常闇の魚は愛を知るか? 7

  05, 2015 20:49










常闇



















厚みのある資料に視線を走らせながら、口頭説明を聞く。
建設会社との契約、人員の確保や配置・・・・・・
専門知識や知恵は勿論だが、まず基本的なコミュニケーションが出来ないと話にならない。
向かい側に座るシム・チャンミンにちらりと視線を向けると、資料を閉じたまま手をつける様子も無く、何処か分からない方向をぼんやりと見つめている。
まるっきり眼球不同だ。
生きてるか?コイツ。
眉を寄せてその顔をじっと見ていると、シム・チャンミンの視線がふいに動いた。
目が合いそうになり、俺は速やかに資料へ視線を戻した。
経営が出来る段階まで育てる。それは一体何処までを指すのか。
一般的なサラリーマンのように、他人相手に交渉して営業することか?
コイツに出来るとは思えない。 不可能だ。
知らぬ間にプレゼンは終わっていた。
シム・チャンミンの教育で手一杯で、経営に加勢できる気がしない。



参加者が捌けていく中、親父とシム・チャンミンの父親が、俺の元へやって来た。

「馬鹿息子と打ち解けられたようで良かった。君ならやってくれると思っとったよ」
「引き続き仲良くしてやれ」

笑顔で応えるが、取り繕うのは苦手なので上手く笑えているか分からない。
てめぇんとこの坊ちゃんに七日間監禁されたうえ、無理やりセックスの相手をやらされてそれが良かっただと?
爪剥されたり暴行される方がまだマシだった。
お前らはそれぞれの利益のために、仲良しごっこしてりゃ良いから気楽だよな。
本音は心にしまったまま、俺は親父たちの背中を見送った。
今度はシウォンがやって来た。

「お疲れ様です」
「ああ。お疲れ」
「これから、立地の検討をしに如月の土地を回りに行くそうですよ。貴方もどうです?ドライブがてら」
「別に構わねぇが・・・・・・」
「ではそうしましょう。坊ちゃんも居ることですし」

シウォンの視線を追って後ろを振り返ると、シム・チャンミンが先ほどの席から動かないまま座っていた。

「坊ちゃん。行きますよ」

シウォンの声に、シム・チャンミンがふらりと立ち上がった。
動きはするものの、またどこかを見つめたままぼうっとしている。
見るからに無気力で、言いなりになるそのさまはまるでロボットの様だ。
しかし自分の意志が関係する事には、恐ろしい程の狂乱さを見せたりする。
興味がある事無い事、はっきりしてる分かり易い奴だ。
裏表が無いのは、関わるうえで楽ではあるが。



黒いバンの扉を開き、後部座席には俺とシム・チャンミンが、運転席にはシウォンが乗り込んだ。
街へ出ると、冬にしては暖かい陽の光が窓越しに感じられた。

「どうです坊ちゃん。久しぶりの外は。晴れているから気持ちが良いでしょう」

シウォンが話しかけると、シム・チャンミンは眉を寄せながら不満げに言った。

「気持ち悪い。溶けそうだ」

カーテンを引き、シートにぐったりと凭れるその姿を見て呆れる。
お前の部屋の方がよっぽど気持ち悪いだろうが。
目的の土地に到着する毎に、シウォンは根気強く車の外に出ないかと誘ったが、シム・チャンミンは閉眼したまま無反応だった。
その度「坊ちゃんを頼みます」と声をかけられ、俺は心中で不満を漏らした。
おい、俺はコイツの保護者じゃねーぞ。
眠っているのか、ぴくりとも動かないシム・チャンミンを見ながらため息をついた。

「勘弁してくれ・・・・・・」

そう呟いた直後、シム・チャンミンがぱちりと目を開けた。
起きていたらしい。

「嫌そうだね」

小さく笑うその顔は、楽しんでいるようにも見える。
どうせ何を言い返しても不満しか募らない。
俺は口を閉ざしたまま窓の外へ視線を向けた。
シム・チャンミンは話し続けた。

「外へは出ないって決めてるんだ。僕は色んな奴らに狙われているから」
「・・・・・・なんだそりゃ」
「自分以外の人間は皆敵だと教わった」

組の若頭という立場を考えると、それくらいの心構えがあっても良いのかも知れない。
だからと言って周囲との接触を断つなんて極端過ぎる。加減というものを知らないのか。
こいつはいつも、零か百しかない。

「俺は平気なんかよ」

問いかけると、シム・チャンミンは平坦な声色でボソボソと続けた。

「小さい頃から、父さんが連れて来たマフィア相手に喧嘩の練習を沢山させられた。本当にキケンな奴は、目を見れば直ぐに分かる」
「相当なスパルタだな、お前の親父」
「ユノは奴らとは違う。君に僕は殺せない」

妙に説得力がある言葉。俺の心を見透かしたような笑顔。
それらに居心地が悪くなり、俺は眉を潜めた。
そうだ。俺にお前は殺せない。
喧嘩の技術は劣っても、殺そうと思えばいつでも殺せる。
でも力に力で刃向っても仕方ないし、殺したところで何も得られない。
俺はいつでも、心に充実感を感じることを一番に求めている。
組の一員として、外れた道を行けない性格はいささか真面目過ぎるような気もする。
親父達はそれを知っていて、俺にシム・チャンミンの教育を任せたのだろう。

「でも、こいつは手放せない」

シム・チャンミンはジャケットの中に手を忍ばせ、ピストルを取り出した。
陽の光を浴びて、黒々とした硬質な表面が光を放っている。

「いつ裏切られても、こう出来るからね」

銃の先が、額に押し付けられた。
笑みを浮かべた白い顔は、心から本当に笑っていないと分かる。
俺には自分を殺せないと知っていても、それは信用するのとは別の話なのだろう。
感情の見えない瞳をじっと見つめていると、シム・チャンミンは銃を引いてから再び口を開いた。

「こいつを手に握ってた。小さい頃の、一番最初の記憶」
「・・・・・・・・・・・・」
「僕は核兵器の一部なのかも知れない。将又、核兵器が僕の一部なのかも知れない。今も、よく分からない」
「んな訳あるかよ」
「そうかな。僕は、誕生した時の記憶も母親の記憶も無い。父さんは母親が居たって言うけど、何が本当かなんて僕の目で確かめなければ分からないじゃないか」

また意味の分からないこと言ってやがる。
相手をする自信が無くなったので、俺は潔く黙り込んだ。

「疲れてるみたいだ。少し休ませて」

そう言うと、シム・チャンミンは身体を横たえた。
俺の膝に頭を乗せて目を閉じる。
あまりにも自然に、当たり前のようにそうするから止めろと拒む事も出来無い。
浮いた手のやり場に困り、結局横たわった身体の上に置いた。
寝ているのか起きているのか分からない、目を閉じたままの横顔に視線を落としながら、俺は呟いた。

「阿保か。どこからどう見ても人間だろうが」

心なしか、シム・チャンミンが小さく笑ったような気がした。









◇◇◇



お久しぶりです。もうすっかり寒いですね。
お話やっと更新出来ました~(/_;)
週一くらいで頑張りたいなぁ。
常闇なのに最近拍手が沢山(笑)、素敵なコメもどうもです!
更にやる気がでます~♪
ユノがチャンミンにちょっとずつ慣れきたこともあり、最初のような暗さは無くなってきたかな。
やっぱり、完全に悪なユノって書けないですね。
元の素材がそれを打ち消しちゃうから(笑)
次回はチャミの過去が明らかになります。そしてユノの心境にも変化が・・・・・・

あ、チャミのお手紙みましたか?
途中に「はは・・・・・・」とか書いてあって、字と話言葉同じだなー可愛いなぁと思いました♡
「ユノターイム♪ユノヒョンに会いたいです」のくだり。
チャンミンはいつもさらっと嬉しいこと言いますね。たまに失敗して赤面しますが。
そして嬉しそうに笑うこともあれば、綺麗にスルーしたりもするユノ(^^)
ああ、完全体が恋しいです。

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Comment 8

NB(のぶ)  

Re: タイトルなし

チャミ1○○1さま

こんばんは、お久しぶりです♪
いいんですよー、私のサイトなんて思い出した時にフラッと来る程度で!
皆さんのお好きなようにして頂ければ。

今回の二人は、今までのようなBLだけじゃ収まらない複雑さがある気がして...
好き嫌いあると思うんですが、応援して頂けて嬉しいです!
はい、体調に気を付けながら頑張ります!
チャミ1○○1さまも、風邪などひかぬよう気を付けてくださいね!
それではまたー♪

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NB(のぶ)  

Re: No title

さえ○んさま

こんばんは!
いつもありがとうございます♡
二人が居ない寂しさ、私の妄想でちょっとでもやわらいでるみたいで、良かったです。
特に、二人の冬ソングとか聞くとしんみりしちゃいますね~。
チャンミンも、今きっと寂しい時期ですよね。
知り合いの居ない環境で、ユノや仲間とあまり会えずに過ごす毎日。
でもチャンミンのあの人柄なら、ゆっくり仲良くなるんじゃないかなと思ってます!

店長シリーズは、はじめはチャンミンはだらしない設定でしたが・・・・・・
いつの間にか、店長にベタ惚れの彼氏に変わってしまいましたね(笑)
はじめのと今のギャップに萌えて頂けたら嬉しいです~(*´ω`*)
何気に人気があるのも嬉しいです。
常闇は、妄想すればするほど、ただ好きとか嫌いとかいう恋愛感情だけじゃ表せない気がしてきます。
特にチャンミンの背景が重いので・・・・・・
ラストまで、頑張って書かせて頂きますねー!

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NB(のぶ)  

よ○よ○さま


こんばんは♪
店長シリーズ見て頂きどうもです♡
ユノって襲いたい衝動を掻き立てられますよね。
大好きなんて言って寄り添ってこられたらもう色んなものが限界♡(笑)
あー、チャンミンになってユノを襲いたいです。

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葉○さま


こんばんは~♡
ある人を嫌だと思いながらも色々考えるって、結局は興味があるって事ですからね~(^^)
本当に嫌なら、その人の事なんて忘れちゃうと思うんですよ。
人や場合にもよると思いますが。
ユノはどんな風に変わっていくのか、チャミにどう応えるのか、これからも見守ってあげてくださいね~!

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NB(のぶ)  

Re: No title

かお○んさま


こんばんは!いらっしゃーい(^O^)
このチャンミンちょっとネジが飛んでるので・・・核兵器とか言っちゃってます。
膝枕は私の願望でもあります♡
さすさすする関係になるまではまだちょっと時間がかかるかな?
私は、二人の思い出をぺらぺらと口にしないホミンちゃんが好きですよ~
後で報告してくれるのも嬉しいです。
アンチやオンリペンはもう、外国語聞く並に発言の内容が理解できません。
私の気質はどっちかというと、ユノよりチャン寄りなんだと思います。
チャンミンに共感すること多いし。(チャンミン私なんかと同じにしちゃってごめんね!)
最近はゆのペンと名乗るのも躊躇うこと多いです。同じくらい二人が好きなんです。
食べ物の話はやっぱり出ましたね(笑)
唐揚げは私も大好きです~♪
ユノもチャミも、沢山食べて健康で頑張って欲しいです。

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