隣りの男 5

※最初に注意書きですが、どんなラストでも構わんよ~という方はどうぞ!









抱き合った後、ベッドの中、二人でまどろんでいた。
互いを求めている間は気に留めなかったけれど、今何時だろう。
部屋に響く秒針の音が、やけに大きく感じられる。
ずっとこうして居られないことは、分かってる。
きっともうすぐ、先輩は行ってしまう。

「時間・・・・・・大丈夫?」

俺の問いに、先輩が答えた。

「さっきメールした。お前と飲むから今夜は遅くなるって。日跨ぐ前には帰る」
「そうですか・・・・・・」

部屋の時計を見て、時刻を確認した。
先輩を独占できる時間は、あと一時間も残されていない。

「あのさ・・・・・・」
「はい?」

先輩が、ゆっくりと話し始めた。

「俺学生の頃、お前と生涯かけて付き合ってこうって本気で思ってたし、すげー好きだった・・・・・・。だから、お前の存在が無くなって抜け殻みたくなってさ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「そんな時、今の嫁に会ったんだ。あいつは俺のそういうの全部知ってて、ずっと側で支えてくれた。すぐ付き合おうってはなんなかったけど、段々俺も支えたいと思うようになって・・・・・・暫く付き合った後、結婚しようって決めた。お前のことはずっと好きでいたけど、こんな風に会えると思ってなかったし・・・・・・まさか俺のこと好きでいるなんて、思わなかったしな」
「そうだったんですか・・・・・・」
「お前は・・・・・・?」
「俺、ですか・・・・・・」

俺は・・・・・・
ソフィとは先輩と別れた後に出会って、彼女は友達のような感覚に近かった。
一緒に居ると楽で、居心地が良くて、自然といつもふたりで居るようになった。
いつから好きだったとか付き合っていたとか、明確には分からない。

「気付いたら・・・・・・彼女がいつも、隣に居たんです。先輩にこうして会えるとも思って無かったから・・・・・・彼女と、一緒になろうって決めました」

プロポーズなんて立派なことはしていない。

―――――『結婚してみる?』

会話の中で何気なく、一言そう言っただけだ。
彼女もそれに、普段の会話の時と何ら変わらない様子で頷いたのだ。

「そっか・・・・・・。嫁さんのこと、好きか?」

先輩の問いかけに、すぐに答えることは出来なかった。
今までは彼女を見つめていられたけど、先輩と再会した後は、いつも先輩のことばかり考えるようになってしまった。

「よく・・・・・・分からない。もしかしたら俺、彼女のこと・・・・・・ただ利用してただけなのかも・・・・・・」

愛し合っている筈の人が、他の人をずっと想っていたとしたら?
突然、自分を見てくれなくなったら?
彼女の立場を考えると、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
泣きそうになって、俺は先輩の胸に顔を埋めた。
先輩は俺の頭を撫でながら、優しい声色で言った。

「彼女のこと思って悲しめる奴が、利用できる訳ないだろ」
「そう、かな・・・・・・」
「ただ好きなだけが愛じゃない。相手のこと思いやったり、助けたり、側に居てやったり・・・・・・それも“愛”だ。お前は嫁さんのこと、ちゃんと愛してた筈だよ」

先輩の優しい言葉に、また救われた。
先輩も俺を想い続けながら、今の嫁さんのことも子供のことも、大切にしてきた。
それも、ひとつの愛の形だ。

「ありがとう、先輩」

額を擦り付ける俺の頭を、先輩は優しく撫で続けた。
暫くそうした後、先輩が小さく呟いた。

「そろそろ・・・・・・行かなきゃな」
「うん・・・・・・」
「昔ならずっとこうして居られたのに・・・・・・ごめんな」

涙が溢れそうになるのを堪えながら、俺は首を横に振った
最後にどちらともなく顔を近づけて、俺と先輩は触れ合うだけの優しいキスをした。
ゆっくりと俺から離れた先輩は、ベッドから起き上がると服を身に纏った。
そして最後に、テーブルの上の指輪を薬指にはめた。
ああ。もうこれで先輩は、一人の男から一家庭の男になってしまった。

「玄関まで送ります」
「ん。さんきゅ」

俺は、先輩と部屋を後にした。



先輩は家の外に出ると、俺の方を振り返って言った。

「何かあったら、一人で抱え込まずに言えよ。俺はいつでも、お前の味方だから」
「ありがとうございます」
「じゃあな・・・・・・」
「おやすみなさい・・・・・・」

先輩が、背中を向けて歩き出す。
扉を支えていた手を離すと、少しずつ隙間から見える世界は狭まり、遂に先輩の背中が見えなくなった。

ひと時の夢が、終わった瞬間だった。












翌朝。
目を覚まして、リビングへ下りた時のことだった。
ある光景を見て、俺は眠気を飛ばされた。
そこに居ない筈のソフィが、ソファへ腰かけていたのだ。
テーブルの上の指輪を、じっと見つめながら。

「ソフィ・・・・・・」

名前を呼ぶと、ソフィはゆっくりと俺へ視線を寄越した。

「・・・・・・おはよ、チャンミン」

驚きのあまり言葉を発さないで居ると、ソフィは立ち上がってキッチンへ向かった。

「朝食作る。コーヒーも入れるね」

俺はソフィの側まで行くと、作業を始めようとするその手を掴んだ。

「ちょっと待って」
「・・・・・・・・・・・・」
「もう、帰って来ないかと思った」

俺がそう言うと、ソフィは小さな声で話し始めた。

「チャンミン、様子がおかしいのに何も話してくれなくて・・・・・・態度も素気なくて・・・・・・寂しかったし、不安だったの・・・・・・・。出て行ったら、ちゃんと私を求めてくれるかなって試したくなった。馬鹿な真似してごめん。困らせて、ごめん」

ソフィが、泣きながら俺に頭を下げた。
長い髪が、さらりと肩の上から流れ落ちた。
怒ってはいない。
今回のことは確実に俺が悪かった。そう分かってる。
でも、こままではこの先もソフィを苦しめることになるだろう。
俺自身も、苦しみ続けると思う。
俺は、あることを決意した。

「謝らないで。俺は怒ってないから」

ソフィを見つめて、俺は続けた。

「・・・・・・ソフィ・・・・・君に、言わなくちゃいけないことがある」
「・・・・・・何?」

暫く黙り込んでから、俺は再び口を開いた。

「俺・・・・・・・・・忘れられない人が居るんだ」

ソフィは俯いてしまったが、俺はそのまま続けた。

「その人のこと追うつもりはないけど・・・・・・想いは、ずっと消えないと思う・・・・・・」
「・・・・・・そっか」
「君のこと、大切にしたいと思ってる。でも、こんな俺と居て君が苦しいっていうなら、離れたいっていうなら・・・・・・俺は、止めない・・・・・・」

ソフィが、両手で顔を覆った。
ひくひくと小さな嗚咽を上げながら、ソフィは続けた。

「分かってた・・・・・・」
「え・・・・・・?」
「きっと、私はチャンミンの一番じゃないって、分かってたよ・・・・・・」
「ソフィ・・・・・・」

ソフィが、顔を上げて俺を見た。

「それでも側に居たいと思った。だから帰ってきたの・・・・・・」

大粒の涙が、頬を伝って零れ落ちてゆく。
ソフィの、大きな愛を感じた。
震える細い肩に手を伸ばして、俺はソフィを抱き寄せた。

「側に、居てくれるの」
「うん・・・・・・。居させて・・・・・・」

俺の駄目なところも、全て受け入れてくれる。
先輩の愛に似ていると思った。
大切にしたい。
俺を包み込んでくれる、この大きな愛を俺も愛してあげたい―――・・・・・・












翌朝。
出勤時間になると、ソフィと一緒に家を出た。

「あ・・・・・・ちょっと待って」
「何?」
「ネクタイ、曲がってる」

ソフィが、俺の首元のネクタイに手を伸ばした。
それと同時に隣の家の扉が開き、スーツ姿の先輩が姿を現した。

「あれ?」

先輩が、驚いた顔で俺とソフィを見ている。
ソフィは、顔を赤らめて俺の首元から手を離すと、先輩へ向かって頭を下げた。

「お、おはようございます」
「ん。おはよーさん」

先輩は俺へ視線を移すと、にっこりと笑って言った。

「良かったな、チャンミナ」
「はい」

俺も、それに笑顔で応えた。






そう、これで良かったんだ。
俺達はもう大人だから、色々と背負うものがあって、思うがまま素直には生きられない。
言葉にせずとも、俺と先輩は互いを一番に想っていることは分かってる。
二人だけが知る甘い罪を共有しながら、俺と先輩は歩いていく。
俺は感謝しよう。
昔とは違う形だけれど、最愛の先輩と共に居られることを。
俺の全てを赦し愛してくれる、ソフィと共に居られることを。












俺はまた、夢を見る。先輩に抱かれる夢を。
そこに罪悪の意識は存在せず、もう泣いて謝ることも無い。
好きという想いだけで満たされた、温かく穏やかな空間の中、先輩とひとつになる。
先輩が俺にキスを落として、幸せそうに微笑んだ。

「チャンミナ、愛してる」
「俺も・・・・・・愛してる」

先輩が再び顔を寄せてきて、俺は微笑みながら目を閉じた。









END



◇◇◇



=言い訳という名のあとがき=

 これにて、隣りの男おしまいでございます。嫁帰ってくんなよくっつくなよ、とイラついた皆様、嫁をご自分に変換してみてください。
チャンミンの妻をやりながら、ホミンちゃんの仲良しを見れたらお得そうじゃないですか~♪
実はアイドルのどなたかを嫁役にしなかったのは、顔とか色々想像しちゃうからなんです。なのでご自分の立場にも当てはめやすいと思います。
 説明させて頂きますと、これが家庭を持った二人という設定を踏まえての、NB的なハッピーエンドです。今回ホミンちゃんには常識のある男で居て欲しかった。なので始めから、家族を裏切って浮気し続けるとか家族を捨てるとか、そんな選択支二人は思い付きすらしませんでした。逆に家族を捨てて二人がくっついたら、バッドエンドの部類かと思います・・・・・・
 今回チャンミンの心理描写として、先輩をずっと忘れられなかった原因の一つに、好きという気持ち以外にも傷つけたという自責の念に苛まれていた、という背景があります。それを克服したので、好きな気持ちは変わりませんが少し吹っ切れたというか、重荷が取れたというか、良い方へと変化がありました。
 もうひとつ。NBは何故、ヨジャを絡ませながら最終的に二人がくっつかんなんて、こんな現実的な話書けちゃうのかといいますと・・・・・・この二人は東方神起の二人ではなく、二人が演じてる役だからです。

なんかごちゃごちゃ長くなってしまったので、この辺で切り上げます。
受けは悪そうですが、このラストにしたこと、悔いはありません!
お付き合い頂いた方々、どうもありがとうございました~♡



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8 Comments

NB(のぶ)  

Re: タイトルなし

チャミ1〇〇1さま


こんばんちは~(*´ω`*)
ご都合もあるかと思うので、時間に余裕がある時にいらっしゃって頂ければと思います。
リアタイじゃなくても、お話見て頂けたらもうそれだけで凄く幸せです♪
勿論、こうしてコメント頂くのもとっても嬉しいんですけど♡

環境が変わって分かる事とか、過去のことが時間を置いたから解決できたりとか、そういうの結構あるんじゃないかと思います。
今回はそれを夫婦間、ユノチャミに当てはめてみました。
人生語れる程生きちゃいないですが、ちょっと妄想に頑張ってもらいました・・・(笑)

くっつかないラスト初めてでしたが、これで良かったと思います。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました♡

2015/10/28 (Wed) 23:46 | EDIT | REPLY |   

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2015/10/28 (Wed) 15:42 | EDIT | REPLY |   

NB(のぶ)  

Re: (;_;)

さえ〇んさま


こんばんは~(^_^)
コメントありがとうございます♡
泣きながら書いたお話、泣きながら見て頂くなんてさらに感動です(/_;)
さえ〇んさまの言葉ひとつひとつが心に響いて・・・・・・あれ?なんだかリアルな声が聞こえて来ました。
さえ〇んさまの声めちゃ脳内再生できちゃった自分がちょっと気持ち悪いわ(笑)許してください(笑)
展開とか心理描写、始めから固まってはいたんですが、何故か書いていて不思議なくらい涙が溢れてきたんです。
文字にすると、もしやこれは私が想定したよりももっと切なく深いのかも知れない。そう気付きました。

最愛の人と結ばれない現実、そこから生まれる色々な愛の形や、一人ひとりの思い・・・・・・
今迄書いた話の中では一番現実的で、切ないお話になりました。
そういう意味では特別感ある作品でした。
上手く表現できたか分からないけど、書いてよかったです。

私もお話したいです~(>_<)
連絡お待ちしてます♪
こちらでも、また話しかけてくださいね♡

2015/10/25 (Sun) 00:24 | EDIT | REPLY |   

NB(のぶ)  

Re: タイトルなし

ゆ〇んさま


こんばんは、コメントありがとうございます~(^ω^)
よかった、このラストを受け入れて頂けて。
そうなんです。やっぱりいちゃこら優先にして、不倫し続ける二人は書きたくありませんでした。
確かに、現実でも本当に好きな人とではなく、別の人と家族になる人も沢山居るでしょうね。
そうして支えあってくのも、ひとつの愛し方かなと思い、今回のラストに行き付きました。

ユノの結婚生活は想像できない・・・というかしたくない感じでしょうかね。
ユノのこと大好きなら当たり前ですよね。
でもゆ〇んさま、キス想像できずチャンミンに変換しちゃうんですね!
やっぱりお父さんのイメージが強いのかな?
私もユノは彼氏より旦那さん、そんな感じです。

カラダノキオク、見て頂いてありがとうございます♡
あのベルト引き抜きユノですね、ふふふ・・・・・・
そう、あんな感じのエロさを想像してみてくださ~い!
今はまだ新しいネタ降りて来ないですけど、きっとまたお話書きます。
その時はまた、お付き合いくださいね。
感性も感情も・・・・・・そのお言葉嬉しいです。
頑張って感性?というか妄想力・・・・・・?(笑)これからも磨いて参ります。
またお待ちしてます<(_ _)>♡

2015/10/25 (Sun) 00:02 | EDIT | REPLY |   

NB(のぶ)  

Re: No title

かお〇んさま


こんばんは~(^_^)
コメントありがとうございます♡
そして隣りの男、最終話まで見届けて頂きありがとうございます。
二人のいちゃこらだけ重視するなら、浮気を続けて終わり。それでいいのかも。
私はいちゃこらオンリーで書けないタイプなので、いちゃこらだけサラッと見たい方には私の話は向いていなかも・・・・・・
でもいちゃこら希望派のかお〇んさまに、このラストを受け入れて頂けてすごくほっとしました(T_T)♡
もちろん、私も嫁さんとチャンミンの夫婦生活に焦点を当てた話は、積極的に書きたくはありません(笑)
二人の関係はユノが居るからこそ引き立つと思ってます。
このお話の続きは書かないつもりですし、ここできっかり終わるのがベストと考えていますよ。

男らしいチャンミン、見下すアングルが好きなんですね♡
確かに、五人時代はチャンミンは可愛いよりカッコイイ系担当な気がします。
今はどっちもあると思いますが、やっぱり隣にユノが並ぶと可愛い担当に分類されちゃうのかもしれません。
おお~、二次元にも興味を持たれ始めているんですね!
現実ではあまりない(笑)綺麗な男の子がいっぱいいるので、オススメですよ♪
ホミンもそうですが、やっぱり綺麗じゃないとBLは妄想できませんよね。

いつも声をかけて頂いてとても嬉しいです。
またいらしてくださいね~!

2015/10/24 (Sat) 22:39 | EDIT | REPLY |   

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2015/10/24 (Sat) 21:41 | EDIT | REPLY |   

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2015/10/24 (Sat) 19:32 | EDIT | REPLY |   

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2015/10/23 (Fri) 21:26 | EDIT | REPLY |   

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