possessive…… 3



「先生、それどうしたんです?」

歯形が付いた指を見て、看護師はユノに聞いた。

「あーこれな。治療中に噛まれたんだ」
「随分と不穏な患者さんだったんですね」
「まぁ、ある意味不穏か…… 」

確かに、あの乱れようは穏やかとは言えない。
腰を揺らしながら善がっていたチャンミンを思い出し、ユノはうっすらと笑みを浮かべた。
そんなユノを見て、何も知らない看護師は不思議そうに首を傾げた。






終業時間が迫り、ミーティングのために、看護師達がステーションに集まってきた。
ユノは定位置に座りながらパソコンを弄っていた。
チャンミンはユノの姿を目にした途端、昼のトイレでの出来事を思い出して一人そわそわした。
ユノはチャンミンに気付いているのかいないのか、パソコンから視線を反らすことなく手を動かし続けている。
ミーティングが始まり、本日の業務や今後のスケジュールについて、各自申し送りをし始めた。
一人の看護師が、資料を見てユノに話しかけた。

「先生、ハンさん明日退院させるって本当ですか?」
「ああ」

その患者は、チャンミンを気に入っている例のゲイ患者である。

「今回は検査入院だからな。著変無いし経過観察で十分だろ。あとは外来でフォローする」
「それにしても、また急ですね」

ユノは何も言わなかったが、ある一人の看護師が呟いた。

「もしかして……チャンミンのため?」

すると、隣の看護師が小声でそれを訂正した。

「そんな訳ないじゃん。仲悪いのに……」

暫く沈まりかえった後、ユノはその沈黙を破った。

「まぁ、そんなとこだな」

看護師達は意外な言葉に驚き、その瞬間全体の空気も変わった。

「標的にされてんのが誰でも、あんな行為見てたらいい気分じゃない。駄目なもんは駄目だ」

ユノと目が合い、チャンミンの頬は紅く染まる。
見つめてはいけないと解っていても、チャンミンは訴えるような強い眼差しから目を反らせなかった。
ユノの本気を、愛を感じて、心が喜びに震えている。
先に目を反らしたのはユノだった。

「……さて、回診行ってくっかな」

立ち上がり去ろうとするユノを、チャンミンは呼び止めた。

「せ、先生っ」
「…………」
「あの……ありがとうございます」

ユノは振り返り小さくと笑うと、ステーションから居なくなった。

「チャンミン、顔が完全に女子よ……」

隣の看護師の声は、チャンミンに届くことはなかった。
チャンミンはただ、ユノが消えたドアをぼんやりと見つめていた。






「明日退院らしいんだ。連絡先教えてよ」

チャンミンが廊下を歩いていると、例の患者が話しかけてきた。

「うーん、いつかね」

そう言って通り過ぎようとすると、患者はチャンミンの身体へ手を伸ばしてきた。
チャンミンは患者の手首を強く掴み、触られるのを阻止した。

「イッテェ!」
「俺、意外と力強いでしょ」
「おい。ナースが患者にこんなことしていいと思ってんのか?」
「ご存知かと思いますが、本人が不快に思えばそれは確実にセクハラになります。訴えることも出来る。患者だからって許されないですよ」
「……くそっ」

患者は何も言い返さず、チャンミンを睨み付けると部屋へ戻っていった。
チャンミンは満足げに笑うと、遠ざかる背中にこっそりと手を振ったのだった。






『今日は帰り何時?』

もう既に帰宅したチャンミンから、ユノの携帯へメールが届いた。

『多分日跨ぐ。先に寝てろ。』

夜遅くまで仕事が詰まっていたユノは、そう返したが……

24時を過ぎた頃。
家に着き、マンションの扉を開けた時だった。
チャンミンはもうとっくに寝ただろうに、灯りががついているのでユノは首をかしげた。
すると、リビングの方からチャンミンが駆けてきた。

「ユノ~ッ、お帰り!」
「うわっ」

勢いよく抱きつかれ、ユノはよろめいた。

「寝てろって言った……んっ」

ユノが言葉を言い終える前に、チャンミンはユノの唇を塞いだ。

「助けてくれてありがとう。ユノ、凄い格好良かった」
「そりゃあどうも」

チャンミンは、ミーティングの一件でかなり機嫌が良かった。

「俺ね……」
「何」
「食事の手伝い、わざとやったんだ。ユノに構って欲しくて」
「そういうことか……」

ユノはそれを聞いて、チャンミンが何を考えていたのかようやく解った。
普通に考えて、明らかに不要と解っているあんな患者の手伝いはしない。

「心配させてごめん。もう、絶対やらない」

自分も、ユノとユノに好意を持った人間が絡むのはかなり堪えるだろうと思う。
チャンミンは心から反省していた。

「まぁ……今回は許してやる。結局、俺のこと考えてたってことだろ」
「ユノ……」
「けど」

ユノは、口の端を釣り上げてにやりと笑った。
昼間のトイレの時と同じ顔をしていた。

「お仕置き、だな」

今夜はろくに眠れないかもしれない。
それでも、ユノのために寝不足になるなら構わない。
チャンミンは背中をぶるりと震わせると、ユノの噛み付くようなキスを目を閉じて受け入れた。









END



◇◇◇



なんかたーくさん詰め込んで長くなりましたね(^_^;)

どうでしたか?
今回は先生がちょっと鬼畜気味。
というか、二人の関係がバレないかと書いている本人がひやひやしました。





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2 Comments

NB  

名無しさま

★名無しさま

おはようございます(^^)
お名前が無かったので、何方か特定出来ませんでした。
何となく予想は出来ているのですが……間違えたら失礼だと思い、お名前を記載しませんでした(T_T)すみません。
possessive読んで頂きありがとうございます♡
多分……誰かにはバレているんじゃ?と思っちゃいますが、今のところそのような設定はないです。
nightcallの二人は好きと言ってくださる方多いので嬉しいです♪
見慣れない単語使ったりして、無駄な知識を知らせてしまってすいません……(笑)
昔のお話までよみがえって頂いてるのですか?嬉しい!
よく過去の記事にばーっと拍手を入れて下さる方がおりますが、もしかして……?
どちらにしろ、とても嬉しい(>_<)
モチベーションアップアップです♡

最近本当に寒くなって来ましたね!
身体をお気遣い頂きありがとうございますm(._.)m
体調に気を付けて頑張ります♪

2014/12/06 (Sat) 16:54 | EDIT | REPLY |   

-  

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2014/12/06 (Sat) 09:32 | EDIT | REPLY |   

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