常闇の魚は愛を知るか? 5

  16, 2015 01:45










常闇



















あれは何時の事だっただろう。
炎に包まれた街の中心で、俺は空に向かって発砲した。
骨さえも焼き尽くしてしまいそうな、ヒリヒリと熱い炎は正に紅蓮そのもの。
俺にぴったりだと思った。
煙の中に姿を消した標的を追うべく、俺は足を進めた。
死と隣り合わせの状況で、俺は笑っていた。
自分さえも知り得なかった強い生命力を感じる。
燃え盛る炎が俺に力を与えてくれるような、高みへ導いてくれるような、そんな気がした。








相変わらず、背後に回された両手は不自由なまま。
何日も風呂に入っていない身体と失禁の臭いには、最早吐き気を催さなくなった。
横たわりながら、俺はぼんやりと過去を振り返っていた。
死にそうになった事なんて、今回が初めてじゃない。
悲惨な環境下で、苦汁を嘗める機会は沢山あった。
そんな俺が、何故今こんなにも打ちひしがれているのか。
これ迄に経験した事の無い精神的苦痛と、仲間の不在から湧く孤独感のせいだと気付いた。
馬鹿か俺は。
こんな事で弱るなんて・・・・・・
ただ、初めての事に免疫が無かっただけだ。
途端に、苦しんでいる自分が馬鹿らしくなった。
気が付いたら、俺はあの時のように笑っていた。

「はは・・・・・・くくく・・・・・・」

サンドバッグを殴る手を止め、シム・チャンミンは俺に視線を向けた。

「有りがてぇ・・・・・・。こんな経験はそう出来ねぇ」

横たえた状態から身体を起こし、ネガティブな思考を飛ばすように首を振った。
シム・チャンミンが、俺の傍に腰を下ろして顔を覗き込んできた。

「もっと死人のような目をすればいいのに」
「嫌だね」
「君は、従順なのに思い通りにならないね・・・・・・。此処に来た事・・・・・・後悔させてやろうと思ったのに」
「後悔なんかするかよ」

全ての出来事には意味がある。
無駄な経験などひとつもない。
そしてそれを力に変える。
昔から続けてきた事だ。

「感謝するよ、てめーには」
「感謝・・・・・・?」
「そうだ。これでもう、恐いもんは何もねぇ」
「僕の事、恐くないの」
「べっつに」

その時。
何時も感情を浮かべない瞳が色を変えたのを、俺は確かに見た。









また、目の前に食事が乗ったトレイが置かれた。
当たり前のように膝を着き、料理へ首を伸ばしたその時・・・・・・
シム・チャンミンが、手で料理を掬い俺の口もとに差し出してきた。
咄嗟の事に驚いてシム・チャンミンを見ると、無表情で俺をじっと見ている。
指ごと口に含み料理を取り込んでから、咀嚼して飲み込んだ。
シム・チャンミンは穏やかな笑みを浮かべ、俺の頭を撫でた。

「いいこだね」

今迄と違う態度が薄気味悪く、俺は眉を寄せた。
シム・チャンミンのその姿は、飼い犬を怖れる幼い子供が、餌やりに成功して喜ぶ図を連想させた。
こいつ、俺が恐かったのか・・・・・・?
―――『僕と仲良くしてくれた奴なんて、今迄一人も居なかった。君も奴らと同じか・・・・・・』
確か、前にそんな事を呟いていた。
こいつは冷淡に振る舞いながらも、自分が受け入れられない事に傷付くのを恐れていたのだ。
シム・チャンミンは、食事介助を料理が全て無くなるまで続けた。
俺もまた、無言でそれに応え続けた。









「シウォンから連絡が来た。一時間後、君を迎えに来るらしい」

シム・チャンミンからその報告を受けて、俺は条件の七日間が終わった事を知った。
シム・チャンミンが、切なげに眉を寄せながら俺の頬を撫でた。

「寂しいな、ユノが居なくなるなんて・・・・・・」

初めて名前を呼ばれた。
知っていたのか。俺の名前を。
痛ぶる事に執着は有れど、俺自身に興味など無いと思っていた。
シム・チャンミンは、ジンズのポケットに手を忍び込ませ、鍵を取り出した。

「本当は嫌なんだけど・・・・・・自由にしてあげる」

シム・チャンミンが俺の後ろへ回り込んだ後、カチャリと手錠が鳴り、両手は解放された。
七日ぶりに自由を許された両腕は、やはり直ぐ元のようには動かない。
舌を鳴らしながら腕を回していると、目の前で突然、シム・チャンミンが服を脱ぎ始めた。
最後に一発ヤるつもりか。
今迄を思い返し、当然そんなことを考えた。
全裸になったシム・チャンミンは、俺の目の前に屈み込むと身体を密着させた。

「何してる」
「・・・・・・抱き締めて」

耳元に、細く掠れた声が落ちた。

「僕を抱き締めて、ユノ」
「・・・・・・・・・・・・」

言われるがまま、俺はシム・チャンミンの背中に手を回した。
生あたたかい体温、トクトクと静かにリズムを刻む鼓動を傍に感じ、こいつも人間なのだと当たり前の事を思った。
密着した身体は離れる気配がない。

「ユノだけだ。僕を見捨てなかったのは・・・・・・」

違う。俺は負けるのが嫌だっただけだ。
自分を陵辱する男を思いやるなんて出来る訳がない。
下手に刺激を与えると面倒なので、ただ黙っていた。
どうやら俺は、シム・チャンミンに心を許されたらしい。
教育のための一歩は踏み出せたかも知れないが、下手に執着を煽ってしまったような気がして、喜ぶ事は出来なかった。










暫くぶりに顔を合わせたシウォンは、俺を見た途端眉を寄せた。

「これはまた、随分とお痩せになって・・・・・・」

服の上からでも、身体が窶れたのはしっかりと分かるらしい。

「数日はお休み下さい。良いですね坊っちゃん」

シウォンの問いに、シム・チャンミンは小さく頷いた。

「んじゃ、そうさして貰うぜ」

部屋を出る直前、俺は後ろを振り返り、シム・チャンミンと向き合った。

「・・・・・・忘れっとこだった。世話んなった礼、してなかったな」

俺は、シム・チャンミンの頬に手を這わせると唇を塞いだ。
驚いたのか、キスをした直後、塞いだ唇がふっと息を吐いたのが分かった。
舌を伸ばしてより深い交わりを求めると、シム・チャンミンもそれに応えた。
口内に伸びてきたその舌に、今迄の怒りを込めるつもりで思いっきり噛みついた。

「がっ、はっ・・・・・・!」

シム・チャンミンは、口を押さえながら膝から崩れ落ちた。
口の中に残った血を吐き捨て、蹲るその姿を見下ろしながら俺は言い放った。

「噛み切られなかっただけ、良かったと思え」

七日間の報復がこれじゃあ優し過ぎる。全然足りない。
そんな不満は、苦しみもがくシム・チャンミンの姿を見て少しだけ解消された。

「じゃあな坊っちゃん」

俺は小さく笑うと、呆然とするシウォンを横目に部屋を後にした。









◇◇◇



ユノ、チャンミンともそれぞれ変化がありました。
チャンミン→ユノへの気持ちは愛ではなく執着かな・・・・・・



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Comment 6

NB(のぶ)  

Re: No title

かお○んさま


こんばんは!
お返事遅れてすみませんm(__)m
ご丁寧に教えて下さりありがとうございます。
ナイーブな話題ですが、どうしてもそこは譲れないというか、受け付けないので…サイトではお伝えするようにしてました。
かお○んさま、同じでほっとしました~!
たまに、ホミン好きだけど5人を指示する人も見るので。
最初の頃、私をトンにはめた友達に、5人時代の映像沢山見せられましたけど、やっぱり二人が好きです。
今までを見守ってきたかお○んさまが、そういった決断をしたと聞くと安心します。
ユ○ジェは存在もファンの方も、私も駄目です。
事務所の公式DVDの中で、BL劇なんてやっちゃったから人気でたと思うんですよ。
あれ、ユノの相手がチャンミンだったらどうなってたんでしょうか?
でも仲の良さが目に見えやすいので、ユ○ジェファンは存在したと思うんですが。
二人は5とかユ○ジェとか、そういう
話題にかなり直面すると思います。
でもチャンミンには、俺以外ユノの隣に並べるわけ無いだろ?くらいのテンションで構えてて欲しいです。
だって本当にそうなんだもの!
あ、すいません。
私も熱くなってしまいました……(笑)

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NB(のぶ)  

Re: タイトルなし

P○a○tsさま


とんばんは!
いらっしゃいませ~♪
チャミ痛かっただろうけど、ユノにもひどいことしたのでね…
ちょっと痛い目に合って貰いました。
チャミは完全なる悪というより、未発達さや子供っぽさもあり、それ故残酷なことしてるイメージでお話書いてます。
なのでかわいいがちょっと漏れたのかも知れません。
チャミは自分に噛み付いたユノ犬を一体どうするのでしょう笑
チャミはまだまだ問題ありなので、ユノの助けはしばらく必要になりそうです。
続きも楽しんでいただけるようにがんばります。
また来て下さいね~!お待ちしてます。

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NB(のぶ)  

Re: No title

かお○んさま


こんにちは!
いらっしゃ~い(*^^*)
年賀状の件お仕事中に送ってしまいましたが、少しでも宜んで頂けて良かったです♪
常闇のチャンミン、まだまだ問題ありです。ユノにはこれからも頑張って貰います~(^^)
チャンミンが兵役に行ったら、とっとと再始動のための準備がしたいです。
忙しい蜂のようにトン貯金!妄想を頑張ります!
悲しまないのは無理ですけどね…
ユノは戦闘服似合いますねー、ダボダボの迷彩柄が、あの男らしい外見にハマります。
チャンミンはお洒落に関してはセンスある方だと思うので、スタイリスト不在でも格好いい髪型をキープして頂きたい!
きっと応援する限り不満ゼロってのはあり得ないですよね。
私5人に戻るとかじゃなきゃ、きっとファン辞めようってならないと思います。(もし5人ともお好きでしたらすみません)
一緒に待ちましょうね~!

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