナがシャンパンを持ってきた。
飲んで、と差し出す。

「一杯入れてリラックスしよ」
「ああ・・・・・・」

互いに軽くグラスを合わせると、口へ液を流し込んだ。
体がじわりと熱を帯び、緊張が和らぐのを感じる。
最後の一口を飲み干したそのとき、テミナがある一点を見て「あ」とつぶやいた。
視線の方向を追うと、そこには・・・・・・

「ユンホ・・・・・・」

男女の集団と、談笑している姿をみつけた。
傍らにこの前とはまた別の、見たことの無い男を一人連れている。
一見憎めないようなその笑顔に、俺は騙されたんだ。
ふつふつと怒りが湧いてきて、俺は無意識にユンホを睨み付けていた。

「奴に間違いない」
「もうちょっと待とう。人数が多すぎる」

テミナが囁きながら、俺の腕をそっと掴む。
標的を前にして、俺達は緊張していた。

「集団から離れた隙を狙う」
「分かった」

暫くすると、ユンホは男とふたりで集団を後にした。
こちらへ向かって歩いて来る。

「行くぞ、テミナ」
「うん」

テミナが俺の腕に両手を絡め、体を密着させる。
仕草は見るからに女そのものだ。完全に切り替えたのが分かった。
俺も深呼吸すると、きりっと表情を引き締めた。
テミナと目を合わせたのを合図に歩き出す。
―――シム・チャンミン、自信を持て。
   奴に劣らない程のモデルになった気でいろ。
   隣には極上の可愛い女を連れてる。
   自信を持て、胸を張れ、奴を見返せ。
心の中で、暗示をかけた。
自分でも知らないような黒い感情が、心の中に渦巻いていた。
ユンホの目の前に立つと、前髪をかき上げにやりと笑い、俺は声をかけた。

「よう」

ユンホは俺を見た瞬間、目を見張って固まった。
暫くすると、上ずった声で呟いた。

「チャンミン・・・・・・」
「久しぶり」
「ビ、ビックリした。一瞬誰かと・・・・・・。随分、変わったね」

笑ってはいるものの、顔は戸惑いの色を残したままだ。

「ほんと俺ってダサかったよな。あんたの一言で気付かされたよ」
「それは・・・・・・」
「おかげで、今は良いこと尽くしだ」

テミナが俺の肩に額を摺り寄せ、上目遣いで見つめてくる。
高くかすれた、甘い声で囁く。

「ねえ、酔っちゃった・・・・・・」
「なんだよ、仕方ないな」

身を屈めると、唇が触れ合うギリギリまで顔を寄せてキスのフリをした。
きっとユンホからは、確実にキスしているように見えるはずだ。
テミナの小さい手が、俺の背中から尻までをするりと辿る。

「チャンミン、抱いてくれるでしょ・・・・・・?」

名演技過ぎる。
お前、女優になれるぞ。いや女優は間違いか。
思わず心中で呟いた。
テミナの腰を抱いて耳元に口を寄せ、俺は言った。

「行こうぜ。相手してやるよ」

そのまま、出口を目指して歩き出す。
今のところ上手くいっているが、実は女装してる奴とこんな事やり合ってるなんて、バレたら最悪だ。
段々恥ずかしさが込み上げて来る。
とっとと終わらせよう。
去り際後ろを振り返った時、ユンホは瞳を震わせて俺を見つめていた。
まさに衝撃を受けたような顔をしていた。
予想以上にダメージは与えられたようだ。
きっと作戦は成功だ。
そのまま終わると思っていたのに、予想外のことが起きた。
不意に、後ろから腕を掴まれた。
ユンホだった。

「駄目だ・・・・・・チャンミン」
「え・・・・・・?」
「簡単に、寝ちゃ駄目だ」

真剣な顔で俺を見つめ、ユンホはそう忠告した。
その直後、カッと頭が熱くなった。
勢い良く手を振り払い、俺は言い放った。

「あんたにだけは言われたく無い!」
「チャンミン・・・・・・」
「俺には、あんたが誰よりもだらしなく見える。そんなこと言う権利ないだろ?放っておいてくれ」
「チャン・・・・・・ミン・・・・・・」

ユンホは小さな声で俺の名を呟くと、黙り込んで下を向いた。
隣に居た男が、ユンホの肩に手を添えて言った。

「ユノ、そんな奴に構うな。行こう」

テミナが小声で言った。

「先輩も行くよ。これ以上はヤバイって」

再び歩き出した時・・・・・・

「俺だから言ってる!辛さが分かる、俺だからっ・・・・・・」

背後からそう叫ばれて、俺はつい歩みを止め、振り返った。

「俺みたいになるな、チャンミンッ!!」

ユンホが男に連れられ、人ごみの中へ消えてゆく。
俺を何度も振り返りながら遠ざかり、そして遂に見えなくなった。
テミナが、俺に問いかけた。

「ねえ、今のどういう意味?」
「・・・・・・知るかよ」

傷付いた顔をしていた、気がする。
そして何かを訴えるような切なげな顔が、頭に焼きついて離れない。
うしろめたさが込み上げてきて、俺はそれを消し去るように首を振った。
俺は悪くない。
俺は被害者だ。
何ひとつ悪いことなんて・・・・・・

「ユンホ・・・・・・泣きそうだったね・・・・・・」

テミナがポツリと呟く。
雑踏の中なのに、それはやけにくっきりと聞こえ、頭の中に何時までも響いていた。









To be continue



◇◇◇



オタクって演技上手そうじゃありません?
特に妄想好きな人は感情移入得意そうな気が・・・・・・(笑)
チャンミン、妄想執筆オタ、女装オタと濃いいメンバーに囲まれております(笑)
そしてチャンミンは、女子に嫌われる面倒臭いタイプのオタクです。笑
お休みなので連チャンでUP。
ユノの発言にはどんな意味が有るのでしょう。
展開ゆっくりですが、これから徐々に明らかになっていきます。



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2016/04/04 (Mon) 17:06 | EDIT | REPLY |   

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