カラダノキオク 9

  27, 2015 09:00

















カラダノキオク・表紙
















ユンホさんと会わなくなってから、どれくらい経っただろう。
こんなに辛い思いをさせられても、俺はまだユンホさんが好きだった。
まっすぐな瞳と体温が忘れられず、ベッドの中で何度も自分を慰めた。
とっとと忘れてしまえば楽なのに、いつまでもそれができない自分が嫌だった。
そんな中、俺は調理の専門学校に無事合格した。
二年間分の学費を払えるくらい貯金が貯まったので、一ヶ月前に受験したのだ。
これからは学校に通いながらバイトも続けていく。
やっとスタートラインに立つことができたのに、あの人のせいで心にはもやもやが残ったままだ。
本当に、昔から俺を悲しませたり喜ばせたり、振り回すのが得意な人だ。









授業は毎日夜まであるが、その後はバイトへ向かい深夜まで働いている。
一週間のうち二日くらいはバイトを入れないようにして、休めるように予定を組んでいた。



学校帰り。
バイトが無いので、俺はのんびりと帰宅していた。
保育園の前を通りかかった時、泣き声が聞こえてきて俺は足を止めた。
数組の親子が手を繋ぎながら帰る中、一人の子供が泣き叫んでいる。
パパ、パパ、と。
子供の顔に見覚えがあった。
あの子は、ユンホさんの子供だ。

「お父さん来るまで待ってよう。ね?」

保育士と思われる女性が、ユンホさんの子供をなだめている。
しかし一向に泣き止む気配が無い。

「いつも遅いからねー。そりゃ嫌にもなるわ」
「チョンさん、お母さんに迎え頼めないんでしょうか」
「チョンさんのお母さん、今仕事で出張らしいから」

職員の会話が聞こえてくる。
ドフン、とか言ったっけ。
きっと毎日待たされて寂しいだろうな。
泣いているドフンを見て、自分のことの様に切なくなった。
気が付くと、俺は保育園の門をくぐっていた。
俺はドフンの目の前に立つと、涙でぐしょぐしょになったその顔を見つめた。

「・・・・・・そんなに寂しいなら、俺が相手してやろうか」

声をかけた直後、ドフンはぴたりと泣き止んだ。
もしかすると、俺のことを覚えているのだろうか。

「あの、どちら様ですか」

保育士が、俺を不思議そうに見つめて言った。

「この子の父親の・・・・・・知り合いです。父親が・・・・・・ユンホさんが来るまで、ここで一緒に遊んでてもいいですか」

保育士は、もう一人の職員と顔を見合わせてから言った。

「そうね・・・・・・。ここでなら」
「ありがとうございます」

ドフンの相手をしている間、保育士はずっと俺を見張っていた。
物騒な世の中だから変出者扱いされたのかもしれない。
砂いじりをするドフンの隣に、俺も腰を下ろして話をした。

「お前大変だな。俺にも母ちゃんしかいないから、お前の気持ちはよく分かるよ」
「だいじょぶ。おれ、つよいんだよ?」
「おお。随分喋るようになったじゃん」

ドフンはにっこりと笑うと、再び砂をいじりを始めた。
ドフンの横顔を見て、きりっとしたカタチの良い目は父親譲りだと思った。

「なぁ・・・・・・。父ちゃんのこと、恨まないでやれよ。頑張って働いてると思うからさ」
「・・・・・・・・・・・・」
「間違ってもグレんなよ。俺みたいに」
「ぐれ?」

まんまるい瞳が、不思議そうに俺を見上げた。
丁度その時、後ろから保育士の声が聞こえてきた。

「ドフン、お父さんあとちょっとで来るって」

手には受話器を持っている。
きっとユンホさんから電話が入ったのだろう。
顔を合わせることになる前に、さっさと帰った方がいい。
立ち上がると、ドフンが俺の服の袖を掴んだ。

「もういいだろ。父ちゃん来るってさ」
「やだ」
「俺、もう行かなきゃ」

しかし、ドフンが俺から手を離す気配は無い。
早く立ち去りたいのに、俺には小さなその手を振り切る勇気が無かった。
迫りくるその瞬間にびくびくしながら、俺はただ立ち尽くしていた。

「すいませんっ。遅れ・・・・・・」

保育園の入口から、会いたくなかったその人が姿を現した。

「・・・・・・お前」
「・・・・・・・・・・・・」

ユンホさんは、驚いた顔で俺を見た。
俺は、ユンホさんを見る事が出来ずに横を向いた。

「この方、お知り合いですか」
「・・・・・・はい」
「チョンさんが来るまで、ドフン君の相手をしてくれていたんです」
「そうでしたか・・・・・・」

保育士とユンホさんの会話を、俺は黙って聞いていた。
小さな背中をそっと押してやると、ドフンが俺を見た。

「行きな」

ドフンはユンホさんの元へ駆けていった。
俺は足早に立ち去ろうとしたが、ユンホさんの横を通り過ぎた直後腕を掴まれた。

「待てよ」
「キモいことして悪かった。もうしない」
「そうじゃない」
「・・・・・・・・・・・・」
「助かった。ありがとう」

優しい声色でそう言うから、俺はついユンホさんを見てしまった。
ずっと忘れられなかったあの瞳で、今も俺を見ていた。
嬉しいなんて、俺どうかしてる。
潤んでしまった瞳を隠すように下を向いた。

「あれから・・・・・・何度かコンビニに行った」
「え・・・・・・?」
「でも、お前には会えなかった。もう辞めちまったのか?」

辞めたと言って嘘をついてもいい。
正直に応える必要なんてない。
俺達は、今となっては一時身体を重ねただけの関係なのだから。
それでも・・・・・・

「・・・・・・まだ働いてる。今は遅い時間に変わったんだ」
「そうか」

本当のことしか言えなかった。
俺に会おうとしてくれていたなら、また会いに来てくれるだろうか。
そんな考えが頭を過ぎって、諦めの悪い自分に嫌気がさした。
俺は、やっぱり今でもユンホさんが好きだった。









それから保育園を通る度、ドフンが泣いている姿をよく見るようになった。
学校からバイトへ行くまでの僅かな時間では、以前のように遊びの相手をしてやることが出来なかった。
ドフンの気持ちが痛いほどに分かるから、見逃すことしかできないのが辛かった。









「いらっしゃいませ」

入店音が鳴っていつもの様にそう口にした。
入って来た客の顔を見た途端、俺は固まってしまった。
ユンホさんだった。

「あ・・・・・・」
「よう。お疲れ」
「・・・・・・・・・・・・」
「煙草くれ」
「・・・・・・かしこまりました」

煙草をショーケースから取り出しながら、俺は言った。

「・・・・・・あんまり子供放っておくと、俺みたいになるかもよ」

ユンホさんは眉を潜めた。
言い返してくると思ったが黙ったままだ。
相当疲れているのか顔に覇気が無いし、以前会った時よりも痩せているような気がする。

「あんま寂しい思いさせんなよ」
「んなこた痛いほど分かってる。でもな・・・・・・こっちだって仕事忙しくてブッ倒れそうなんだよ。どんなに頑張っても、構ってやれねー時もある」

まるで、昔の母さんを見ているような気分だった。
完全にその気持ちを分かってはやれないけど、寄り添うことはできる。
俺は、レシートの裏にペンを走らせてそのまま渡した。

「もってけ。俺のアドと電話番号」
「・・・・・・・・・・・・」
「不定期だけど、バイト無い日は空いてる。ドフンのこと・・・・・・預かれるかも」

ユンホさんは、驚いた顔で俺を見つめた。
なかなか受け取ろうとしないので、居心地が悪くなった俺はレシートを引っ込めた。

「いらないんならいい」

するとさっと手が伸びてきて、俺の手からレシートを攫った。

「さんきゅ。持ってく」

ユンホさんは、そう言って微笑むと店から出て行った。
誰も居なくなった店内で、俺は一人笑みをこぼした。
ユンホさんには散々酷い目に合わされているのに、よく懲りないなと思う。
一番どうしようもないのは、自分かもしれない。









◇◇◇



TISTORYの雑な感想に拍手を沢山どうもですm(__)m
今日はアニイベですね~!
行かれる皆様、心から楽しんできて下さいね。
私は妄想とツイレポで我慢(^.^)

このお話のチャンミン、ダメ男に振り回されてもなかなか切れないダメ女に見えてきた……(汗)
どっちもダメじゃないか……
頑張って挽回します。





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Comment 4

NB  

ちゃ○さま

☆ちゃ○さま

あれ……名前変わりましたか?(笑)

居ますねー、こういうダメ男、ダメ女(笑)
多分、側で見てたら苛々すると思います。
自分作者なのに……

ユノとチャンミンなら別扱いということで♡
私もユノに振り回された~い!

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no○zoさま

☆no○zoさま

どうもお世話さまです♡
ユノサンの本物の父ちゃん、若い時代のが出回ってましたが、見たら完全にユノの白黒verでした(笑)
親子揃って本当ハンサムですよね~♡

アニイベは動員数少なかったですもんね。
行けるかたは強運だとおもいます。
あ、私も韓国海苔大好きです!
チャンジャも(笑)

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