Humanoid ~この恋は永遠に~ 9



「……ユ……ノ……」
「……チャ……」
「ごめん……僕っ……」

確実に、ユノに見られていた。
この場から、今すぐ居なくなってしまいたい。
僕はベッドから飛び起きた。
歩こうとすると、思ったより力が入らなくて足がもつれた。

「おい、危な……」
「触るなっ」

ユノが僕を支えようと手を伸ばしたが、強く拒んた。

「僕は汚いんだから……触らないで……触らないでくれ」
「チャンミン……」

ユノはその場で立ち止まった。
僕はトイレに逃げ込んで鍵を閉めると、ずるずると床に座り込んだ。
好きなのに、笑っていて欲しいのに、僕はユノを困らせることしか出来ない。
ユノは僕の元へやって来て、何か良いことがあったのだろうか。
男の僕に愛を押し付けられそうになって、戸惑って……
ユノを困らせてばかりの僕は、なんて酷い主人なんだろう。
暗い思考の渦にはまり、抜け出せなくなった。

「チャンミン、出てこいよ」

ドアの向こうから、ユノが呼び掛ける。
こんな状態ではとても話せそうにない。

「今は、一人にしてくれないか……」

するとため息が聞こえてきて、それっきりユノが話しかけてくる事はなかった。
もう、僕に嫌気がさしたのかもしれない。
それでもいい。
相手にされないことにも、独りの世界にも慣れてるだろう。
そう自分に言い聞かせても、胸がきりきりと痛んで溢れ出す涙が止まらない。
ユノが好きだから、彼の前ではできるだけ綺麗な自分でありたかった。
正直な気持ちを、誤魔化す事はできなかった。






遠くから、電車が走る音が聞こえてくる。
朝がきても、僕はまだトイレに籠っていた。
眠ることは出来なくて、これからユノとどう関わるべきなのかをずっと考えていた。
感じる限り熱は無さそうだ。
バイトへ行く準備をしなければならない。
そっとドアを空けると、思いがけない光景に驚いた。
トイレから出てすぐ脇の壁に、ユノが背を預けて眠っていた。
部屋に戻って寝ていると思ったのに。
あれからずっとここに、側に居てくれたのか。

「どう、して……」

ユノの優しさが嬉しい。
けど、辛い気持ちの方が大きい。
望みが無いのに僕を期待させるから。
気持ちに応えられないなら、もう優しくしないで欲しい。

「ユノ、起きて」

声をかけると、ユノはうっすらと目を開けた。

「部屋で寝なよ。布団敷くから」
「熱は?」
「だいぶいい。バイトも行けそうだ」
「そうかよ」

ユノは立ち上がって部屋へ向かうと、借りると言って僕のベッドへ潜り込んだ。

「ユノ、そこは……」
「何、使う?」
「そうじゃない、けど……」
「どうせ汚いって言うんだろ。俺が気にしないんだからいいんだよ。ほっとけ」

ユノはそのまま眠ってしまった。
あの時、ベッドでシている僕を見ていたはずなのに不快ではないのだろうか。
僕が神経質になることも、ユノにとっては気にならない些細なことなのかも知れない。
シャワーを浴びて髪を乾かした後、念のため体温計で熱を測るとほぼ平熱に戻っていた。
簡単に朝食を作り一人で食べ、ユノの分にはラップをかけておいた。
ユノはまだ寝ていたし、向かい合って食事をする気分にはなれなかった。
家を出ようと、扉に手をかけた時。

「チャンミン」

振り返ると、ユノが立っていた。

「起きたの。寝てていいのに」
「あんま無理すんなよ。具合悪くなったら帰ってこい」
「解ってる」
「帰って、来いよ……?」

僕を見ているのには気付いていたけど、目を合わせられなかった。
返事をしないまま、僕は家を出た。

ユノ、もう解っているだろう。
叶わない夢を僕に見させるより、現実を見せてくれる方がよっぽど良い。
優しい言葉や行動だけが、本当の優しさとは限らない。
僕の気持ちには触れず、敬遠することもない。
ユノが何を考えているのか、僕は段々と解らなくなっていた。











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