Humanoid ~この恋は永遠に~ 6



自分の性癖に気付いたのは中学生の頃だ。
周りにバレているかもしれない。
気持ち悪いと思われているかも知れない。
ゲイであることを自覚してから、仲のいい奴と遊んでいても常にそんな不安がつきまとうようになった。
家族にもいつかは話さなければならない。
そう思うと触れ合いたくなくて、それまでのように接するのが難しくなっていった。
周囲の人々を遠ざけて殆ど独りで過ごした僕に、楽しい青春時代の思い出は無い。

二十歳を過ぎた頃。
このまま独りで生きていくと思うと寂しさに耐えられず、誰かと関わりを持ちたくなった。
周りとコミュニケーションを取る方法は、僕には同じ仲間を探す事に限られた。
そしていつの間にか、周りには付き合いの浅いゲイの知り合いしかいなくなっていた。
彼らは貞操観念が薄い。
夜になると、仲間が集まる場所へ出向いて身体だけの関係を持つことなんてざらだ。
僕はそんな世界に溶け込む事が出来ず、いつも浮いていた。
付き合って間もない恋人にセックスを求められた時も、直ぐには嫌だと拒むと真面目で付き合いきれないと振られた。
酷く落ち込んでいたそんな時、あのロボット販売員が訪れたのだ。
恋人を失った僕の元へ、まるでプレゼントみたいに表れたユノ。
整った小さな顔と、逞しい身体。
男らしく真面目なのに、可愛い一面があり憎めない性格。
見た目も中身も完璧なユノに、惹かれない訳がなかった。
だけど、お前も僕の秘密を知ったら離れていくのかな。






「僕……ゲイなんだ」

俯いたまま顔を上げられない。
ユノの顔を見るのが、恐い。

「だからかぁ。んな殻にとじ込もってんのは」

いつもと変わらない調子でそう聞こえてきて、顔を上げた。
戸惑ってもいない、不快の色もない。
ユノは至って普通だった。

「別になんも悪いことしてないし、堂々としてりゃいいじゃん。人に言えない秘密なんて誰でも抱えてるし、皆平気なふりしてるぜ」
「嫌じゃ、ないのか?」
「嫌がって欲しかったのかよ」
「いや……そうじゃない」

気付くと涙がぽろぽろとこぼれていた。
優しい言葉を、当たり前のように言うから。

「そんな溜め込んでたのか?よしよし」

ユノは僕の肩に腕を回し、髪をくしゃくしゃと撫でた。

「こ、子供扱いするな」
「はいはい」

触れ合った部分から、体温が伝わってドキドキする。
だけどこれは、ユノが僕に友達として向けた優しさだ。
ユノを困らせたくない。
僕は、さよならをする最終日まで友達の関係を貫こうと決めた。









ある日バイトから帰ると、僕はユノを行きつけのバーへ連れて行った。
美味しいワインを飲ませてあげると言う僕を、ユノはチャンミンかっけぇと言って、憧れるような目で見た。
そんな大層なもんじゃない。
ワインが好きで、興味を持って調べていたら少し詳しくなっただけだ。
ユノはこの外見で酒に弱い。
この間コンビニへ行った時も、ユノの分のビールを買おうとする僕を止めて「買ってくれんならこれにして」といちごオレを差し出した。
バツが悪そうなユノが可愛くて、きゅんとしたのは内緒だ。

奥のカウンターに腰掛けると、ユノが飲めそうなワインを僕が選んで注文した。
予想通り好みに合ったらしく、酒が苦手とは思えないペースでユノはワインを口に運んだ。

「うまい」
「これ、苺が入ってるんだ。好きな味だろ?」
「あれ、俺好きって言ったっけ?」
「ううん。けどこの前、いちごオレ飲んでたから」

思い出して、少し笑ってしまった。

「あー、おまえ今馬鹿にしたろ?」

むきになったユノが体を乗り出して、もともと近かった距離が更に近づいた。
駄目だ。そんな側に寄ったら。
僕の顔を覗き込んだユノと目が合って、見ていられず焦って逸らした。
動揺していることは確実にバレただろう。
ゲイだとカミングアウトしたのに、こんなことをしないで欲しい。
きっとユノは何の悪気も無い。
純粋にただ、友達のような感覚でやり取りしているだけだ。
でも僕からしたらそうじゃない。

「ユノ……あんまり近づくな」

ユノがぴくりと動いた。

「言ったろ、僕は……」
「…………」
「お前だって、対称になり得るんだ」

酒が入っているせいで、冷静さを欠いていた。
少し我慢すれば済んだのに、思ったことがそのまま口から出ていた。

「わ、悪い」

ユノはそっと僕から離れた。
それから会話が弾まなくなって、あまり長居はしなかった。
タクシーに乗って家に帰る間も、気まずさは拭えなかった。
僕は馬鹿か。
ユノを困らせないと決めたのに、自分を守るためなら決意なんて簡単に捨てるんだな。
自分が心底嫌になる。

「気持ち悪い事言って、悪かった」
「いや……」
「……忘れてくれ」

ユノは窓の外を見つめたまま、僕を見ることはなかった。











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2 Comments

NB  

さえ○んさま

いらっしゃいませ!
わーい!本当にいつもありがとうございます(*´∀`*)
チャンミンの過去が明らかになる編でした。
ユノのスキンシップはたまりませんね。書いていてにやにやしちゃう。
ユノはチャンミンの事情を理解してくれましたが、自分に矢印が向くとなると果たしてどう思うのでしょう。
これからの展開を是非見てみて下さい。
いつも足をお運び頂き感謝いたします。
またお待ちしてます♪

2014/04/16 (Wed) 22:11 | EDIT | REPLY |   

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2014/04/15 (Tue) 23:08 | EDIT | REPLY |   

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