カラダノキオク 4

  17, 2015 09:31

















カラダノキオク・表紙
















「218円になります」

マイペースな客が、財布の小銭入れを悠長に漁っている。
俺は欠伸が出そうになるのを堪えて、小銭が差し出されるのを待っていた。
夜間から朝までぶっ通しの日は、途中に休憩を入れてもやっぱりキツい。
時刻は朝の七時半。
上がりの十時まで、あと二時間以上もある。



俺は今、コンビニで働いている。
今年でフリーター三年目だ。
定職にはついていないが、夢ならある。
その夢を叶えるためには、学校へ行かなければならない。
毎日バイトをしながら、その学費を貯めている。
三年前、ボロボロだった高校生活をやり直した時には、これまでの成績や態度が悪すぎて円満な就職など望めなかった。
卒業後すぐに夢は持てなかったが、取り敢えずバイトをして金を貯めた。
将来のことを考えたら、金はある方が絶対にいいと思った。
勿論、男にイタズラをして金を奪うような真似はしなかった。
昔に比べたら、今はそこそこマシな生活をしていると思う。
今の自分があるのは、あいつが俺に変わるきっかけをくれたから。
俺は今でも、あいつの夢を見ることがある。
忘れそうになった頃に、ひょっこり出てくるのだ。
俺の脳ミソも律儀に覚えているもんだ。
とっとと忘れちまえばいいのに・・・・・・



聞きなれた入店音が流れて、同時に客が入って来た。
いちいち顔なんて確認しないが、奥の棚に消えたその影を見て、随分背が高いなと思った。
目の前に、少々雑にカゴが置かれた。
カゴを置いたのは、先ほどの長身の男だった。
リーチのある見かけにサングラスをかけているので、若干恐い。
カップラーメン、弁当、炭酸ジュース。
かごには身体に悪そうなものばかりが入っている。

「1260円になります」
「あ、煙草くれ。45番」
「かしこまりました」

ショーケースから煙草を取り出して、客に見せた。

「こちらで間違いありませんか」
「・・・・・・間違った」

サングラスを取って、男は再びショーケースを見た。

「わり。46番」

サングラスを取った客の顔を見て、俺は固まってしまった。

「おい。46番」

衝撃を受けていたせいで、反応が遅れた。

「す・・・・・・すんません」

俺は急いで46番の煙草を取り出し、商品の会計をした。
こいつは間違いなく、3年前俺を更生させたのあの男・・・・・・
チョン・ユンホだ。
声をかけるべきか。いや、出来ない。
こいつは、俺のことなんか忘れているかもしれないのだ。
元々俺たちは、気軽に声をかけるような間柄でもない。
俺から袋を受け取ると、チョン・ユンホは出口へ向かった。
そのまま帰るとばかり思ったのに、出口の手前でぴたりと止まると、再びレジまで戻ってきた。
サングラスを外して、切れ長の目で俺をじっと見つめてくる。
ドキッと心臓がはねた。

「お前・・・・・・いつかの万引き野郎?」

そんな言い方はないだろ。
俺は苛々全開で返した。

「久しぶりだな。変態」

俺の返答が気に食わなかったのか、チョン・ユンホは眉をひそめた。
何か言いたげに口を開いたが、すぐ後ろに別の客が居たので俺はその客を誘導した。

「次の方、どうぞ」

チョン・ユンホは、舌打ちをすると帰って行った。






チョン・ユンホは、次の日もやってきた。

「言っとくが、好きで来た訳じゃねーよ。最近この辺に職場が変わったんだ」
「別に聞いてませんけど」

その次の日もやって来た。

「お前・・・・・・居ない日無いの?」
「あんたが他の店に行けば?」

顔を合わせる度、まるで冷戦のようなやり取りばかりだ。
大体、好きで来た訳じゃないとか、俺が居ない日は無いのか?とか、何が言いたいんだ。
俺を嫌っているようなセリフばかり口にするのが腹立たしかった。
3年前、俺は確かに酷いことを沢山した。
だが少なくともあの頃は、チョン・ユンホに避けられていると感じたことはなかった。
むしろ俺と向き合ってくれた数少ない大人だったから、俺は好感さえ持っていたのに。
少し、傷ついている自分が居た。
それから暫くの間、チョン・ユンホは店に姿を現さなかった。









商品替えの時間と上がりの時間がかぶると、いつも賞味期限切れの商品をどっさり貰う。
今日も、弁当やおにぎりを沢山貰った。
それらを詰め込んだ袋をぶら下げて歩いていると、通りかかった公園から怒鳴り声が聞こえてきた。

「ふっざけんな!勤務変われだ?俺はまる二日何も食ってねんだよ。今日ぐらいゆっくり休ませる心遣いはねーのかっ」

一人の男が、誰かと電話している。
遠目だが、すらりとした長身と身につけたサングラス、荒っぽい口調で、俺は誰なのかすぐに分かった。
数回やり取りした後、ため息をつくとその人は携帯をポケットにしまった。
公園に入り傍まで歩いて行くと、俺はその人に声をかけた。

「お疲れっす」
「あ・・・・・・」

チョン・ユンホが、俺を見て固まった。
同時に、チョン・ユンホの腹がぐうーっと大きな音を立てた。



俺達は、公園のベンチに腰掛けて少し話をした。

「好きなもん食って」
「いいのか?」
「貰いもんだし、俺食べ飽きてるから」
「さんきゅ」

笑ったチョン・ユンホを見て、俺は気が抜けてしまった。
意外と普通だ。
これまでは、あんなにあからさまに俺を避けていたのに、
おにぎりを口一杯に詰め込みながら、チョン・ユンホが言った。

「お前、よく俺に優しくできんな」
「俺、そんな冷たい人間に見える?これでも一応、マシになったつもりだけど」
「そうじゃねーよ。俺お前が高校ん時、酷いこと散々したろ」
「・・・・・・・・・・・・」
「すげー嫌われてんだろうと思って、店に行くのも止めたのにさ」

俺にあんな腹立たしいことを言ったのも、それから店に来なくなったのも、俺に嫌われていると思っていたからか。
そう分かったら、心が少し軽くなった気がした。

「別にそこまでじゃ・・・・・・。最低なこともされたけど、あんたが居なかったら俺、立ち直れてなかったと思うし。生きてたかも、分かんないし・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「あの頃は嫌だったことも、今では感謝できたりとか・・・・・・するし」

たどたどしくなりながらも、俺は正直な想いを伝えた。

「なんか、良い奴になり過ぎて若干恐ぇな」
「腹立つなぁ」
「ははっ」

大きく開かれた足をつま先で蹴った。

「3年で随分成長したもんだな」
「まぁね」
「演技じゃねーことを祈るよ」
「は?」
「お前上手いからな。“イイ子のフリ”」

チョン・ユンホがニヤリと笑った。
その意味するところに気付いて、俺は急激に恥ずかしくなった。
“人懐っこいイイ子”を演じ、大人を騙していた高校時代。
過去なんてみんなどうしようも無いけど、その中でも一番の汚点だと思う。

「もう忘れろよっ」
「どうすっかなー」

俺はもう一度、苦し紛れにチョン・ユンホの足を蹴った。






その日以来、チョン・ユンホは再び店に来るようになった。
チョン・ユンホが来る時間になると煙草を用意したり、向こうが帰る間際窓越しにアイコンタクトをしたり・・・・・・
ほんの些細なそれらの事に、嬉しさを感じている俺が居た。









◇◇◇



すみません、取り急ぎアップのみ。





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Comment 4

NB  

no○zoさま

☆no○zoさま

悪ユノに悶えて頂きどうもです♡

新羅イベント、そんなことが……(笑)
ユノはマナーに厳しいですもんね。
きっちり守ってる子には自分から寄っていくし。

たまに、ファンの間でユノが過度に美しく表現されているとうーん……となってしまいます。
むしろ、不機嫌なとことか塩対応とか、人間くさいとこもう少し出してもいいのかな……とか。
そう言いつつも、そんなユノ絶対恐いですよね(笑)
なので、遠くから見てる位が丁度いいと思います。
寄ってっちゃ駄目(笑)

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NB  

ちゃー○んさま

☆ちゃー○んさま

今晩は!
NBの黒んホはこれが限界でした……(笑)
ドエスになりきれない。でもこのくらいが丁度いいかな?
これからの展開、受け入れて頂けるか不安もありますが……頑張ります♡

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ちゃーたん  

NBさんこんにちはm(__)m
更新ありがとうございます
ちょっと悪いちょっと冷たい感じのユノ結構好きです(≧∇≦)これからの展開も楽しみにしていますよ‼︎

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