Humanoid ~君のための一歩~ 10

  08, 2015 17:46


何もかも完璧な人間なんて居ない。
誰しもが、未熟さを残し持ったまま生きている。
大人になっても失敗を経験し、死ぬその時まで沢山のことを学んでいく。
それが、僕ら人間の生き方だ。

強く逞しく、格好いいユノ。
やきもち焼きなのに、自分のことには疎くて僕を心配させるユノ。
それら全てが、ユノという人間を作っている大事な要素だと思う。
これからは全部ひっくるめて愛していきたい。
そう思っていた。






ある日、仕事から帰ると部屋からユノの荷物が消えていた。
携帯も職場用のバッグも、生活に欠かせない物だから持って帰るのは当たり前。
そう分かっていても、ユノから何の連絡も無いことが僕を不安にさせた。
ユノに渡している合鍵が、玄関の郵便受けに入っている悪夢を何度も見ては涙を流した。
僕らの関係が、こんなにも簡単に壊れるはずがないのに……
過去に一度、ユノが居なくなって生きる希望を見失ったことがある。
当時の傷跡は、思ったよりも深く僕の心に根付いていた。









ユノと言い合いになったあの日から、もう一週間が経とうとしている。
今夜は会社主催のパーティーがあり、僕は都内のホテルへ来ていた。
パーティーなんて気分じゃなかったが、正社員は強制参加なので断る訳にはいかなかった。
正社員の人達とはまだそんなに打ち解けていない。
気兼ねなく話せるのはボアくらいだ。
ボアを探すと、遠くで他の同僚と楽しそうに談笑していた。

早く帰りたい……

こっそりとため息をついた時だった。
ポケットに入れていた携帯が振動し、着信を告げた。

「ユノ……」

少し躊躇ってから、僕は通話ボタンを押した。
その場で電話に出たものの、賑やかな会場は落ち着かないし人の目が気になった。
僕は外にある、人気のないガーデンテラスへ移動した。

「……今、パーティー中だったんだ。外に出たから大丈夫」
『そうなのか……。悪い』
「……仲間とじゃないよ。会社の集まり」

喧嘩したままだったので会話はぎこちなく、互いにあまり喋らなかった。
暫しの沈黙の後、ユノが言った。

『これから会えないか。パーティーが終わった後でいい』
「…………」

抱え込んでいた不安が、溢れそうになる。
僕はつい、それを口に出してしまった。

「僕のこと、振るつもり?」
『え……?』
「なら、会わないよ。絶対……」

焦ったような声で、ユノは言った。

『ちょっと待ってくれ。振るわけないだろ?何でそんなこと……』
「…………本当?」

緊張の糸が程けて、ぽろぽろと涙が零れた。
ユノを試すようなことを言って、僕は馬鹿だ。
ユノはちゃんと、僕と向き合おうとしてくれていたのに。
もう、気持ちを抑えることは出来なかった。

「ユノ……会いたい……。会いたいっ……」
『チャンミン……。これから、迎えに行くからっ。今どこ?」
「駅前の、ウェスティンホテル」
『今海沿いのデッキに居るんだ。多分直ぐ着くから、待っててくれ』
「うん」

ユノ、早く来て僕を抱き締めて。
何時もみたいに、強く。

ユノのことで頭がいっぱいだった僕は、前方から迫る人影に気付くことが出来なかった。
握っていた携帯があっという間に取り上げられ、一瞬何が起きたのか分からなかった。
目の前を見ると、見覚えのある男が口の端を吊り上げながら立っていた。
僕とは違う部署で名前も知らないが、以前仕事で関わったことがある。

「これって、例の彼氏?」

強いアルコール臭と虚ろな目。
相当酔っている。

「…………携帯、返して下さい」

変に反応しても面白がらせるだけだ。
僕は無表情のまま低い声でそう返し、平静を保とうとした。

『チャンミン、返事しろっ』

電話のユノの声を聞いて、男は楽しそうに笑った。

「バイバーイ」

携帯に向かってそう言うと、ぶつりと通話を切った。

「……質問にちゃんと答えろよ。今の、彼氏だろ?」
「貴方には関係ない。いいから携帯を返して」
「そんなこと言っていいのかなぁ。俺、いいもん持ってんだよね」

男はスーツのポケットから携帯を取り出し、何やら操作を始めた。

「お、あったあった。ほら、これ」

見せられたその写真を見て、僕は唖然とした。
画面に映っていたのは、車の中で唇を重ねている僕とユノだった。
以前会社帰りに、路地に車を止めてキスをしたことがあった。
ユノが強引に僕の唇を塞いで、僕は少し焦りながらもそれを受け入れた。
だけど、そんなに長い間キスをしていた訳ではない。
あの瞬間を、まさかこの男に見られていたなんて……

「道歩いてたら偶然見ちゃって、こっそり撮ったんだよね。上手く撮れてるっしょ?これ見たら、確実にあんただって分かるぜ」
「っ…………」

何か言い返さないと。
そう思うのに、気が動転して頭が上手く回らない。
どんな言い訳をしても、今僕が動揺していることが肯定の証だ……

「俺の言うこと聞かないと、この写真、社内にばら撒くよ?」

男は壁に手をついて僕を囲い込むと、顔を覗き込んできた。
汗とアルコールの混ざった臭いが鼻を掠め、身体中を悪寒が走る。

「男なら誰でもいいんじゃないの?女みたいな顔してさぁ」
「いやだ、やめろっ……!」

僕は頭をぶんぶんと横に振った。
足はガクガクと震え、立っているのも限界な程だ。
精神的ダメージが強いせいで、僕は考えることを放棄してしまった。
真っ白になった頭の中に、あの日のユノが浮かび上がった。

……――『心配になったんだよ。そんなに酔って、もし誰かに狙われたら抵抗出来ないと思って』
      『そんな無防備な状態で、男が好きな奴等の中に居るなんて……気が狂いそうだ』

あの時、大袈裟だと言って僕はユノの言葉を否定した。
いざ迫られると、こんなにも弱くて何も出来ないくせに。
今になって、ユノが言っていたことの意味がようやく分かった。

「パニクっちゃって可哀想に。大人しくしてれば大丈夫だから」
「やっ……!」

顔を更に近付けられ、反射的に手が出た。
頬を引っ掻くと、男は途端に顔を険しくさせ大声で怒鳴った。

「ってぇな!!大人しくしろって言ってんだろうがっ!!」

手を壁に縛り付けられ、必死で抵抗しようとしたが敵わなかった。
それでも手を動かし続け、壁で擦れた手の甲に、じわりと血が滲んだ。
男の顔が、すぐそこまで近付いてくる。
こんなの、嫌だ。
ユノ以外の男となんて、絶対に……

「いやだっ……いやだぁっ……!」

間違っていたのは僕の方。
それでも、都合よく願ってしまう僕をどうか許して。

「ユノッ……」

助けて―――………






「それ以上、チャンミンに近付かないでくれるか」

きつく目を瞑り恐怖に耐えていたその時、ユノの声が確かに聞こえた。

「え…………」

目を開いて前を見ると、直ぐそこに、ユノが立っていた。









◇◇◇



ユノ登場~!

二人とも……
ライブ中にごめんよ((T_T))





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