愛することは、君が教えてくれた 1



「見て見て、ユンホの特集やってる!」

隣から、興奮した声が聞こえてくる。

「ほんとだ!めちゃ格好いいよね」

女子高生ふたり組が、はしゃぎながら雑誌を覗き込んでいる。
そこに載っているのは、甘いフェイスで微笑み、様々なポーズを決めるチャラい男。
俺は溜め息をついた。
コンビニの中で大声で騒がないで欲しい。
俺のように、静かに漫画を読みたい奴も居るのだ。
身体を揺らした女子高生がぶつかって来て、俺を見た途端顔を顰めた。

「うわ・・・・・・めっちゃオタクじゃん、キモ」



世の中は、今日も偏見で満ち溢れている。
































































「先ず、自分の顔見てから言えと思ったね!」

ビールを飲み干すと、ダンッと音を立ててジョッキを置いた。

「分かるよ分かる。俺達にゃよくあることさ」

親友のキュヒョンが、大きく頷きながら賛同する。

「頑張って化粧してんだろうが、いくら誤魔化しても素材が駄目なのが丸分かりだ。きっと自覚が無いんだな。良いんだか悪いんだか」

俺が自分をさらけ出して愚痴を言えるのは、同種とも言えるこの仲間達だけだ。
話すのに夢中で、自分の声が大きいことや、周囲の目がこちらに向いていることに気付かなかった。
ゲームをしていたテミナが、画面に目を向けたまま言った。

「はい先輩そこまでー。皆こっち見てるし、此処にいる女全員敵に回すよ」
「っ・・・・・・」

周囲から刺さる視線が痛い。

「・・・・・・・・・だから宅飲みにしようって言ったんだ」

結局その後、テミナのアパートへ向かい三人で飲み直すことになった。



俺の名はシム・チャンミン。
アニメや漫画にゲーム・・・・・・主に二次元を中心に、グッズを集めるなど精力的に活動している成人済の男だ。
酒も割りと好きで、良さげな店を調べて飲み歩いたり、空き瓶や缶をコレクションしている。
好きな事にはとことんのめり込むタイプだ。
俺は、世に言うオタクに属するらしい。
そして何故か、俺達オタクは差別の対象にされてしまう。
今回の様に冷遇されることなど日常茶飯事である。
同じ趣味を持つ仲間と集まる事が、一番の楽しみであり心の救いだ。
そんなオタク生活を送ってきた、俺の自分ルールはこうだ。
自分自身よりもグッズに金をかけるのは当たり前。
チャラい男や女は大敵なので近付かない(これは俺達を馬鹿にする奴らが、大抵派手であるという経験に基づいている)。
二次元キャラを越える程の可愛い女に出会うまでは、恋愛や性交渉に手を出さない。
別に童貞であることを恥じてはいないし、悪いとも思わない。
絶対に思わない。 死んでも思わない!!









不幸は、予期せぬ時に突然襲いかかってくるものだ。
その事件は、何てこと無い平穏な休日に、行きつけの本屋で起こった。
あるコミックの大人買いをした後で、俺はデカいトートバックに漫画を入れて店内を歩いていた。
すれ違った客と身体がぶつかって、バッグが棚に当たった。
棚が少し揺れたが、まさかそれが事故に発展するなんて思わず、俺は特別気にしなかった。
店から出た直後のことだった。
ピーピーと大きな音が鳴り響いて、店員が俺のもとへ駆けつけた。

「ちょっといいですか?」

深刻な顔をして、店員が俺に声をかける。
これって万引きのブザーだよな?
そんなことした覚えは無いのに、何故ブザーが鳴ったんだ?
突然の事に動転し、俺は青ざめていた。
傍から見れば、万引きがバレて焦っている様に見えるかも知れない。
そんなことを考えて、更に動転する。
言葉を発せずに、俺は冷や汗をかいていた。
店員が俺のバックを覗き込んで、一枚のDVDを取り出した。
それを見て俺は目を見張った。
“女教師”と、恥ずかしい題名が赤字で書かれたAVだった。
何故こんなモノが!?

「君、やったのか?」
「や・・・・・・やって無い、絶対やって無い!」

やっと声を出して否定しても、店員の俺を見る目はもう疑いの色を含んでいる。

「じゃあ、何でバックの中にこれが入ってるんだ」
「俺だって分かんないっす。知らないうちに・・・・・・。それに百歩譲ってやったとしても、んな訳分からん物盗まないですし」

その一言が余計だったらしい。

「今やったと言ったね」
「言ったけどやって無いってば!信じてくださいよ」
「どうかな。君・・・・・・如何にもな外見だからね」

その言葉を聞いて、腸が煮えくり返った。
またこのパターンかよ・・・・・・
コイツ殴っていいですか?
チャラ男じゃ無いけど、派手じゃ無いしどっちかって言うと俺ら寄りだけど!
拳を握りしめ、いざ殴ろうという時だった。

「ねえ、今の言葉撤回してくれる?」

突然そう聞こえて来て、俺は声がする方へ目を向けた。
一人の男が、俺の隣に立ち店員をじっと睨んでいる。
明るい色の、さらりと流れたストレートの髪。
丸い目に筋の通った鼻、厚い唇。小さな顔。
なんだこのイケメンは。タレントか何かか?
何処かで見た気がするが、気のせいだろうか。
男は俺が大敵とする派手な部類だが、素材もファッションも文句の付けようの無い完璧さだった。
突然の男の乱入に、店員が眉を寄せた。

「何だい君、彼の友達?」
「いいえ、名前も知らない他人です。でも後ろで見てて、店員さんの態度があまりに酷いからつい」
「何?」
「彼、やって無いって言ってるじゃないですか」
「嘘かも知れないだろ」
「“かも”じゃ無い。店員さんもう、やったって決め付けてるでしょ」

男はまるで自分の事のように怒っていて、当人の俺が、何故か傍観者になってしまている。

「カメラあるんでしょ?確認しましょうよ。ね?」

男が、俺と店員の肩を叩いて言う。

「はぁ・・・・・・」
「いいけど、確認しても無駄だと思うよ」

完全に男のペースに乗せられて、俺達は店の奥へ向かった。
モニターの前に三人並び、映像を確認すると・・・・・・
すれ違った客と身体がぶつかった時の事だった。
揺れた棚からDVDが落ちて、俺のバッグの中に偶然入るその瞬間を、カメラはしっかりと捉えていた。

「そういう事か」

俺は納得して呟き、店員は無実が証明された途端、青ざめて黙り込んでしまった。
隣のイケメンが、俺を見てニコッと笑う。
『よかったね』 と、こっそり口だけ動かした。



店から出ると、俺は遠ざかる男に声をかけた。

「ちょっと待って!」
「・・・・・・ん?」

俺は手に持ったビニール袋の中から、適当にコーヒーを選んで差し出した。

「これ・・・・・・店員が詫びにくれたやつ。さっきは助けてくれてどうも」

男はキョトンと俺を見つめたあと、近寄って来てビニール袋の中を覗き込んだ。
コーヒーは受け取らず、ココアを選んで恥ずかしそうに言った。

「ごめんね?ブラック苦手で・・・・・・甘いのが好きなの」

ふふ、と、少し鼻にかかった声で笑う。
ああ、確かに顔も甘いもんな・・・・・・って、男にこんな感想を抱くなんてオカシイだろ俺!
心の中で自分にツッコんでいると、男が優しげな笑みを浮かべて言った。

「分かって貰えて良かったね」
「うん、まぁ」
「あんな奴のせいで、君が傷付く必要無いよ」
「・・・・・・・・・・・・」

笑みを深くすると、男は背を向けて再び歩き出した。
途中こちらをチラリと振り返り、また笑いながら。
首に掛けていたヘッドフォンを装着すると、リズムを刻むような歩調で遠ざかってゆく。
俺とは別世界に居るような華やかな人だけど、少し変わってる。
きっとちやほやさてるだろうに、目に見えてオタクの俺を何故助けてくれたんだろう。
心に響く優しい言葉、甘い声と微笑み。
存在自体が奇跡みたいな人だと思う。

「天使かよ・・・・・・」

俺はボンヤリとして、自分がそう呟いたことにも気付かなかった。









To be continue



◇◇◇



新しいの始めてしまった!
常闇終わって無いのに書きたい衝動抑えられんかったです。
新連載はこんな感じ。
ユノは受け受けしくするつもり。
面白いかも~と思って頂けたらお付き合い願います♪
今回は内容が内容なだけにあまり変態には走らないかも。
セックス絡みのエピソードは沢山出てくると思いますが。
常闇と並行する予定ですが、どっちもミンホだから反響少ないかもね(´・ω・`)
いいんだ、好きなの書くんだ私は。



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5 Comments

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2016/03/22 (Tue) 15:53 | EDIT | REPLY |   

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2016/03/21 (Mon) 22:48 | EDIT | REPLY |   

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2016/03/20 (Sun) 18:40 | EDIT | REPLY |   

723621mam  

テンポがよくて、好き。

2016/03/20 (Sun) 08:29 | EDIT | REPLY |   

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2016/03/20 (Sun) 07:10 | EDIT | REPLY |   

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