愛することは、君が教えてくれた 3

  29, 2016 00:11




































その日の夜は、仲間と集まる約束をしていた。
仕事終わり、キュヒョンとテミナが俺の家にやって来た。
酒とつまみを持ち込み、趣味の話題で盛り上がる。 何時もの流れだ。
一旦話題が切れると、俺は例の件について相談を持ち掛けた。

「俺・・・・・・最近知り合った奴が居るんだけどさ」
「え、まさか女?」

キュヒョンが興味津々に言った。

「いや、男 」
「なーんだ」
「聞けよ」

俺はイケメンと出会ったきっかけや、カフェでの出来事を全て話した。

「なんか親切すぎて怖いんだけど、どう思う?新手の詐欺かな」
「詐欺言うても・・・・・・普通オタクの男狙うか?シムに執着する意味が分からない」

キュヒョンが首を捻って言う。

「先輩、そのイケメンの写真無いの?」
「ある」

テミナの問いかけに頷き、俺はカトクを起動した。
ID検索で見付けたホーム画面に、笑顔でピースをするイケメンが写っている。
因みに、友達申請はまだしていない。
テミナは画面を見た途端、驚いた顔でフリーズしてしまった。

「ユンホって、ユンホ・・・・・・?」

画面の名前を見て、呟く。

「名前だろ。イケメンの」
「この人なりきり?」
「は?何の話?」
「モデルのユンホ居るじゃん、知らないの?」
「・・・・・・知らない」

キュヒョンへ視線を向けると、同じく知らないようで首を振った。
そんな俺達を見て、テミナが呆れ顔で呟く。

「まあ、先輩達は二次元一筋だからね」

生意気な態度にイラッとしながらも、俺はテミナの発言を否定した。

「こいつがモデルな訳無い。カフェで働いてるし」
「カフェの名前は?」
「確か・・・・・・プレジール」
「それ、めっちゃユンホだし!!」

テミナが興奮しながら声をあげた。

「ユンホは元々プレジールで働いてて、スカウトされてモデルになったんだよ」
「え、そうなの?」
「今はどっちも掛け持ちしてて、不定期でカフェの仕事やってんの。事前にシフトを知らせると客が凄い事になるから、ユンホが出る日は基本シークレットって話」

頭の中に、物凄い勢いで集まってきた女たちの姿が思い浮かぶ。
そして、二次元を越えるようなあの完璧なルックス。
俺が出会ったイケメンはきっと、テミナの言うモデルのユンホに違い無い。

「ますます分かんねぇ。何で俺なんかを・・・・・・」

―――『好みのタイプだから、かな』

「まさかなぁ、無い無い・・・・・・」

あの一言が頭を過り、俺は首を振りながら小さく笑った。






俺たちが解散したのは、日を跨いで翌朝だった。

「あ、そうそ。兄貴が元気かって、心配してたぞ」

家を出る間際、キュヒョンが言った。

「ん。顔出してみるよ」
「気にしてる風だけど、兄貴も構って欲しいんじゃない?寂しがりだから」

それを聞いてテミナが付け足した。

「イトゥクさんに会うなら、宜しく言っといて先輩。あ、それとユンホと進展あったら直ぐ教えてよ?」
「はいはい」

二人が帰ったあと、部屋の片付けをしながら棚の中を漁ると、薬がもう無くなりそうだった。

「・・・・・・行くか、イトゥクさんとこ」

今日は休みだし、特に予定が無い。
キュヒョンの兄イトゥクさんは精神科医であり、俺の良き相談相手だ。
医者と患者という捉え方もあるのだろうが、自分がそうだと肯定したくないのでやはり相談相手・・・・・・と言っておこう。









「いらっしゃい、チャンミン」

部屋に入ると、イトゥクさんは何時も通り人懐こい笑顔で迎え入れてくれた。
突然の訪問でも、こうして貴重な休憩時間を割き相手をしてくれて、本当に有り難い。

「キュヒョンが来いって?」
「いや、自分が会いたくて来ました」
「またまたー。さ、座って」
「はい」

テーブルの上に、コーヒーカップがふたつ置かれる。
俺は何時も通りブラックだ。
コーヒーを口に運びながら、砂糖とミルクを付け足すイトゥクさんを見てあの人を思い出した。
知らぬ間に口元を緩めていると、イトゥクさんが言った。

「チャンミン、何かいいことあったでしょ」
「え?」
「もしかして・・・・・・」

イトゥクさんは笑顔で俺の顔を覗き込むと、小指を立ててくるくると回した。

「ちっがうよ」
「ふぅん?」

何故そんな思考に走るのだろう。
今の俺は、まさか恋をしているように見えているのだろうか。
華やかな人と触れ合うのは滅多に無いことだから、多少テンションが上がっていることは確かだ。
でも恋な訳無い。男相手にそんなの有り得ない。
俺が黙り込むと、気を遣ったのかイトゥクさんはそれ以上追求しなかった。
俺の手を見ながら、イトゥクさんは静かに笑って言った。

「・・・・・・手荒れ、相変わらずだね」
「うん」
「ムービーに撮る癖は?」
「・・・・・・止められない」
「そっか」

イトゥクさんは、トイレットペーパーと雑巾を机の上に置いて俺に命じた。

「じゃあ、今日もいこうか。さ、これを触ってみて」
「う・・・・・・」
「トイレットペーパーは、保管場所はトイレだけど未使用。雑巾は一度窓を拭いただけだ」

なかなか触ろうとしない俺の手を、イトゥクさんは強引に引いてそれらに導いた。

「うあっ!」
「あーあ、触っちゃったね?チャンミン」
「き、きたな・・・・・・」
「だいじょぶだいじょぶ」

ショックを受ける俺を見て笑いながら、イトゥクさんは更なる難関を言いつけた。

「このまま家に帰るんだ。絶対手を洗っちゃ駄目だよ」
「げぇっ。辛過ぎる」
「返事は?」
「・・・・・・はい」

俺は渋々頷いた。



帰り際、イトゥクさんが紙袋を差し出した。

「はい。デパス、もうそろそろ切れる頃でしょう」
「どうもっす」

紙袋を受け取ると、俺は躊躇いがちに言った。

「あのさ・・・・・・」
「ん?」
「俺って異常・・・・・・なのかな」

イトゥクさんは、穏やかな笑顔を浮かべて答えた。

「チャンミンは普通だよ。強迫症の人は沢山居るし、自分だけ特別だと思う必要は無いさ」
「そっか・・・・・・」
「でも、“治そう”という気持ちは忘れずにね。本人にその気が無いと、病気は治らない」

イトゥクさんのその言葉は、心にとても強く残った。






もうすっかり、日が暮れてしまった。
明るい光で埋め尽くされた街は、まだまだ眠る気配が無い。
派手なライトを放つ店の前で、俺は立ち止まった。
黒いドアに“Club Colors”と札がかけてある。
店の中からは、ドンドンとビートの効いた低い音が聞こえてくる。
クラブなんて入ったことが無いのに、俺はふらりとそのドアを潜っていた。
無意味な洗浄行為も対人恐怖も、一向に治る気配が無い。
そんな自分の弱点全てに嫌気がさしていた。
治そうとしなければ、自分から・・・・・・

「行動療法だ。やってやる」

人ごみの中へ、俺は足を踏み入れた。
薄暗いフロアの中、色とりどりのライトが飛び交っている。
音楽に合わせ愉快に踊る人々は、身体がぶつかろうとも全く気にする様子が無い。
息をするのもやっとの状態で、俺はふらふらと歩いていた。
ある瞬間のことだった。
人ごみの中に、見覚えのある姿を見つけて俺は目を凝らした。

「・・・・・・ユンホ?」

一人の男を連れ、シャンパン片手に笑顔で踊っている。
男の手が、ユンホの身体をするりと辿った。
触れたまま離れない手。接近する身体。ユンホは笑顔のまま、それを拒む様子が無い。
友達同士のスキンシップにしては、明らかに度が過ぎている印象を受けた。
店の奥へと消えていくふたりの姿を、俺は無意識のうちに追っていた。









To be continue



◇◇◇



内容が独特過ぎて・・・・・・
お察しの通りチャンミンは強迫性障害で通院してます。
本人は病気を需要しきれてない感じですね~。
そしてユノは何やら不穏な雰囲気・・・・・・
今回は二人の精神的な問題をテーマに、お話を展開していきます。
知識が不十分で至らないとこもあると思いますが頑張ります。



ランキング参加中です♪
気に入って頂けたら、ポチッとお願いします(*^^*)



にほんブログ村

     

人気ブログランキングへ


スポンサーサイト

Comment 1

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Edit | Reply | 

What's new?