ミッドナイト・ガイズ 11



















ミッドナイト・ガイズ・表紙


















オーナーが逮捕されたその日――・・・
店には捜査が入ることになり、警察側からは営業の停止を言い渡された。
オーナーの管理下で働いていた僕等にも、覚せい剤使用の可能性があるとして、全員がスクリーニングの対象となった。
尿鑑定のため僕らは採尿されたが、即日結果は出ないため一旦帰宅して良いことになった。
更衣室に戻った僕は、男娼たち数人が帰ろうとしているところに出会した。
オーナーの正体を既に知っていた、あの男娼達だ。
気まずそうに、各々が僕の横を通り過ぎようとする。

「ちょっと待った」
「・・・・・・・・・・・・」

この事件のシナリオを知っているだろう彼らを、このまま帰らせる訳にはいかない。

「白状してもらおうか。何故、オーナーが覚せい剤に関わってると知ってた?」
「んな、怖い顔すんなよ・・・・・・」

僕は無言で椅子を引き、座るように促した。
リーダー格の男が渋々椅子に腰掛けると、仲間も周りに集まって来た。

「しょうがねーなぁ」

彼は思い出すようにしながら、ぽつぽつと話し始めた。

「・・・・・・きっかけは、チョン・ユンホを接待したことだった」
「ユンホさんを?」
「ああ。チョン・ユンホに指名された時、ベッドルームへ連れて行かれて・・・・・・そこで、情報の提供求められたんだ」
「情報というのは」
「勿論、オーナーの情報だ。チョン・ユンホは、オーナーが覚せい剤に関わってる可能性が高いこと、そして自ら潜入捜査員であることを明かしてきた。オーナーについて、知る限りの情報を全て教えろと言われたよ。迷った末、俺はチョン・ユンホに協力することにした」
「それで・・・・・・?」
「情報の対価、口止め料として、奴は俺に大金を支払った。俺は大人しく奴の作戦に従った。オーナーが俺達を裏切ろうとしてる・・・・・・そう分かって、ショックだったけどめちゃ腹立ったし・・・・・・だったら、裏切られる前に裏切ってやろうと思ったんだ」
「皆は?どうなんだ」

僕の問いかけに、仲間のうちの一人が答えた。

「俺も他の奴らも皆同じだよ。どんな基準で俺らを選び出したのか知んないけど・・・・・・多分、オーナーと特に親しかったからだろ。水面下で動いてたあの人にとって、オーナーにバレないよう情報を集めるには、ベッドルームが最適だったって事だ」
「なら、体の取引きは・・・・・・」
「一切無かった。あの人は、この店の誰も抱いちゃいねーよ。仕事に来てたんだから」

それを聞いて、僕は絶句した。

「でも・・・・・・お前は、あの時抱かれたって・・・・・・」

――――『どうだった。チョン・ユンホは』
『そりゃもう凄いよ。激しくて参った』

その会話を、僕は確かに聞いた。
リーダー格の彼は、バツの悪そうな顔で言った。

「あんなの、デタラメに決まってんだろ?」
「嘘をついたのか?」
「だって・・・・・・お前があの人に気に入られてるの、あまりにも分かり易かったから腹が立ったんだよ!」
「え・・・・・・?」
「可愛いイタズラだろ。許せよ」
「・・・・・・・・・・・・」









営業停止になり人影の無い店内は、営業時の騒々しさが嘘の様に静まりかえっている。
非常階段に座りながら、僕は下一面に広がる大都市を見下ろした。
何年か振りに吹かした煙草の煙が、真昼の薄ぼんやりとした空気に溶け込んでいった。

「不味・・・・・・」

僕は、ユンホさんの顔を思い浮かべた。
あの人が吸えば、煙草も上品なアクセサリーに変わることだろう。
以前から、謎の多い人だとは思っていた。
どこか噛み合わない言動、意味深な発言、ふと見せる切なげな表情・・・・・・
真相を知った今、これまでユンホさんを見て感じてきたひとつひとつが、まるでパズルのピースのように、本当のユンホさんのイメージをかたち作ってゆく。
貴方が僕を傷付けたのは、不可抗力だった。
ずっと僕ばかり傷付いていると思っていたけれど、真実を口に出来ず嫌われ役を演じていた貴方も、相当辛かったことだろう。
貴方は、この店の誰とも身体を重ねてはいなかった。
僕一人を、除いては・・・・・・
その事実にもしかしたら、と期待してしまう僕を知ったら、貴方は笑うだろうか?
僕はまた、貴方に会いたい。
でも僕は、貴方の居場所も連絡先も知らない。
僕は今でも、貴方を求めることを許されない。
貴方が迎えに来てくれない限り、この恋は叶わない。










店が営業停止になってから、もう一週間以上が過ぎた。
検査の結果、陽性となった者は僕ら男娼の中におらず、取り敢えず全員の容疑は晴れた。
しかし、今も営業再開のめどは立っていない。
ふらりと一人店を訪れた僕は、フロアに足を踏み入れた途端驚いた。
多くの男娼達が、そこに集まっていたからだ。

「皆、来てたのか」

全員僕の方へ視線を向けたが、見るからに活気が無く、生気の抜けた顔をしている。
どんなにオーナーのやり方が非道でも、此処は僕らが稼いで生きていくために必要な場所だったのだ。
皆口々に呟いた。

「やっぱり、此処に来ちゃうんだよな」
「この店無くなったら俺、他に行くとこねーよ・・・・・・」
「このまま、閉店すんのかなぁ」

失業に怯え、落ち込む気持ちは分かる。
でも・・・・・・

「起きてしまったことは仕方無い。それに、これで良かったんだ。あのままオーナーに経営を任せていたら、僕たちも犯罪者になっていたかも知れないんだから・・・・・・」

するとその時、店の入口の扉が勢いよく開かれた。
逆光の中に、見覚えのあるすらりとした長身が見えた。
人影が、コツコツと足音を響かせながら近付いてくる。
やがて明らかになったその顔を見て、僕は目を見張った。

「ユンホさん・・・・・・」

何時もと同じく綺麗にセットされた髪、仕事仕様のブラックスーツを身に付け、手には大きなケースをぶら下げている。
きりっとした表情でフロアの男娼達を見渡しながら、ユンホさんは思いがけない言葉を口にした。

「今日からこの店のオーナーを務める、チョン・ユンホだ。宜しく」
「え・・・・・・?」









◇◇◇



あれ、一話じゃ終わらなかった(^^;
もうちょい続きまーす。



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2 Comments

NB(のぶ)  

Re: No title

ちゃー○んさま


こんばんは♡
いつもありがとうございます。
悪い予感も大歓迎ですよ~。
むしろ、最近は私の小説ハッピーエンドばかりで現実味が無いというか、退屈というか・・・・・・
とにかくワンパターン化してるかな?と思っていたところです。
違った傾向のものも是非書いてみたいです。

ユンホさんのような男前が居る店で働いてみたいものですね。
私に夜の仕事なんて務まらないと思いますけどね・・・・・・(笑)

ミッド~も残すところあと一話となりました。
今回も、最後までお付き合い頂きありがとうございました。
またお待ちしてま~す♪

2015/09/26 (Sat) 20:05 | EDIT | REPLY |   

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2015/09/25 (Fri) 08:44 | EDIT | REPLY |   

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