愛することは、君が教えてくれた 4

  30, 2016 11:25




































頭の何処かで、警報が鳴っている気がした。
これ以上先へは進んではいけない、見てはいけないと。
それでも俺は、ユンホの姿を追っていた。
怖いもの見たさのような、得体の知れない好奇心が湧いていた。
フロアの隅の、奥まった暗闇に目を凝らす。
先程の男が、ユンホの身体を壁へ押し付け首筋に顔を埋めていた。
ユンホはボンヤリとして無抵抗なままだ。
俺は息を飲んでその光景を見ていた。
もう一人、フラりと男が寄って来てユンホの身体に触れた。
知り合いだろうか。
男二人は、当たり前のように際どい部分や髪に触れたり、あちこちに口付けている。
目を閉じてされるがままのユンホは、口元を緩めて官能の表情を浮かべているように見えた。

「そういう、ことかよ・・・・・・」

ユンホは、俺に向けたあの甘い微笑みや人懐こい態度を、誰にでも晒していたということだ。
俺は何故か、自分だけが特別のような気がしていた。
心がたちまち冷たく凍り付いてゆく。
勝手に勘違いしただけなのに、それでも裏切られたと感じた。
次第に、心の底から腹立たしさが湧いてきて拳を震わせた。
二度会っただけの、それも男相手に何故こんなにも執着しているのか、自分でも分からない。
俺はユンホを見つめながら、低い声で呟いた。

「有り得ないよ、あんた」

その直後、ユンホと男二人が触れ合いをピタリと止め、俺を振り返った。
俺を見た途端、ユンホの丸い瞳が大きく見開かれた。
震える小さな声で、呟く。

「チャンミン・・・・・・何で、此処に・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」

見つめ合う俺達を見て、男二人は笑って言った。

「なんだお前、ユノの新しいセフレか」
「でも見たとこ、まだ手入らずじゃん?」
「はは、確かに。どうなんだよユノ、この童貞くんに筆降ろさしたのか?」

下品な発言に眉を寄せながら、俺は男二人には見向きもせず、ただじっとユンホを睨み付けた。
ユンホが顔を歪めて、苦しげに俺から目を反らす。
暫くの間俯いてまた顔をあげると、小さく笑いながら信じがたい台詞を吐いた。

「・・・・・・誰がこんな童貞オタク相手にするかよ。冗談はよしてくれ」

男二人が、それを聞いてゲラゲラと笑う。
ショックのあまり言葉も出なかった。
ユンホは、仲間以外で俺の存在を認めてくれた数少ない人間だと思っていたのに。
店で俺を助けてくれたりカフェで笑い合ったりした、あの優しさは全部偽りだったのか・・・・・・?

「俺はこういう男だ。君には遊びで声かけただけ。だからもう・・・・・・忘れてくれ」

ユンホはそれだけ残すと、男二人に連れられて目の前から姿を消した。
爪が食い込む程拳を震わせ、俺は低い声で呟いた。

「許せねぇ・・・・・・」

哀しみも、憎しみと怒りに変わってゆく。
一度信用した人間に裏切られたダメージは、思いの外大きかった。












あの夜から数日が経った。
休日、俺は特に目的もなく、駅前をブラブラ歩いていた。
家に籠っていると、鬱々して仕方なかったのだ。
電車が目の前を通り過ぎて、勢いよく風が吹き抜ける。
ホームに並ぶデカい広告の中に、ユンホの写真を見付けた。
メンズ雑誌の宣伝だ。
髪をかきあげ、上目遣いで此方をじっと見つめている。
そんなトコに、大々的に貼られちまう程の有名人だったんだな。
今まで下を向いて、趣味以外のものは切り離して生きていたから知らなかった。

「このビッチ男め・・・・・・」

広告を睨み付けながら、俺は低い声で呟いた。
コンビニへ寄り漫画を手にしていると、隣の女どもが例の雑誌を開いて騒いでいた。

「このユンホ、めちゃ格好よくない?」
「あたし、この前プレジールで会ったよ。もうイケメン過ぎてヤバかった!」

またか・・・・・・
行く先々で登場して俺を苦しめるなこの野郎。
もう苛々を抑えられない。
俺は女二人の後ろに立って言った。

「止めとけ、そいつは性格悪いぞ」
「は・・・・・・?」
「綺麗なのは外見だけだ。騙されるな」

訝しげに睨まれたが、気にせずその場を後にした。

「何あれ、有り得ない」
「キモいんだけど」
「ユンホのアンチなんじゃない?」

背後から、怒る声でそう聞こえてくる。

「・・・・・・アンチされたのは俺のほうだ、馬鹿」

そう漏らすと、小さく溜め息をついた。






家に帰る途中、街のショーウィンドウに映る自分の全身を見つめ、俺は立ち止まった。
長く無造作に伸びた黒髪、手入れをしない浅黒の肌、シャツとパーカーにダボついたジーパン。

―――『誰がこんな童貞オタク相手にするかよ』

ユンホの言葉が、頭の中でリフレインする。
自分の姿を、とても情けなく、恥ずかしく思った。
言葉のナイフは、俺の心に強く傷を遺していた。
このまま落ち込んで終わるのか?何時もみたいに。
負けた気分になって、愚痴を仲間だけに漏らして我慢するのか?
ウィンドウに映る自分に問いかけ、俺は首を振った。

「終われない、このままじゃ・・・・・・」

俺は・・・・・・

「変わりたい・・・・・・」

変わってそして・・・・・・

「見返してやる。絶対、見返してやる!」

心の底から闘争心が湧いてくる。
コミケの争奪戦や、限定フィギュアの行列に並ぶ時よりもずっと、俺はかつて無いほどに燃えていた。
眼鏡を取り去り地面に叩きつけると、俺はある場所を目指して駆け出した。
アイツに頼むしかない。
ファッションセンスのあるアイツなら、俺を変えてくれるに違いない。



目的の家の前につくと、俺は物凄い勢いでインターホンを連打した。
暫くするとドアが開き、中から不機嫌そうな顔が現れた。

「ちょっと先輩、いきなり何?てか、押しすぎだから。一回で十分・・・・・・」

不満を漏らしているのに構わず、俺は小さな肩をわし掴みながら言った。

「俺を変えてくれ、テミナ!」
「え・・・・・・?」
「俺を、ユンホに負けないくらいのイケメンに変えてくれ!!」
「・・・・・・ええっ?」









To be continue



◇◇◇



ユノ酷いですね~・・・
でもまあ何時ものように、登場人物の行動にはちゃんと意味があるんですよー
どうか見守ってあげてください。
そして次回からチャンミンが格好良くなります♡わーい!
今回は一話分少ないですが、キリが良いのでここまで。
内容的に読みにくい所もあると思いますが、見ていただいた方、ありがとうございました!



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