僕のピアニッシモ ~Christmas melody~ 2



















僕のピアニッシモ・表紙

















長かった入院生活を終え、僕は暫くの間屋敷でのんびりと過ごしていた。
しかし、段々と職に就きたいと思う気持ちが強くなっていった。
もう一度音楽の素晴らしさを、僕のこの手で伝えてみたいと思った。
再び学校の教師をやるには準備も時間もかかる。
就職について悩んでいた時、ユノが僕に言った。

『ここで、ピアノ教えたらどう?』

教えるのは割と得意だし、広々とした演奏スペースも人を招くには丁度いい。
試しにやってみようと思った。
僕はユノに助けて貰いながら、屋敷でピアノ教室を開く準備を進めた。



そして今生徒は10人程集まり、僕はそれぞれが都合の良い日にピアノを指導している。
幼い子から大人まで年齢層は幅広い。
土日や平日の夜は、家に居るユノが楽譜のコピーなどを手伝ってくれる。
本当は同棲していて恋人の仲なのだが、生徒には雇っているバイトスタッフだと伝えてある。
12月も暮れに差し掛かり、もうすぐクリスマスがやってくる。
僕とユノはピアノ教室として使っている部屋に生徒を集め、クリスマス会を開こうと計画した。
部屋を飾りつけたり当日のプログラムを考えたりと、着々と準備を進めていた。
そんなある日。
屋敷の外へ出て生徒を送り出していた時、一人の青年に出会った。

「ピアノ教室か」

青年は興味津々といった様子で、僕と生徒を見ていた。
ピアノが好きなのだろうか?

「こんばんは。寒いですね」
「そうですね……」

それから少しだけ立ち話をした。
青年の名前はミンホと言った。
高校三年の彼は大学受験を控えていて、息抜きに昔住んでいたこの街を訪れたのだという。
幼い頃、彼は屋敷から聞こえてくるピアノの音色を聞くのが好きだったと教えてくれた。
あの暗い時代に僕が奏でていた音色を、好きだと言ってくれたのが嬉しかった。

「24日、ここでクリスマス会をするんだけど……よかったら来る?」
「生徒じゃないのにいいんですか?」
「勿論。きっと楽しいからおいで」
「ありがとうございます!」

ミンホは嬉しそうに笑った。



その晩ツリーを飾り付けながら、僕はユノにミンホの事を話した。

「ふぅん」

そう呟いたユノはどこか不満げで、僕は首を傾げた。

「なんか……怒ってる?」
「怒ってないけど……。会ったばかりの男を誘うんだね」
「受験だっていうから。勉強ってストレスたまるだろう?」
「そうだね」

ユノは唇を尖らせ、ツリーの飾り物を弄っている。
言葉では肯定していても、顔は全く納得していない。
ユノの気持ちがなんとなく読めた僕は、くすくすと笑ってしまった。

「男って……高校生だよ?34のおじさんにとっては、可愛い子供みたいなものだよ」
「俺も、貴方と十歳以上離れてるけど」

ユノが僕の顔を覗き込む。
至近距離で見つめ合った途端、心臓がドキドキと騒ぎ出した。

「ユノは……特別」
「どんな風に?」

甘い声に誘われるように僕はユノに顔を寄せた。

「こんな風に……」

ユノの厚い唇に、ぴったりと唇を押し付ける。

「先生……」

ユノが僕を抱き締めて、さらに深く口付けた。
口付けたまま舌でユノの唇をなぞると、ちゅうっと音を立てて舌先を吸われた。
キラキラと光るツリーの下、僕らは暫くの間そうしていた。

「エッチする?」
「ん……」

胸に額を擦り付けると、ユノは僕を抱き締める腕に力を込めた。

「先生、可愛い」

薄暗い空間の中、柔らかい光を放ったツリーが、僕とユノをぼんやりと照らし出す。
甘い雰囲気に包まれて、まるで酔ったかのように心も身体も火照っていた。
僕はユノに抱き上げられ、寝室へ向かった。
移動している間、僕はユノの耳元で囁いた。

「ねぇ、好き」
「これ以上煽ったら、もう知らないよ」
「ふふっ」



僕には何時だってユノしか見えていない。
視力を取り戻し、沢山のものが目に見えるようになった今でも。
だから嫉妬なんてする必要ないんだ。

ユノ……
きっと君が思っている以上に、僕は君を愛してる。









◇◇◇





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