愛することは、君が教えてくれた 2





































まだ薄暗い早朝。
スパッツにハーフパンツ、ランニングジャケットを身に付け外に出る。
大きく左右に背伸びをして、屈伸を二回。
手足をくるくると回して、ジャンプを二回。
深呼吸をすると、静かな街の中へ駆けてゆく。
朝のランニングは俺の日課だ。
走る事に集中すると、心に溜まった邪念やストレスが取り払われる気がする。
朝陽を浴びると生きてることを実感するし、何だか希望が湧いてくる。
正常よりもいささか、いや結構、俺は神経質なのだろう。
考え過ぎて疲れることがよくある。
だからこうして自分を開放する時間が必須なのだ。
走る脚が、何時もより軽やかなその訳は・・・・・・
笑みを浮かべながら俺を振り返り、遠くなる彼の姿を思い浮かべる。
誰かに優しくされ感謝する。
そんな当たり前で、でも忘れかけていた気持ちを今心に抱いている。
それだけで、こんなにも暖かい。









時刻は六時半過ぎ、あと二十分もあれば家に到着する。
それからシャワーを浴びて着替えて、飯を詰め込んだら大体七時半。
出勤には十分間に合う。
ところが、正面にある看板を見つけて俺は呟いた。

「うわ、マジかよ・・・・・・」

看板には工事中の文字。
何時も通るルートが閉鎖されてしまっていた。
仕方無く一本先の道へ回り込むことにする。
普段使わないので知らなかったが、綺麗な並木道に雑貨屋やカフェが並ぶ洒落た通りだった。
ふと香ばしい匂いが鼻を掠め、俺は足を止めた。
グリーンの屋根に白い文字で“plaisir”と刻まれている。

「プレ・・・・・・ジール・・・・・・?」

正面は一面ガラス張りの作りで、入口周辺を植木や色とりどりの花が鮮やかに彩っている。
綺麗な外観に魅入っていると、ある一人のスタッフが黒板を抱えて店から出てきた。
「よいっしょ」 と漏らして少し不器用に黒板を設置する、その顔を見て驚いた。

「あ・・・・・・あんた・・・・・・!」
「ん・・・・・・?」

先日、万引き犯にされそうになってた俺を助けた、あのイケメンに違い無い。
まさか、こんな所で再会するなんて・・・・・・
前髪は斜め分け、サイドの髪の片方は耳にかかり、もう一方はふわふわとウエーブしている。
綺麗めのセットだが、決まり過ぎず少し遊んでいる感じがイイ。
すらりとした長身に白シャツとベスト、ロングエプロンを身に付け、小さな顔がとても際立って見える。
完璧過ぎる、まるで漫画の中から出てきたキャラの様だ・・・・・・
俺はまた、知らぬ間に呟いていた。

「二次元かよ・・・・・・。いや、二次元顔負けだ・・・・・」
「えっ?何?」
「あっいや・・・・・・」

俺、何か口走った?
イケメンは口を覆う俺をじっと見つめ、暫くのインターバルの後「ああ!」と突然声を上げた。

「君、この間のメガネ君!」
「は・・・・・・?」

メガネ君だと?
確かにあの日は眼鏡をかけていたが・・・・・・
無邪気に笑うイケメンに少しイラッとする。

「眼鏡してないから違う人に見えた。まさかまたメガネ君に会えるなんて・・・・・・」
「物品の名前で呼ぶなっ!俺の名前はシム・チャンミンだ」

思わずそう突っ込んだ。
不機嫌を顕にしたのに、イケメンは全く堪える様子が無くニコニコと笑っている。

「ふぅん。チャンミン?」
「な、なんだよ・・・・・・」

身体を揺らしながら顔を除き込まれて、俺は後ずさった。

「格好良いね?チャンミン」
「なっ・・・・・・!」

イケメンが、これまた甘い声で囁いた。
頭からつま先まで一気に熱くなる。
何でこんなに動揺するんだ俺。滅多に褒められないせいか?
数秒吃った後、やっと出た台詞はこうだった。

「馬鹿にするなよ・・・・・・」

イケメンが不思議そうに言った。

「何で?よく格好良いって言われない?」
「全然」
「へぇー。そうなんだ」

笑顔に戻ったイケメンは、明るい声色で言った。

「ねえ、俺ここのカフェで働いてるんだけど、良かったら寄ってかない?今開店前だから誰も居ないよ」
「え、いや、でも・・・・・・」
「時間厳しい?」
「そうじゃ無いけど・・・・・・」
「コーヒーくらいなら出せるから。ね!」

俺は半ば押し切られるようにして、店の中へ誘導された。
仲間意外とこうして絡む事が無いので、対応がぎこちなくなってしまう。
俺は窓際の席に通され、向かい側の席にイケメンが腰掛けた。
差し出されたコーヒーに中々手を付けないでいると、イケメンが不思議そうに言った。

「飲まないの?」
「だって、金持って無いし」
「なーんで!タダだってば。飲んでよ」

イケメンがクスクスと笑って言う。
俺は遠慮がちにコーヒーに手を伸ばして、口へ運んだ。
芳ばしい匂いがふわりと口内に広がり、上品で深い味がした。

「旨い」
「でしょ。評判良いんだ、うちのコーヒー」

得意げにそう言うイケメンを見て、俺は込み上げる笑いを抑えることが出来なかった。
ぷくく、と肩を揺らして笑う俺を、イケメンが訝しげに見つめる。

「何?」
「あんたさ・・・・・・コーヒー苦手なのに、ここで働いて大丈夫なの?ぷっくく・・・・・・!」
「あー馬鹿にしたな!ブラックじゃなきゃ平気だもん!」
「あっそう。くくくっ・・・・・・」

イケメンが、俺の脚をつま先でツンと蹴る。
「こんにゃろ」と零しながらも、全く怒っている様子が無く笑顔のままだ。
今この瞬間、自分が充実感を感じていることに気づく。
この人と居ると、何でこんなに心が穏やかになるんだろう。
イケメンが、携帯を取り出して言った。

「チャンミンさ、カトクやってる?」
「・・・・・・やってるけど」

カトクは、今や連絡ツールとして欠かせない有名なアプリだ。
若い奴から中年世代まで、大半が利用している。

「良かったら友達にならない?」
「え・・・・・・」

思いがけない誘いに、俺は無言のまま固まってしまった。

「嫌・・・・・・?」
「嫌っていうか・・・・・・」

今まで冷遇されることが多く、それが当たり前になっていたので、積極的な奴にはまず警戒心が働く。
この人を悪人だと思いたくないが、防衛本能なので仕方無い。
イケメンは、メモに文字を羅列すると俺に差し出した。

「俺のID。もし気が向いたら連絡頂戴?」
「・・・・・・分かった」

取り敢えず、メモは受け取ることにした。
二度会っただけなのに、こんなにフレンドリーに接するのは普通なのだろうか?
俺は人と関わり慣れてない方だか ら、不思議がる事自体がおかしいのかも知れない。
でも、聞かずにはいられなかった。
店から出て帰る間際、俺はイケメンに疑問をぶつけた。

「あのさ、何で・・・・・・俺に良くしてくれんの?」
「え?」
「俺こんなだから滅多に人寄って来ないし・・・・・・なんか、優しくされると違和感ってか・・・・・・」

俺がボソボソそう言うと、イケメンはフフンと鼻を鳴らして笑い、首を傾げた。

「何でだろうね?」

上目遣いで俺を見上げると、イケメンは衝撃的な言葉を口にした。

「好みのタイプだから・・・・・・かな」
「ええっ?」
「ん?」

いやいや、聞きたいのはこっちなのに聞き返すなよ。
俺が動揺しているのを知っている筈なのに、イケメンは笑い続けている。
優しく穏やかだが、掴み所が無く癖のある人だ。

「あんたって、そっち?」
「んー、それはこれから分かるんじゃない?チャンミンが俺と友達になってくれたら」
「あっそ・・・・・・」

イケメンのペースにすっかりのまれてしまって、俺はそれ以上追求するのを諦めた。
丁度その時、店の前を通りかかった女子学生達が突然叫んだ。

「見て見て、ユンホだ!」
「ホントだ!超格好いいんだけどっ!」

それを聞き付けて、次から次へと人が集まって来る。
殆どが女で、各々がイケメンに向かって手を振ったり、興奮した様子で呼び掛けてくる。

「お客さん来ちゃったから、行くね」
「あ、ああ」
「またねチャンミン、楽しかった!」

イケメンはそう言い残すと、大勢の中へ消えて行った。
その背中を見つめ、小さく笑いながら俺は呟いた。

「やっぱタダ者じゃないな・・・・・・」









To be continue



◇◇◇



二話目でした~。
今回はユノの言葉使いとか仕草に凝ってます。可愛いこといっぱいさせたい(*´ω`*)
ちなみに カトク=カカオトーク(韓国語発音では”カトク”らしい)≒日本でいうLINE みたいな感じです。
そして一話目の反響すごくてびっくりでした~
ミンホで300越えたのって、イケメン先輩の事情と今回でふたつだけなので(多分)。
嬉しいなー、心からありがとうございます♡
三話も頑張ります!
中身重視でいきたいので、一話分が長くなると思います。
そしてコメへんは今週末にお返ししますね♡



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3 Comments

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2016/03/26 (Sat) 09:35 | EDIT | REPLY |   

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2016/03/25 (Fri) 07:44 | EDIT | REPLY |   

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2016/03/25 (Fri) 07:35 | EDIT | REPLY |   

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