小説家は愛を綴る

  27, 2015 08:00


俺は先生から原稿を受け取ると、並んだ文字に視線を走らせた。





“ 『小説家は愛を綴る』



 小説家の男は、ある日一人の青年に出会った。
 大きな目と、筋の通った鼻、薄く特徴のある唇が印象的だった。
 青年は創作の仕事を手伝いながら、少しずつ男の心の中に入り込んだ。
 微笑んだ時の、少女のような可愛らしい笑みや、丸みを帯びた頬が男は好きだった。

 ある晩青年は、月に連れ去られそうになる男を引き止めた。
 優しい心に触れ、男はついに、青年に恋心を抱いてしまった。
 淡い桜色の唇に吸い寄せられるように、男は青年に口付けた。


 暫くすると、男は恋愛小説を書き始めた。
 その内容は、ただ愛の言葉を並べた単純なもので、とても作品に出来るようなものではなかった。
 それも其の筈。
 男は、恋愛小説を書く気などさらさら無かったのである。
 ただ、創作に協力するという口実の元、青年が愛の言葉を囁くのを聞きたいだけだった。


 男の行動に傷ついた青年は、涙を流しながら、心に秘めていた苦しみを吐露した。
 男はその時初めて、己が犯した罪の重さを知った。


 言葉が下手な男は、想いを文字にして青年へ愛を綴った―――・・・・・・ ”





「これって・・・・・・もしかして・・・・・・」

先生はほんのりと顔を紅くして、頭を掻きながら言った。

「僕の気持ちだよ。普通に告白できれば良いんだろうが、どうすれば上手く伝わるのかよく分からなくて・・・・・・。回りくどいやり方をして済まない」

小説家の男は、先生。
青年は、俺・・・・・・
胸がじんと熱くなって、俺は泣きそうになりながら、心から喜びを噛み締めた。
原稿を胸元に大事に抱え、俺は先生に向かって微笑んだ。

「いいえ、先生・・・・・・。世界一、素敵な告白です」

瞬きをした拍子に、嬉し涙が一粒、頬をほろりと伝い落ちた。
先生は俺の頬に手を伸ばして、指の腹で涙を優しく拭った。

「良かった・・・・・・。僕の想いを、受け入れてくれるかい」
「勿論です」
「キスをしても、いい?」

先生が、指先で俺の唇をそっとなぞった。

「その前に・・・・・・ひとつだけお願いがあります」
「何かな」
「小説で告白も素敵だけど・・・・・・先生の口からも、直接想いを聞きたいです」

先生は暫し黙り込んだ後、ゆっくりと口を開いた。

「・・・・・・君が好きだ。初めて出会った時から、ずっと惹かれてた・・・・・・」
「嬉しい・・・・・・先生」
「君は?」
「俺も・・・・・・俺も、先生が好きです」

先生は俺に顔を近付け、触れるだけの優しいキスをした。
柔らかい感触は、程無くしてそっと離れていった。
先生は至近距離のまま俺をじっと見つめると、もう一度唇を塞いだ。
今度は直ぐには離れず、押し付けられる力は少しずつ強くなってゆく。
やがて、しっとりと柔らかい舌先に割れ目を開かれ、俺は躊躇いながらもそれを迎え入れた。
舌と舌を絡め合ったり、唇を吸われたりしているうちに、身体はあっという間に熱くなった。
想いが実ったことが、こうして触れ合えることが嬉しくて、心も身体も喜びに震えている。
唇を解放すると、先生は熱っぽい吐息を吐いてぼそりと呟いた。

「駄目だ・・・・・・」
「先生・・・・・・?」
「これ以上触れたら、我慢出来なくなってしまう」

その発言にドキッとしながらも、俺は心の隅でそうなる事を期待してしまった。

「君のことは、大事にしたいから・・・・・・」

本当は、我慢しないでと言いたかった。
でも、先生の気持ちを否定してしまう様な気がして、言うのは止めた。



帰り道、車を運転しながら俺はあることを思い出した。
恋が実ったことに浮かれて、大事なことを忘れていた。
俺はこれから、別の会社へ移動させられるかもしれないのだ。
折角、先生と恋人同士になれたのに・・・・・・
赤信号に捕まり、俺はハンドルに突っ伏して溜息をついた。
喜んだり落ち込んだり、本当に忙しい。









数日後。
会社のエントランスを歩いていると、少し遠くに見覚えのある姿を見つけた。
隣には、俺が配属している部署の責任者を連れている。
スーツを纏っているせいか、小さな顔が更に強調されてまるでモデルのようだ。
長い前髪をかき上げるその仕草に、思わず見とれてしまった。
目が合った途端、その人はふわりと微笑と、俺の名前を呼んだ。

「シム君」
「先生、どうしてここに?」

すると、先生の隣に居た上司が俺の肩を叩いた。

「お前、随分と気に入られたんだな」
「え?」
「先生が直々に出向かれて、お前と仕事を続けたいと希望された。移動の話は無しだ」

その発言に驚いていると、先生がにっこりと笑いながら言った。

「先日君と会った後に、会社から移動の話を聞いてね」
「そうでしたか」
「君はよく働いてくれるし、僕は相性も良いと思っているから・・・・・・手離すのがとても惜
しい。勝手なことをして済まないが、移動の話は取り消して貰ったよ」

笑って言っているが、先生は立場を利用して結構大胆なことをしていると思う。
勿論、俺を側に置こうとしてくれたことは凄く嬉しいのだが。
上司は、先生が俺の移動を止めた真の理由を知らない。
俺は、先生に向かって頭を下げた。

「ありがとうございます。これからも頑張ります」
「うん。宜しく頼むよ」









休日の昼下がり。
書斎を訪れた俺は、先生と二人で縁側に腰掛けていた。
この場所は、俺と先生の定位置になりつつある。
スーツ姿の先生も良いけど、やっぱり浴衣姿が一番好きだ。
先生は、庭から取ってきた青い紫陽花を見つめながら言った。

「紫陽花には花言葉があるという話、前にもしたね」
「はい」
「でも、色によって花言葉は違うんだよ」
「へぇ」
「青い紫陽花の花言葉は・・・・・・“強い愛情”なんだ」

先生はそう言うと、俺に向かって紫陽花を差し出した。
それを受け取ろうと手を伸ばすと、そのまま先生の方へ身体を引かれた。

「うわっ」
「好きだよ、シム君」
「・・・・・・俺も、先生が好き」

顔を寄せて笑い合うと、どちらともなくキスをした。






この物語は、誰にも明かされることがない。
俺と先生だけが知っている、秘密の物語だ。



先生は今日も、愛を綴っている。









END



◇◇◇



これにて、小説家シリーズは終わりになります。
4 話で終わりって、あまり数字が良くないかな・・・・・・
よし、番外編を書こう!
(本編で達成出来なかった、アレを盛り込む予定です。皆様、会員証のご準備を宜しくお願いします)

夜を歩く~のチャンミンのハンネが「淫乱書生」とは・・・・・・(笑)
それに派生して打ち明けますが、この話、始めはチョン先生は官能小説家で、チャンミンは内容を検討するためにアレコレやらされる。という設定でした。
でも同時進行の店長シリーズも変態だし、キツいよなぁ・・・・・・と悩んで、よし、真面目な話にしようと決めたのです。
これで正解だったと思います。(笑)

皆様、短い連載でしたが、お付き合い頂きありがとうございました!



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Comment 4

NB(のぶ)  

Re: タイトルなし

ちゃー○んさま


こんばんは♡
小説家シリーズ、お付き合い頂きありがとうございました。
やはり変態作者は、本番無しだと物足りなくなってしまったようです。
うちのサイト、本番無しのシリーズあったかな?と思い返したら……
やっぱり無かった(笑)

そうです、始めは変態シリーズ二つで行こうと考えてたのですが……
真面目な話も書かないとと思って、こんな感じになりました(笑)

変態会員さま、何名いらっしゃるか私も正確に把握しては居ないのですが……
拍手数を純粋に人数に置き換えると200名ほど……?
でも、複数拍手してくださる方も居るしなぁ……
すみません、ちゃんと分からない(T_T)
任意ってことにしようかと……(笑)

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NB(のぶ)  

Re: タイトルなし

ゆ○んさま


こんばんは~(^.^)
小説家シリーズ、ひとまず終了です。
今後番外編もupする予定なので、宜しければお付き合い願います♡

そうですか……そんなことが……
うわーん、辛いし苦しいですね……
一番近くにいるトンペンさんが、自分と価値観がずれてしまってしんどい気持ちは私も分かります。
私の友達は五人が好きで、私は何も知らなかった頃、実はそっちに揺らぎそうになった事があったんです。
でも、ベースに今の東方神起が好きという思いがあったし、色々と調べるうちに五人は絶対違うという風に考えるようになりました。
それ以来、どんなに五人五人と言われても自分の意見を突き通しています。(笑)
どんな風に応援するかはその人次第ですが……
やっぱり私は、二人の東方神起を二人とも大切にしながら応援するのが正しいと思います。
違う考えを持った人からすれば、この私の意見も間違った
意見のように映るのかもしれません。
色々考え出すときりがありませんね~(>_<)
自分が望むスタイルで、同じ考えの方々と関わるのが一番平和に済む気がします……

長々とすみません……!
つい語ってしまいました。
ゆ○んさまのお気持ち、十二分に伝わりましたよ!
これからも一緒に二人を応援しましょう♡

あ……
別に、お風呂のお湯を飲めるかどうかは関係無いですよ!
私の話を読んで拒否反応が出ない、むしろ楽しめる=変態会員さま とみなしますから……
これからも、拒否反応が出ない限り心おきなくお話を読んで頂いて構いません(*^^*)
お風呂のお湯の話題まで真剣に気にかけて下さって……
ゆ○んさま優しいなぁ……

またお待ちしています♪

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