ミッドナイト・ガイズ 4



甘い囁き、褒め言葉、心を揺さぶる熱い眼差し。
それら全てが、この世界ではただの飾り物でしかない。
こんな店に来る客に、真当な人間が一人でも紛れている訳が無かった。
どうしてそれに気付かなかったんだろう。
僕は甘い罠に嵌り、ひと時、幸せな夢を見せられただけだった。




















ミッドナイト・ガイズ・表紙






















金曜の夜。
僕は化粧と着替えを終え、ユンホさんが来店するその時を待っていた。
ユンホさんを思い浮かべるとつい口が緩みそうになり、クールな表情を崩さないよう気を引き締めた。
暫くすると、オーナーが化粧室へ顔を出した。

「シム、指名だぞ」
「はい」

指定された客席が見えてきて、僕は首を傾げた。
ソファに座っているのは、知らない男性だったからだ。
ユンホさんから指名されたとばかり思っていた。
状況を飲み込めず立ち尽くして居ると、ある光景を正面に捉えた僕は唖然とした。
ユンホさんが、一人の男娼を連れながらこちらへ向かって歩いて来る。
連れている男娼は、僕がこの前啖呵を切ったあの男だった。
ユンホさんは僕と目が合った途端、視線を逸らした。
一言も、言葉をかけてはくれなかった。
男娼の彼はユンホさんの肩に顔を寄せ、僕を楽しそうに眺めながら通り過ぎた。
二人が向かったのは、店の奥。
ベッドルームが並ぶ、カーテンで仕切られたスペースへと姿を消した。
どん底に、突き落とされた気分だった。
彼にとって、僕は特別でも何でも無かった。
大勢居る遊び相手の中の、一人に過ぎなかったのだ。






「どうだった。チョン・ユンホは」
「そりゃもう凄いよ。激しくて参った」

更衣室で着替えながら、僕は彼と仲間の会話を黙って聞いていた。
大声で話す内容じゃない。
きっと彼は、僕に聞かせたいのだろう。
僕はそれに苛つく余裕も無い。
ユンホさんが、他の客と同等だということが受け入れられない。
ユンホさんに捨てられたことが、ただただ辛かった。



男娼達からの嫌がらせは、それからも続いた。
僕はあの時、彼に負けない、ユンホさんを渡さないと強く言い切った。
だけどそれは、自分がユンホさんに愛されているという自信があったからだ。
心を酷く負傷した今は、嫌がらせに抵抗する気力も無く、ユンホさんの意志を変えようと動くことも出来なかった。
そして僕は学んだ。
この世界では、感情など無意味。
純粋な人間程、辛い想いをするだけだと。









金曜の夜は、心が沈む。
外も中も無を貫こうとしても、心の傷はまだ疼く。
僕が接客する席から、別の席で、ユンホさんが他の男娼と笑って話しているのが見えた。
完全に幻滅することが出来たなら、それはただの店の光景の一部に過ぎないのに・・・・・・
僕は今も、ユンホさんを目にすると辛くなってしまう。

「チャンミナ」

隣に座っていた客が、僕の名前を呼んだ。
目の周りは紅く染まり、呂律も上手く回っていない。
完全に酒にのまれた顔で、男はドレスの上から僕の太腿を撫でた。

「・・・・・・どうしました?」
「君は身体を売らないの?こんな美人を鳴かせたら、堪らないだろうなぁ」
「・・・・・・・・・・・・」

この辛さから解放される術を、僕は知っている。
完全に心を殺すことだ。
他の男娼達と同じように、ただの商品として扱われるのだ。
中途半端だから余計辛い。ならば、この世界へ完全に踏み出してしまえばいい。
僕は男の肩に凭れ、耳元へ口を寄せて囁いた。

「・・・・・・構いません。貴方が・・・・・・最初のお客様です」



客とベッドルームへ向かう途中、偶然にもユンホさんとすれ違った。
ユンホさんと視線が合い、僕は途端に目を逸らしてしまった。
客に肩を抱かれて歩きながら、僕はすれ違った時のユンホさんの表情を思い返していた。
瞳が切なげに震えていた・・・・・・そんな気がした。
何故、貴方がそんな顔をする必要がある?
貴方にとって、僕は山ほどいる遊び相手の、それも捨てたうちの一人。
玩具のような存在だというのに。
ふと生まれた疑念は、次第に薄暗くなる空間に溶け込むように、消えていった。









フロアの隅に、メンバーのネームプレートがずらりと並べられている。
需要のある分だけ、ネームプレートの下にチェスが積まれてゆく。
セックスを許容し始めてから何故か、面白い程僕への指名が増えた。
僕のネームプレートの下へチェスを付け足すと、オーナーは肩を揺らしながら笑って言った。

「まさか、お前が自ら身体を売るようになるとはな・・・・・・」
「いけませんでしたか」
「いいや。今だからこそ言うが・・・・・・いずれはどんな手を使っても、お前を完全に引き込もうと思っていた」
「・・・・・・・・・・・・」

オーナーは笑みを浮かべたまま、僕の顎に手を添え、顔をくいと持ち上げた。

「お前は男娼達の中でも相当な美人だ。だから、奴らもムキになるのさ」
「勿体無いお言葉です」
「最高の商売道具よ・・・・・・もう絶対に離さんから、覚悟しろ?」

オーナーは、げらげらと声を上げて笑いながらフロアから立ち去った。
僕は、いつからオーナーのシナリオに乗せられていたのだろう。
まんまと嵌ってしまった自分が、とても情け無く、哀れに思えてくる。
込み上げる虚しさを消し去るように、僕は小さく笑った。
何時かの、あの人の言葉が頭を過ぎった。


――――『お節介かもしれないが……上の言うことをあまり鵜呑みにしない方が良い』
     『済まない。君のことが心配になった』


あの人はこうなるずっと前から、オーナーの思惑を見抜いていたのだろうか?









ある日、僕は衣裳を家に忘れてしまった。
ランクが上がり嫌がらせはマシになったものの、完全に無くなった訳では無い。
更衣室のロッカーは、今も使用していなかった。
予備の衣裳は無い。家に取りに帰る時間も無い。
一人悩んでいると、隣からひっそりと声をかけられた。

「・・・・・・俺のでよければ、貸してやろうか」

男娼となってから、周囲から優しい言葉をかけられた事など一度も無かった。
予想外の展開に、僕は声をかけてきた彼を見つめながら固まってしまった。
中性的な顔をした彼は、僕を見た途端息を吹き出しながら笑って言った。

「んな・・・・・・お化け見るような顔でこっち見んなよ」
「・・・・・・ごめん」

彼の名は、キュヒョンと言った。



キュヒョンとはそれがきかっけで、よく話すようになった。
嫌がらせがピークの時には、巻き込まれるのを恐れて僕に話しかけることが出来なかったと、キュヒョンはそう言った。
キュヒョンは冷静で簡潔。正直で嘘をつかない。
どことなく僕に似ている。
一緒に居ると自分らしく居られる気がして、キュヒョンの隣は居心地が良かった。









◇◇◇



ちょっと待ってちょっと待ってユンホさーん!
いろいろすみません。でも意味も無く酷い彼では無いのです・・・・・・
どうか幻滅しないであげてください。
そして祝福すべき DVD ゲットの日に、こんな小説を UP する作者もどうか許してあげてください・・・・・・
(私はまだ見ていません)

今後、ラブ以外の要素(結構シビアなやつ)も入ってくる予定です。
チャンミンはようやく心救われる仲間ができました。
安定のキュヒョーン(^_^)



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4 Comments

NB(のぶ)  

Re: 似たような…

ちゃ○さま


ユノがまただらしないという…((T_T))
おかしいなぁ、こんなユノが好きなわけでは無いのですが!
でも、ご本人がピュア~なのでそんな姿を見たいって気持ち、若干あるかも(^^; 笑

色々な方を見てらっしゃるのですね。
本当に色々な方が居ますからね……

blogやるかどうか、それは本人のモチベーション次第だと思います。
blogの更新に追い詰められても続かないし、やりたい!って気持ちが、楽しいって気持ちが一番重要かなって。
今後の方針は、自分の心と相談しながらじっくり決めればいいと思います。
無理はなさらないでくださいね。
またお待ちしてます。

2015/08/27 (Thu) 18:12 | EDIT | REPLY |   

NB(のぶ)  

Re: タイトルなし

ちゃー○んさま


こんばんは!
お話なかなか進まずすみません……(´-ω-`)
本当に、頻繁に更新されてる方々尊敬します。
でも長く続けるためにも、私のペースで無理なく頑張りたいです。
我が儘ですが、義務化すると楽しむ割合が減って、趣味では無くなってしまう気がするので……

今は週一が丁度良いかんじです。
亀更新すみませんです((T_T))
そして、いつもありがとうございます。

2015/08/27 (Thu) 18:05 | EDIT | REPLY |   

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2015/08/20 (Thu) 08:51 | EDIT | REPLY |   

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2015/08/20 (Thu) 08:35 | EDIT | REPLY |   

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