カラダノキオク 3


















カラダノキオク・表紙
















家に帰って顔を洗っても、いつまでもあいつの血の匂いが残っている気がした。
チョン・ユンホはよく分からない奴だ。
この前は自暴自棄になったおかしい奴のように見えたが、今日は生きる力に溢れたような力強い眼差しをしていた。
恨んでいるし嫌いなはずなのに、今日見つめられたあの時の、まっすぐな瞳が忘れられなかった。






翌日。
俺は、いつもと何も変わらない時間を過ごした。
昨日交番にナイフを持って乗り込んだのが、まるで夢のことのように。
何もやる気が起きず、頭もろくに回らない。ずっと無気力状態だった。
放課後机につっぷしていると、仲間に取り囲まれた。

「おい。金が無い」
「・・・・・・・・・・・・」

何も返さずシカトしていると、強引に腕を掴まれた。

「ほら。行くぞ」

無理矢理立たされた俺は、引きずられるように歩いた。
こんなの、もうごめんだ・・・・・・



仲間の家に入る一歩手前で、俺は立ち止まった。

「なにボーッとしてんだ」
「・・・・・・帰る」
「何でだよ」
「もう、嫌になった」

一瞬にして、空気が凍りついたのが分かった。
俺は構わず続けた。

「お前らと居んの、疲れたよ」
「ふざけんな。男騙す役は誰がやんだよ」

げらげらと笑い声が上がる。

「そうだよ。お前しかいないじゃん」

また一人、俺を茶化すようにそう続けた。
言いようのない苛々がこみ上げてくる。
もう、我慢できなかった。

「それが嫌だっつってんだよ!お前らの道具になるのは、もう懲り懲りだっ……」

全員の目つきが変わるのを見て、もう引き返せないと思った。
だけど、これでいい。これでいいんだ。

「ふざけんなよ。チャンミン・・・・・・」



俺は近所の公園に連れて行かれ、人目につかないところでボコられた。
喧嘩は何度か経験していたが、こんなにもハードにやられるのは初めてだった。
始め腹に蹴りが入った時は、息が出来ないほどの苦しみに悶えた。
しかし、一方的に受けていると次第に意識が朦朧としてきて、身体の感覚も鈍くなった。

「調子にのんなよ。女みたいな顔しやがって」
「くそが。死ねっ」

それぞれが顔を険しくさせて汚い言葉を吐き、俺を痛めつける。

・・・・・・―――雑魚が足掻いてるようにしか見えねんだよっ。

あいつの言葉を思い出した。
なんだか、今のこいつらにぴったりだと思った。

「はは・・・・・・」
「何笑ってんだコラァッ!」

俺はもう、こいつらとつるむ気にはなれない。
たとえ今、死んでしまったとしても。

「弱いんだよ……お前らは・・・・・・」









ふと目覚めると、目に入ってきたのは白い天井だった。
俺は今、何処に居るのだろう。
辺りを見回すと、ぶら下がっている点滴と、涙目で俺を見ている母さんを見つけた。
ここは、病院?

「チャンミン、チャンミンッ!」

母さんが叫びながら俺に抱きついた。
いつもはびくびくしながら、遠くから見てるだけのくせに。
手も足も出ない状態の安全な俺なら、こんな簡単に触れるのか。単純だな。
馬鹿にしたつもりが、久しぶりの母さんの体温と匂いを感じて、俺は知らぬ間に涙を流していた。

「良かったチャンミン。死ななくて、本当に良かった・・・・・・」

ここにも、俺に向き合ってくれる人が居たんだ。
俺が、勝手に遠ざけていただけで。

「・・・・・・心配かけて、ごめん」






目覚めてから少しすると、医者が病室に入ってきて俺に身体の状態を説明した。
肋骨にヒビが入っているらしく、暫く入院らしい。
その他の傷は抗生剤と塗り薬で回復するだろう、とのことだった。

「俺、いつからここに居たの」
「昨晩からよ。巡回していたおまわりさんが、あなたが気を失って倒れているのを見つけてくださったの」

巡回していたおまわり・・・・・・
一瞬、頭にあいつの顔が思い浮かんだ。
まさかな。
すると、病室のドアがノックされた。

「失礼します」

入って来たのは、チョン・ユンホだった。
目を丸くする俺の前を通り過ぎ、チョン・ユンホは母さんの前で立ち止まった。

「どうも、お世話になります」

頭を下げた母さんに、チョン・ユンホが言った。

「被害を加えたのは、息子さんのお友達だったことが分かりました。『チャンミン君がグループを抜けたいと言ったことに腹を立てて、ついやってしまった』と話しています」
「そうですか・・・・・・。あなた、そんなこと言ったのね」

俺を見る母さんの表情は、心なしか少しほっとしている様に見える。
俺が不良を辞めることが嬉しいのだろう。
チョン・ユンホも俺を見ていた。
視線が合った途端、何故か動揺した俺は目を逸らしてしまった。

「ごめんねチャンミン。お母さん、これから仕事があるから行かなきゃ。明日また来るわ」
「別に来なくていいよ」
「そんなこと言わないで?じゃあね・・・・・・」

母さんは、少し寂しそうに笑うと帰って行った。

「ほんと、そんなこと言うんじゃねーよ」

二人きりになった途端、チョン・ユンホが言った。

「うるせぇ」

ぼそりと呟いた俺を見て、チョン・ユンホはふっと笑った。

「よくやったじゃん。今も情けないけど、前会った時よりだいぶ格好良いぜ」
「そうかよ・・・・・・」
「“お友達”の話が本当なら、お前が一歩踏み出せたことだけは確かだな」
「・・・・・・・・・・・・」
「お前見つけた時、死んでんじゃないかと思った」

ふと真剣な声色になり、チョン・ユンホは俺をじっと見つめた。
交番で俺の暴走を止めた時と同じ、あの真剣な眼差しをしていた。

「せっかく命が助かったんだから、絶対無駄にすんなよ」
「分かってる」

もう、今までのような過ちは二度と繰り返さない。
しっかりと頷くと、チョン・ユンホは口の端をくいっと上げて笑った。

「俺、もうそろそろ行くわ。じゃあな」

そう言うと、チョン・ユンホは病室から出て行ってしまった。
本当は、色々と伝えたかった。
見つけてくれて、ありがとう。
この前は、手傷つけてごめん。
だけど、あの時俺にチンコ突っ込んだのはやっぱり許せねぇ。
警察滅びろ的なこと言ってたけど、あれって何・・・・・・?

退院したら、また交番に行こうと決めた。






しかし、退院後交番を訪れても、そこにチョン・ユンホの姿は無かった。
その翌日もまたその次の日も、毎日交番を訪れたが会えなかった。
他の警官にチョン・ユンホの行き先を聞くこともできたが、俺は変な意地を張ってしまいそれが出来なかった。
そして月日は流れ、俺はチョン・ユンホを探すことを止めてしまった。
もう会うことはないだろうと思った。
だけど、一度だってチョン・ユンホを忘れたことは無かった。
奴は、俺に良い思い出も悪い思い出も、どちらも残していった強烈な男だったからだ。









◇◇◇



皆さん、お話に沢山の拍手をありがとうございます(>_<)!
コメントもありがとうございます♡
今のとこお話は5話までストックしてますが、面白い展開にするにはどーすればいーかな?と手探りで書いております。
頑張ります。

それはそうと……








なんか、日々密着度増してませんか♡








か、かわええ~・゜・(つД`)・゜・
寄り目神起♡♡
5月が楽しみですね!



ということで、リアルには敵わないと再認識したNBでした(^_^)





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2 Comments

NB  

no○zoさま

☆no○zoさま

どうも、今晩は♡
いつもありがとうございますm(__)m
踏んだり蹴ったり突っ込んだり(笑)
突っ込んだりって……新しい言い回しですね(笑)
まぁ私のせいなんですが。
チャンミン、ごめんよ~。もう痛々しいのは無いからね!多分……
そのお母上、三次元の方でしょうか……
やはり色々な事情があるものですね。
NB、変態頑張りますか(笑)
二人の行く末はいかに……もう暫くお待ち下さい。
白状しますと、変態か非変態かで言ったら前者です。
ふふふ、頑張ります♪

2015/04/20 (Mon) 23:00 | EDIT | REPLY |   

-  

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2015/04/15 (Wed) 14:25 | EDIT | REPLY |   

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