Humanoid ~君のための一歩~ 15



廊下を歩いていると、見覚えのある人物に遭遇した。

「あ・・・・・・」
「げっ・・・・・・」

昨晩、僕を襲おうとしたあの男だ。
男は気まずそうな顔をして、僕の横を足早に通り過ぎようとした。
ユノの脅しは相当効いているみたいだ。
しかしこのまま見逃しては、なんだか腹の虫が収まらないと思った。
僕は、男の目の前まで行くと顔を覗き込んだ。

「お疲れ様です。昨日は、どうも」

もう君のことを恐れてはいない。
そう伝わるように、僕はにっこりと微笑んだ。
呆気にとられたのか、男はぽかんと口を開けたまま固まってしまった。
男の反応に満足した僕は、爽快な足取りでその場を後にした。



てんこ盛りになったご飯と副食を前に、僕は手を合わせた。

「頂きます」
「・・・・・・ヤケ食い?」

そう言って、僕の目の前にトレイを置いたのは・・・・・・

「ボア」

向かい側へ腰を下ろすと、ボアは顔色を伺うように僕を見つめた。
別に、ヤケになっている訳じゃない。

「僕、元々大食いなんだ。今までは人の目気にして控えてただけ」
「ふぅーん」
「もう、周りばかり気にするの止めようと思って」

料理を頬張りながらそう話す僕を見て、ボアが言った。

「よかった。思ったより元気そうで安心したわ。昨日色々あったでしょ」

時には開き直ることも大事だ。
どうせ、全てを抱えながらパーフェクトを貫くなんて、不器用な僕には出来っこない。
大切なものを守るために他のものを捨てる。
それは僕にとって必要なことだし、それでいいと思ってる。

「気付いたんだ。僕にとって、一番大切なものは何なのか。職場は探せばいくらだってあるけど、ユノみたいな存在に出会うことって、この先もう絶対無いから・・・・・・。だから、ユノのことを一番大切にしたいんだ。世間体を気にするのは、もうおしまい」
「カッコイイじゃない。チャンミンのくせに」
「やめろよ。その言い方」
「まぁ・・・・・・案外否定的な意見だけじゃないわよ。ここだけの話、二人とも見た目がいいから楽しんでる奴も多いし」
「どういうこと?」
「別に、知らなくていいことよ」

よく分からないその発言に首をかしげながら、僕は食事を再開した。



昼食を終えてブースへ戻る途中、携帯がメールの受信を告げた。
ユノからだ。

“仕事、順調?”

『大丈夫。お昼ご飯もいっぱい食べた』

そう返すと、今度は写真が送られてきた。
写っていたのは、コンビニ弁当とココア。おそらくユノの昼食だ。

「偏った組合せだなぁ……」

ユノは甘いものが好きなうえにコンビニ弁当が多いから、体調が心配だ。
今度ちゃんとバランスを考えて、美味しいものを作ってあげよう。
そんなことを考えながら一人で笑っていると、後ろから声をかけられた。

「お疲れ様です」

振り返ると、そこにはバイトの女の子が立っていた。
僕によく、コーヒーを淹れてくれる子だ。

「お疲れ」

この子は僕に気がある。
確か、ボアが以前そんなことを言っていた。

「先輩、私のこと覚えてますか?」
「覚えてるよ」
「本当に?」

彼女は心を探るように、僕をじっと見つめてくる。
ああ。女のこういう所が苦手なんだ。

「何で?ちゃんと覚えてるよ」

すると、彼女は笑いながら言った。

「私、先輩に会った時から良いと思ってたんです。だけど・・・・・・沢山アプローチしても、全然気づいて貰えなかった」
「・・・・・・・・・・・」
「私に興味ないんだなーって、すぐに分かっちゃう」

申し訳ないけれど、取り繕う気は無い。
僕は何も返さずに、無言の肯定をした。
暫く沈黙が続いたが、彼女がそれを破った。

「あの男の人と付き合ってるって・・・・・・本当ですか?」

真実を隠すも晒すも僕次第。
ユノと恋人であるという事を、わざわざ他人に教える必要は無い。
噂にはなってしまったけど、本当は僕達と大切な仲間だけで共有していたい。
これは、世間体を気にするのとは別の次元の話だ。
大切な事実は、大切な人達が知っていればいいと思う。
だけど、違うと否定したくも無かった。

「それは・・・・・・秘密」

自然と、笑みが溢れた。






仕事帰り、会社のすぐ近くの並木道を歩いていると、少し向こうに恋人の姿を見つけた。
迎えに来て欲しいと僕が頼んだのだ。
目が合った途端、僕に向かってふわりと微笑む。
その笑顔も、君の全てが、初めて出会ったあの頃からずっと僕の宝物。

君のために強くなるよ。
服装や髪型を変えるでもなく、強い心でられるように。
どんな時も君の隣に並び、歩んでいけるように。









END



◇◇◇



これにて、Humanoid~君のための一歩~終了致します。
このシリーズ、毎回やたら心理描写ばかり多い気が・・・・・・ちょっとクドくなったかなぁ。
他のお話もそんな感じですけど。

今回、チャンミンは確実に一歩踏み出せたんじゃないかな!
現実は、特に日本はこういった選択をするってかなり難しいですけどね。
いつかまた、この二人書けたらいいなぁ。
ユノに引っ張られるチャンミンじゃなく、支え合ってるような、平等な関係になった未来の二人を書きたいです。

今までお付き合い頂いた皆様、ありがとうございました!
そういえば、去年の今頃もこのシリーズ書いてたっけな(^-^)

いつも沢山の拍手、ありがとうございます。
明日からも、頑張って更新し続けます。
コメントには後程返信致しますね~!





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2 Comments

NB  

さえ○んさま

☆さえ○んさま

わ~い、さえ○んさま今晩は♡
番外編、無事終わりました……!
いえいえ、さえ○んさまのお言葉がなければお話は未完のままだったし、チャンミンは一歩踏み出してなかったと思います。
励まして頂いて、本当にありがとうございました(T.T)♡
そうですね……
始まりが普通じゃないだけに、普通にたどり着くまで時間がかかりました。
でも、きっとこれからは大丈夫だと思います!

Humanoidは3~5月くらいにかけて書いたような記憶があります。
今年も桜を見て妄想に想いを馳せていましたが……既に葉桜になってしまいました。
あ、でもそうですね!さえ○んさまと出会って一周年♡
沢山お話して、実際にお会いできて、本当に嬉しいです♪
え?そうでしょうか?
写真とイメージがちゃんとマッチしてるので、美化ではないと思ってます(^.^)
いやん、そんなこと言ったら私もダイエットしなければ……

新しいお話、大丈夫かしら……
不安に思ってたら意外と反響よくビックリしました(>_<)
さえ○んさまにも気に入って頂けるといいなぁ。
またお待ちしてま~す♡

2015/04/20 (Mon) 22:45 | EDIT | REPLY |   

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2015/04/13 (Mon) 19:16 | EDIT | REPLY |   

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