Humanoid ~君のための一歩~ 7



ユノを少しでも疑った自分が許せなかった。
もうこれ以上、余計なことを考えたくなかった。
あの出来事を忘れようと、僕はひらすら酒を飲み続けた。
途中から味わうこともなくなり、それはただ身体の中に酒を流し込むだけの作業のようだった。
うつ伏せになっていると、キツい香水を纏った男が僕の肩を抱いてきた。

「大丈夫?具合悪いなら奥に行って休もうか」
「大丈夫だから……触らないでくれる」

僕が手を払い除けると、男は舌打ちをして姿を消した。
ユノのようなキラキラした人と一緒に居ると、この町に集まる男達なんて、どんなに着飾っていてもちっぽけに思えてしまう。
以前は、ユノと出逢う前までは、ここで必死に恋人を探していたのに。
今僕は、ユノと一緒に居られるだけでも満足すべきなのだろう。
それでも、もっとユノを独占したいと思ってしまう。
ユノに寄せられる好意を、全て取っ払いたくなってしまう。
いつの間に僕は、こんなに欲深くなってしまったのだろう。



22時を過ぎた頃携帯が鳴った。
ユノからだった。
かなり酔っていた僕は、呂律も上手く回らずテンションも妙に高かった。

「もしもし?」
『チャンミン、まだ仕事場か?』
「今日はもう終わった」
『携帯取りにお前ん家来て、ついでに帰り待ってたんだけどなかなか来ないからさ。心配で電話しちまった』
「そっか。ありがとぉ、ユノ。好きだよ」
『お前、かなり酔ってるだろ』
「そんなこと無いって」
『周り騒がしいけど……今何処?』
「バーに居る。テミンが働いてるとこ」
『それって……ゲイが集まるとこか?』
「うん、まぁ」

ふと沈黙が訪れた。
声は聞こえないし顔も見えないけれど、確実に空気が変わったのを僕は感じ取った。

『すぐ帰って来い』
「え……」
『じゃなきゃ俺が迎えに行く』

ユノ、怒ってる?
どうして……
こんなことは初めてで、動揺してしまった僕はわかったと伝えるのが精一杯だった。






タクシーから下りてアパートを見上げると、部屋に明かりが灯っているのが見えた。
部屋に着いたらユノが待っている。
嬉しいはずなのに、先ほどの電話の声を思い出すと足の進みが鈍くなった。

「……ただいま」

玄関のドアをそっと開けると、少ししてからユノが部屋から出てきた。

「おかえり」

いつもより低めのトーンでぼそりと呟いた。
やはり僕は、何かユノの気に障ることをしてしまったらしい。
どうすればいいか分からず黙っていると、ユノが言った。

「さっきは悪かった。でも心配になったんだよ。そんなに酔って、もし誰かに狙われたら抵抗出来ないと思って」
「そんな、大袈裟だよ」

僕がそう言うと、ユノはため息をついて頭を掻いた。

「じゃあ、全く何もなかったのか?身体から、お前のじゃない匂いがする……」

言われて気付いた。
自分が、あの時肩を抱いてきた男の匂いを纏っていることに。

「少し……触られただけだよ」
「だから、それが危ないんだろ?!」

強い口調に、ビクリと身体が跳ねた。

「そんな無防備な状態で、男が好きな奴等の中に居るなんて……気が狂いそうだ」
「ユノ……」
「もうあの町には行くな」

ユノは僕を心配して言っている。
そう解っていても納得することはできなかった。
僕の数少ない友達は、あの町にしか居ない。
ユノが僕の人付き合いに意見するなら……

「……僕にも、言いたいことあるよ」
「何」
「女の子と頻繁に連絡取るの、止めて欲しい」

ユノは始めぴんときていないようだったが、直ぐに僕が何について言っているのか気付いたらしい。

「お前、何で知って……」
「ユノが携帯置いていったから留守電聞いちゃって……不安になって、悪いと思ったけど通話履歴見て、そしたら毎日連絡取ってたから……僕、僕っ……」

声を震わせながら話す僕の肩を掴み、ユノは言った。

「チャンミン違う。彼女にはちゃんと恋人が居るし、そいつと上手くいってないらしくて相談にのってた。ただそれだけだ」
「ユノはそう思ってても、彼女はユノを好きかもしれないじゃないか。僕だって、誰かがユノに近寄ったら嫌だよ」
「考え過ぎだ、チャンミン」

僕には妥協を求めて、ユノ自身は妥協してくれないということ?
冷静さを欠いていた僕は、心に募る不満を抑えることが出来なかった。

「ユノが僕の望みを聞いてくれないなら、僕だって譲れない。ユノのこと凄く大事だけど……友達だって大事なんだ。僕これからも、町に行くの止めないよ」

するとユノの纏う雰囲気が変わった。
顔から、いつもの優しい面影が消えている。
僕の手を引き部屋に入ると、ユノは僕をベッドの上に押し倒した。

「な、なに……?ユノ……」
「むしゃくしゃする……。やらせて」

ユノは僕のシャツに手をかけ、乱暴にボタンを外した。
怖い。まるでユノじゃないみたいだ。
僕はユノの手を制止しようと、震える手で何とか抵抗しようとした。
しかし力勝負でユノに敵う訳が無く、押さえつけられた僕はじたばたと暴れるしかなかった。
殆ど、パニックのような状態だった。

「いやっ……こんなの嫌だ……!やめて……やめてっ!」

振り回していた手がユノの顔に当たり、パチンと音が鳴った。
その直後、ユノはピタリと動きを止めた。

「あ……」
「…………」

ユノは横を向いたまま俯き、黙り込んでしまった。
暫く沈黙が続いた後、ふと我に返った僕は両手を伸ばしてユノの頬を包んだ。

「ごめんユノッ。大丈夫?ごめんねっ……」

ユノの手が僕の手に重ねられた。
そのまま握りしめて、俺もごめんと謝って欲しかった。
何事もなかったかのように笑い合いたかった。
ユノは僕の両手をそっと離すと、苦しげな表情で僕をじっと見つめた。
傷付いた顔をしていて、瞳は今にも泣き出しそうなほど切なげに揺れている。
僕に背を向けると、ユノはそのまま部屋を出て行ってしまった。
携帯もバッグもコートも、部屋に置いたまま。
バタンと玄関のドアが閉まる音が聞こえ、僕は頭を抱えて踞った。

「僕……なんてこと……」

ユノが消えて、ユノの足跡だけが部屋に残っている。
まるでユノ・ユノが連れて行かれた、あの日のようだった。









◇◇◇



あらら……
どうなることやら。
朝にUPしたかったのに間に合わなかった(^_^;)

皆様、沢山の拍手ありがとうございます!
いつも温かいコメントくださる皆様も、本当にありがとうございます。
コメ頂くたび喜びに震えています(;_;)♡
コメ返は後程。申し訳ございません<(_ _)>

コンサートが迫ってきましたね!
ドキドキわくわくです。
ユノの誕生日という素晴らしい日。
席が埋まれば良いのですが……





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2015/01/19 (Mon) 23:57 | EDIT | REPLY |   

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