Humanoid ~この恋は永遠に~ 5

  14, 2014 21:17


僕はある会社で雑務のバイトをしている。
内容は主に書類整理やコピーだが、人手が足りないと正社員の仕事が回ってくることもある。
仕事終わり、部署の主任に呼ばれた。
バイトスタッフから正社員にならないかという誘いだった。
今回が初めてではない。
今までも何度か誘われたが断ってきた。
そして、今回も僕は断った。
彼は、いい歳してフリーターに甘んじるのかと思ったかもしれない。
案の定、呆れたような表情で溜め息をついていた。
でもこれでいい。
万が一僕の素性が知れ渡った時に、正社員よりバイトの方がすぐに辞めやすいからだ。



「ただいま」
「よう。おかえり」
「またゲーム?」
「心配すんな。電気代の明細取っときゃ会社から金が出るから」

ユノは自分の発言に、一人でけらけらと笑っている。
正社員になる話を断ったことで少し気疲れしていたが、そんなユノにつられて僕も笑った。

「別に、そんなつもりで言ったんじゃないってば」
「あ……」
「何だよ」
「チャンミンが笑った」

失礼な奴だ。僕だって笑うことくらいある。
そう言いたくなったけど、最近何時ちゃんと笑ったか振り返ると、驚く程思い出せなかった。

「笑った方が可愛いじゃん」
「何それ……」
「何って、そのままの意味」

顔が赤くなってないか心配だ。
僕は夕食を準備するふりでキッチンへ隠れた。



夕飯を食べた後、切らしていたビールを買いに、ユノを連れて近所のコンビニへ向かった。
まだ開き始めたばかりの桜を見ながら、二人並んで夜道を歩く。
チラリと隣のユノを見ると、夜桜を見上げる横顔が綺麗でつい見とれてしまった。
僕は、ユノに惹かれ始めていた。
あんなにも"造り物"と軽視していたのに、まんまとはまりかけている僕をどこかでもう一人の僕が嘲笑う。
でもそんな自分から目を反らし、この先もユノを側に置くことを選ぼうとしている。
ずっと孤独だったから、寂しかったから、手放したくなかった。

「お前もビール飲むだろ」
「いいから、チャンミンの分だけ買えよ」
「目の前で僕だけ呑んでたら、嫌じゃないか?」

ユノは暫く黙り込んでから言った。

「チャンミンって、いい奴だろ」
「なんだよ、いきなり」
「前言ったじゃん。そのうちいい奴か悪い奴か解るって。いい奴な気がする。ちっとだけど、一緒に暮らしてみて思った。意外と優しいし」
「意外で悪かったな」
「トゲが多いんだよ。もっと素直になればいいのに」

"素直"。
そんなものは、とっくの昔にどこかへ置いてきた。
いつだって自分を隠すことが絶対だからだ。
素直になれば、自分をさらけ出して人を頼ることもできる。
だけど、自分をさらけ出せない僕は誰も頼れず、何時だって自分で自分を守るしかなかった。
そして、今では強がりばかりが目立つようになってしまった。

「そんな事できたら、ほんとにいいのにな……」

歩くのを止めて俯くと、ユノも立ち止まった。
本当の僕を知ったら、ユノはどう思うだろう。
軽蔑するだろうか。
ユノに惹かれているから、ただ純粋に気になった。

「チャンミン?」

言ってしまいたい。
結果はどうあれ、ユノとは貸し出し期間だけの限られた関係だ。
しかし本当は心のどこかで、ユノならば受け入れてくれるんじゃないかと期待していた。



「ユノ……」
「ん?」
「僕……ゲイなんだ」











人気ブログランキングへ

にほんブログ村 二次BL小説


スポンサーサイト

Comment 0

What's new?